【ガンカタ】さくら・ぶれっと 〜剣と魔法のファンタジー世界でどちらも使えない町娘の私はガンカタ(拳銃)で戦う。自分の生い立ちを知りたいだけで、英雄だなんて呼ばれたくないってば〜【15000PV突破】   作:くろひつじ

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103話

 

 応接室ではなく、カノンさんの個室に通されたところ。

 

 

「全く……何を考えているのですか、貴女は」

「……はい。ごめんなさい」

「キョウスケさんが間に合ったから良かったものの……肩に銃撃なんて、下手したら後遺症ものですからね?

 もっと自分を大切にしてください」

「仰る通りです……」

「大体、毎回無理し過ぎなんですよ。魔物の群れや大型の魔物に対して単騎で挑むのは命知らずにも程があります。そもそもですね……」

 

 一時間に渡る長いお説教が待っていた。

 完全に私が悪いので言い訳すら出来ず、ただひたすら怒られている最中である。

 

「あー。カノン? その辺にしてやれ。本人も反省してるようだし。……してるよな?」

「反省はしています」

 

 後悔はしてないけど。

 そして多分、またやるけど。

 

「……なら宜しいです。でも本当に、無事で良かった……」

 

 先程までとは打って変わって、聖母のような笑顔で撫でてくれた。

 ふへへー。てか、いつもこうならいいのになー。

 

「あはは……ご心配お掛けしました」

「それで、今回は誰の偽物だったんですか?」

「エイカさんです。そんで、分かったことが一つ」

「あら。なんですか?」

「ハヤトさんの件でも思ってましたけど……あいつら、英雄の劣化版ですね」

 

 本物の『闇を見通す第三の眼(ヘイムダル・バレット)』とは次弾装填時間も射撃の制度も異なっていた。

 カノンさんやシマウチハヤトさんの偽物もそうだ。明らかに能力が本人より劣っていた。

 もし本物と同じ力を持っていたら、私はなすすべも無くやられていたと思う。

 

「なるほど。つまり、偽物が出たら本物をぶつければ大丈夫という事ですかね」

「恐らくは、ですけど」

 

 本人なら確実に倒せると思う。何なら私でも勝てるんだし。

 

 ……ただまあ、私的には怖いのが二人いる。

神魔滅殺(ラグナロク)』と『韋駄天(セツナドライブ)

 この二人に関しては、どれだけ劣化していても勝てる気はしない。

 何せ元が規格外の英雄達だ。

 方や魔王とタイマンした勇者。方や音より速く動く騎士団長。

 

 下手したら、向かいあった直後にやられてしまう可能性もある。

 持ってる加護的にも私にとって天敵と言える相手だし、相性が悪すぎる。

 

 それこそ、本物の英雄の力を借りなければ勝てる気がしない。 

 ……うん。通信機、忘れないようにしよう。

 

「……で、お兄様? またレンジュさんと夜の約束をしたらしいですね?」

 

 笑顔から一転、恨めしそうな顔でアレイさんを睨み付けるカノンさん。

 うわ、こわっ。

 

「だから何で知ってるんだよ……一緒に酒を飲むだけだ」

「……とても疑わしいのですが」

「何ならカノンも一緒に来るか?」

「是非、と言いたいところですが……職務が溜まっていまして……」

 

 本当に残念そうだ。ほんとお兄さん好きだなー。

 

「あー……じゃあまた、次の機会だな」

「分かっているとは思いますが……ふしだらなマネは控えてくださいね。城内では声が響くので」

 

 おっと。その話は私がいない所でして欲しいんだけど。

 いや、慣れちゃいるけどさ。冒険者って下ネタ多いし。

 

「ふしだらってお前な……酒を飲むだけだって」

「信用なりません」

 

 ぷいっとそっぽ向くカノンさん。

 やっぱ仲良いよなー、この二人。

 少しだけ、うちのチビ達を思い出す。

 

 あ、てかオウカ食堂の支店の話するなら今かな。

 カノンさんもアレイさんも居るし。

 

「あの……ところで、ちょっとお話があるんですけど」

「はい、なんですか?」

「や、オウカ食堂の件なんですけど……アスーラとビストールに支店を出すことになりまして」

「……ついに支店にまで手を伸ばしましたか」

 

 今度は眉間に皺を寄せて、片手で頭を抱えた。

 

「や、本題はそこじゃなくてですね」

「えぇと……それは良い話ですか? それとも悪い話ですか?」

「……なんとも言い難い話ですねー」

「そうですか……」

 

 カノンさんは一度深呼吸して、キリッとした表情で胸に手を当てた。

 

「覚悟は決めました。どうぞ」

「えっとですね。支店の店長代理として、ヒムカイハルカさんとイグニスさんに話を通してあります」

 

「……は?」

「おいおい……ハルカにイグニスだと?」

「……ちょっと何を言われてるか分かりません。と言うか理解したくないのですが」

 

 呆れた顔のアレイさんに、また頭を抱え込んでしまったカノンさん。

 いつもすみません、ほんと。

 

「や、知り合いで引き受けてくれそうな人、他に居なかったんで…」

「ああああ……この人は次から次に……」

 

 頭を抱えて唸る美女。

 苦笑するおじさん。

 

 ……なんか、うん。ごめんなさい。

 

「頭痛がします。まさかここでイグニスの名が出てくるとは……」

「いやまあ、色々ありまして」

「あーもう。英雄と四天王が店長代理とか大事じゃないですか」

「大事と言うか大問題だな。そもそも、俺は面識がないが、イグニスは大丈夫な奴なのか?」

「話してみると普通のおじ様でしたよ?」

 

 事と次第を簡単に説明する。

 と言っても、大したことはないんだけど。

 

「……改めて滅茶苦茶してるな、お前」

「ビストールに関しては私も関与しているのでこちらにも責任はあるのですが……そうですか。そんな流れになりましたか」

「俺としてはハルカが引き受けた事も驚きだがな……そうか。アイツも、前を向いて歩き出したのか」

 

 二人して考え込み出した英雄達。

 なんか、仕草が似てる所をみると、兄妹なんだなーと思う。

 顔は全然似て無いのにね。

 

「とりあえず、お話は分かりました。支店を出すのはいつですか?」

「んー。ギルドに建設依頼を出してるんで、それ次第ですかね」

 

 ……こっちもすぐに終わりそうな気がするけど。

 

「では決まったらまたご連絡ください」

「はい……あ。そだ、もうひとつあるんですけど」

「まだ何かあるんですか…」

「や、関連する事なんですけどねー。

 イグニスさんに頼んで…なんだっけか。

 長距離移動用ゴーレム君? を量産してもらう事になりました」

「『マイスター』イグニス謹製のゴーレムをですか……?」

 

 まいすたー? なんだっけそれ。

 あ、あれか。英雄の二つ名みたいなものか。

 

「まあとにかく、それを使ってうちのお店の流通を整えようかなーと。

 今まで私が現地調達してたんですけど、三箇所は流石に無理がありますし」

 

 ぶっちゃけ、体が足りん。

 地味に時間かかるからなー。

 いや、馬車とかよりは速いんだけどさ。

 

「流通……なるほど。自走式ゴーレムなら馬車より速く荷物を届けることが出来ますね」

「なあオウカちゃん。それは自分の店の流通だけの話なのか?」

「え? そりゃそうですよ。じゃないとお仕事無くなっちゃう人がでちゃいますし」

 

 商人さんとか冒険者の人とか。

 その人たちの邪魔をするつもりはない。

 単純に私の手間を省くためのものにすぎないし。

 まー多分、自分で使う分は自分で買いに行くと思うけど。

 

「ふむ……そこまで考えてあるならいいんじゃないか? 元々この世界にある技術だしな」

「そうですね……異世界の技術という訳ではありませんし。

 とりあえず把握しましたので、こちらも本決まりになったらまた連絡してください」

「了解ですー」

 

 よし。これで後から怒られることはないだろう。

 誰かが暴走しない限りは。

 

 

「さて、結構な時間になってしまいましたね……」

 

 言われてみれば、窓から見える空がオレンジがかっていた。

 あーまあ。お説教、長かったからなー。

 

「オウカさん、夕飯はどうされる予定ですか?」

「へ? いや、普通に帰って食べますけど」

「もし良ければ食べていかれませんか?」

「……は?」

 

 笑顔でそんな事を言ってきた。

 え、それ、王城でってこと?

 

「ユークリア国王陛下も喜ばれると思いますよ」

「ああ、確かに。こないだのマカロン、喜んでたしな」

 

 にこやかに誘って来てるけど……どうしたもんかな。

 うーん。カノンさん達とご飯食べるのは楽しそうだけど…

 いやでもさ、何でただの町娘が王様と夕飯食べなきゃなんないのよ。

 礼儀作法なんて全くわからないわよ、私。

 

 それに、いくら美人さんのお誘いだからって、毎回釣られるわけじゃ……

 

「何なら、厨房をお貸しする事も出来ますよ? 今日は私たちの当番なので、お好きなだけ高級食材を使えますし」

「その話、詳しくお願いします」

 

 意図も容易く釣られた私であった。

 

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