鑑定が終わった後、俺が目を覚ました頃にはもう日が暮れていた。
どうやらかなり長い間眠っていたらしい。
ボーッとする頭で意識を覚醒させつつ、大事な事に気がついた。
「そうだ‥‥!鑑定の結果‥‥」
俺は即座に立ち上がり、両親の元に向かった。
「ーーーお父様!」
俺は父の部屋のドアを強く開け放つ。
そこには少しばかり驚いた様子の両親と妹の姿があった。
「カイラ‥‥起きたのか。どうだ?具合が悪かったりしないか」
「全然平気です‥‥!それよりお父様!鑑定結果の方を!」
俺は早く自分の結果を知りたかった。
それを見越したかのように、父は気まずそうに母に目を送る。
「‥‥いいのか。言っても」
「はい!ぜひお願いします!」
「傷つくかもしれなくても‥‥か?」
「‥‥?」
なぜ俺が傷つくのだろう、と思ったが即座に理解する。
きっと妹のセイラよりも劣った結果になったしまったのだろう。
それでも、聞かないわけにはいかないのだ。
「‥‥はい! ‥‥どのような結果でも受け入れるつもりです!」
「そうか‥‥」
父も言う覚悟を決めたのだろうか。
真っ直ぐにこちらを見る。
「カイラ‥‥お前の適性は‥‥‥‥」
俺はこの両親に憧れ、優しく優秀な魔法使いになるつもりだ。
だからどんな結果でも受け入れる。そして、必ず努力して大成してみせる、そう思っていた。
「‥‥‥ない」
この言葉を聞くまでは。
「‥‥はい‥‥?」
嫌なものがこみ上げ、冷や汗が流れる。
ない?それはどう言う事だ?
「だからなカイラ‥‥お前はそもそも魔法に適した体じゃなかった。これが鑑定結果だ」
「え」
なんで‥‥?どうして‥‥?
だって両親は魔法使い。そしてカイラは4つも適した属性を持っていた。
なのに俺は‥‥ない?
「な‥‥なんのご冗談ですか‥‥そんなはずないじゃないですか‥‥」
「カイラお兄様‥‥」
セイラは目に涙を溜めて、悲しそうな表情でこちらを見ていた。
「だって‥‥だって‥‥セイラは‥‥4つも‥‥」
「カイラ、君は魔法使いになる事はできない」
魔法は5歳になった時には必ず現れる。後天的に魔法が身についた事実は過去、一度もない。
5歳になった瞬間、分かってしまうのだ。
「そんな‥‥」
俺は膝をつき、項垂れてしまう。床には滴がポタポタと落ちていく。どうしようもなく涙が溢れてきた。
「なんで‥‥なんで俺には‥‥」
「お兄様!」
セイラは項垂れた俺に近づき、手を握ってくる。
「セイラ‥‥」
「きっと、頑張ればどうにかなります!お兄様ならきっと!」
セイラはそう言って励ましてくれた。今はその励ましが、どれだけ傷つく言葉になるかも知らずに。
俺はセイラの才能に嫉妬し、憎まれ口の一つでも叩こうとしたが、セイラの目を見て即座にやめた。
その目は哀れむものではなく、きっと俺ならどうにかできるという希望に満ちたものだった。
「なので、一緒に頑張りましょう!!」
俺はなんてバカなことを思ってしまったんだろう。ただ純粋に応援してくれる妹に、嫉妬するなんて。こういうことはたとえ口に出さなくてもいけない事だと思う。
それに、項垂れるよりも先にやることがあるはずだ。
「セイラ‥‥ありがとう」
俺はセイラにお礼を言い、決心する。
全ての可能性を試す。まずはそこからだ。
この時点で諦めるなんて早計すぎる。
「お父様。教えていただきありがとうございます」
俺は深々と頭を下げてお礼を言うと、すぐに出て行く。セイラも後に続くようについて来た。
きっと、どうにかなる。
そう信じ、自室に入っていくのであった。
「とは言ったものの‥‥」
自室に戻った俺は、ベットに腰掛けてこれからどうするかについて考えていた。
セイラに励ましてもらったおかげで立ち直れたものの、魔法が使えないかわりに何をすればいいのやら‥‥。
「なあセイラ、俺はこれからどうしたらいいんだろう」
俺はついて来たセイラに聞いてみた。
「実はさっきから考えていたのですが‥‥私にもさっぱりです‥‥」
セイラはそう言うが‥‥一緒に考えてくれていたのか。それが何よりも嬉しいものだ。
さっきもセイラの励ましがなかったら、俺はショックでずっと自室で凹んでいたのかもしれない。
「セイラ‥‥さっきは本当にありがとう」
俺は隣に座っているセイラの頭に手を置き、くしゃくしゃと撫でた。綺麗で艶のある黒髪が揺れる。
セイラはよくこれをやって欲しいとせがむのだ。目を細くしてこそばゆそうにしている。
「そんな‥‥!私は思ったことを言っただけですよ!」
セイラは少し頬を紅潮させ、手をぶんぶん横に振った。
「それに‥‥実は不安だったんです。お兄様のお気持ちを想像できても、決してお兄様の心になることはできません。もしも嫌味に聞こえてしまったらどうしようかと思いました。私は本当に、お兄様なら魔法が使えないことなどものともしないと思っていますから」
「セイラ‥‥」
本当に、なんて子だ。涙が出そうになる。
俺の気持ちを汲み取った上で励ましてくれたのだ。
俺にはきっとできなかっただろう。
それなのに俺はつまらない嫉妬をしてしまうなんて‥‥。
これでは兄失格だ。
「兄妹で結婚できたらいいのにな」
「はははははい‥‥!? お、お兄様!?何をおっしゃってるんですか!!」
「あはは‥‥」
「もう‥‥!ばかっ!ばかっ!」
セイラは照れながらポコポコと俺を叩いてきた。なんて可愛い生物だろう。
そんな兄妹でのやりとり。
こんな日常が続けべいいと、俺は思っていた。
次の日。
朝、目が覚めると何やら違和感を感じた。
「なんだ‥‥? お腹の辺りが温かい‥‥?」
布団をめくってみると、そこには俺にくっついているセイラがいた。
思い出した。
昨日俺はセイラに一緒に寝ようと駄々をこねられ、結局一緒に寝た。
「まあ、いいか」
セイラの寝顔は、とても愛らしい。もしも妹ではなかったらドキッとしてただろう。
そんなセイラの頭を撫でていると、セイラが顔をふにゃふにゃにしながら幸せそうな顔をしていた。
「お兄様ぁ‥‥大好きです‥‥」
きゅう。
胸が締め付けられるようだ。
それほどまでに、圧倒的な暴力的可愛さ。
きっと、セイラはモテるだろうな。
今、それを確信した。
俺が寝顔に見惚れていること数分、セイラが目を覚ました。
「あ‥‥お兄様。おはようございます!」
「ああ、おはよう。よく眠れたか?」
「はい。お兄様の匂いはとても落ち着きます。ぐっすりと眠ることができました!」
セイラは握り拳を作り元気いっぱいに言う。
「それは良かった。よし、朝ごはんを食べに行こう。きっとお母様が作っているはずだ」
俺たちは下に降りると、すでにテーブルには朝食が並べてあった。俺の家の朝食は基本的にパンだ。例に漏れず今日もパンが置いてあった。
朝ごはんは、父と母が俺たちより少し早く来て食べていて、俺たちがそこに混ざるような形で食べている。
理由は単純にセイラが早起きできないからだ。俺は父と母の時間に合わせて食べたいのだがセイラがどうしても起きてくれない。1人で食べさせるのもかわいそうなので、こういう流れになってしまった。
「お父様、お母様、おはようございます」
「おはようございます」
俺に続きセイラも挨拶すると、両親は優しく笑って返してくれる。
俺はこの優しい笑顔が好きだ。見るたびに心が温かくなる。
「キャウラ、カイラ、セイラ。朝食が終わったら話がある。俺の部屋に来てくれ」
「分かりました」
父はそう告げると、出て行ってしまった。
キャウラとは母の名前である。キャウラ=ランペイジ。
セイラはこの母と顔が一緒と言っていいほど似ており、身長を足して大人っぽくなるとまさしく母の顔になりそうだ。
話の内容は、きっと今後の事だろう。どこの家も子どもの魔法が発現したらより良い魔法使いにするために育て上げる。その具体的な説明がされるのだ。
きっと俺のこれからについての話もあるだろう。
「失礼します」
物の数分で朝ごはんを食べ終え、俺たちはすぐに父の部屋へと向かった。
父の部屋は広く、本がとても多い。前に読ませてもらったが、俺にはとても難しい内容の本だった記憶がある。
「さて、来てもらったのは他でもない。カイラとセイラの今後についてだ」
カイラは真剣に俺たちを見て告げる。
「まず、セイラについて。君にはこれから毎日魔法の修行をしてもらう。魔力を練ることから始め、上位属性魔法の光を最大限に活かせるようにする。また、他の3属性はサポートとして使えるようにしようと思う」
光属性は上位属性魔法の中でもさらに1番強いと言われている。本来はこれだけでも特大だというのに、まだ他の属性を3つも使えるなんて、なんて話だ。
「そしてカイラ。君は剣について学んでもらおうと思う」
「!」
まさにそれは青天の霹靂だった。
「驚きました‥‥」
「ん?何をだい?」
俺の言葉に父は首を傾げる。父は俺に剣を習えと言った。だってそれはーーー
「俺も、剣を習いたいと思っていたからです」
「ほう」
そう、俺も昨日の時点で剣しかないと思っていた。
「基本的に魔法使いの武器は剣だ。なぜかと言うと魔法を通しやすい上に、殺傷能力が高いからだ。つまり、剣は魔法使いにとって汎用性が高い武器というわけだ。いずれはセイラにも剣を習ってもらおうと思う」
その通りである。現在最も強く、典型的な戦闘スタイルは魔法使いの剣士だ。これが最も魔法使いの力を発揮すると言われている。
「魔法が使えないカイラには、ただひたすらに剣術を覚えてもらう。それが僕の考えだ」
「はい。俺もそう思います」
「そうか。よく言った」
父は満足げに母を見て、母もそれを見てうなずく。
「カイラ、セイラ。頑張るんだぞ」
「2人とも、頑張りましょ」
「「はい」」
両親の応援に、俺とセイラは精一杯返事をするのであった。
読んでいただきありがとうございます。
お気に入りや高評価をいただけるとありがたいです!