【ガンカタ】さくら・ぶれっと 〜剣と魔法のファンタジー世界でどちらも使えない町娘の私はガンカタ(拳銃)で戦う。自分の生い立ちを知りたいだけで、英雄だなんて呼ばれたくないってば〜【15000PV突破】   作:くろひつじ

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10話

 

 宿屋の部屋に入ってすぐ、鍵をかけて荷物を置き、備え付けの机で教会に送る手紙を書いた。

 

 

 シスター・ナリア様

 

 旅に出てまだ数日ですが、お元気ですか。私は元気です。

 冒険者ギルドに話を聞きに来たけれど、詳しい事が分かるまで、しばらく王都に滞在することになりました。

 帰るのが遅くなるけど、心配しないでください。

 

 王都は色々と大きくて驚きました。

 でも、出会った人はみんな優しいです。

 まだ全然街中を観光出来てないので、また今度ゆっくり見て回ろうと思います。

 

 お土産を買って帰るので期待していてください。

 

 追伸。冒険者になりました。

 

 

 よし。教会の分はこんなもんかな。

 手紙なんて滅多に書かないからよく分かんないけど……まあ大丈夫でしょ。

 

 問題はもう一通の方。アスーラに送る手紙だよね。

 私の名前と……指輪と拳銃を受け取ったこと、それらが何なのか知りたいってこと。

 あと出来れば直接会って話したいってこと、かなあ。

 リングの前マスターにも興味あるし。

 

 ……うし。まあ、こんなもんかな。

 明日の朝、受付のリーザさんに渡しておこう。

 

 

 手紙を書いたあと、拳銃に書かれていたモチーフが気に入ったので、有り合わせの材料で即席の髪飾りを作ってみた。

 うん。中々の出来だ。我ながら可愛く出来たと思う。

 

 着替えを済ませて、ぽふっとベッドに倒れこむ。

 なんだか久しぶりのベッドだ。ふかふかする。

 

 

 何て言うか、この数日の間に、色々ありすぎて疲れた。

 

 胸に下げた指輪を手に取って、ぼんやりと見つめる。

 こいつと出会ってまだ一週間も経ってない。

 けれどそこから。

 初めての長旅、乗り合い馬車での出会い、オークの群れとの戦い、解体して焼いて食べて、王都に来て……

 それから冒険者になって、薬草の採取依頼受けて、流れでゴブリンとジャイアントバットやっつけて。

 ……すっごい濃い数日間だったなー。

 

 

「ねえ、リング」

「――御用でしょうか?」

「んー……あんたってさ、結局何なの?」

「――回答:対人コミュニケーション用インターフェイスです」

「それは知ってる。そうじゃなくてさ。あー……例えば、何か目的とか、あんの?」

「――回答:マスターのサポートです」

「ぬーん。そうじゃなくて。難しいなー……」

 

 リングは聞いたことには答えてくれるけど、自分から何かを話すことは殆どない。

 何を思っているのか、何を感じているのか。

 表情もないから読み取る事ができない。

 はっきり言って何を考えてるか分からない奴だ。

 ……分からないんだけどなぁ。

 

「この際、正直に言うけどさ。何でか、私はあんたを信用しちゃってるんだよね」

「――」

 

「なーんでだろーね。喋る指輪とか怪しさ大爆発なのに」

「――」

 

「ま、いいんだけどね。とりあえず、あんたを頼りにしてる。

 お陰で冒険者なんて事できてる訳だし」

「――」

 

「戦うのも探すのも。一人じゃないってのは、いいね」

「――」

 

「……おーい。聞いてるー?」

「――私に設定されている最優先事項はマスターのサポートです」

 

「………ほあ?」

「――意訳:私はマスターの味方です」

 

「……はは。おっけおっけ。信じてるわ、よ…………」

「――忠告:そのまま就寝されると体に障ります」

 

「……ん。……うにゅう」

「――良い夢を、マスター」

 

 

 

 翌朝。朝ご飯を食べてギルドに向かうと、中に入った途端に後ろ襟を捕み上げられた。

 うわ、なんだ!? ちょ、体浮いてんだけど!?

 てかこら、猫じゃないんだから持ち上げんな!

 

「よう、オウカ。ちぃと聞きたい事があるんだがよ」

 

 目の前に迫る、悪の親玉の顔。

 ……はは。やっべえ。

 

「えーと。おはようグラッドさん。とりあえず下ろしてくんない?」

「お前、昨日何した?」

「何って……森に薬草を採りに行って、そこで知り合った子の家に遊びに行った」

「……で?」

「遊びに行ったらはぐれて迷子んなって、その後ジャイアントバットの死骸がたくさんあるのを見っけた。私は無実です」

「……お前なあ。何か勘違いしてんだろ?」

 

 呆れた調子でため息を吐かれた。

 

 え、なにが?

 てか、ぶらさげんなー。ぶらんぶらんすんなー。

 

「お前、冒険者ギルドが何のためにあると思う?」

「何のためって……困ってる人を助けるため?」

「おう。ついでに言うと、冒険者なんてのは報酬は二の次って馬鹿野郎ばかりなんだよ。ほっとくと野垂れ死にしちまう。

 だからギルドで管理しなくちゃなんねぇんだ。

 つまり、お前がギルド通さねえで依頼受けるのは自由だが、報告くらいはしろ」

 

 眉間に皺を寄せながら、グラッドさんは呆れた調子で言った。

 

「……え。いいの?」

「お前が飯を食えるならそれで構わん。だが何かやらかしたら報告くらいはしとけ。

 ギルド側も依頼者に完了報告を出す必要があるし、冒険者を弁護する場合もあるからな」

「ぬ……ごめん。私が悪かったわ」

「わかりゃいい。どうせまたやらかすんだ、次から気をつけろ」

 

 ようやく地上に下ろしてもらえた。

 むう。服伸びちゃったら困るんだけど。あんまし持ってきてないんだし。

 

「あ。そういや王都来る前にオークの群れ潰した。あと薬草採りに行った時にゴブリンの群れも」

「いや、今さら驚かんが、それもどうせ討伐部位はないんだろ?」

 

 ……とうばつぶい? なにそれ。

 

「討伐依頼ってのはな、報酬貰う時に倒した魔物の証明になる部位が必要なんだよ。ゴブリンなら犬歯、オークなら鼻とかな」

 

 へー。でも確かに倒した証拠が無いとだめだよね。

 

「あー……多分、残ってないと思う」

「残ってない? お前、どんな狩り方してんだ?」

 

 どんなって言われても……

 

「見つけたらどかんってしてる」

「お前なあ……一応言っておくが、お前メチャクチャ目立ってるからな?」

「知ってるわよ。生まれつきの髪と眼なんだから」

 

 黒い髪に黒い眼。王都でも全く見かけない色だし。

 

「それだけじゃねぇ。

 ジャイアントバットもオークも、群れを潰すなんざパーティで受ける依頼だ。普通ソロでやれるもんじゃねぇんだよ」

「……あ。確かに」

 

 言われてみれば、そうだ。

 とにかくやらなきゃって事しか考えて無かったけど、複数の魔物相手に一人で戦うとか、普通は自殺行為だ。

 ……なんでそんな当たり前のこと、分からなかったんだろ。

 

「しかもお前は若い女だ。うちのギルドの連中も心配してるぞ」

「あー……うん。なんか、ごめん」

「大人しくしろとは言わんが、意識はしとけ。でないと、いらんトラブルに巻き込まれる」

 

 おや。なんか、心配してくれてるっぽい?

 なんだ、やっぱり顔が怖い人、みんな良い人じゃん。

 

「ん。分かった。ありがと」

「ならいい。手紙を出すんだろ」

「あ、そだった。リーザさん、お願いしていいかな」

「ええ。一通が馬車、一通が飛竜便だから、合わせて銅貨20枚ね」

「はい、お願いします」

 

 昨日の稼ぎの二割かー。そこそこ痛い出費ではあるけど、まあ仕方ない。その分、薬草採りのお仕事頑張ろう。

 

「ああ、ついでだ。お前ちょっと裏の庭に来い」

「え、なに?」

 

 手紙を渡していると、グラッドさんが悪そうな笑顔で肩を掴んできた。

 なんだ? 他に何かやらかしたっけ?

 

「お前の実力テストだ。他の連中が心配しすぎて使いもんにならんからな」

「ええ……庭で何すんの?」

「なあに、俺と軽く模擬戦するだけだ」

 

 

 ニヤリと笑う強面マッチョ。

 うわぁ。すごい嫌なんだけど。なんでこんな筋肉お化けと戦わなきゃなんないのよ。

 ……でも、周りの人に心配かけてるみたいだし。やらない訳にもいかないのかな。

 

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