優しい魔法使いの剣聖記   作:ホウカ

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第5話 道場

剣聖。

 

 剣の道にすぐれその奥義を極めた人。剣における聖人。

 

 

 

 

「剣聖‥‥か」

 

 

 

 

 剣聖は10年に一度開かれる、剣聖杯によって決められる。

 

 剣聖になれるのはもちろん優勝した1人のみ。要は、世界で1番強い人物の象徴である。

 

 数々の魔法使いが剣を通して戦い、頂点を決める。誰もが憧れを抱く、剣聖。

 

 俺は魔法が使えない。魔法に適した体ではなかったのだ。

 

 それを聞いた時は絶望して取り乱してしまったが、今は違う。もう迷わない。

 

 目標は剣聖。大きすぎる目標かもしれない。人に聞かれたら笑われるかもしれない。それでもいい。魔法が使えなくても剣聖になれるということを証明してやる。そう気合をいれ、家を出る。

 

 向かう先は、この村で唯一剣を教えてくれる道場だ。

 

 

 

 

 剣の流派にも色々種類があり全部で4種類ある。

 

 火心流。

 

 主に火属性適合者による流派。攻撃に特化している。火属性魔法で攻撃力を最大限まで高め、重い一撃を放つ。

 

 水心流。

 

 主に水属性適合者による流派。防御と反攻優れている。流れるような剣で相手の攻撃を流し、その威力を利用して反撃をする。

 

 雷心流。

 

 主に雷属性適合者による流派。他の流派に比べて圧倒的な素早さを持つ。相手を撹乱する動きと手数の多さが特徴。

 

 風心流。

 

 主に風属性適合者による流派。この流派は技巧の流派と呼ばれ、風によって剣技に緩急をつけ、相手を惑わす。

 

 

 

 

 家で予習してきた内容はこんな感じだ。

 

 俺は魔法を持たないため、どの流派でやろうか決めあぐねている。

 

 ちなみにセイラは家で魔法の修行をしている。父が火属性魔法、母が特質魔法、治癒の使い手である。治癒魔法は本当に発現者が少なく、貴重な存在だ。

 

 うちの家はマルチだったり、上位属性魔法だったり、特質魔法だったりでまるでそれらが普通のように感じるが、実際は異常である。どれか一つを持っているだけで一騎当千と言われているのだ。

 

 

 

 

 俺は道場につき、緊張した表情で中へ入る。これから始まるんだ。俺の戦いは。

 

 道場は思った以上に広く、それぞれの流派ごとに部屋を分けているらしい。

 

 近くにいた青年が俺に気が付き、師範を呼んできた。

 

 

 

 

「やあ、君がカイラだね。ズオラから聞いているよ。さ、こちらへ」

 

 

 

 

 案内されて中へ入り、通りすがる者たちから視線が集まる。ここの道場は俺に近い歳の子どももおり、みんなが果敢に剣を振っている。

 

 同世代のライバルたちもいるだろう。とても燃えてきた。

 

 

 

 

「僕の名前はスーザン。この道場の主だよ。ここは実力順に3段階に分けられており、僕が教えるのは3段階目の子たちだ。君は今日から1段階目の基礎に入ってもらう。僕に教えてもらえるよう是非頑張ってくれ」

 

 

 

 

 そう言われて、「1の部屋」に入れられた。

 

 スーザンに軽く紹介してもらうと、スーザンは持ち場に戻っていった。

 

 

 

 

「改めまして、カイラ=ランペイジです。師範、ご指導よろしくお願いします」

 

「この部屋で教えてるラッドだ。よろしく」

 

 

 

 

 改めて自己紹介をした「1の部屋」の師範、ラッドは早速というように俺に色々聞いてきた。

 

 

 

 

「カイラ。君の属性はなんだい?」

 

「属性は‥‥ないです。俺は魔法使いではありません」

 

 

 

 

 俺がそう答えると、ラッドは少し困ったような顔をし、周りで聞いていた子たちには思いっきり笑われた。

 

 

 

 

「魔法使いじゃないーー?」「剣士になれないじゃん」「なんでここにきたんだか」「冗談でしょ?」

 

 

 

 

 馬鹿にしたような笑い声が響き渡る。

 

 

 

 

「こらこらお前たち。自分の稽古に戻りなさい」

 

 

 

 

 ラッドにそう言われ、稽古に戻っていった。

 

 

 

 

「そうか、じゃあ流派は何に入るんだい?」

 

「流派は、とりあえず火心流から習いたいと思います」

 

「分かった」

 

 

 

 

 師範はそう言い、俺に火心流の型を教えてくれた。それに習い俺はひたすら木刀を振り続ける。

 

 何分間たつと、師範が何人かを呼びかけていた。どうやら模擬戦が行われるらしい。

 

 それを横目で見ていると、とても同じくらいの歳とは思えない動きをしていた。

 

 

 

 

「1段階目でこのレベルか」

 

 

 

 

 思わず口に出してしまう。

 

 俺もああいう風に動けるようになりたい。そう願って剣を振り続けるのであった。

 

 

 

 

「ちょっとお前。こっちこいよ」

 

 

 

 

 剣を降り続けて1時間程だった時、声をかけられた。

 

 そう言ってきたのはいかにもやんちゃそうな少年だった。

 

 

 

 

「俺、こいつと模擬戦してみたい。いいよな師範」

 

 

 

 

 明らかに俺を見下している目だった。

 

 魔法が使えないなら勝てると思ったのだろうか。よく見ればさっき模擬戦で負けていた子である。

 

 

 

 

「カイラは今日入ったばかりなんだ。ダメに決まっているだろう」

 

「待ってください、師範」

 

 

 

 

 俺なんて相手にされないと思っていたが、まさかこんな形とはいえ相手から誘ってくれるなんて。

 

 早速成長できるチャンスである。

 

 

 

 

「こちらからも是非お願いします。俺に模擬戦をさせてください」

 

 

 

 

 俺がそう言うと、師範は少しばかり考えるが、やがてうなずいてくれた。

 

 

 

 

「いいでしょう。では2人とも。準備しなさい」

 

 

 

 

 俺の申し出にやんちゃな男の子は目を丸くしていた。

 

 俺から言うとは思わなかったのだろう。

 

 それを逆になめられていると捉えたのか、睨んできた。

 

 模擬戦は木刀で行い、魔法の使用も禁止されている。またラッドの監視下の元でないと行ってはいけない決まりだ。

 

 危険だったらラッドが止めに入ったり、動きをしっかり見れてアドバイスしやすいからだそうだ。

 

 

 

 

「では、いざ尋常に‥‥始め!」

 

 

 

 

 開始の合図が出される。

 

 俺は言われた通りに剣を構え、様子を見る。

 

 10秒ほど相手の様子を伺っていると、相手が口を開いた。

 

 

 

 

「こいよ、新入り。一丁前に様子見してんじゃねぇ」

 

 

 

 

 そう言われると同時に俺は相手の懐に潜り込む。

 

 防御など習っていないため、攻めた方が良いからである。

 

 俺が相手に向かって剣を振り落とす。その瞬間、相手がニヤけるのが見えるのと同時に意識が途絶えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 顔に冷たい感覚が広がり、目が覚める。

 

 どうやら水をかけられたらしい。

 

 そのおかげで意識が冴え、思い出す。

 

 

 

 

「やられたのか‥‥」

 

「おら、起きろよ」

 

 

 

 

 俺にそう言ってくるのは俺とさっき模擬戦をしたやんちゃな少年だった。

 

 

 

 

「痛ッ」

 

 

 

 

 起き上がると頭に痛みが走った。

 

 

 

 

「そりゃ痛いだろうよ。思いっきり頭に叩き込んだからな」

 

 

 

 

 いくら木刀と言えど思い切り叩かれたら痛いものだ。

 

 

 

 

「ありがとう、模擬戦をしてくれて」

 

 

 

 

 俺はそう言って手を差し出す。

 

 俺の手を払い少年は睨んできた。

 

 

 

 

「あんた、俺なら勝てるとでも思ったのか?魔法を使えない奴が魔法使いに勝てるわけないだろ?バカなのか?」

 

 

 

 

「そうだな‥‥痛感したよ‥‥」

 

 

 

 

 俺は素直に思ったことを口にする。

 

 まさか歳が近い子とここまで差があるとは思わなかった。

 

 模擬戦は通常、魔法の使用は禁止されている。その上で負けたのだ。

 

 今日始めたばかりとは言え、少し悔しかった。

 

 

 

 

「そう思うんなら剣士なんてやめたらどうだ?魔法が使えない奴には無理だ」

 

 

 

 

 それは、きっと誰もが思うことだろう。この少年もきっと悪気がなく純粋に思ったことを言っているのだろう。

 

 魔法使いの体は使えない人間の体に比べて圧倒的に優れている。

 

 それを感じた。

 

 

 

 

「まあ‥‥少しだけ頑張ってみるよ。きっと成長してみせる」

 

「あんた‥‥マジか」

 

 

 

 

 俺の言葉を聞いて少年は呆れたように笑った。

 

 

 

 

「さっきは悪かった。俺の名前はネールだ。よろしくな」

 

 

 

 

 やっぱり悪い奴じゃなさそうだ。

 

 ここでできた初めての友達。

 

 負けたのは悔しかったが、俺はそれが少し嬉しかったのだ。

 

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