「ーーーっ!」
「あうっ」
夢から覚め、俺は思い切り上半身を起こす。
頬を触ると濡れていることが分かる。また、あの悪夢でうなされていたらしい。
「あ」
そして俺は後ろで額を抑えて蹲っている女性に気がついた。起きた拍子にちょうどぶつかってしまったらしい。
何故、額がぶつかったのに後ろにいるのだろうか。
「ううう。カイラぁ〜。そんなに勢いよく起きないでよぉ。せっかく膝枕してたのに」
「す、すみません!セシアお姉様。‥‥その、大丈夫でしょうか?」
どうやら俺は膝枕をされていたらしい。勢いよく起き上がった拍子にセシアの額とぶつかり、反るようにして後ろに倒れたらしい。
セシアお姉様、と言ったがセシアは義理の姉だ。2年間一緒に暮らしている。スラッとした体型にセミロング。なんと言ってもキラキラと輝くエメラルドブルーの髪と目の色が特徴的だ。絶世の美少女と言っても過言ではなく、俺はセシアより綺麗な女性を見たことがない。
「うう〜痛い。大丈夫じゃない。許さないもん」
セシアは俺を睨みほっぺを膨らませる。
「あの、本当にごめんなさい。どうしたら許してもらえますか?」
俺が謝罪を繰り返すとセシアはニヤリと口の端を寄せ、俺を掴んできた。
「それはね〜、こうだぁ〜」
そのまま俺を半回転させ、後ろから抱きついてきた。
「むふぅーーー!うひゃーーー!カイラぁぁ!」
「おおおおおおお姉様!?おやめください!」
セシアは後ろから俺に頬ずりをしたり、耳を噛んだり、髪の匂いを嗅いだりしてくる。鼻息が荒い。
「カイラは抱き心地が最高ね!あととっても良い匂い!」
「あうっ‥‥や、その、恥ずかしいです‥‥」
「きゃわーん!キュンとしたわ!キュンと!」
セシアは更に強く抱きついてくる。なんて強さだ。なんと言うか‥‥思春期の子供にとっては刺激が強いような部分が当たるのだ。
「可愛い、可愛い、可愛いいいい」
ぎゅうううううううう。
そろそろ俺も限界が近い。恥ずかしさのあまり死にそうだ。
「セシアお姉様そろそろ許してください。死んでしまいます!」
「なぬ‥‥それは困るわ。離してあげなきゃ」
パッと手が離されようやく解放してもらう。
セシアは荒かった息を整えると、今度は優しくハグしてきた。
「ーーーカイラ。私はずっとカイラの味方。この先何があっても、例え誰もがカイラを責めたとしても‥‥私はずっと味方よ」
「お‥‥ねえ‥‥さま」
ああ、なんて温かいんだろう。まるで心の底から温められているような、そんな感覚だ。
きっとセシアは、俺が夢にうなされていたのを気にかけてくれているのだろう。
過去に、俺に植え付けられたトラウマがフラッシュバックして悪夢にうなされる時がある。その時は決まって涙が流れている。初めてセシアに見られたときはもの凄くテンパったらしく、そこからはうなされるたびにこうやって優しく抱きしめてくれる。
「カイラ。大好きよ」
「はい、お姉様。俺も大好きです」
時には眩しすぎるくらいだ。俺はこの女性には恩がある。それこそ、何をやっても返しきれないくらいの恩があるのだ。
そう思いながら、俺はある出来事が起きる『きっかけ』を思い浮かべていたーーー。