バーダックとベジータ王の幼馴染として転生した!   作:リーグロード

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プロローグから死にかけます

 突然だが、俺はバトル漫画が好きだ。

 破茶滅茶な忍術(ナルト)バトルも好きだし、能力者対決(ワンピース)のバトルも好きだし、食を巡る狩人(トリコ)のバトルや実践的とファンタジー(バキ)が混じったバトルも大好きだ。

 

 その中でも特に好きなのは超次元的バトルを繰り広げるドラゴンボールという漫画が超超超大好きなんだ!!! 

 ずっと昔からあんな凄まじいバトルがしてみたいと幼い頃から体を鍛え武術を身につけることに躍起になっていた。

 けれど現実は厳しく、当然だがそんな生活を送っていても決して漫画のような動きは決して出来ないということは幼い頃から理解していた。

 それでも諦め切れずに努力を続けても限界は訪れる。

 叶わない夢に手を伸ばし続けることの愚かしさや苦痛に負けて中学の頃には武の道から足を遠ざけた。当時の大人たちは勿体無いと説得してきたが、俺にはそんなこと関係なかった。

 

 俺が本当に欲しいのは名誉でも金でもベルトでもない。日常では得られない非日常の戦闘なのだから。

 

 そうやって何も出来ない現実に絶望して20年以上の時が過ぎた。既に武の腕は錆びついたが、体だけは習慣と理想に近い為に維持し続けている。

 そんな何気ない日常を怠惰に謳歌していると、1つのチャンスが舞い降りた。

 

 ある日突然死んでしまったのだ。死因は覚えていないが、酷く体が痛むことだけは覚えている。全身がバットや鉄パイプで叩かれているような酷い激痛だった。

 だが、不思議と俺はそのことに高揚してしまったのだ。あらかじめ言っておくが俺は決してMではない。痛みを快楽と捉えるような変態では決して違う。

 

 俺はこの日常では味わえない痛みが非日常なのだと思うと、何故か不思議と興奮してしまったのだ。この20年以上生きてきて初めてともいえる非日常に感動してしまったと言ってもいい。

 そんな俺の感動をよそに意識は段々と薄れていき、興奮も冷めやまぬうちに気を失ってしまった。

 その後気が付いた俺がいたのは病院でもなく、ましてや日本でもなかった。

 

 そこは培養液というのかな? そんな緑色っぽい水の中に入れさせられていた。不思議とここが何処で俺が今どういう状態なのかは理解できた。

 ここは日本どころか地球ですらなかった。ここは俺が憧れていた男の故郷である星……惑星ベジータだった。

 そして、俺はそこで生まれた純潔のサイヤ人。この状況を理解出来ているのも育成マシーンの中で睡眠学習というのかな? それのおかげなんだろう。

 

 俺はエリートの家系の生まれだ。生まれてすぐさま惑星侵略には送られず、ひとまずある程度成長するまで育てられるようだ。

 ちなみに、俺の戦闘力は生まれながらにして100越えのエリート戦士だ。

 

 ♦♦♦

 

 俺が生まれて12年が経った。既に俺の戦闘力は5000越えとなり、下級戦士では相手にならない強さだし、中級戦士でも経験の少ない奴程度では傷を負うこともない。

 なにせ、サイヤ人は基本的に自身の身体能力頼りの不良のような戦い方をする奴が多い。

 だから、相手を倒すという目的で作られた武術に滅茶苦茶弱い。

 そんな奴らの中でも例外はいる。

 

「「おい! リュウキ俺と勝負だ!!!」」

 

「またお前らかよ……」

 

 こいつらがその例外、サイヤ人ながら身体能力だけじゃなく持って生まれた戦闘センスともいえる直感で戦う天才共だ。

 

「ベジータにバーダックも懲りねぇな。まあ、いいぜ! 俺も丁度退屈していたとこだ。相手してやるよ」

 

 この世界の主人公である孫悟空の父であるバーダックとそのライバルであるベジータの父であるベジータ王は俺の同期で、3人互いに良きライバルという関係を築いていた。

 ベジータはまだ王位を継いでいないので王子なのだが呼び捨てで構わないと言われているので、俺とバーダックは普通にベジータと呼んでいる。

 

「なら俺様から先にいこう。バーダックお前は下がってろ!」

 

「はぁ!? 何言ってやがる。リュウキを先に見つけたのは俺だ! まずは俺が先に相手をする!」

 

 この中では俺が1番強くて、バーダックとベジータはお互い勝ったり負けたりの戦績が続いており、最初はベジータが勝ち越していたが、下級戦士であるバーダックは惑星侵略を繰り返し戦闘経験を重ねていくごとに、ベジータに追いついて互角のレベルまで成長した。

 

 そうやって、俺が回想に入っているとバーダックとベジータが口喧嘩からどっちが先に戦うかの殴り合いが始まった。

 

「「うりゃりゃりゃ!!!」」

 

 いつの間にか、勝手に2人で戦っているバーダックとベジータにはぁ~と溜息をついて気弾を放つ。

 

「うぉ!?」

 

「なっ!?」

 

 突如乱入してきた気弾に驚きの声を上げながらも、しっかりと回避する2人は俺を睨み上げる。

 

「何しやがるんだよリュウキ!」

 

「そうだ、貴様何故邪魔をした!?」

 

「そりゃ、お前らが俺を誘ったくせに勝手に戦い始めたからだろ?」

 

「なら少し待ってろ。今すぐこの王子をぶっ倒して相手してやっからよ」

 

「何を言ってやがる! ぶっ倒されるのは貴様だバーダック!」

 

 互いに売り言葉に買い言葉で視線でバチバチと火花を散らす。完全に悟空とベジータの関係だなと内心笑いながら2人を見つめる。

 けど、悪いがお前らじゃ1対1の対決は無理だ。

 

「まどろっこしいから2人纏めてかかってこい! 同時に相手してやるぜ!」

 

 俺の挑発にカチン! ときた2人は、睨み合いを辞めてこっちに向き直る。

 

「へっ、一度吐いた唾は吞みこめねぇぜ!」

 

「上等だ。今の言葉を後悔させてやる!」

 

 もう既に()る気満々(誤字ではない)の2人に自然と笑みが零れる。この世界に生まれ落ちて早12年の月日が経つが、このピリピリとした戦う前の空気が非常に好きだ。

 前世では味わえなかった高揚感に浸りながら、2人の動きを待つ。

 

 やがて、俺とバーダックとベジータの気の静かな激突に耐えられずに岩山の一部がガラ! と音をたてて崩れ落ちる。

 それを合図にバーダックとベジータが動き出した。そのスピードは初速でありながらスポーツカーの最高速度を優に超えており、常人なら認識すらできずに終わっているだろう。

 だが、俺はサイヤ人の中でも最上位の強さを持つ。その程度の動きに反応できないはずもなく、軽く2人の拳を受け止める。

 

「ほう、前に戦った時よりも2人共スピードが上がったな」

 

「へへ、スピードだけじゃねぇさ」

 

「貴様を倒すためにこっちもただのんびりと過ごしてきたわけじゃないということを教えてやる!」

 

 そのまま超至近距離でドラゴンボール特有の高速戦闘が始まった。右手でバーダックを、左手でベジータの攻撃を捌いていく。時折捌ききれずに攻撃を通してしまうこともあるが、ギリなんとか回避に成功する。

 

「ほらほらどうした? さっきの言葉を撤回するなら今だぜ?」

 

「ほざけ! 2人がかりでまだ一発も攻撃を喰らわせてねぇくせに、調子に乗ってんじゃねぇよ!」

 

「なら、まずこの俺様が先に攻撃を喰らわせてやる!」

 

 唐突にベジータが接近戦をやめて離れ、両手に気を集中させる。

 

「くらいやがれぇ!!!」

 

 俺の近くにバーダックがいるのもお構いなしに、エネルギー砲を放ってきやがった。俺は咄嗟に空いた左手でバーダックを掴みエネルギー砲目掛けて放り投げる。

 

 

「なっ!? ちっくしょうがぁ!!!」

 

 いきなりのことに驚きもしたが、流石はバーダック。迫りくるベジータのエネルギー砲を両手で防ぎ、上空へとエネルギー砲を跳ね返す。

 

「ぜぇはぁぜぇはぁ……」

 

「貴様バーダック! なに邪魔しやがる!」

 

「それはこっちの台詞だ! 俺の邪魔をすんじゃねぇ!!!」

 

 ベジータのエネルギー砲を跳ね返すという予想外の事態に力を使ったバーダックは肩で息をしながら、怒鳴り散らしてきたベジータに怒鳴り返す。

 

 なにバカやってんだか……。思わず笑ってしまいそうになるが、そこはグッと我慢して戦闘に集中する。

 

「ぶっ……、て、テメェらぶふっ! な、なにバカやってんだ……」

 

「クソ笑ってんじゃねぇよリュウキ!」

 

「手で口を押えやがって、それで誤魔化したつもりか!」

 

 駄目だ。完全にばれてしまっている。さ、流石はサイヤ人だぜ。この俺の完璧ともいえる必死の演技を即座に見破るとは!? 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ! すぅ~はぁ~すぅ~はぁ~。よし、OKだ!」

 

「「ふざけんのもいい加減にしろ!!?」」

 

 息ぴったしとかお前ら仲いいな。

 

「ふざけんのもいい加減にしろって、お前らがバトル中にコントを始めるのが悪いんだろうが!」

 

「「誰もコイツとコントなんぞするか!?」」

 

 互いに指さして一言一句同じタイミングで言ってるし、やっぱお前ら仲いいだろ!? 

 

「あ~、分かった分かった。お前らはコントはしていない。これでいいな?」

 

「ちっ、相変わらずの性格だぜちくしょう!」

 

「そのふざけた口を今に叩けなくしてやるぜ!」

 

 バーダックもベジータも互いに殺意を高めてコッチに向かってくる。さて、俺もそろそろ体があたたまってきた。コッチからも攻撃を開始するか! 

 

「「「はああああぁぁぁ!!!!」」」

 

 戦いの舞台を地上から空中に移動し、目にも止まらない超スピードによる戦闘音がその場に鳴り響く。

 現れては消え現れては消えを繰り返し、パンチやキックや気弾のオンパレードだ。

 

 未だ3人致命的な一撃は一切貰っていないものの、現状ではバーダックが俺の攻撃とベジータのグミ撃ちによる巻き込まれでダメージ量が一番多く、次にベジータがバーダックのお返しとそれと同時に喰らわせる俺の気弾によりダメージを負っている。

 

 勿論、俺はかすり傷しか受けていない。互いに邪魔し合って同士討ちを始めても、大きな隙は作らないし、片方が狙われればもう片方が背後を狙い撃ちする為、なかなか決着がつかないのだ。

 

「「うおおぉぉぉぉ!!!」」

 

 左右から挟み込むように同時に殴りかかってくる。それを俺は避けることはせず両手を出して、左右から迫ってくる拳ではなく腕を掴み、独楽のように勢いを殺すことなく受け流すことで互いの拳を相手の顔面に命中させる。

 そう、さながら映画ワンピースのスタンピードで登場したバレッドがルフィとキッドの攻撃を相打ちにさせた動きだ。

 

「「ぐおぉおぉぉぉ!!!」」

 

 お互い殴られた場所を手でおさえ、悲鳴のような苦しい声を絞り出す。

 

「だから邪魔すんなって言ってんだろうがベジータ!!!」

 

「だからそれはコッチの台詞だバーダック!!!」

 

 再び俺を忘れて勝手に喧嘩を始める2人。

 さすがに二度目だし、もう笑わないが、……お前ら隙だらけなの分かってる? 

 

「はぁっ!!!」

 

「「っ!!?」」

 

 案の定俺の気弾に一瞬反応が遅れてモロに喰らいやがった。気弾が当たって爆発した勢いで2人は地面に叩きつけられる。

 一応死なない程度に威力は抑えたが、これでもうお終いか? 

 

 地面に横たわる2人をじっくり観察していると、ゆっくりと2人同時に起き上がる。

 

「おいベジータ。もういがみ合いは無しにしようぜ」

 

「……気に食わんがしょうがない。一時だけだが手を組んでやる。精々足を引っ張んなよ!」

 

 何か喋っていたようだが、遠すぎてよく聞き取れなかった。

 

 だけど──

 

「どうやらガチの本気でかからないとヤバそうだ!」

 

 これから始まる素晴らしい戦いを予感して、自然と口元から笑みがこぼれ落ちる。

 

 両手に気を集めていつでも迎撃出来るように構える。地面に立っているバーダックとベジータも互いに気を高めあってる。

 

「いくぞバーダック!!! ベジータ!!!」

 

「「こい! リュウキィ!!!」」

 

 叫びながら突撃をかます3人は、空中でぶつかり合う。まず初撃は先に気弾を作っていた俺が貰った。

 とはいっても、牽制程度の為に威力は小さく避けられるだろうという思いで放った為にぶつかってもダメージは小さい。

 

 そんな俺の思惑を読み切ってか、真っ正面から避けもせず突っ込んできた2人に面食らった俺は防御が間に合わずに、腹に二発いいパンチを貰ってしまった。

 とはいえ、俺の戦闘力は2人よりも高いため、多少クリティカルヒットを受けたとしても問題はない。すぐさま2人の背中にグーを打ち込んで叩き落す。

 

「「ぐっ!?」」

 

 流石にこんなにすぐ反撃されるとは予想出来なかったのか、手の届かない無防備な背中に拳を叩き込まれ痛みに声を漏らすが、地面にぶつかる前にひらりと態勢を変えて着地する。

 その後すぐにその場から離脱する。すると、さっき着地した場所に轟音と共に豪快なクレーターが出来上がっていた。(この間僅か3秒弱)

 

 互いにくっついていても的になるだけだと理解する2人は、ここでバーダックとベジータが別々に動き出した。それぞれの得意分野を生かして戦いだした。

 接近戦が得意なバーダックが前に出て、遠距離戦法を得意とするベジータが援護に回ることにより、俺の動きは制限されて実力を出す余裕がなくなってきている。

 

 元より感の鋭いバーダックは、確実にこっちの攻めてほしくない場所を的確に狙い撃ちしてくる。ベジータは観の目が鋭く俺が逃げるまたは攻める場所を先回りで潰してくる。

 どちらも厄介だが、同時だと尚のこと手が出せない。このままだと捕えられるのも時間の問題だ。

 

 それでも、このまま黙ってやられっぱなしの俺じゃない。バーダックが攻撃を仕掛けてくるタイミングに合わせて、自身の気を爆発させてブースト移動でバーダックを気弾ごと吹っ飛ばす。

 

「ぐおぉ!? リュウキめ! 滅茶苦茶なやり方を選びやがって」

 

「テメェもたいがい似たような手段をよく取るくせによく言うぜ!」

 

 会話しながらもお互い攻める手は一切緩めずに気弾と肉弾戦の応酬が繰り広げられる。

 

「昔戦ったときはコテンパンにやられてたってのに、よくここまで成長したもんだなバーダック!」

 

「当たり前だ! テメェをぶっ倒す為にこちとらずっと争いに身を浸してたんだ。このぐらいやってやらぁ!」

 

 更に撃ち合いの激しさは増してゆく、もはや並みのサイヤ人程度では間に入っただけで消し炭にされるほどの過激さだ。

 だが、徐々に軍配はリュウキの方に傾き始めてきた。拳を交わすごとにバーダックの傷は増え、気弾をぶつけ合うごとに相殺しきれない威力がバーダックの方へと押し出される。

 もはや決着は時間の問題と思われた時、この流れを変える一石を投じる者が現れる。

 

「こっちの準備は完了だ! そこをどけぇバーダック!!!」

 

 いつの間に俺たちより上空に移動していたのか、ベジータが()()()()の状態で待ち伏せていた。

 

「よっしゃー! さっさとそれを撃ちやがれベジータ!!!」

 

 この事を知っていたバーダックはすぐさまこの場から離脱するが、俺は上空に移動したベジータに虚を突かれてしまい、その場から離れるのに僅かに出遅れてしまった。

 

「喰らえリュウキィ!!! ギャリック砲!!!!」

 

 極限にまで高められた気が紫色のオーラへと変わり、ベジータの手から極大のギャリック砲が俺目掛けて放たれる。

 だが、確かに虚を突かれてバーダックよりもその場を離れるのに出遅れてしまったが、ほんの僅かな時間だ。

 この俺がベジータの存在に気がつかない程離れた場所から撃たれるギャリック砲を避けることなぞ容易なことだ。

 

「へっ、虚を突くってのはいい作戦だけどな、奇襲すんなら声を出さずにやるべきだな!」

 

 俺は軽々とベジータのギャリック砲を避けると、先に逃げた筈のバーダックが目の前に現れる。

 

「だりゃ!」

 

「ぐおぉ!?」

 

 あの野郎!? 俺がさっき使って見せた自分の気を爆発させて移動するブースト移動をもう会得して使ってきやがった。ギャリック砲を避けたと思って油断しているところを一発貰っちまうとは、俺も流石にバーダックたちを甘く見過ぎてたか。

 

「バーダックだけに注意していいのかリュウキ?」

 

「なっ!?」

 

 なんと、避けたと思ったギャリック砲が下から迫ってきていた。

 まさか!? ベジータの奴め地面にギャリック砲が当たる直前に曲げてバーダックに殴り飛ばされた俺へと方向転換させたのか! 

 

「ぐっ! うおおぉぉぉぉ!!!!」

 

 真下から迫るギャリック砲に直撃した俺は必死に抑え込もうとするが、ベジータが全力で力を溜めて放ったギャリック砲を咄嗟の態勢で受け止めただけの今の状態ではどうすることもできず、そのまま下から突き上げられて天高く吹き飛ばされていく。

 

「ふっ、この俺の全力のギャリック砲を喰らっては、さしものリュウキも無事では済むまい」

 

「なに言ってやがる。あいつの注意を逸らしたのは俺だぞ! なにお前1人だけの手柄みたいに言ってやがる」

 

 互いに軽口を叩きながら談笑しているが、その纏う雰囲気は未だ戦場で戦う戦士のそれであった。

 2人共理解しているのであろう。あの程度でリュウキが終わるはずがないと、これはあくまで模擬戦のようなものだが、サイヤ人の模擬戦は殺し合いに近いものが多々ある。

 多少の怪我や疲労で終わるような生ぬるい戦いは決してしない。特に、サイヤ人の中でも上から数えた方が早い実力者の場合はそうだ。

 

 

 ベジータのギャリック砲を喰らって遥か上空まで吹き飛んだリュウキは両手に気を集中させ横に弾かれるように避けることで、なんとか飲み込まれる前に脱出することに成功する。

 

「はぁはぁ……、危なかった。まさか、バーダックとベジータのコンビがここまで連携してくるのは予想外だった。一歩間違えてたら死んでいたぞ今のは……。けど、俺が望んでいたバトルってのはこういうのなんだよな。血沸き肉躍る生死問わずの死闘こそが俺を熱くさせる!」

 

 死を感じたことで生存本能と戦闘本能が刺激された俺は、更に気を爆発的に高める。

 

「待っていろ!!! ベジータ! バーダック! 本番はここからだ!!!」

 

 真下にいるであろうベジータとバーダックに向けて大声で叫びながら突撃していく。既に俺の中に組み手だとか模擬戦といった考えは抜けていた。

 ただこの戦いを心ゆくまで楽しみたい。そういった子供じみた考えのみが俺の頭を支配している。

 

「コッチに向かって来たぞ! ベジータ!!!」

 

「言われんでも分かっている。貴様も油断してやられるなよ!」

 

 空から迫ってくるリュウキを確認した2人は気を全開にして迎え撃つ構えを見せる。

 

「うおおぉぉぉぉ!!! バーダック! ベジータ!」

 

「「かかってきやがれリュウキ!!!」」

 

 そこから先は激闘に次ぐ激闘だった。既に何度訪れた限界を突破したか分からなくなるぐらいに3人はこの戦いで強くなった。戦闘力は上がったというよりも、跳ね上がったといった表現の方が正しいくらいに伸び、無事に全員メディカルマシーンのお世話になることが決定した。

 

 

 ♦♦♦

 

 ピーという甲高い機械音が部屋の中に響き渡り、次にゴボゴボッ! という水の抜ける音が聞こえてくる。その後ガコンッ! と何かが開く音がした。

 

「……。ここは?」

 

「お! ようやく起きたかバーダック」

 

「ん? なんだトーマか」

 

 目を覚まして状況が把握出来ていないバーダックに声をかけてきたのは仕事でよくチームを組む同い年のトーマだった。

 どうやら俺はメディカルマシーンで先程まで治療を受けていたようだ。

 

「なんだとはひどい言い草だな。お前が目覚めるまで待っててやったていうのに」

 

「そんなこと別に頼んじゃねぇよ。余計なお世話だ」

 

「へいへい、相変わらずだな。一度死にかけたってのに、まるで変わらねぇな」

 

「あ……? 死にかけたって俺がか?」

 

 未だ状況が把握出来ていないバーダックにトーマは懇切丁寧に説明してくれた。

 

 どうやら、あの後俺たちは死ぬ一歩手前までずっと戦い続けていたそうだ。戦場となった場所は既に使い物にならないくらいにボロボロになっており、いたるところにクレーターやエネルギー砲で削られた跡が残っているようだ。

 そんな場所に同じかそれ以上にボロボロとなったリュウキ、ベジータ、バーダックの3人が仲良く転がっており、全員あの世まで秒読み段階だったそうだ。

 

 とはいえ、そんなこと言われてもまるで覚えていない。あの時はリュウキしか視界に入っていなかったし、一体いつあのバトルが終わったのか俺自身定かではない。

 だが、一つ確実に覚えていることがある。それは楽しかった。ワクワクしたと言い換えてもいい。惑星侵略では決して得られない高揚感。他の同じサイヤ人と戦っても味わえない死と隣り合わせの緊張感。

 そんな麻薬のようなバトルの決着が勝ったのか負けたのか分からないままに終わってしまった。

 

 それが不完全燃焼気味にバーダックの心をイラつかせる。

 それを察しているのか、察していないのかトーマは話を先に進める。

 

「んで、回収されたお前はそこのメディカルマシーンで眠ってたって訳だ」

 

「そうか、ところでリュウキとベジータの奴はどうなった?」

 

「さあな? 少なくともお前が無事目覚めたってことは大丈夫だろ。あっちはエリート様と王族様だぜ。最新式のメディカルマシーンで傷を癒してるだろうぜ」

 

まあそりゃそうだろうな。俺みたいな最下級戦士と違ってあっちは王族とエリートだからな。死なれたら困るどころじゃねぇし、必ず生きているだろう。

まあ、そんなの関係なくあいつらが死ぬなんて考えられねぇけどな。

 

「あ、そうだ!お前にいい事を2つ教えてやろうか?」

 

「いいこと?」

 

「ああ、聞けば驚くぜ~!」

 

「もったいぶらずにさっさと言え」

 

「へいへい、んじゃまず1つ目はお前の戦闘力だ」

 

「俺の戦闘力?それがどうしたんだ」

 

「まあ聞け、いいか。今のお前の戦闘力はざっと8700だ」

 

…?一瞬何を言われたのか理解できなかった。

 

「お前何ふざけたこと言ってんだ。くだらねぇ冗談言ってとぶっ飛ばすぞ!」

 

「待て待て!冗談じゃねぇよ。信じられねぇかもしれねが、今のお前の戦闘力は立派なエリート並みの数値になってるぜ」

 

そう言われても起きたばかりの現状じゃそこまで変わったのか実感できはしなかった。

 

「それにしても、同じ下級戦士だったお前がエリート様と同じくらいの強さになっちまうとはな。なんか遠くへ行かれた気分だぜ」

 

「けっ、ならお前もリュウキに喧嘩を売ればいいじゃねぇか。上手くいけば俺みたいに強くなれるぜ」

 

「バ~カ!あんな化け物に喧嘩を売れんのはお前や王子くらいしかいねぇよ!お前ら(ちまた)でなんて言われれてるか知ってるか?化け物3人組だぞ。俺も遠巻きにお前らの戦闘を見てたけど、あんなの命がいくつあっても足りねよ」

 

そういって無理無理と首を振って拒否された。

それにしても、俺らのことを化け物3人組か…。悪くねぇな。

ベジータはともかく、リュウキとは実力差が開いちまって遠い存在だが、こうして3人一括りにされるのは気分が良い。

 

「それで、もう一ついいことがあるって言ってたな。一体何だ?」

 

「おう、なんと今度の惑星侵略でお前と王子とリュウキがチームを組むことが決定したそうだぜ!」

 

「っ何!?それは本当か!?」

 

先程よりも驚いた声を上げるバーダック。同じチームメイトとして一緒に仕事していた俺としては嫉妬しちまうな。

 

「そんなに嬉しいものか?お前ら3人が出動を命じられるってことは相当危険な星だろ?」

 

「それはそれで面白れぇじゃねぇか。強い奴らと戦うことに喜びを見出すのがサイヤ人だろ?それに、一番嬉しいのはリュウキに勝てるかもしれねぇからだ」

 

「リュウキに?」

 

「ああ、あいつはエリート様だからな。俺たち下級戦士よりも出動の命令は少ない。だったら、3人の中で一番数をこなしている俺が勝つチャンスだ!」

 

「なるほどな、理解したよ。お前が相当な負けず嫌いだってことはな」

 

「ふん、何とでもほざいてろ!俺は次こそ勝ってみせるぞ。あのリュウキに!」

 

 

 こうして、既に齢10歳にして、並みの大人では敵わない強さを持つ化け物3人組と恐れられている俺たちは、初めて3人で侵略をすることが決定した。

 


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