んでもって見事に8000字越え!
俺達が冥界入りしてから数日が経つ。
その数日のうちに俺はいろいろとしていた。
何をしていたか? まぁ……会長のお母上にいろいろと冥界の作法について教えていただいたり会長のお父上に囲碁の相手を頼まれたりといろいろと忙しかった。
そして今日。若手悪魔の代表格である名家6家の顔合わせ会合がある。
俺を除いた眷族のみんなは駒王学園の夏服だが、俺は訳あって冬服だ。
だが、それは見た目だけ。シトリー家のメイドの方々が速急に仕立ててもらった通気性抜群の見た目だけが冬服の事実上、夏服だ。
それに俺は松葉杖の代わりに金属製のステッキを支えに歩いている。
今回開かれる会合の目的は有能な若手の顔合わせを兼ね、これからの未来の事を公の場で発言することの事だ。
正直、俺はこの場に着たくはなかった。
俺の予想、いやこれは必ず起こるであろう事に耐えられるか、分からないからだ。
そんな不安を抱えながらも会合の集会場ホールに到着した同時に激しい轟音と煙が上がる。
「ねぇ、ゼファードル。あなた馬鹿なの? 馬鹿なの? それとも馬鹿を通り過ぎて大馬鹿なの? あなたが先に仕掛けて来たのだから正当防衛で殺してもいいわよね?」
「るせぇな! クール系クソビッチ! こっちから女にしてやろってのにガードが堅いなぁ! アガレスの女はいつもこいつも処女臭くて敵わなねぇな! おい!」
右に居る眼鏡をかけたクールそうな女性が……あの男が言った名前からしてアガレスの次期当主だろう。
そしてそれに相対しているのがゼファドールと言われた俺達の世界にもいる社会のゴミ。ヤンキーだ。ゼファードルと言えばグラシャラボラスの次期当主……。本来はその兄が次期当主になるはずだったが不慮の事故により兄が死亡。そして代わりにその弟が次期当主として選ばれたそうだ。
それよりも俺はこの場に来て思った率直な感想がある。
――――――これが上級悪魔か?
双方ともに自分の感情が制御できていない。
このまま自分の個の感情のまま動いていると何時かは自らの身を滅ぼすことになる。
それを理解したうえで俺は無言でゆっくりと双方の間に割って入る。
「あぁん!? 何出しゃばってんだ!? この下級が!」
よくヤンキーがやる「ガンタレ」という奴だな。
そういう輩に限って―――――――――――――弱い。
「双方、矛を収められよ。このような公の場、ましてや魔王様がおいでになるこの会場で争いごとなど……愚の骨頂にございます。今でも遅くありません故」
俺はゼファードル、アガレスのご令嬢に語り掛ける。
その返答は……。
「るせぇな! 消えろ!」
ドン! ゼファードルは暴言と共に放たれた魔力弾だった。
「……はぁ」
俺はため息をつき魔法陣を展開。
魔力弾と魔法陣がぶつかり合い爆炎と爆風が会場を見舞う。
「けっ、雑魚が出しゃばるからだ」
吐き捨てるように言うゼファードル。
「誰が雑魚だ。
土煙が舞う中俺は服についた埃を払いながら言う。
「誰が三下だ!? そりゃてめ―――――――」
ゼファードルが最後の言葉を言うよりもゼファードルの眼前に魔法陣を展開させそのまま吹き飛ばす。
バゴン! 壁に小規模なクレータができ、その中央でゼファードルが頭をダランと下げ脚をガクガクと震えさせている。
先ほど使用した魔法。あれは北欧の風魔法を少しいじって出来あがった魔法。
その魔法でゼファードルの頭――――正確には脳を揺らし脳震蕩を起こさせた。
しばらくは意識喪失してるだろう。
人間なら半年は意識喪失してるレベルだが、相手は人間よりも丈夫な悪魔で上級悪魔だ。回復は早いだろう。
「貴様! 我が主をよくも愚弄しおって!」
ゼファードルの眷族が喚く。
これだから俺はバカは嫌いなんだ。
特に、自分達の利益しか考えずに動き自分の感情を抑制できないバカは。
「自らの感情も抑制できない者がでしゃばるのが悪い。それとも俺とお前達でここで乱闘を行い主の面子を潰したいのか? 主を大切に思うのであれば……貴方達の方が立場が不利なのはそっちだと言うのが理解できないほどバカではあるまい?」
俺は挑発してるように見えるがここで相手が圧倒的に不利と言う状況を認識させる為だ。
「チッ……」
俺の言葉の意味を理解したようで舌打ちをしながらゼファードルの眷族は主の介抱を行うべく救急室を向かう。
そして俺はアガレス家のご令嬢に向きなおる。
「貴方も貴方だ。たかがグラシャラボラス家にプライドを傷つけられただけでこのような事に発展させる必要はありましたか? その辺を踏まえもう一度お考え直し下さい。会合までお時間がありますのでその乱れた衣装などを整えてこられてはどうでしょう?」
俺はいつものポーカーフェイスでアガレス家のご令嬢に言うと無言のままこの場を後にした。
これで、大方問題は収拾がついた、か?
俺はステッキを拾おうとすると第三者が俺のステッキを拾う。
「ほぉ、お前が噂に聞くシトリーの兵士か?」
ステッキを手渡しながら言う第三者。
冥界の空と同じ紫色の髪、鍛え抜かれた大きな身体。そして双眸にはギラギラとした野性的な何かを灯している。
何より、この人の身体を覆っている覇気。尋常じゃない。
この人を見た瞬間、悟った。
ああ、この人には勝てない――――――
本能がそう告げる。
全快の俺でもいや、シトリー眷族全員でかかったとしても負ける。間違いなく。
「貴方は?」
この人の素性を聞くべく尋ねる。
「俺はサイラオーグ。バアル家次期当主のサイラオーグ・バアルだ。で、貴殿の名はなんと言う?」
バアル家。
元七十二柱の第1位。アガレスよりも上の階級に位置している旧家。
バアル家の特徴は全ての物を無に帰すことが出来る《滅び》の魔力。
だがこの人からは魔力の類の物が全く感じられない。
おそらく、この人は魔力よりも格闘専門なのだろう。滅びの魔力を纏った渾身の一撃を相手に喰らわすパワータイプなんだろう。
嵌め手を駆使したとしても正面から破られそうだ。
警戒の意味を込めて自己紹介を始める。
「お初にお目にかかりますソーナ・シトリー様の下で兵士をやっております。匙元士郎というものです。以後、お見知りおきを……」
「転生悪魔のわりになかなか社交的だな。これもシトリーの教えか?」
「左様にございます」
「そうか……それにしても俺のやろうとしたことを横からかっさらって行くとはな」
それなら、俺が介入する前に止めておいて欲しかった。
上級悪魔が下級悪魔に負けた。何と言う汚点を残すようなことは出来るだけさせたくなかったからだ。
「それでは。バアル様。そろそろ我が主の元へ戻らせて頂きます――――――――機会があれば貴方とやり合ってみたい。その時は……貴方を屠る」
これは俺からの宣戦布告。
このヒトは間違いなく若手悪魔NO1だろう。
そして会長の夢を成し遂げるための大きな障害物。
このヒトをシトリー眷族が倒せば……。夢への大きな一歩となる。
その為に……貴方には俺達の踏み台になって頂く。
その前に、俺達が強くならないとこのヒトは倒せない。
強くならないと、な。
「ふっ、機会があれば、な。その時は俺も全力でお前を潰そう」
野性的な笑みを浮かべるバアル様に俺はいつものポーカーフェイスを崩すことなく、この場を後にする。
///
やあー皆さん、お久しぶり。兵藤一誠です。
あ、それと少し静かにしてもらうぜ?
なんせもう、若手悪魔の会合が始まっているからな。
部長の従兄でバアル家の次期当主。サイラオーグさんの夢はなんでも魔王になることだそうだ。
この大勢の悪魔がいる中で堂々と悪魔のトップになると言うなんて相当肝が座ってるよ。
そして部長の夢はレーティングゲームの全タイトル制覇! となると、自ずと強い相手と戦う事になる。
俺も強くならないとなぁ……。せめてあのムカつくヴァ―リをぎゃふんと言わせるほどまでに!
最後にソーナ会長の目標だ。
会長はメガネを押し上げて宣言する。
「私は、この冥界にレーティングゲームの学校を造ることです」
……が、学校? レーティングゲームの?
たしか、レーティングゲームの学校はあるってこの前木場から聞いたような記憶が……。
すると一人のお偉いさんが会長に言う。
「しかし、レーティングゲームの学校は冥界に存在しますが?」
「それは上級悪魔に限定されています。私が建てる学校は下級であろうと中級であろうと転生悪魔であろうと分け隔てる事もなく誰でもペンを取り学ぶことが出来る。そんな学校を作るのが私と眷族達の夢であり目標です」
うんうん! とセラフォルー様が大きく頷いている。
サイラオーグさんの夢も凄いけど会長の夢も壮大でこれから未来の事を見据えての目標だ。
改めて凄いと思う。
そんな俺を尻目にお偉いさん達が手で顔を覆いはじめ大きく口を開けた時だった。
ドズンッッッッッッッッ!
大きくかなり質力のある音がこの会場を支配する。
その音源は……地面にめり込んでいる金属製のステッキ……からだ。
あれはたしか。匙が持っていたステッキだったはず。
匙がポーカーフェイスではなく無理に作ったような笑顔でお偉いさん達に一礼した後に言う。
「すいません。このようになれない場でして思わず手汗でステッキが滑り落ちてしまいました。申し訳ございます。さ、続きをどうぞ」
そう言った後、めり込んだステッキを拾い上げる。
……あいつの笑顔の下はたぶん。憤怒で歪んでいるんだろうな。
そう思った時。匙がステッキを拾うときにチラッと表情が見えた。
匙の怒りに歪んだ顔が。
「笑いどころを潰しおって……」
お偉いさん達が眉根を寄せ見下すように言う。
「それで、具体的にはどのような過程を踏んでその『
「まずは私達シトリー眷族がレーティングゲームで勝ち上がり上役の人を認めさせることです。私の見立てではそんな遠い未来ではない予定です」
「予定は未定。とは人間が良く言うがこのような時にも使うものだろうか?」
「多分あっているぞ」
『『『ははははははははは!!』』
この会場が笑い声で染められる。
なんなんだよ……なんで笑うんだよ!
笑うようなことじゃないだろ!?
「腐ってる……」
思わず口から言葉がでる。
すると隣の木場が口を挟む。
「これが今の冥界なんだ。いくら新体制とはいえ、すぐに他の悪魔の思考が変わるわけでもない。今でも悪魔は純系の悪魔が待遇される……。部長―――――グレモリー家は特別なんだよ。ここは耐えるんだ。耐えないと、部長の面子をつぶすことになる」
「つってもなぁ……!」
すると俺の左隣に居た匙がゆっくりと立ち上がりステッキを支点し歩きはじめる。
そして、誰に話す訳でもなく語り始める。
「夢とは現実出来ない事を思い描くことを言うが他の意味もある。将来出来ることをすることも人は夢と言った」
「貴様! 下級の分際でこの場での発言が許され―――――」
上役の言葉が発せられるのを確認すると匙は間髪いれず次の言葉を放つ。
「我が主であるソーナ様の《夢》は確かに貴方がた上役からしてみれば現実出来るはずのないことでしょう。ですが、私たちシトリー眷族はそう思っておりません。実現できる可能性が0.1%でも残っているのであれば……私たちはその夢を現実にする為に戦いましょう。私はこの身をソーナ様の夢の為に捧げると誓いました。そこで上役の皆様に下級悪魔の一生に一度の願い。聞いては頂けませんか? ……この通りでございます」
匙はぎこちなく正座しステッキを右に置き頭を地面にすり付けた。
土下座である。
俺は驚愕の表情で染まる。それは木場もシトリー眷族も同様だ。
あの匙がこんなことをするとは誰もが思ってもいなかったからだ。
それを見た上役の言葉が
「ふん、誰が下級なんぞの願いなど聞かねばならん。口を慎め、下郎。下級と会話などしたら口が腐るわ。下がれ」
「ッッッ!!!」
上役の言葉に今まで貯め込んだ物をはちきれさせたかのようにキレたシトリー眷族の騎士、ゼノヴィアが息を荒げ顔を真っ赤にして今にも襲いかからんばかりの勢いで飛び出し匙を除くシトリー眷族全員で抑えた時だ。
パンパン!
二つの柏手がうたれる。
柏手を打ったのは……サーゼクス様だ!
サーゼクス様は手を組んで匙に語りかける。
「まぁまぁ皆さん。下級悪魔と言えど彼らの夢は間違いなく本物だ。たしかに彼らの夢を現実にするのは難しいだが、それを現実にするのもまた面白いと思わないかな? 私としてはソーナくんには是非その学校を造って頂きたい。その為には……やはり上役の皆様を納得させないといけない。匙くん。君が望む物。一生に一度の願いを私が聞こう。 何かな? 君が欲するものは?」
すると匙が頭を上げサーゼクス様をしっかりと見つめ言う。しかし上役の方々は慌て始める。
「サーゼスス様! 何故下級悪魔の願いなど聞かねばならんのでしょう!?」
慌てる上役にサーゼスス様は目を細めて言う。
「先月の和平会談でテロが行われたのは皆様はご存知でしょう?」
「それは聞いております。堕天使の保有していた白龍皇とヴリトラの神器使いが会場で戦闘を行いそれを速やかに対処したと……」
「ええ。その通りです。その白龍皇を撃退したのは私の妹の眷属にして赤龍帝の兵藤一誠くんだ。それも知っているだろう?」
「ええ……伺っておりますが。そのものと赤龍帝は違うはずですが?」
「そこで出てくる事は残り残りヴリトラ神器使いは誰が撃退したか……ご存知ですか?」
「いえ……存じておりませんが、それが何か問題でも?」
「敵は既に禁手を修得しておりあの白龍皇にも引けを取らない強さを持っていた」
「それがどうしたと言うのです?」
きっと上役の方々は三代勢力のトップの誰が撃退したと思っているんだろうな。この様子じゃ。
「私達三代勢力のトップ陣は会談の場である駒王学園を結界で覆い外に被害を出さぬように努めてましたから我々ではない」
「では……誰が!?」
その一言を待ってましたとばかりにサーゼスス様は匙を指す。
「シトリー眷属の兵士。匙元士郎くんだよ」
「「「「!?」」」」
「ありえない! ただの下級悪魔が禁手の相手をして更には勝利したと!?」
「白龍皇に引けを取らないということは最低上級悪魔クラスの実力の持ち主ということになる……そいつに勝っただと……? サーゼスス様、ご冗談がお上手で」
「残念だがこれは冗談でもジョークでもない紛れも無い事実だよ。匙くん。君さえ良ければあの時の傷を見せてくらないかな? 私達の為に命懸けで闘ってくれた戦士の傷を」
「仰せのままに」
匙はステッキを取って立ち上がり躊躇せず制服を脱いだのた!
「う……」
俺は思わず恐怖を感じた。
匙の身体中には思わず目を覆いたくなるほどの傷跡が確認できる。
右腕にはまるで機械に挟まれたかのような裂傷の傷跡。
左腕にはひどい火傷。
背中には何かに引き裂かれたかのような傷跡。
胸の中央には何に引き裂かれたかのような傷跡が。
これが、たった一回の戦闘でついた傷なのか……?
俺は確かボロボロだった。だが俺の場合は赤龍帝の鎧で守られていたからある程度はよかったが匙の場合は昇格もせず、ほぼ生身のまま禁手の相手と闘った。
今更だがかなりすごい事だと改めて気づく。
「彼は死ぬ覚悟で私たちの会談を守ってくれた。上役の皆様も見てわかるよう、この傷が戦闘の激しさを物語っている。彼の行った事に私は魔王として対価をあげるのです。対価を支払い契約する。これが悪魔社会における鉄則。故に私は彼にその対価をあげようと言うのだ。さぁ、匙くん。君が望むものは何かな?」
「……この若手の方々、どなたでもいい。1回だけ……私たちシトリー眷族とレーティングゲームを行っていただきたのです。本当に1回でいいのです」
匙は一瞬躊躇ったが自ら出した答えを言う。
「レーティングゲーム……。本当にそれだけで良いのかな?」
その答えにサーゼクス様は何処と無く喜んでいるように見えた。
「はい」
そう言うとサーゼクス様は口を開く。
「それじゃリアス。一つ、ソーナくんと戦ってみないか? 公式のレーティングゲームでだ」
!!
マジかよ。会長たちとゲームするのか!
俺は不意に部長に顔を向ける。部長の顔は何処か優れない。
「……ソーナ。言っておくけれど勝つのは私達よ」
部長からの一言に会長は。
「残念ですが勝つのは私達です」
いつものクールな会長なのは変わりないが……何かすぐれない。
さっきのことだろうか……?
と勝手に少ない脳みそで考えているとサーゼクス様が匙に席に戻るように促した。
匙はステッキを拾いぎこちなく立ち上がり元の席に戻る。
匙が着席したのを確認するとサーゼクスは宣言する。
「対戦の日取りは人間界の時間での8月20日。それまで各自時間を割り振ってくれて構わない。詳細は改めて後日送信する」
サーゼクス様の宣言で会長とのレーティングゲームが開始されることになったのだ!
///
「サジ」
「はい。なんでございましょう?」
「正座のまま話を聞きなさい。いいわね?」
「了解です」
「あなたはあの場でなんて事をしたんですか? それよりも上役の喧嘩を売るようなことをしていいと思っているのですか? 第一あなたは――――――――――――――」
俺達シトリ―眷族は会合が終わりシトリー邸に戻ると俺と会長は個室(和室)で、マンツーマンの説教をされている。
確かに、今思えば俺らしからぬ行動だった。
………いつ以来だろう。ここまで人の為に怒りを覚えたのは。
あの時は本当に堪忍袋の緒が切れた。
俺としては表情に出さなかった自分を褒めてやりたいほどだ。
「と、この話はここまでにして……」
会長、この話はここまでにしてと言いますが説教が始まってから俺の体内時計では大体2時間くらい経ってますが?
会長は目を細め俺に語りかける。
「次のレーティングゲーム。リアスとの対戦の鍵を握るのは100%サジ、あなたです」
「………」
「このゲームに勝たなければ私達の夢は幻想のように消えてなくなります……その夢を消さない為に必ず勝たないといけないのです」
そのようなことは百も承知だ。そうじゃないと俺達の夢は本当に消えてなくなる。
負けられないゲームだなんだ。俺達にとっては。
「なので、あなたもそうですがリアス達に勝つために修行を行います」
「修行ですか……」
会長はメガネを押し上げて言う。
「ええ。既に他の眷族は修行に移っています」
……俺が説教を受けている間に他の眷族は修行開始してるのか。
まぁ、遅かれ早かれやるとは思っていたさ。
「会長、俺の修業は……?」
素直に疑問を述べると会長が長い時間、正座をしていたせいかぎこちなく立ち上がりメガネがキラリと光らせる。
「ついてきなさい」
会長に言われるがまま俺は立ち上がり会長の背中を追う。
///
シトリー邸の庭に出るとそこにはただモノならぬ人物がいた。
背中には10枚の翼を展開しているヒトが。
俺の存在に気付いたのか此方に目をやる。
「キミが噂の匙くんかな?」
「はい。そうです。貴方様は?」
「自己紹介が遅れましたね。私は
……冗談ではなさそうだ。
あの人が纏う百戦錬磨のオーラ。あれでもかなり抑えている方だとうかがえる。
するとシェムハザ副総督は顎に手を添えて笑みを浮かべる。
「なるほど……君の見にまとわりついている微弱ながらも禍々しいオーラ。間違いなくヴリトラのものですね」
俺の身体にまとわりついている……?
俺自身としてはそのような感覚はないのだが……。
「まぁ、いいでしょう。それではソーナ姫。しばらくこの子を預からせて頂きます。死なない程度に鍛えてくれるという人物がおりますので」
「ありがとうございます。副総督様」
少し待って欲しい。
先ほど副総督が仰っていた死なない程度とは如何なものだろうか?
副総督は魔法陣を2つ展開する。
魔法陣の光が弾けその中にあったのは大人一人がすっぽりと入る程の
すると副総督は無音で俺の背後にまわりそのまま大砲に放り投げた!
俺の身体はまるで磁力でも働いているかのようにすっぽりと収まる。
「あ、あの……これは一体なにをするおつもりで…・・?」
正直、かなり動揺している。
「簡単だよ。君を飛ばすのさ―――――――――――とある国の山奥まで」
「それは転移で良いのでは!?」
……生まれて初めてツッコミをしてしまった。
俺はなんてことをしたのだろう……。
「それでは行きますか」
副総督ご自身も大砲の中に入ると。
「それでは行きますよ……点火」
平坦な声と共に大砲から発射された俺と副総督。
親愛なる我が父と母へ。
貴方達の言っていた元気で帰って来い。守れるかどうか分かりません
///
現在、私ゼノヴィアは目の前に居る会長の姉であるセラフォル―様の騎士である元人間と対峙していた。
「いいかゼノヴィア。剣は剣だ。お前はお前だ。剣はお前に応える。お前は剣に応える。それだけだ」
背中に『誠』の一文字を背負い日本刀の柄に手を添える様は……
百戦錬磨の『鬼』である。
私は握っているデュランダルが激しいオーラを撒き散らしながら騎士の持てる最大の速度で切りかかるが……。
「遅い」
との声と共に右腕に一筋の傷が生まれた。
あの人は一歩も動いていないのに、何時の間に抜刀して何時の間に斬られてんだ!?
「動きに無駄が多い。それとお前は剣に頼り過ぎている。そんなのではこれから先……いや、お譲の夢の足枷になるだけだぞ」
「くっ!」
感情に身を任せ再びデュランダルを構えて突撃するが、結果は同じだった。
「天下の剣豪、宮本武蔵も言っていた「一芸、万事に通ず」と。お前の突撃一つにしてもやり方を変えれば全てが変わる。覚えておくんだな」
「……わかりました。
会長が私の為につけてくれた専属の先生。
それは私が書物で読んだことがある伝説にして最後の侍。
新撰組、鬼の副長として知られている土方歳三本人であった。
「と言った所で今日の所は、竹を振り子にしてそれを全部回避するトレーニング(当たった回数1回につき500回の腕立て伏せ)した後にシトリー領(大体本州くらいの大きさ)を5周で勘弁してやる。一応初日だし後でセラフォル―にあーだこーだ言われるのが面倒だからな」
私は思った。
お、鬼だぁぁあああああああ!
うし! これで匙を強化することが出来る!
最後のゼノヴィアさん? 原作ではミイラ女で出てきましたけど本作ではどうでしょう……。
お次はシェムハザさんサイドで行きたいと思います!
次回! 3 匙、強化される
そんではサンプルボイスゥぅウウウ! ドン!
「あり得ない……奴は既に封印され魂すら残っているはずがない」
「想定内のことです。特に気にしていません」
「おぅおぅ、この老いぼれに何か用かぃ?」
「No, un essere umano non è impossibile per il diavoloだ」
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