朝起きるとなぜか涙を流していることがある。
そんなのあくびのせいだろと思うかもしれないがそうではない。
いや、意識していないだけで実際はそうなのかもしれない。
俺自身どうせあくびのせいだろうといって気にしたことはあまりなかったが
最近、やはりあくびではない気がしてきた。
なら何なんだろうか
いや、だからあくびではなく。
朝起きて涙が流れている、ここに当てはまる理由は『夢』なのだろう。
そうdreamだ。夢の国なんかの夢ではなく、寝ている間に見る夢。
夢を見る条件だの催眠の種類だの難しいことは俺にはわからないけど、
それしか考えられないのだ。
だがその夢の内容なんか覚えていないのだ
生まれて16年夢なんか見ていない。
覚えていないだけで本当は見ているのかもしれない。
有名な赤い門の大学に受かるとか絶対現実ではありえないような夢かもしれないし
地球が滅亡するとかぶっ飛んだ夢かもしれない。
彼女ができてしまうとか大変ありがたい妄想のような夢かもしれないし
街で出会っためっちゃタイプな女の子とあんなことやこんなことをしてしまう嬉しい夢とか…
いろんな考えがあるが涙を流しているんだからそれはそれで知りたくない夢なのかもな…
「おにいちゃーんおきてるー?遅刻しちゃうよぉー」
ドアを少しあけて覗き込む少女の声で我に返る
「あぁ、起きてるありがとう。」
「朝ごはんできてるからはやく降りてきてねー」
タッタッタとリズムよくポニーテールを揺らしながら階段を下りていく少女は俺の妹の『真希(まき)』である
中学2年生には見えない身長だが、いまどきの中学生のなかではかなりしっかりしている妹だ。
ベッドから起き、身支度に取り掛かる
「あれ…?」
鞄の中に見覚えのない古ぼけた本が入っていた。
「真希のか?まぁいいか…」
荷物をそろえ部屋を出て一階に降りようとするとき俺の隣の部屋のドアが少し開いていた。
「凛ー?起きてんのか?」
ベットの上で眠そうに唸る少女は俺の1つ下の妹、凛(りん)である。
「んー…おにいちゃんおはよぉ…」
「うん、おはよう。早くしないと真希怒るぞ」
「えー…真希ちゃん怖いからいやだぁ…起きるー…」
「先下行ってるからな」
そう残して凛の部屋を出る。
えー待ってよー…と凛の困った声と物が倒れる音が聞こえたが聞こえなかったことにしよう。
階段を降りてリビングへのドアを開けるとふわっとコーヒーとトーストのにおいが俺を迎えてくれた
「お兄ちゃん、凛ねぇは?」
「一応起きてたぞ。そのうち降りてくるだろ」
まだ上の階からは物音がするが…
「凛ねぇには悪いけど先食べちゃお?冷めちゃうし。」
「そうだな、いただきます。」
「いただきまーす」
トーストにサラダにフルーツなどのバランスも考えてるであろう朝食を3人分,手作り弁当を3人分毎日文句も言わずに作ってくれてるのは真希である。
俺たちの両親は3年前に事故死で二人とも他界.そのときから3人で家事をこなしているが
凛ねぇは危なっかしいからといって真希は食事の準備をしてくれている。
「真希ちゃんおはよぉー」
「凛ねぇおはよ」
凛はスポーツ万能なんだがドジですぐ転ぶ。のんびりしててみてて癒されるんだが…反面見ていて怖い。
「お兄ちゃんも凛ねぇも早くしないとおくれるよ?」
真希はもう食器を片付けていた
「えーっ真希ちゃん待ってよぉー」
「凛ねぇはもう高校生なんだからお兄ちゃんと行けばいいでしょ?」
「あ…そっかぁ」
「でももう俺そろそろいくぞ?ごちそうさま。」
「え?!お兄ちゃんーっ」
凛はトーストを口に詰め込みもふもふ言いながら食器を片付け、ばたばたと走りまわる。
そして凛が支度を済ますと2人で家を出る。
一番に支度が済む真希はなんだかんだ言って玄関で待っていた。
家から一番近いバス停まで4分ほど3人で会話をしながらいつも歩く
「こんな建物あったか?」
住宅街のはずれにある落ち着いたカフェ…だろうか?
「なんか先週オープンしたらしいよーケーキがおいしいんだってー♪ねぇ真希ちゃん今日行こうよー!」
凛と真希は楽しそうにお互いの予定を確かめあう
「女ってケーキとか好きだよな」
「だっておいしいもん。ねぇ?凛ねぇ」
「うんっ!」
「まぁ帰り遅くなんなよ?」
「「はぁーい♪」」
バス停に着くと真希は一人で中学校へと向かっていく
凛とバスに乗り高校につくと凛は友達のとこへ走っていった。
「よぉ藤崎」
「おっす中野」
クラスメイトの中野祐樹(なかのゆうき)勉強ができ、噂話が好きなやつである
「そーいえばさ知ってるか?藤崎」
あー…また噂話か。こいつは噂話をするとき決まってこう言うのだ。
「おまえんとこの近所の新しいカフェのうわさ」
「近所の?」
今朝のあのカフェだろうか。
「あぁ、先週オープンした『cafe dream』って店なんだけどさ早速面白い噂が立っているんだ」
「って言っても普通のカフェじゃないのか?噂って言ってもたいしたことないだろ。」
そんなことを言いながらも教室に着く。自分の席に着くと前の席である中野はくるりとこちらを向き
「えー藤崎くぅーん…つーめーたーぁいー」
「やめてくれ気持ち悪い。で?続きは?」
「珍しく乗り気だな」
「そうか?」
そりゃそうだろう。そのカフェにどんな噂があるのか知らないけど可愛い大切な妹たちは今日行くんだぞ
「で…その噂なんだけどさ…」
「おっはよー!!和輝(かずき)くんっ祐樹くんっ」
隣の席の空気を読まない女、星坂美波(ほしざかみなみ)である。中野の話が気になるのに…
ついでに和輝というのは俺のことだ。藤崎和輝(ふじさきかずき)よろしく。
「おはよ星坂、でね藤崎、その噂なんだけどちょっと奇妙でだね?」
「奇妙?どうゆうことだ?」
「えーっ!!待ってよ二人ともぉ…みなみを仲間はずれにしないでーっ!!」
「うっさい星坂。中野続きはやく」
「もーっ!和輝ってばぁー」
チャイムが鳴り美波はいじけながら席に戻っていった。
俺はその奇妙な噂というのを3時間もの間お預け食らうことになった。
授業には集中できるわけもなく、ただ時間が過ぎるのを待つしかなかった。中野は休憩時間もひたすら自習をするといったまじめ君なのだ。
そして4校時目が終わるチャイムと共に中野を引っ張りだす
階段を駆け上がり屋上に出る
「そんな急かすなよ藤崎。」
「悪い…とにかく続きをはやく頼む。」
「あぁわかった。」
中野の話をまとめるとこうだ。
・cafe dreamは先週開店したカフェ
・ケーキなどをはじめとし、女性客がターゲット
「で…最後がだな…」
俺はなぜか身震いしてしまった。中野の目が変わったような気がしたからだ。
「一部の女の子の客が帰ってこないんだ。」
「え?それってあれ?なんか店主がやましいことしてんじゃねぇの?」
「違うんだって…その店に行くと必ずこう聞かれるんだ『あなたが見た夢はどんな色ですか?』って」
「夢の色…?なんだそれ」
「俺もわかんねぇんだけどさその質問に答えられない子だけが戻ってこないんだ。その子たちの行方はわからない、あくまでもそんな噂さ」
あいつらがどう答えるかはわからないけどでも心配でならなかった。
中野を置いていき1年の教室の階まで走るが…
「1年午前で終わりじゃねか…」
そしてまたチャイムが鳴り響き教室へと歩き出す。
どうしてもさっきの中野の『あくまでもそんな噂さ』というのが引っかかる。
絶対あいつは何か知っている。根拠はないけどそんな気がするんだ。
「精々がんばってくれよ、藤崎」