【ガンカタ】さくら・ぶれっと 〜剣と魔法のファンタジー世界でどちらも使えない町娘の私はガンカタ(拳銃)で戦う。自分の生い立ちを知りたいだけで、英雄だなんて呼ばれたくないってば〜【15000PV突破】   作:くろひつじ

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94話

 

 そういえば建設依頼どうなったんだろうと思って翌朝確認すると、手空きの冒険者みんなで受領してくれたらしい。

 と言うか既に建築予定や資材調達の話も詰めているらしい。

 相変わらず仕事が早すぎる。

 

 早い内にみんなで集まって細かい話しなきゃなー。

 その時はお礼と差し入れに何か持って行こう。

 

 

 一度家に帰り、料理の在庫をチェック。

 料理の作り置きの中にオーク肉の薫製と、一緒に燻したチーズや卵があるのを確認。

 お菓子もそこそこあるから今回は作らないでいっか。

 

 枝豆を塩ゆでして、焼きトマトと一緒にアイテムボックスに収納。

 ついでに前に本で読んだワサビ醤油を瓶に詰めて準備完了。

 ……あまり気は進まないんだけど、さっさと王城に行くかー。

 

 

「連日会えるなんてこれはもう結婚かなっ!?」

「近い近い。ハグは良いけど顔が近いですって」

 

 着いてすぐさま、レンジュさんに絡まれた。

 

「オウカちゃん今日もいい匂いがするねっ!!」

「……ごー、よん、さん、にー」

「え、ちょ、何のカウントかなっ!?」

「あ、離れた……ちっ」

「まさかの舌打ちっ!?」

 

 朝っぱらから元気だなあ、この人。

 多分いつでも元気なんだろうけど。

 

「昨日言ってたおつまみ、持ってきました」

「え、マジでっ!? 超嬉しいっ!!」

「嫌なことは早めに片付ける主義なんで」

「嫌なこと扱いっ!?」

 

 アイテムボックスからおつまみを入れたバスケットを取り出し手渡す。

 

「え、なにこれ凄いんだけどっ!? わ、薫製チーズがあるっ!!」

「そっちの小さな瓶はワサビ醤油です。確か故郷の味ですよね」

「おおっ!! 至れり尽くせり!! みんなにも分けたげようかなっ!!」

 

 喜んで貰えて何よりだ。

 あ、そだ。みんなと言えば。

 

「キョウスケさんは今日もお仕事ですか?」

「そだよっ!! 治療院、千客万来みたいだからねっ!!」

「あー。まあ、基本的に無料ですもんね」

 

 王都の治療院では、キョウスケさんが治療した場合に限り、治療費は使った医療品代だけという変わった規則がある。

 キョウスケさんが治療院のトップになった時、そんな規則を作ったそうだ。

 お金のない人でも気軽に治療院を利用出来るようにしたかったらしい。

 

 そのお陰で、治療費は基本的に無料。

 ほとんどの場合がキョウスケさんの加護『時を殺す癒し手(デウスエクスマキナ)』で健康だった状態に戻しちゃえるもんね。

 

 そんな規則もあって、王都の傷病死率は他の国に比べても異様なほど低いらしい。

 まあその分、キョウスケさんは尋常じゃないくらい忙しいみたいだけど。

 

「……英雄って考えること凄いですよねえ」

「一部が凄いだけだと思うけどねっ!!」

「そうかなー。全員ぶっ飛んでると思いますけど」

 

 英雄達が今でも英雄と呼ばれる理由はそこにあるんだと思う。

 魔王を倒して長い戦争を終わらせた後、各々のやり方で世界の平和を作り上げた。

 

 一人で王都の経済回してたり、騎士団長として魔物を討伐したり、便利な道具を作り出したり、人助けの旅で世界中を回ってたり。

 それらの働きで復興が百年単位で早くなったんだとか。

 真似したいとは思わないし出来ないけど、凄いなーとは思う。

 

 ……基本的に変わった人ばかりだけど。

 

 

「ま、アタシらは元の世界の知識があるからねっ!!」

「……そういや、元の世界ってどんなとこだったんですか?」

 

 ちょうど良いので、前から気になってた事を聞いてみた。

 カノンさんからたまに聞いてるけど、あんまり深くは話してくれないんだよなー。

 

「平和な国だったよっ!! 戦争も魔物もいないしっ!!

 食べ物も豊富で娯楽に溢れていて、誰でも持てる通信機なんかあったりねっ!!」

「へえ。住みやすそうですね」

「後はまあ……悪人が多かったかなっ!!」

「……悪人、ですか」

 

 

「……こっちみたいに死が近くなかったからね。

 助け合うより、騙し合うって人達も居たんだよ」

 

 

 普段とは違う、どこか悲しそうな笑みで、ぽつりと言った。

 

 

「…………なる、ほど?」

「戦争は無くても争いは無くならない。それはどんな世界でも、多分同じなんだよ」

「分かるような、分かりたくないような話ですね」

「……まあ、アタシはあっちに帰りたいとは思わないかな」

 

 

 少し顔を伏せ、呟く。

 まるで小さな子どもが虚勢を張っているような、笑顔。

 それは、泣き顔にも見えた。

 

 なので何となく、頭を撫でてみた。

 

「……ええっと、何かなっ!?」

「いえ、何となく。ダメでした?」

「……いやその、うぅむ。ダメじゃないんだけど、対応に困るかなっ!!」

「レンジュさんって基本的に攻めですけど、攻められたら弱そうですよね」

「うぐっ!?」

 

 お。大当たりか。

 

「私は皆さんの事、好きですよ。とんでもない人達だけど、いい人だって思ってます」

「あああ、なんで今そんな事言うかなぁぁ!!」

「……おお。顔がリンゴみたいに」

「くうっ……!! 今日のところはこれくらいにしてやらぁっ!!

韋駄天(セツナドライブ)』!!」

「あ、ちょ……」

 

 

 ……うわお。加護使って逃げなさった。なんて無駄な使い道だろう。

 

 んー。ちょっとからかい過ぎたかもしんない。

 まあ、普段の事を考えると別に問題ないかなーとは思うけど。

 

 ただ、口にした言葉に偽りは無い。

 救国の十英雄。魔王を倒して魔族との戦争を終わらせた異世界からの来訪者。

 魔法とは違う女神の加護を与えられ、超人的な能力を持つ人達。

 実際話してみれば、癖が強いけど、みんな良い人ばかりだった。

 ……超癖強いけど。

 

 もし彼らがこの世界を好きでいてくれるなら。

 それはとても嬉しい事だと思う。

 その為にも、色々頑張ってみよう。

 

 とりあえず、まずは渡し損ねたキョウスケさんへのお礼を届けるか。

 

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