いつの間にかビッチになってた件について   作:naonakki

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第五話

 ……そうだよ、間違いない。逆転していると考えれば全部繋がるじゃん。むしろなんで気づかなかったんだ?

 

 バラバラだったピースが組みあがっていくように、こんがらがっていた頭の中がどんどん整理されていく。それに伴い思考する余地が生まれ、冷静さも戻ってくる。

 

 ……なるほど。そりゃあ俺だって胸元を大胆に開けてる女子がいたら視線を奪われるだろう、釘付けに違いない。しかも教室内で童貞を捨てたいなんて発言したならビッチと言われても仕方ない。

 でも俺ってこっちの世界だと元はどんな性格だったんだろうか? 周りの反応見てると下心満載ってわけじゃなかったんだろうけど。まあどうでもいいか。 

 しかし、そうなると俺は佐々木さんと上田さんに急にモテたわけでなく、単に俺とヤレそうだと勘違いして、俺をここに誘ったというわけか。美穂はそんな俺を心配してついて来たってところか。

 

 なるほどなるほど、やっとすっきりしたわ。

 それにしても逆転世界か……

 

 

 

 

 

 最高じゃないか

 

 

 

 

 

 

 えっ? 何々? 今の世界では大半の女子が性に飢え、がっついてるわけだよな? 何その素晴らし過ぎる世界は?

 こっちが胸元ちょっと見せつけるだけで、女子達が寄ってくるってことだよな?

 つまり俺の欲望と女子達の欲望が合致する完全なるウィンウィンの世界!

 誰も不幸にならない幸せな世界じゃないか! 

 天国といっても過言じゃない!

 なんで逆転したかはわからないが俺の時代が来ていることは間違いない。

 

 ……そうと分かれば、思いっきりこの世界を楽しむしかないよな?

 

 改めて目の前に意識を向ける。

 そこには相変わらず真っ赤な顔をして抵抗する美穂と、行け行けと促す上田さんと佐々木さんがいた。

 いくら逆転世界とはいえ、美穂は貞操観念はしっかりしてるだろうから好きでもない俺とヤルなんてことはしないだろう。

 そう考えたとき俺の中に軽い悪戯心が生まれる。

 

 くくく、少しからかってやるか……。

 

 美穂はいつもガミガミと口うるさかったからな、ちょっとした仕返しだ。……いや、というのは建前で早くこの逆転世界の男子の優位性を実感したかったのかもしれない。

 美穂は元の世界では恋人はおらず、恋愛経験は皆無のはずだ。とはいえ、美穂はかなり可愛い部類に入るので男子からも人気があり、よく告白されていたのは知っている。なぜか全部断っていたが。どうして告白を断るのか聞いても教えてくれなかったんだよな。まあ、そんなことはどうでもいい。美穂の今の反応からしてこっちの世界でも恋愛経験はないのだろう。この逆転世界でも初心であろう美穂が俺に迫られてどんな反応をするか……、実に楽しみだ。

 ……しかし、からかうといっても何をすればいいんだろうか? とりあえずさっきの上田さんみたいに服脱いで近づいてみるか。……あれ、めっちゃ興奮したしな。

 

 「……なあ、美穂。」

 「あ、かず。ちょ、ちょっと二人を止めるように言ってよ! かずもちょっとした気の迷いだったんでしょ? ね、今ならまだ遅くないから。」

 

 諦めず俺を説得しようとしてくる美穂。純粋に俺を心配しているようなので少し罪悪感が湧き上がってくる。しかし、それよりもこの逆転世界による恩恵を実感したいという欲求には勝てなかった。

 俺は無言のままじっと美穂を見つめ返す。

 

 「……え、どうしたのかず?」

 

 何も喋らない俺を不安げに見上げてくる美穂に構わず俺はシャツのボタンを外していく。

 

 「ちょ、ちょっと何してるの!?」

 

 美穂は分かりやすいように狼狽えるも、その視線はまっすぐに俺を捉えている。ちょうどさっきまでの俺のようだ。興味深々であることが隠せていない。上田さんと佐々木さんは、興奮しがっつくようにこちらを見つめている。

 この女子達を弄でいる感覚、優越感とでも言うのか、とにかくたまらんね。

 これまで経験したことがないような感覚にだんだんと調子が上がってくる。

 

 「……美穂は俺の事嫌いか?」

 

 ここで美穂の耳元でそんな風に優しい声色で呟いてみる。いくら美穂とはいえ、普段の俺なら絶対こんなことは言わないだろうが、今の俺はとにかくこの現状に酔いしれていた。美穂は「え、そ、そ、それはその……嫌いなわけない、けど……」と、目を白黒させあわわと慌てながら分かりやすく動揺してくる。そんな美穂の反応を見て俺はますます勢いづいていく。

 

 「……なら別にいいじゃん。」

 

 そのまま俺は美穂の顔に自分の顔を近づけていく。これもさっきの上田さんの真似だ。これには流石の美穂も何をされるのか察したのか、硬直し潤んだ目でこちらを見つめてくる。その表情は戸惑いつつもどこか興奮し、喜んでいるようにも見えた。

 

 ……よし、このくらいにしておこう。

 

 美穂の反応に十分満足したので、このあたりが潮時だろう。ていうかこのままだと本当にキスしちゃうし。流石に美穂のファーストキスを奪うのは悪いしな。

 美穂にはここで退場していただき、後は上田さんと佐々木さんとフィーバータイムといきましょうか、グフフ。

 

 「ははは、なんて、じょうd、むぐっ!?!?」

 

 冗談。笑いながらそう言い、終わらせるつもりだった。

 しかし俺が言い終わる前に俺の口に柔らかくぷにっとした粘着性の癖になりそうな感触の良いものが押し付けられ、最後まで言葉を紡ぐ事が出来なかった。

 何が起きたか理解できなかった。これまで見たことのないほどの至近距離に美穂の顔があり、その美穂からシャンプーの香りなのか美穂自身の香りなのかは知らないが、シトラス系の爽やかな香りが漂ってくる。

 そして、しばらくして唇に押し付けられていた名残惜しい何かが離されていく。

 

 「……はぁ、はぁっ、き、キスしちゃったね♡」

 

 目の前に完全なる雌がいた。

 目はどこかトロンとしており、恍惚とした表情を浮かべている。荒い息遣いから興奮していることが伝わってくる。エロすぎるだろ。

 

 ……って、え? キス? しちゃった……?

 誰が? 美穂が? ……俺と?

 

 せっかく冷静になれたのにまた混乱してきた。え、なんで美穂がキスしてきたんだ? からかいすぎた? 調子に乗りすぎたか?

 ていうかあれ? さっきのが俺のファーストキス? 訳がわからない内に終わったんだが? 

 色々な疑問が同時に生まれうまく思考を処理できない。

 

 「……かずが悪いんだからね? どうせ私がかずのこと好きって知ってたんでしょ? そんな私にあんな誘惑してくるなんて……これはお仕置きが必要だよね♡」

 「……え? 好き? ……いや、ちょっと待って一回整理さs、むぅっ!?」

 

 再び美穂が俺に迫り、己の唇を俺のそれに押し付けてくる。力関係も逆転したであろうこの世界で俺がそれを拒むことは不可能。俺の顔はがしりと掴まれ、半ば強引にキスをされる。さらに、ニュルリと美穂が自身の舌を俺の口内へとねじ込んでくる。舌と舌が絡まり合い、まるで口の中を侵されるような感触に体中が硬直し、頭の中が真っ白になっていく。

 

 ……もう、わけわからんがいいや。今はこの流れに身を任せよう。考えるのは後だ。というか何も考えれん。

 

 

 

 ドサッ!

 

 

 

 その時だった。

 部屋の入口から何かが落ちる音がした。

 それが何だったのか、俺はキスに夢中になってしまい気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナニガオキテイルノデショウ?

 

 急ぎ、兄さんが遊びに行ったというカラオケ店にやってきた私だったが、目の前のあり得ない光景に眩暈と吐き気が同時に襲ってくる。思わず持っていたカバンを落としてしまうが、気にする余裕はない。

 愛する兄さんが他の女とキスをしている。しかも女は一人でなく三人もいる。キスをしていないその二人も服を脱ぎ始めており、今からキス以上のイケナイことをしようとしているのは明確だった。

 正直、兄さんのクラスメイトが言っていたことは半信半疑だった。兄さんがビッチになっているなんてどうしても信じられなかったのだ。

 しかしこのカラオケ店は、不純異性交遊に現を抜かす生徒が利用するとうわさは聞いていた。それと目の前の光景により、兄さんがビッチだということが事実となってしまった。

 

 

 

 ……ふふ、ふふふふふ

 

 

 

 これはいけませんね兄さん。完全にアウトです。どうしてこうなってしまったのでしょうか? というか目の前にいるのは本当に兄さんでしょうか? いえ、私が兄さんを見間違えるはずがないので兄さんに間違いはないでしょう。私が言いたいのは中身が本当に兄さんなのかということです。兄さんはこんなふしだらなことをする人ではなかったはずです。兄さんの皮を被った何者かではないでしょうか? そうであれば化けの皮を剥いであげる必要がありますね。……いえ、もしかしたら私が把握できていなかっただけで兄さんに心的負担があったのかもれません。それが溜まり溜まってこうなった可能性もあるかもしれません。そうであればすぐにこの私が癒してあげる必要がありますね。ふむ、どうすれば兄さんを救ってあげることができるでしょうか? 兄さんを救うことができるのは私だけです、それは間違いありません。なぜかってですか? そんなこと簡単です、この世で兄さんを真に理解しているのは私だけだからです。それは間違いありません。何しろ私は、ずっと、ずっと、ずーっと兄さんだけを見つめてきたのですから。であれば、兄さんを私だけに依存するように躾をすればいいのではないでしょうか? 食事も着替えもお風呂も全て私が世話をしてあげ私抜きでは生きられないようにしてはいかがでしょうか。そして今のように欲求不満になればそれも私が解消してあげればいい。少し恥ずかしいですが、兄さんの為なら全力で頑張ります。兄さんを真に理解している私が兄さんのすべてを管理すれば兄さんの負担もなくなるはずです。……あぁ、素晴らしいですねそれは。その生活を想像しただけで軽く逝ってしまいました。と、いけません、妄想でかなり脱線してしまいましたね。まずは現状を把握することが先決でしょう。その為には今すぐ目の前のふざけた行為をやめさせ兄さんから事情を聴きださなければいけません。しかし、兄さんのファーストキスを奪ったことは許せませんね。どうしてくれましょうかこの女は? ふふ、まあいいです。とりあえずは……

 

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