高校1年生である凛は午前中に授業が終わっていたようで、中学3年生である真希からは始業式だけだから早く帰るね。と伝えられていたので、
もう家についている頃なのだろう。
どうにかして連絡が取れれば…携帯電話はなぜか今朝は十分に充電されていたはずにもかかわらず、気がついたらバッテリーは0になっていた。
俺たち2年生はこのあと2時間の授業がある。
妹たちの身に何かあったらと思うと、今にでも学校を抜け出したいところなのだが…
皆さんの学校にもいるんじゃないでしょうか、生徒指導のめちゃくちゃ怖い体育会系教師が。
最低な兄でごめん、可愛い妹たちよ…
チャイムが鳴り教師が入ってきて授業が始まった。
もちろん授業には集中できなかった。
あのカフェに何があるのか、妹たちは無事だろうか、そして…中野はどこまで知っていて何を隠しているのか。
前の席の中野は教師の話を真剣に聞いている。
そんな中野になにか裏があるなんて考えられない。きっとただの噂なんだ、大丈夫だろう。
そう自分に言い聞かせ、机に伏せた。
どうかあいつらが無事でありますように…
「かぁーずぅーきぃーくぅーんっ!!!(バコッ)」
頭上からの声と同時に、頭に鈍い痛みを感じる。
「んだよ星坂…」
「何だよとは冷たいなぁ…もう放課後だよ?」
星坂にそういわれ時計を見ると15時半、確かに授業は終了し教室に残っている生徒はあまりいなかった。
「はやく帰ろっ?祐樹くんも下で待っていてくれてるみたいだし。」
「わるい、ありがとう星坂」
俺は荷物をまとめると2人で教室を出た。
星坂は機嫌がいいのかわからないが、鼻歌を歌いながら俺の前をのんびり歩く。
俺と星坂は小学生のときからの幼馴染で、一緒に帰ることは多かった。
「あっ!祐樹くーんっ」
星坂は中野を見つけると笑顔で手をブンブン振った。
その声に気がついた中野は読んでいた本を閉じ、こちらに歩いていた。
「おはよう藤崎、用があったから先に教室から出させてもらったよ。」
「あぁ…大丈夫だ。」
「ねーねーふたりともぉ~この後お暇?」
「僕は平気だよ。藤崎は?」
妹たちのことが気になる俺としては今すぐ帰りたいんだが…
せっかくの誘いを断るのも申し訳ないので
「暇だとしたら、どこいくんだ?」
と聞いてみた。
「んー…あっ!そーいえばあたし行ってみたいお店があるんだよね」
「星坂のことだからゲーセンだろ?」
「ちがうよぉーっ!和輝君の家の近くにできたカフェに行ってみたいんだ~」
「星坂がカフェに興味持つなんて珍しいね」
「えぇっひどいなぁっ…私だって女の子だもーんっ」
カフェに行ったら凛たちに会えるだろうからいいか…時間的にもまだいるだろうから。
「わかった。ただし中野のおごりな?」
「冗談きついぜ藤崎。」
「冗談じゃないんだなぁ…」
「え?」
「やった~祐樹君のおごりぃっ♪」
「まじかよ…そんな食べんなよ?」
「はぁーいっ!あたしケーキと…タルトと…えへへぇ何個でもいけるよっ!」
「頼むから1000円以内に納めてくれ。」
そんな会話交わしながらも問題の『cafe dream』についてしまった。
「うわぁ…結構混んでるねぇ…」
広めの店内には学生をはじめとした若い客で大変にぎわっていた。
落ち着いたおしゃれな内装で、確かに女性客が好みそうだ。一人で感心していた。
「いらっしゃいませ、cafe dreamにようこそ。3名様でよろしいですか?」
キッチンのほうから店員と思われるメガネをかけた長身の男性が尋ねてきた。
「はい、席あいてますか?」
「大丈夫ですよ、こちらへどうぞ。」
席に案内される途中、凛と真希を探してみたが広い店内にそれらしい人物はいなかった。
「こちらの席でよろしいでしょうか?」
通されたのは奥側の席で、心地よく暖かい席だった。
「どうぞ夢のような時間をごゆっくりお過ごしください。」
店員が去ると星坂はうれしそうにメニューを見始めた。
「和輝君は何にするのー?」
「俺はコーヒーだけでいいや、中野は?」
「んー…紅茶とチョコレートパフェで。」
「あいかわらず甘ったるいの好きだな。」
俺は甘いものが苦手だ。昔は好きだったんだが、かっこつけてブラックコーヒーばかり飲むうちに、甘いものが全く食べれなくなっていた。
対して中野は甘いものが大好きで、学校でも甘そうな菓子パンばかり食べている。
「ならもう注文しちゃうねぇー♪ポチっとなっ」
星坂は楽しそうにオーダーボタンを押した。
ほんと女子は気楽だな、と苦笑してしまう。
「ご注文でしょうか?」
「はいーえっと…コーヒーひとつと、紅茶ふたつと、チョコレートパフェ2つと、ミニストロベリーパフェひとつと、ミルフィーユひとつお願いしますっ!」
こいつは一人でどれだけ食うんだ…
「はい、ありがとうございます。コーヒーがおひとつ、紅茶がおふたつ、チョコレートパフェがおふたつ、ミニストロベリーパフェがおひとつ、ミルフィーユがおひとつですね。
少々お待ちください。失礼します。」
こんだけ頼んでも星坂は食べても太らない体質だからといって、笑顔でいつも間食するのだ。
「おい星坂、これ…ほんとに1000円なのか?」
「うんっ大丈夫だよー」
ふたりは楽しそうに話している、そりゃそうだ恋人同士なんだから。
前々から俺は邪魔じゃないのかと思っているのだが、ふたりは気にせず接してくれている。
でも…二人の時間も作ってやりたいと思うのが俺なのだ。
「俺トイレ行ってくるわ」
「はぁーい」
俺は席を立ち店の奥にあるトイレに向かう。
途中凛達を探したのだがやはり見つからない。もう家に着いたのかと思い少し安心した。
用を足し席へ戻る途中ある扉が目に入る。
木でできたドアはわずかに開いていて、ドアの向こうからはどこか聞き覚えのある声と男が言い争っていた。
わずかな隙間だけでは中の様子が伺いにくいのでほんの少しドアを開けた。
「おやおや…覗きと立ち聞きはだめですよ?」
背後には先ほどの店員が立っていた
「すいません…」
「悪気があったわけではないのでしょう。大丈夫ですよ。」
店員が微笑むとそのドアの向こうから、ガラスが割れるような物音が響いた
「やめてっ!!誰か助けてっ…おにいちゃんっ!!!」
ドアの向こうからは女の子の声が聞こえたがあれは…
「真希っ!!!!!」
考えるより早く体は動いていてドアを開けていた。
「お兄ちゃんっ!凛ねぇがっ!!」
「凛?!」
部屋の真ん中には凛が倒れていた
「あら…みられてしまいましたか…仕方がありませんね。」
部屋の中には先ほどの店員がいて、背後にも同じ顔の店員がいる。
「クソっ…どうなってるんだよっ!!」
俺はそう吐き捨てると凛の元へ駆け寄る。
パンッ!!!
あと凛まで数歩のところで、脚に激痛が走り倒れこんでしまう。
「おにいちゃんっ!!!」
脚を撃たれたのだ。
「クソ…凛になにをした…」
俺は店員を睨みつけると店員は、俺に向けていた銃口を真希に向けた。
「ひっ…」
「真希っ!!!」
「まぁそんな騒がないでくださいよ、あなたが何もなければ私共は何もしません。」
店員は俺達をあざ笑うように見下す。
「さぁ、あなたたちの命を懸けたクイズです。」
背後にいた店員が、俺の頭に銃口を押し付ける。
「あなたの夢は、何色ですか?」