匙元士郎に憑依したから色々頑張るお話   作:妖叨+

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まずは皆様に謝罪申し上げます。
活動報告にあった通り、自分が使用しているPCがぶっ壊れしばらく更新が停滞しておりました。
申し訳ありませんでした。

そして大変ながらくお待たせしました!
およそ1カ月ぶりの更新です。



11 俺の進む道

 ……瞼が重い。

ゆっくりと重い瞼を開けると視界に広がるのは見知らぬ天井。

 

「……何処だ」

 

本音が口から洩れる。

身体を起こそうと力を入れた瞬間、ビギィ! と身体に激痛という名の電流が身体中を駆け巡った。

ダメだ。身体を動かそうとしたらこうなる。

俺は五感だけで何処なのかを特定することにした。

視界からはやや低めに作ってあるベッドとスライド式で出てくる机、それと真上にあるライトがあることを確認した。

聴覚からは微かに聞こえる医学的専門用語。

嗅覚からは仄かに残る消毒液の匂いと……何やら花の香りがする。

俺は嗅覚でその花の位置を探りその方向を向こうと首が動かないので目だけを動かしギリギリ視界に入った美しくそれでいて優しいピンク色をした一輪の花。

あれは……コスモスだ。

コスモス。花言葉は……真心。

それにしても一体だれが……?

会長? 違うな。あの人がわざわざ俺の見舞いに出向くはずもないか。

それなら副会長? それも違う。あの人も会長と同じだろう。

僧侶(ビショップ)花戒(はなかい)? あいつもダメだ。俺に花を持ってくるような奴ではない。名前に「花」が入ってはいるがな。

それならもう一人の僧侶(ビショップ)草下(くさか)? あいつも違う。あいつとはあまり関係がよろしくないからな。

騎士(ナイト)(めぐり)? あいつも違う。あいつ、花なんかに興味はなさそうだしな。

戦車(ルーク)由良(ゆら)は花などに興味を持つような奴ではない。

兵士(ポーン)仁村(にむら)なら……少なからず可能性はあるだろう。何故か俺の後ろをちょこちょことストーカーの如く付きまとってくるし、以前、花言葉を教えてほしいと来たので幾つか有名なものを教えてやったのも記憶に新しい。

コスモスの花言葉を教えたしな。

ちなみにゼノヴィア。あいつは論外だ。花云々の前にそこらの雑草とか持ってきそうだ。

と思考を張り巡らしているとドアが慎ましくノックされる。

 

「どうぞ」

 

俺は返答すると静かに扉がスライドしていく。

そして扉の先にいたのは……俺の主。ソーナ・シトリー様が手にコスモスの花束を持って居られた。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

最初の言葉が濁ったのはまさか会長1人で病室に赴くなど思ってもみなかったからだ。

 

「あなたの様態が気になって来たのですが? なにかありますか?」

 

「……なんでもありません」

 

反論する理由が無いので返答をして黙りこくる。

 

「「………」」

 

異様に長い沈黙時間。

何を話せばいいか分からない。

すると会長がメガネを指で押し上げ俺に質問してくる。

 

「さほど長く話をすることはありませんが、あなたに聞くことがあります」

 

「なんでしょうか?」

 

そう言うと会長はメガネをきらりと光らせ口を開く。

 

「サジ。いえ、サジのふりをした誰かさん。本当のサジは何処へやったのですか?」

 

……そこか

 

冗談はよして下さいよ。言葉を言わせる前に水で練成された刃が俺の首元につきつけられる。

会長の表情を目で伺うと、静かな怒りの表情を浮かべている。

表情からしたら静かだが、内心憤怒の色で染まっているのだろう。

この一連の会話、それとこの会長の表情からして……この人は俺を匙元士郎だと認識していない。

つまり、匙元士郎である俺をどこぞの賊が化けたものだと思っているのだろう。

このまま無言を貫き通したとしても確実に殺される。

俺は……決めた。

覚悟を、決めた。

腹を、くくった。

俺は瞑目し、ゆっくりと語り始める。

 

「……会長」

 

「あなたにそのように言われる筋合いわありません」

 

そうきますか。たしかに、これは仕方のないこと。

だが、その言葉は俺の心に静かに突き刺さる。

痛い。いう以来だろうか、こんな複雑な感情は。

痛みを顔に出さずに言う。

 

「では、シトリー殿にお尋ねいたします。貴方様は‘憑依’というお言葉を御存知でしょうか?」

 

「……」

 

無言のまま小さくうなずくかい――――いや、今はシトリー殿の方がいい。ついさっき否定されてからだ。

 

「私は元々別の肉体を持つヒトでした。ですが、あることをきっかけにこの匙元士郎の肉体に憑依してしまったのです」

 

「では、憑依したのはあなた自身の意志ではないと?」

 

「左様でございます」

 

「…では、あなたは一体何者なのですか?」

 

と会長が尋ねる。

俺はこう返した。

 

 

 

「……分からないんです。自分が何者だったのか。分からないんですよ。元の自分の名前(・・・・・・・)も家族の名前も覚えていないんです。覚えているのは家族構成、徒手格闘の技術、学問に関することそれとどうでもよい日常。それくらいしか、覚えていないのです」

 

「だからどうしたのですか?」

 

冷たい声が耳に届く。

 

「つまり……やり直したかったんです。一度終わってしまった人生を」

 

「私の下僕を生贄にしてもですか?」

 

「黙秘致します」

 

「………」

 

シトリー殿は無言のまま俺を見据える。

俺は重い口を開ける。

 

「シトリー殿。あなたの兵士である。匙元士郎はもうこの世にはいません。私という人格が元の人格を潰したのですから。元々、一人の身体には1つの人格しか宿りません。稀に聞く二重人格はその身体に応じてなるもの。この身体は二重人格に耐えられる体ではなかった。そこで肉体はどちらの魂を自らの器に入れるか、本能的に肉体は感じ取ったのですよ。どちらが自らの器にふさわしいか。そして……貴方様の兵士、匙元士郎は死に、今の私がこの身体に巣食っている寄生虫とほぼ同じです」

 

「………」

 

俺の言葉を聞いたシトリー殿は閉ざしていた口を開いた。

 

「……私は、私の下僕をあなたに殺された事で内心、憤怒の色で染まっています」

 

それはそうだろう。

何処の誰かも分からないものに自分の下僕の人格(こころ)を殺したのだから。

 

「今すぐにでもあなたの喉笛を斬り裂きたいのですが……あなたに最後の質問をします。和平会議のときにあの場で公言した言葉、あれはあなたの真意? それともあの場だから公言した建て前?」

 

「真意でございます」

 

即答だった。迷う必要があろうか?

 

「理由は?」

 

理由? そんなの――――――――

 

「主に尽くす。それに理由が要りますか? 言えばお腹が減っているのにご飯を食べるか? と言っているのと同じでございますよ?」

 

「その言葉に嘘はないのですか?」

 

「正直は一生の宝。と言われる程です。自分のありのままの答えを出したにすぎませんよ」

 

俺はやや頬笑みながら言う。

そしてもう一言。

 

「主であるあなたに殺されるのは本望でございます。殺すのであればそのままどうぞ。それを否定することは一切しません」

 

そう言うとシトリー殿は俺の首元につきつけていた水に刃を消した。

……シトリー殿、やはりあなたは心を鬼には出来ないお方だ。

別の言い方をすると……。

 

「……シトリー殿。やはり貴方は優しいお方だ。こんな者にまで情けをかけていただけるとは」

 

苦笑いを受けべてそう言うとしれっとした表情で返すシトリー殿。

 

「情けではありません。和平会議の時、あなたの戦闘の終盤のみを見せて頂きました。あなたは十分に強い。なのでこうしましょう。私から貴方が憑依者という事を眷族に話しておきます。そして、これからも私に尽くせるように計らっておきます。貴方はこれからも、一生を私に忠誠を誓いなさい(・・・・・・・・)。サジの人格を代償に得た新たな人生。それを全て私に献上してもらいます。悪魔らしく、ギブ&テイクでどうかしら? それと、不満などを聞く気など一切ありませんので」

 

「それは願ったり叶ったりですよ。会長―――――――我が主、ソーナ・シトリー様」

 

「それでいいのです。サジ―――――――私の兵士。匙元士郎」

 

ここに、改めて主従の関係をたてた。

改めて会長に生涯の忠誠を誓った。

 

 

 

 

 

 

///

 

 

 

 

 

会長に改めて忠誠を誓ってからはや2週間。

その間にいろいろな人がお見舞いに来てくれた。

生徒会メンバーは俺が憑依者だと会長から聞かされたそうで、複雑な表情をしていたがゼノヴィアだけはケロッとしていた。

あの馬鹿《ゼノヴィア》には理解できなかったようだな。

それからレヴィアタン様がボロボロのアザゼル総督を荒縄で縛り上げ俺病室に突き出して来たときは度肝を抜いた。

総督から経緯を聞こうとすると「言わせないでくれ」と即答だったので聞かないことにした。それとなぜか総督の頭にタンコブが段々重ねになって見えたのは目の錯覚だろう。

それと、グレモリー眷族の面々までお見舞いに来てくれた。

その心使いには心の底から感謝している。

兵藤は差し入れと言って18禁のビデオを差し出してきたので直ぐ様窓に放り投げ爆炎魔法で破壊してやった。

その時の兵藤の表情は言うまでもなく哀しみに染まっていた。

やはり、阿呆だ。

 

そして俺が退院したときは丁度、終業式の日だった。

実は俺の身体の傷はかなり深刻で全治にリハビリも含めて1ヶ月。つまり夏休みの終わりまでかかるそうだ。

これでも完治までの時間はかなり短くなった。

実を言うと魔王、レヴィアタン様からフェニックスの涙を入院中に渡されたのだ。

高価であるフェニックスの涙をこんな下級悪魔に差し出すとは、正直思っていなかった。

しかし、フェニックスの涙と言っても僅か5cc、小匙一杯分の涙を振りかけるではなくあえて飲む。と言う選択肢をとった。

理由としては、振りかければ振りかけた部分は完治するだろうが、他の傷は治らない。

だが、あえて飲む。と言う選択を取ることで全体的に傷を癒すことができるのだ。

そのおかげで全治1カ月の軽傷で済んだ。

本来であれば全治30年と言われるほどの傷を負ったのだ。

それに比べたら1ヶ月など、完治に等しいだろう。

それと、俺の負った怪我は全身骨折、左腕の大火傷に裂傷、背中の悪魔の右左の翼に大きな裂傷、右翼に関してはなんとなく動くと言った曖昧な感覚がのこる。正直、後遺症が残らなかったのは奇跡としか言いようがない。

俺は一時退院した時間の関係もあり途中から先生に車いすを押してもらい式に参加。

それから教室に戻り夏休みの過ごし方を聞き、解散となった。

俺は車いすの取っての部分を取り俺の行くべき場所へ向かおうとしたときだった。

 

「病人は病人らしく大人しくしていろ。治りかけている傷口がまた開くぞ? 匙」

 

俺の背後から声が聞こえた。振り向くことなことなく俺はこうかえす。

 

「……ゼノヴィア、生徒会室まで頼めるか?」

 

「ふっ、お安い御用だ」

 

笑みがこぼれたらしいゼノヴィアに若干睨立ちを感じているが今の俺ではパンチどころかデコピンすらままに打てないだろう。

ゼノヴィアは俺の乗る車いすをなるべく衝撃が伝わらないように配慮して車いすを進める。

心中、こう思った。

明日はきっと大雪だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

///

 

 

 

 

 

「ほら、着いたぞ」

 

ゼノヴィアは車いすを押すのおやめる。

生徒会室のドア。

いままでは何気なくとおっていたドアが、今まで何気なく触れていたドアの取っ手が。

何処からともなくやってくる何とも言い難い感情に俺は思わず上体を倒してまう。

 

「ぐっ!」

 

当然、急に上体を倒したのだ。上半身に激痛の渦が巻き起こる。

 

「ど、どうしたんだ!? 匙!? どこか痛むのか? 気分でも悪くなったのか!?」

 

真剣な表情で聞いてくるゼノヴィアを「いや、なんともない」と手で制する。

このドアを開けたら、どんな光景が待っているのだろうか? 

想像もでいない。想像もしたくない。

病室では納得したような表情をしていただけで心の奥ではみんな、俺を嫌悪しているだろう。きっと俺の存在は罵っているだろう。

そんな事を考えているとゼノヴィアが俺の気も知れずにドアをスライドさせた。

何でもこい。罵られようが唾を吐かれようが全てを受け入れる身構えでいた。

が、現実は俺の考えていることとは別のようだ。

 

パン!

 

パン!

 

パン!

 

パン!

 

パン!

 

パン!

 

パン!

 

と何かの破裂した音に連鎖して乾いた破裂音が俺の耳に響く。

その音源は―――――パーティでお馴染のクラッカーだった。

そして最後に俺の背後からとどめの紙吹雪。

紙吹雪のせいでよく見ないがいつも生徒会の案をまとめるのに使用されているホワイトボードに『サジ 退院おめでとう!!』とカラフルに書かれている。

 

「………」

 

俺は無言で顔を伏せた。

 

「ぬ!? やっぱり匙はこの手の歓迎は嫌だったか?」

 

後ろで未だに紙吹雪をちりばめていたゼノヴィアがようやく手を止め俺の反応に驚いている。

 

「うーん、やっぱり元の匙じゃないからかな?」

 

「それはある」

 

「やっぱり普通に生徒会の仕事した方が良かったんじゃないか?」

 

「どうなんだろう?」

 

「先輩ならきっと喜ぶと思ったんですけど……失敗でしたか?」

 

と花戒、草下、由良、巡、仁村が俺の反応に対して意見を述べる。

すると、ゼノヴィアが下から俺の表情を見た。

双眸から涙を流している俺を見たゼノヴィアが驚愕の表情で俺の問う。

 

「! 匙、なぜ泣いている!? やはりどこか痛いところでもあるのか!?」

 

「やめておきなさい。ゼノヴィア。サジは今、きっと喜んでいるんですよ」

 

と会長がメガネを押し上げて言う。

やっぱり、会長はなんもお見通し。か。

実際、本当に嬉しい。

今までに感じた事のある《嬉しい》とはまた別の《嬉しい》という感情が心の中を行ったり来たりしてる。

前世では、ずっと1人だった。

1人で参考書を読むのが好きだった。

1人でトレーニングをするのが好きだった。

 

1人が好きだった。

 

なのに、匙元士郎(こいつ)に憑依してから全てが変わった。

人慣れ合う事など、前世ではしていなかった。しようとも思わなかった。

だが、この世界で。初めて、初めて。1人でいるのが寂しい。と感じた。

温もりに飢えていた? 人の優しさに飢えていた?

そうなのかもしれない。

 

「うぅ……」

 

ついには嗚咽を漏らして泣いてしまった。

らしくない。が、今はこうでいいかもしれない。

俺は手で顔を覆う事が出来ない。だから下を向いてただ、泣いた。

嬉しさで泣いた。

初めて、嬉しさの感情で、泣いた。

俺が前世で生まれ時以来、泣いた。

そして、俺は嗚咽に紛れながらも呟く。

 

「うぅ……ありが……とう。ござ…ごほごほっ! いばず!」

 

途中、むせてしまったり最後らへんが変に聞こえたかも知れないが伝えられたろうか?

みんなの対応の返事が。

すると1つの影が俺の視界に入る。

その影の主は……会長だった。

会長は俺の目の前でしゃがみポケットからハンカチを取り出し俺の目元を傷口に触れぬよう丁寧に拭きはじめたのだ。

 

「男なのですから、もう泣くのはやめなさい。貴方は、私の信頼している兵士(ポーン)なのですから。強くなりなさい。サジ」

 

その言葉を聞いた瞬間、俺はまた涙を流してしまう。

今まで溜まりにたまっていた涙がここで爆発したのではとも一瞬思ってしまうが、それよりも頭の中は先ほどの会長の言葉で一杯だ。

強くなろう。

誰よりも強く。他の悪魔よりも、天使よりも、堕天使よりも。

副会長よりも強く。ゼノヴィアよりも強く。マリアよりも強く。白龍皇よりも強く。

いっその事、最強の存在になってやる。

《最強の兵士》に。

 

「会長、そのようなこともよろしいですが。みんなで作った(会長、ゼノヴィアを除く生徒会女子メンバー)でケーキ作ったの味が落ちますよ?」

 

と副会長が言う。

 

「そうですね。では、そろそろ頂きますか。サジ、あなたの退院を祝って眷族のみんなで作ったケーキ。食べれますか?」

 

「……はい。頂きます」

 

それから俺は両腕がまともに使えないのゼノヴィアにSay.sh(アーンして)してもらって恥ずかしかったのはどうでもよい余談である。




如何だったでしょうか?
実は先日新しくPCを購入してもらいIphonで書き続けた作品にルビを振ったり足りない部分を足したりしてこのようになりました。
急ピッチで仕上げたので変な所があれば指摘して頂ければ嬉しいです。

そしてそして次回は……匙君が初めて原作で光り輝いた5巻。
冥界合宿のヘルキャットこと憑依匙くん×禁手化×レーティングゲームがはっじっまっりまーす!
次回! 1 冥界入り
そして次回のサンプルボイス……ドン!

「夏はそうめんとスイカで充分だ」

「私達、シトリー眷族は夏休みの殆どを冥界で過ごしますが?」

「これが私の切り札だ!」

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