歌が歌えないので2次元アイドルに歌わせたら3次元アイドルに絡まれた   作:ほりさか

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言い訳:1話前編で終わるつもりだったので、それから先のプロットをあまり煮詰めずに書いてました。
その為、御城常務の表現が過激になりすぎてました。すいません。
思った以上に反応が貰えたので、急いで続きを書きました。
念の為ですが、アンチ・ヘイトではありません。


1話 後編

---楽曲提供を依頼したい。

 

美城常務がこう言ってきたということは、346プロダクションとして正式な契約をすると同義だと容易に想像できる。

 

しかしだ。

 

契約を交わす際には、経験や知識が物を言うことを、前世で僕は痛いほど身に染みていた。

 

幾度となく上司に叱られ、残業させられ、頭を下げに各部署に走り回り……。やめよう。この話は不毛すぎる。

 

気を取り直して、彼女の依頼についてもっとよく考えなければならない。

 

と言うのも、僕がなぜヴォイスロイドをオリジナルで作成し、本来のクレジットを入れてまで楽曲を復元してアップしているかという事に触れるからだ。

 

前世では数千数万もの楽曲で、僕が、皆が心から救われたヴォーカロイドというジャンル。

 

実は今生でも同じ名前で商標登録されてあったのを見つけたからだ。

 

嬉しくなり調べた結果は、前世と違いガチガチに権利付けされてほぼ廃れて使用されている形跡はほとんどなかった。

 

ここでもホロリと涙が出そうになった事は言うまでもない。

 

なればこそ、前世でのあの勢いをこちらでも復活させるには同じことをすればいいと思い、作ったのがヴォイスロイドなのである。

 

ヴォーカロイドというジャンルが好きで好きで、本当に好きだからこそ皆に知って欲しい。

 

ただ、他人の力でお金を稼ぐ事に対してすごく罪悪感も持っているし、日々これでいいのかとも自身に問いかけている。

 

生活できないからと言えば嘘に聞こえるし、実際やろうと思えばバイトや仕事をしながらだってアップできるのだから。

 

しかし、そんな事をしていたら僕が知っている曲を全曲アップするまでどのくらいの時間が掛かるだろうか。

 

もちろん、346プロと契約したら個人でするより知名度、そして富や名声は今よりも加速するだろう。

 

しかしそれは契約内容によっては、本来の目的とズレてしまう事にも繋がるのではないか…。

 

最初から結論は分かっている。僕の出した答えは---。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

346プロダクションから帰宅して3日ほど経過した。

 

大きな希望と、ちょっとした不安と、後悔はエッセンス程度のやり場のない感情に振り回されながら僕はあの日の事をもう1度振り返る事にした。

 

事の始まりは、僕が1作目をアップ終えてから約3ヶ月後まで遡る。

 

アップした動画の再生数が少しずつだけど確実の伸び始めたので、2作目に取り掛かりスコアの目処が立った時のこと。

 

曲の紹介用として始めたSNSのアカウントに、多くのDMが届くようになっていた。

 

自分の設定漏れのせいでDMが公開状態になっていた事から、わりとリアルに支障が出るほど多く、取り急ぎDM表示の設定を非表示に切り替えその旨を告知。

 

複数の公式アカウントマークが見えた事から、放置はまずいだろうと数日掛けて処理を行った。

 

その結果、3件の大手プロダクションのオフィシャルアカウントから楽曲依頼メールが残ったのである。

 

勿論それら全てに、丁寧なお祈り返信を送ったのは言うまでもない。

 

当然だろう。

 

僕の目的は、2次元のアイドルを認知させ3次元のアイドルと同等の位置に持っていく事なのだから。

 

そしてなにより、生前耳にタコができるくらい聞いて覚えている曲は、たかだか数百曲あまり。

 

その数百曲だけなら、完コピできるのであって完全な無からの作詞作曲は僕自身できないのだ。

 

ネットなどの反応を見る限り、ヴォイスロイドは少しづつだけど世の中に受け入れられていっている。

 

後は、自分の持ちネタを全部だして著作権や特許を取得してから、ヴォイスロイドを触りたいという人に任せればいい。

 

そう思っていた時期が、僕にもありました。

 

この時きちんと気づけばよかったのだ。再生数が伸び始めたキッカケを作った人物について。

 

それは346プロを訪れる事になる1週間前。

 

僕は多くの作業に追われていた。

 

半年でなんとミリオン再生を突破した事から、動画サイトやSNSでのリプライを行いつつ以前アップした2曲の権利関係の申請を急遽行うことに決めた。

 

また自身が使用しているソフトの本格的な特許申請と、PV用のイラスト作成も時間を作ってやらなければならず。

 

それが一段落したら、最終チェックを終えた3曲目を動画配信サイトに予約投稿を行い、最後にSNSの更新をを行った所で一息つけた夜のこと。

 

不意に来客を告げる音が部屋に響いた。

 

誰だろうと思い玄関先まで足を運ぶと、そこにいたのは、小日向さんのご両親とパリっとしたスーツに身を包んだ身なりのよい背の高い男性だった。

 

神妙な顔の3人を玄関先に立たせておくのも忍びなく、部屋に招き入れて話を聞くことにした。

 

男性の名前は武内駿輔。346プロダクションのプロデューサーだった。

 

僕が案件を断ったプロダクションの人もでもある。

 

何故、そんな人が小日向夫妻と一緒にいるのか、訳が分からない。

 

「この度は誠に申し訳ありませんでした!」

 

その理由を考えていると、床に頭を擦り付けながら謝る3人の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人を落ち着かせて聞いた話を要約すると、アップからもうすぐで1年が経とうとする「ハジメテノオト」が半年で再生数ミリオンを叩き出したすごい動画ということが最初分からなかったらしい。

 

しかし色んなメディアにて話題となりすごいと認識した瞬間、我が子がその動画に関わっていた事に感情を爆発させた母親が、ついつい武内プロデューサーに暴露したというのだ。

 

ネットで話題になっているヴォイスロイドの事は知っていたので、驚きを隠せなかった武内プロデューサーだが調べている内に、あまりにも情報が出回っていない事に疑問を抱き、上司に報告する前に確認しようと小日向さんに話していた所を、運悪く他のアイドルに聞かれめでたく社内バレしてしまったらしい。

 

あまりにも酷いピタゴラスイッチに、思わず絶句してしまったが気持ちは分からなくもない。

 

両親からしたら、世間で話題になっている歌が自分の娘だって事を自慢したい気持ちになるだろう。

 

だけど話さないでねと口約束した以上、言わないのが……あっ……。

 

口約束だったのがマズかったなぁと、この時思い出したのだ。

 

法律上、口約束も有効になるのだが肝心の録音をしていない。昔の誼みで大丈夫と思った過去の自分を殴りたくなった。

 

武内プロデューサーも不用意な会話だったと謝ってきてくれている以上、全員に落ち度がありなんとも言えない気持ちになる。

 

しかし、落ち込んでもバレたものは仕方がない。

 

今回は勉強という事で、小日向家族とは改めて書類にてNDAを結ぶ事で決着がついた。

 

残る武内プロデューサーだが、最後に爆弾を抱えていた。

 

今回のお詫びも兼ねて東京に招待させて欲しいと言ってきたのだ。

 

いや、それ絶対に厄い案件じゃないですか…。正直、行きたくないです。がぶっちゃけた本音だ。

 

そう思い、正論を振りかざして断るも頑なに譲らず、こうなったら思い切り利用してやる事を胸に秘め渋々ながら東京に足を運ぶ事にした。

 

この時の武内プロデューサーのホッとした顔が、生前の社畜であった僕を彷彿とさせ泣きたくなったのは秘密だ。

 

その後は、会社の重役さん達から謝罪を受け美城常務から楽曲提供の話を持ちかけられた。

 

脅しに近い感じだったので、その旨を伝えるとすぐさま神妙な面持ちで謝罪を受けた。

 

美城常務はどうも2作目の楽曲、ryoPの「メルト」の大ファンなのだとか。

 

部下である武内プロデューサーから事情は聞いていたが、動画をアップした本人から直接聞いていないため確証に至れず、小日向さんまで呼んで事実確認をしたかったのだとか。

 

いや、そうする前に重役の方々が謝罪していた時、貴方もいたでしょと言いたくなったが頭が真っ白になっていて覚えていないらしい。

 

楽曲の提供も、舞い上がってしまいつい言ってしまった事と、申し訳ないと再三謝罪を受けた。

 

とりあえず、依頼は丁重に断る事にした。

 

しかし346プロダクションの持つ力は、僕の夢であるヴォイスロイドを世間に広めるという意味では捨てがたいのも事実。

 

この際だから、一緒にいる小日向さんの契約の更新も含め妥協案を提案した。

 

1つ。楽曲の提供はしない。

1つ。新しいヴォイスロイドの中の人を募集する際には声を掛ける。

1つ。既存の楽曲は直接金銭が掛からない限り自由に扱っていい。

 

ただし、346プロダクションだけ贔屓にする事はできないので、DMがあったプロダクション2社も同様の提案を行うとの条件付きで合意する事になった。

 

その他権利の事で、お互い煮詰めなければならない事が多々あるが概ねwin-winの関係に持っていけただろう。

 

僕としては、ヴォーカロイドは、ヴォイスロイドは、アイドルに負けていないという事が色んな事で証明できれば万々歳なのだ。

 

なんせよ、今生で一番疲れた日々になったのは間違いない。

 

 

 

 

 

後から分かった事だったのだが、再生数が半年でミリオンを達成したのは小日向さんが情報の拡散をしたおかげだった。

 

やはりアイドルはすごい…。

 




きちんと辻褄を合わせながら、着地地点を模索していたらかなり強引になってしまいました。
過去の自分ぇ…。

中には納得できない方もいると存じますが、これが僕の限界です。
許してください…。
感想いただけると嬉しいです。
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