え?別に待ってないって?いやいや、そんなこと言わずにぃ〜
リアスとホスト崩れの話し合いも終わり、10日後にレーティングゲームなるものが行われるという情報と、集合場所があの部室という事だけを聞いた零は、グレイフィア・ルキフグスと共に自宅へと帰っていた。
そして現在は、リビングのソファーにて、対面する形で座りあっている。
「さて。それで、俺の家まで着いてきてなんの話しだ?」
「改めて、お久しぶりですレイ様。そして、その節は大変お世話になりました」
「いや、それに関しては気にするな。ほとんど俺のせいでもあるんだからな。それに、そんな事が言いたかったわけじゃねぇだろ?」
「それもお伝えしたかった事なのですが、本題は別にあります。
…レイ様、どうか私をこのお家に置いては下さいませんか?」
そう告げたグレイフィアの瞳は、真っ直ぐに零の目を見つめていた。
零が言っていたように、昔グレイフィアとその姉を助け、数日間だが一緒に過ごしていたという経緯はあるが、こんなに想われる程とは想像していなかった零は、少しばかり思案に耽っていた。
「置くって言ってもな、そんなに広い家じゃないし、一人暮らしの男の家に女が住み込むってのはな?
俺も流石にこんな綺麗な子が同じ家に居たら、抑えが聞かなくなるかも知れないからな」
「大丈夫ですよレイ様。覚悟の上でございます。むしろ願ったり叶ったりです…」
決して難聴系主人公でも、鈍感系主人公でもない零にはマルっと聞こえているのである。
小声って聞こえないようにするためにあるんじゃ無かったか?
まぁ、ここまで言われて、無下にすることもできない。
しかし、一つ注意しないといけないことがある。
この家なんだかんだで色んなやつが来るのだ。
おかしい。認識阻害くん仕事してる?全然阻害出来てないみたいだけど?
最近、おっとり天使と、くそ鴉が家に入ってきてましたが?
「……。分かった、置くことは了承しようか。でも、置くに当たって、一つだけ守ってもらわなきゃならねぇ事がある。家にまぁ、色んなやつが来ると思うが、無闇矢鱈に敵対しない事と、手を出すな。これを守れるなら家に居ていいぞ」
「はいっ!分かりました。それでは、本日からお世話になります」
そう、活きのいい返事をすると、三指を着きこちらへと頭を下げるグレイフィア。
どこでそんなこと覚えてきたのかねぇ?
それお嫁に行く時の挨拶の仕方だよ?
そんなこんなで、そもそも帰る気無かったでしょ?と、聞きたくなるような荷物が家に来るわ来るわ。
え?今日知ったんだよな?前から俺がここに居るって知ってた訳じゃないよな?監視されてんの俺?
と聞きたくなるような手際の良さで、グレイフィアの荷物が家に搬入され、二階にある一部屋をグレイフィアの私室とした。
2階にあるのは俺の部屋、たった今グレイフィアの部屋となった一室、あと二部屋あるんだが、何故だろうか。
まだこの家に人が増える気がしてならん。
静かに暮らすとか、もしかして無理?
そんなくだらないことを考えている内に、夜は更けていった。
そんなこんなで、オカルト研究部の面々は修行だか何だかに行っており、部室にいない状態が続いた10日後。
指定されていたレーティングゲームなるものの日だ。
ん?俺か?
俺は普通に学生らしい日々を過ごさせて貰ったぞ。
修行に同行?する訳無いだろ。
手は貸すが、俺はグレモリー先輩の眷属ではないからな。
わざわざ修行にまで同行する義務は無いだろ。
深夜0時と共に、部室にて待機していた零とグレモリー眷属は、足元に浮かんだ魔法陣と共に旧校舎の部室から全員姿を消したのだった。
眩しい光が無くなると同時に、目を開ければそこは先程と変わらない旧校舎の部室であった。
「あ、あれ?転移失敗ですか?まさか、俺のせいで…」
「いいえ。違うわよイッセー。ここがレーティングゲームの会場なの。別次元に学園のレプリカを作ってあるのよ」
そう。今リアスが説明したように、今回のレーティングゲームの会場は駒王学園のレプリカとなっている。
さて、両陣営。
グレモリー眷属+αとフェニックス眷属がこの空間に転移してきた様子を別の空間から見ている人達がいた。
「少しよろしいか。サーゼクス殿」
「どうかしましたか、フェニックス卿」
「私の気のせいでは無いなら、サーゼクス殿の妹君と一緒にいるあの白銀の髪の男は…」
「それには私がお答え致しましょう、カイザー・フェニックス様」
覗いていた人物は、リアス・グレモリーの兄であり、現魔王サーゼクス・ルシファーと、ホスト崩れの親であるカイザー・フェニックス。
そして、サーゼクス・ルシファーの眷属で
グレイフィア・ルキフグスの姉アレイシア・ルキフグスとグレイフィア・ルキフグス。
そして、カイザー・フェニックスの妻のメイシア・フェニックスである。
グレモリー眷属と共に現れた零を見て、なにかに疑問を抱いたカイザーの問いかけに答えたのは、グレイフィアであった。
「恐らくですが、カイザー様が思っておられる戦争時の時の人物と同一人物であります。我々悪魔と魔王、天使と神、堕天使を相手に、圧倒的強さで戦場を一人駆け巡った理不尽。今だに語り継がれる不条理。
グレイフィアのその言葉と共に、グレイフィア、アレイシア、サーゼクス以外の頬が引き攣る。
何故あの理不尽がここにいる?
蘇る当時の記憶。
3種族に囲まれようが、笑みを浮かべその尽くを屠り、後に現れた二天龍さえも蹴散らし、気づいたら戦場から居なくなった圧倒的強者。
それが再び目の前に現れた。
「サーゼクス殿、何故あの
引き攣った笑顔のまま、サーゼクス・ルシファーへと問いかけるカイザーに、サーゼクスは困ったような笑みを浮かべた。
「フェニックス卿、実は私も何故彼がここにいるのかは分かってないのです。妹の眷属では無いらしいのですが、何か妹と契約を交わしているらしく、私自身も驚いているところですよ。何せ、各陣営が探しても全く見つからなかった人物がふらっと目の前に現れたのですから」
そんなカイザーへとサーゼクスは、爽やかな笑みをそえてそう答えた。
さて、少し混沌としてきた両陣営親族をよそに、いよいよレーティングゲームが始まろうとしていた。
「さて。それではグレモリー先輩。俺は協力するとは言ったが、指示に従うとは言っていない。だから、ゲームスタートと共に自由に動かさせてもらうぞ」
「ええ。構わないわよ。本当は指示に従って貰いたいのだけど、貴方との約束に指示に従うようにっていうのはなかったものね」
リアスの了承と共に、校内放送にてゲームスタートの合図がなされた。
その瞬間、オカルト研究部部室から、零の姿は消え去るのであった。