【ガンカタ】さくら・ぶれっと 〜剣と魔法のファンタジー世界でどちらも使えない町娘の私はガンカタ(拳銃)で戦う。自分の生い立ちを知りたいだけで、英雄だなんて呼ばれたくないってば〜【15000PV突破】   作:くろひつじ

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51話

 

 リーザさんに泣き付いた次の日。

 いつものようにギルドに行くと、何処と無く困ったような笑顔のリーザさんと、眉間に皺を寄せているグラッドさんが出迎えてくれた。

 

 うっわ。嫌な予感しかしないんだけど。

 でもこれ、聞かない訳にはいかないよね?

 

「……なに、どったの?」

「ああ、オウカか。ちぃと困り事があってな」

「それは見たら分かるわよ。とりあえず聞くだけなら聞くけど」

「なら部屋に行くか。リーザ、後は任せる」

 

 グラッドさんの部屋に通されると、中ではカノンさんが待っていた。

 こちらも困ったような笑顔をしている。

 

 うわぁ。嫌な予感がますます高まった。

 

「おはようございます。物凄く嫌な予感がするんですけど」

「オウカさん、おはようございます。その予感は的中しています」

 

 やめて。肯定しないで。頼むから。

 

「王都の東の方にあるビストールは知ってるな?」

「んーと。亜人の街でしたっけ。行ったことはないですけど」

 

 亜人の街ビストール。エリーちゃんみたいな猫系亜人や狼型亜人など、様々な人種の入り交じった街。

 独特な文化と多種多様なスパイスの産地として知られている。

 別名、モフモフ天国。

 

「ああ、そこのギルドから救援要請が来てな」

「……はあ。そっすか」

「どうも魔王軍の残党が城を構えたらしいんだが……今、そっちに向かえる腕利きの冒険者がいなくてな」

「え、なんで? てか、それ大事じゃないですか?」

 

 魔王軍の残党って……かなりヤバい話じゃないの?

 しかも冒険者いないって、何事?

 

「タイミングが悪いことに、アスーラ近辺のダンジョンの定期討伐を行っていてな」

「お兄様達もそちらに行っておりまして……いま王城には私とキョウスケさんしかいません」

 

 うわお。聞かなきゃ良かったわ。

 つまり仲のいい国が困ってるのに人手が足りないと。

 なるほどー? いやーな予感、びしばし来てんだけど。

 

「幸いな事にまだ被害はあまり出ていないらしいんだが、どうもあちらから宣戦布告されたらしい」

「うっわ……なに、また戦争すんの?」

「いや、小競り合い程度だろうが、被害は(まぬが)れんだろうな」

「ビストールは同盟国なので手助けしたいのですが、下手に兵を送ったらこちらの防備に問題が出ます」

 

 二人とも、とても申し訳無さそうな顔で私をじっと見詰めている。

 あー、まあ。話は大体分かったわ。

 

「つまりだな。英雄以外で、単騎で一軍と同じ功績を叩き出せる奴を行かせるしか無い訳なんだが」

「はい。そしてここに、一人で我が国の騎士団と渡り合った実績を持つ方が、いらっしゃると言う訳なんです」

 

 なるほど。よし。言いたいことは分かった。

 分かったんだけどさー。

 

「……でもそれ、めっちゃ目立つよね?」

「正直に言おう。同盟国への援軍という形になる以上、目立つのは避けられん。軍として送り出す以上、国王にも話は行くからな」

 

 あー。だよねー。アレイさんから目立つのは避けろって言われてんだけどなー。

 

 ん? いや待てよ……?

 

 

「……例えばだけど、とある冒険者がたまたまビストールに遊びに行って、魔王派とやらをぶち倒す、とかは?」

「別に問題は無いだろうが……国からの援助や報酬が何も受けられなくなるぞ?」

「や、それはいいんだけどさ。困ってる人がいて、私しか助けらんないなら、やるしかないんだし」

 

 

 報酬なんて、誰かに「ありがとう」って言ってもらえれば十分だ。

 いや、ぶっちゃけかなり怖いけども。

 

 でも私にしか出来ないって言われちゃったしなー。

 あとはまー、私自身がお尋ね者にならないように祈るだけだね。

 

 うわあ。そう考えると大分危ない話だな、これ。最悪、王国を敵に回すわけだし。

 

 ……ま、いっか。そん時はそん時だ。

 シスター・ナリアなら、教会の皆はどうにかしてくれるだろうし。私だけなら、何とでもなる。

 それに、困ってるって言われて何もしないのは、私の主義に反する。

 

 困っている人がいたら、出来る範囲で手助けをする。

 助けられた人は、他の困ってる人の手助けをする。

 そうやって世界は回っているんだと、シスター・ナリアから聞かされて育ってきた。

 

 それは、私の根っこに刻まれた生き方で。

 同時に、私の憧れた人の生き方でもある。

 ならば、行かない道理はない。

 

「じゃあ、一人の冒険者としてビストールに行ってくる。向こうで何かあっても、それは自己責任ってことで」

「……すまんな。ビストールのギルマスは古い知り合いでな。俺の名を出せば分かるはずだ」

「オウカさん。本来なら私達で対処すべき案件なのに…頼ってしまって本当に申し訳ありません」

「気にしないでください。グラッドさんは今度はご飯奢ってねー」

 

 

 大通りで食材を買い込んで、部屋に戻ったら何日か分のご飯作った。

 そのあと、部屋の中のもんと一緒に全部アイテムボックスに突っ込んで、準備完了。

 

 やー、まじ便利だわこれ。生き物以外何でも入るし。

 何でか温かい食べ物入れたらずっと温かいまんまだし。今までの苦労は何だったんだろう。

 教えてくれたリーザさんには感謝の言葉が尽きないわ。

 

 

 しっかし、ビストールかぁ。

 前々から行きたかったけど、遠いから無理だと思ってたんだよなー。

 獣に似た亜人の住む街。モフモフの街。まさにモフモフパラダイス。

 

 ……いや、知らん人をいきなりモフったりはしないけどさ。

 でも知り合いができたらワンチャンあるよね?

 王都は猫とか少ないし、居ても警戒心強いしでモフるチャンスが無かったから、フラストレーション溜まってたんだよねー。

 

 もちろん、メインは増援な訳だし、遊びに行くわけじゃないけど。

 ……終わったら、観光するくらい大丈夫だよね?

 

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