【ガンカタ】さくら・ぶれっと 〜剣と魔法のファンタジー世界でどちらも使えない町娘の私はガンカタ(拳銃)で戦う。自分の生い立ちを知りたいだけで、英雄だなんて呼ばれたくないってば〜【15000PV突破】 作:くろひつじ
翌朝、起きてすぐに昨日の家具屋さんに行き、大きな枕を購入した。
私より少し小さいくらいの枕しかなかったけど、まあ仕方ない。無いよりマシだ。
その帰り、宿屋に寄って朝御飯を食べる。
ふわふわのオムレツとカリカリのベーコンが絶品だった。
やっぱおばちゃんのご飯は美味しいわ、うん。
ついでなのでギルドに寄ると、近場の森の立ち入り禁止が解除されたと掲示板に張り付けてあった。
薬草の採取依頼が溜まってたのでついでに受けていこうかと思ったけど、新人の冒険者が受けると聞いたので遠慮しておいく。
代わりに、森の討伐依頼でも受けるかな。
魔物がいっぱいだと採取依頼も危ないからね。
魔物の数を出来る限り数を減らしておこうと思ったのは私だけじゃなかったようで、他の冒険者も森の魔物を討伐しに行く話をしている。
ふむ。あれだよね、みんな見た目は怖いくせに親切だよね。
多分言ったら否定するだろうけど。
「おう、嬢ちゃん。なに持ってんだ?」
ニヤニヤしていると、いきなり強面の冒険者に声をかけられた。
おおう。顔が怖くて一瞬誰かわからなかったけど、最初にギルドに来た時に親切にしてくれた人だ。
確か、ゴードンさんだっけ。
「あ、ども。何って、まあ。枕だけど」
何となく抱き心地が良いので、ずっと抱きしめたままだったりする。
ちょっと歩きにくいけど、なんか、もっふもふだから、つい。
「なんでそんなもん……いや、まあいいか。嬢ちゃんも森に行くのか?」
「うん。そのつもりだけど」
「そうかい。俺らぁ討伐目的だからよ、採取してて何かあったら言ってくれ」
「……え?」
「ぶはっ!!」
「……ふふっ」
「……あー、いや、私は」
「あんまり無茶はすんじゃねえぞ。危なくなったらすぐに助けを呼べよ」
「くくく……」
「ふ、ふふ…『…』」
「……えーと。うん、ありがと」
「おう、じゃあな。気をつけろよ」
なんか、久しぶりに普通に心配された気がする。
おかしい。ただの町娘なんだけどなー。もっと心配してくれてもいいんじゃないだろうか。
グラッドさんとかリーザさんとか。
「……で、そこ。何を笑ってんのかな?」
「いや、別に何も。なあ?」
「ゴードンさん、優しいですからね」
「……なーんか釈然としないんだけど」
この扱いである。とりあえず、グラッドさんは枕でぼふんと殴り付けておいた。
枕を部屋に置きに帰り、お昼ご飯用にイチゴジャムのサンドイッチを作って森に向かった。
さてと。お仕事お仕事。
久しぶりの森はやっぱり木が低くて、枝が邪魔で飛びにくい状態だった。
そうそう変わるはずもないか。しゃーない、下を行くか。
「リング。マップ表示お願い」
「――検索中……完了、表示します」
「うい、ありがと」
視界の隅に表示された近隣のマップに目を向ける。
おお、人も魔物も結構いるなー。よし!まずは近場から行こうか。
両手の拳銃に魔力を込めて、走り出す。
森の中を走るのは馴れているから何の問題もない。
石や木の根を踏まないようにだけ気をつけて、駆ける。
一匹目、ゴブリンを確認。魔力を調整して射撃。
小さな破裂音と共に、一撃で仕留めた。うん、やっぱ遠距離から攻撃できると楽だね。
サクラドライブ使わなくても、これだけ距離が離れていれば怖くない。
よっしゃ、どんどんいこうか。
だいたい十匹ほど狙撃した。他にも、魔物を示す赤い点はどんどん消えている。
冒険者のみんなが頑張ってくれているようだ。さすが本職。
んだけど。一ヶ所、全く減ってないとこあるなー。
ここ、行ってみっかな。
現地に着いてみると、なんだか凄いことになっていた。
ゴードンさん達が物凄い量のゴブリン達と戦ってる。
纏まって戦ってる冒険者達を、半円に囲むようにゴブリン達が攻め立てている。
けど、一旦退いたらいいのに、なんで逃げないんだろ。
不思議に思って目をこらすと、ゴードンさん達の後ろに怪我して動けない冒険者が居た。
みんなであの人を庇ってるんだ。だから下手に動けないのか。
見た感じ、敵は統率が取れていない。
ということは、ゴブリン達のボスはいないはず。
それなら、目につく端から各個撃破するか。
「リング」
「――Sakura-Drive Ready.」
「Ignition」
桜色の魔力光を撒き散らしながら、ゴブリン達の背後から駆け寄る。
「団体さんは久しぶりだけど、派手に踊ろうか」
戦場に向かい、走る。
一匹目。膝裏を蹴り、体勢を崩した所を射撃。
二匹目。こちらを向いた個体の足を狙撃。崩れた所にヘッドショット。
三匹目、大きめな奴の胸を撃ち抜いたところで、半数のゴブリンが私を見た。
そうだ、こっちに来い。私を狙え。
駆ける。殴りかかるその腕を銃底で叩き逸らし、回転、背中を撃ち抜く。
蹴り飛ばし、巻き込まれた別個体を狙撃。
突っ込んできた奴の腕を足場に跳躍、頭を蹴り飛ばし、反動で回転、逆手で胸を撃つ。
そのまま右手に集中、瞬間的に魔力を圧縮し、遠場の個体の頭を狙撃。狙い違わず眉間を撃ち抜いた
着地、即座に屈み、棍棒の一撃を躱しながら足を撃ち、よろけた所に射撃。
次々と迫り来るゴブリンを、躱し、避け、
その
次第に、数が減ってきた。
ふと見ると、ゴードンさん達の方は既に片付いていた。
速い。さすがベテランだ。こっちもさっさと終わらせるか。
腰を落とす。地を踏みしめ、左手を前に伸ばし、右手を逆手にして顔の横で固定。
残り三匹。更に身を低くしながら前進。
足元を銃底で殴り抜き、体勢が崩れた所に発砲。まず一匹。
次いで地を廻り、脚を真っ直ぐ突き上げる。顎を蹴り抜き、浮いた体の真ん中に射撃。二匹目。
回転、飛びかかってきた敵の振り下ろしを避け、蹴り飛ばす。
これでラスト。頭と胸を同時に撃ち抜いた。
「リング」
「――魔力反応無し:お疲れ様です」
「状況終了。お疲れさん」
ホルダーに拳銃を差し、周りを見渡す。
桜色の舞い散る中、大量のゴブリン達が地に倒れていた。
おー。この量のゴブリンを押さえてたのか。
普通なら押し潰されそうなもんだけど。ゴードンさん達、凄いな。
「……おい嬢ちゃん」
「あ、ども。ゴードンさん大丈夫?」
「おう。あんた、素人じゃなかったのか」
険しい顔でこちらを指さしてきた。
「え? いや、ただの町娘だよ?」
「お前みたいな町娘がいるかっ!!」
その叫びに、みんなして首を縦に振った。
え、ひどくない? 事実なんだけどなー。
「とりあえず俺らぁ、こいつら連れて帰るわ」
怪我をした冒険者に肩を貸すゴードンさん。
ほんと、面倒見がいいよね。顔は怖いけど。
「あ、うん。ご苦労様です」
「嬢ちゃんも気をつけてな。まあ、心配なんか必要なさそうだが」
「そんな事ないんだけどなー。いちお、心配してくれてありがと」
「おう。今日は助かったぜ。またな」
「うん。またね」
ばいばいと手を振って見送る。
さて。私はもうちょい狩ってから帰りますか。