ところで星5誰選びました?
ファラオとタマモでクッソ悩んで最終的にケモミミに負けました。
KO!
<<<八ヶ山市・西小岩町<<<
月の雲隠れするタイミングで大地を蹴った。向かいから突進する自動車を飛び越えて走る。振り返れば、周囲を巻き込んで辺りを照らすホテルの威容が見える───と背筋に冷たいものを感じて、首を引っ込めながら大地が近づいた瞬間に...蹴る。
危ないアブナイ。足首捻るところだった。
(初めてだったけど。こういう感じなのか、『直感』スキル)
(スキルの発動も出来ている、やはりサーヴァント混じり...デミサーヴァントはスキルの共有も可能か)
(いちいち擬きだの混じりだのって言うの面倒だろ。これからはデミで統一な)
興味の無さそうな返事が向かい風に乗って背後へと消えていく。照明も疎らな閑とした住宅街を抜けて、「小岩橋」とプレートの掛かった黒塗りの小さな橋を飛び越えた。痩せ細った木々の生い茂る山の裾に突っ込む。大地が踏まれる度に土が掘り返されて靴に入っていく、後で取るの面倒くさいな...。
人の手入れの入っていない、放置された森は人ではなく獣や虫の王国だ。ざわざわと枝木が擦れ、茂みの揺れる音は絶え間なく森に流れる。
聴こえる筈のない音を、光を、人外の体は捉えていく。木陰で揺れる黄色い尻尾。樹液に集る緑や黒の甲殻。それらに乗じて生き物ですらないものも現れそうで、スキルとは違った恐怖が背中を押し出した。重みを増したスニーカーの一歩が地面に足跡を残す。悪寒を頼りに首を右に倒して枝を避けて、また疾走を続ける。熟達の体操選手のような動きも、殆ど手を抜いていても可能だ。
その気になれば完全武装してもこれくらいはできるとシールダーは言うのだから、本当にサーヴァントとはぶっ飛んでるなぁ。
目下のアナログ腕時計は10時1分。30分には多分間に合うだろ。
(というか…本当に道あってるんだよな?大丈夫だよな?)
寝ぼけ目の衣沙に見送られたのが10分前。人間を辞めてる視力を持ってしても見える範囲に廃工場なんて何処にもない。この道を行けって言ったのもお前なんだぞ、おい。時間に遅れちゃました〜てへ。なんて通じるのは美少女だけだからな!
(合っていると言っているだろう。マスターには感じられないかもしれないが、サーヴァントは特有の高密度の魔力を放っている。言うなれば、「強者」の気配。前方にそれが2つ感じられる。まだ心配なら地図で確認すると良い。スマホという機械もある)
強者の気配ねぇ。天才みたいな事言い出しやがって、まぁ一応見ておくか...。暗闇の森で不自然に光が灯る。周囲に気を使い光量を最大限下げた所で写真アプリで出発前に撮った周辺の地図を見る。画面の右下に小岩橋。その上一帯に広がる森林の先。道路も無れけば森も無い、空疎な隙間が平面にぽっかりと浮かんでいる。
(まぁ良いさ。兎に角、行けば分かるって事だろ)
(その通りだ。気配が近づいてきたぞ、マスター)
足元に積もった枝葉を蹴散らして、小高くなった大地を越えていく。その時、空間が途切れるような感覚と共に視界から木々が消える。それを埋め直すのは複雑なパイプが絡み合った工場とボロボロの塗装を必死に保とうとするコンクリートジャングル。
月が出てるのは逆に失敗だな。見えてなきゃあ、こんな化物が住んでる廃墟には近づかないぜ。御三家っていうのも案外趣味が悪いんだな。それともっと悪いのはここに突っ込もうとする相棒だっ...待て、一応の確認をぉぉぉぉぉ...。
>>>御御御月山(おおみつきやま・河東工業工場跡地)>>>
(錆びついて殆ど読めないが、これは河東とは読めないんじゃないか?)
(そうか。行くぞマスター)
どぅえっゅへぇ〜〜〜。
勝手に動く体が施錠された、学校と同じタイプの鉄門を飛び越えて敷地に入っていく。コンクリートは所々欠けて雑草が生い茂って、窓硝子は隈なく割れている。荒廃。衰亡。地下でマッドな研究を送ってそうな場所だあ。セーブポイントは無いんだよなぁ。
「しょーがねぇーなぁー。えー、秋近愁利!突撃!」
体の操作をシールダーから奪い取って暗闇を歩く。勝手に動かれるよりはマシだった。
頼りになるのは人外の五感と戦闘力だけ。奇妙に感じられるのは、さっぱり音がしないことだ。木々が揺れる音も、物が擦れる音も、風が通る音も無い。砂利を噛むスニーカーの声も、無に吸い込まれていく気がした。不気味だ。
月が隠れたら本当に何も見えないな。此処。さっきはまだ獣が居たし、生気ってやつがあった気がする。ゼロだな。道に置き捨てられたトラックを見る。外装は赤錆びていて当然誰も乗っていなかったが、嫌なおどろおどろしさを感じて遠ざかる。
不安を拭うために首を回した。誰かに付けられているような気がする。気のせいだと思うが、悪霊とか妖怪とかが住み着いていても可怪しくない。
バッと振り返った先には、酷く遠く感じられる鉄門とトラック、それとくっきりと縁へりだけを残す八ヶ山の山脈が見える。霊気は感じない、気のせいか。振り向いてはっきりと早足で歩く。とっととこんなとこ出て行ってやる。
微かな光を頼りに道を曲がっていく。電灯の途絶えた自動販売機の前を通る。道を曲がり、シールダーの言葉を頼りに十字路を真っ直ぐ進む。雲はまだ晴れてくれない。背筋を屈めて両手を握って歩く。歩く。壊れたシャッターを横切る。半分まで下がったシャッターは、何かが這い出てきそうだった。歩く。まだかかるのか。建物への入り口を見つける。広がる深い闇に足を掬われるような気がして、唾を飲み込んでその場を後にする。いつの間にかひゅうひゅうと風が鳴り始めた。何かが蠢いているような音はその音源を辿らせず、にわか雨のように消えては現れるのを繰り返している。
歩く。曲がる。進む。歩く。進む。進む。曲がる。一体どこまで歩くんだ。もう十キロは歩いたんじゃないのか?ああ、また曲がるのか。
不味いな...頭痛してきた。
(シールダー、サーヴァントの気配って分かるか?)
(いるぞ。確かにいる。右手の赤と白の塔が見えるな?その下の建物に奴らはいる。丁度二人だ。もう少しだ)
あれか...。頭上に張り巡らされたパイプの隙間から唯一高く突き出た建築物がある。若干の感謝を感じながら駆け足(サーヴァント基準)で黒く影の掛かった灰色の大地を蹴り飛ばす。三歩を終えた所でギリギリの理性が、相手方がこちらを見ていることを思考に挟んだ。思考の大半を占めた恐怖が一気に吹き飛び、焦りと羞恥と、それをどーにかしようという怜悧な計算が働き、
そして閃く。
その場でジャンプ!そして変身!
パイプにぶつからない、大体2メートル程度宙に浮いて体から影を吹き出させる。体を這い回る影が全身を覆い、その色は深く収斂し、
(此処で装備をする理由は無いのでは?結果的に悪くは無かったが...)
(いやさ、目の前で着替えられても嫌だろ?...ということにしようぜ)
マスターが良いのなら、とシールダーは押し黙った。それと表情を読まれないのはでかい利点になる。顔を見せてからじゃあ遅いし。体の半分に馴染んだ戦いの感覚と、鎧と武器の感触。
一歩踏み出すと、全身を万遍なく鎧う鋭利な黒鎧が、コンクリートと金属で囲まれた夜道にがしゃりと響く。その羽の様な軽さを背負って胸を張って歩き直す。足取りは変わって堂々と。前を見据え、傲慢とも見える程ゆったりと歩く。
赤い塔の立っている建物まではあっさりと着けた。そして歩いてきた記憶がない。いや、それは一度置いておこう。
前方兜越しに広がる、風の吹き抜ける暗黒。一寸先は闇、か。
薄ぼんやりと続く苔色の、埃を被った床。
意を決して踏み出そうとした時、ぞわりと背筋が震えた。
竦んだ右足が膝を付く。『直感』に従い振り抜こうとした右腕がぴたりと止まった。鎧の足元の地面に広がる尖った闇。ああ、ただの影か。驚かせやがって。振り向かずとも、雲から顔を出した月の姿を感じ取れる。緩慢に床を踏む度に舞う粉塵も気にならなかった。本当に生きた心地がしない。早く同盟だけ結んで帰ろう。
邪魔な得物を消して階段を登る。がしゃり、がしゃりと時計のように時を刻む。その一秒は一分より長く一時間よりも重く、俺の鼓動を急かす。そして、漸く、五階に着いた。
何より肩の力が抜けたのが、通路の先から光が差し込んでくる事だった。顔をぬっと出せば右側が壁になっていて、あったはずの扉を失った壁が赤く照り返っている。
そこからはもうお化け屋敷のゴールに着いた気持ちで扉を通った。
「ようこそ、セイバーの英霊。先ずは此処まで足を運んでくれた事に謝意を。さ、席を用意している」
お、予想より明るいな。と安堵した矢先にそう言われた。
若い、俺と同じ程度の形なりだ。白のワイシャツにネクタイ。シンプルな黒ズボンにベルトを巻いた姿はサラリーマンか良い所の学校の学生のように見える。んん、こいつ強いな。感じられるだけでも兄貴に負けないくらいの魔力。こいつが遠坂か。
言われるままに古ぼけたソファーに座る。黒革が武装した尻を何とか受け止め、不安な軋みを吐き出す。おおー、楽だぁ。ひと呼吸置いたところで、怪しまれないよう両手は膝の上に止め、視線をさっきから気になってしょうがないその男に投げかける。
青年より少し年を取った、二十代前半に見える男だ。緑色のジャンパーとニット帽、灰色のズボンを穿いている。おまけにサングラスなんかを着けていて、愛想の悪い仏頂面はぴくりともしない。蒸し暑いだろーに。あ、やべ目が合った。
視線を流して室内を見る。多分社長室か何かだったんだ。背後の窓から差す月光が長机を照らす。部屋の四隅と机の上に置かれた小石がオレンジに発光して部屋を明るくしている。入って手前に机とそれを挟むソファー、その奥に空の棚と大きな執務机。その上にも小石が置いてあった。
きぃと椅子を軋ませて青年が執務机に収まる。若干つり上がった目尻が鋭利な印象を与えていた。よく通る声で青年が言う。
「自己紹介から入らせてもらう。私は遠坂玄人。の字は
やっぱりな。こっちが遠坂だった。当主直々に来るって聞いていたけど大分若いな。本家のサンタ爺みたいなのが全部じゃないってことかな。この机も、壁も、この部屋だけが新品のように綺麗だ。こいつはこの男の仕業か。
視界の部屋は明るく、清潔感がある。居るだけで肺が悪くなる事もない。記憶の中の片方が開かれた大きな窓も当時の輝きを取り戻していた。綺麗好き…いや潔癖な男なんだ。この当主様は。開かれた窓から鎧越しに風が吹きつける。鎧の中は蒸し暑いので、鎧の隙間から入り込む風が首筋を冷ましてくれて助かった。小さな蛇が舌を鳴らすような音が絶えなかったが、必要経費と割り切った。
遠坂はそこで一度切り、目の前の男に目配せする。頷いた男は両手は膝の上のまま口だけを動かした。
「志島、士悠という。しゆうは武士の士に悠長の悠だ。よろしく頼む」
思ったより若い声だった。普通に20越えてない疑惑あるぞ。紹介を終えた志島と遠坂がこっちを見てくる。じろじろ見られると鎧越しでも緊張するが...するしか無いよな。
口を開きかけた所で、意識が体から剥がされる。代わりに喋ったのは、当然シールダーだ。
「お心遣い感謝する。名を明かせず心苦しいが、私のクラスはシールダー。
いちゃもんをつけようとした時、空気がピンと張った。遠坂が目を細め、志島はほんの少し顔を上げた。部屋に流れる空気はこの前の衣沙との気まずい空気以上に重苦しい。鎧が風に煽られて嫌な音を立てている。風がうなじをちろちろと舐めた。
しかし俺の心臓は至って平常運転。筋肉も一切固まっていない。サーヴァントの胆力も見事なものだ。
そして、その大本の遠坂家当主は、鋭い目尻を更に尖らせて組んだ両手を口元に置いた。
「シールダー。エクストラクラスか。知識不足を恥じるが、一応尋ねてもいいかな」
「特に言うことはない。得物はセイバー時と変わらない。セイバークラスは攻勢に秀で、シールダークラスは守勢に秀でている。それくらいの差。私のマスターは少し状況が複雑でな。私をこのクラスで呼ぶことになった」
戦闘能力は保証しよう。と、そこで自己紹介は終わった。
(いやお前さ、特に言うことあるでしょ。クラス補正って結構大事なんだぞ。お前も見たでしょリトマス試験紙みたいなアレ。お前筋力B耐久Aだけど敏捷Dだぞ。いいのかそれで)
(問題無い。不意打ちで殺す)
騎士様?
大丈夫かな、と思っていた矢先、遠坂がシールダーに問いかける。
「貴殿のマスターは事情により姿を見せることができないと聞き及んでいるが、マスターから離れ続けて問題はないのか?」
問題無い。既に解決策は出来ている。との返答。マスター此処に居るしな。なんなら令呪すら使えるぞ。
あれ、不意打ち強くね?人権?あれぇ??
それらしい答えを遠坂も予想していたのだろう、それなら安心だ。と言って会話を打ち切られた。言質が取りたかったのだろうな。
そろそろ本題入ってもらいたいんだけどいいかな。シールダー大丈夫か?
「疑ってしまった事謝罪する。そしてこれで、収集できたメンバーが集まってくれたことになる。これより今回の同盟についての説明をしよう」
やっと本題だ。ここまでは長かったけど、ここからもまた長いんだろうな。サーヴァント任せっていうは暇だ。終わったら起こしてもらえばいいか。そう楽観していると、緊張が解れて眠気が増してくる。夏の夜っていうのは蒸し暑いけどこれならそう時間がかからないな。
見えない瞼を閉じ、視界を閉ざす。四肢の感触が閉じていくのと反対に聴覚と触覚はまだその機能を果たしていた。蒸された頬を汗が流れる。鎧の風音は益々強まり、窓硝子がピシピシと鳴った。ひゅうひゅうと聞こえていたそれは何時しかうねりを生み、心のざわめきは半ば沈みかけた意識を戻すのには十分だった。
風音はまるで大きな生き物の吐息のようだ。轟々と荒れ回る何か。落ち着かない、さっきから一体どうしたんだ。...疲れているんだ。
遠坂の声が聞こえる。無愛想な顔が無くなると分かったが、落ち着いたよく通る声だと思った。
「シールダー様。説明をする前に、まだ一つ」
「なんだ。マスターの事は話せない。我々は余り余裕があるとは言えない」
「いいえ。知りたいのはマスターではなく、貴方の方です」
その言葉を、俺の澄まされた耳は辛うじて聞き取った。
前へぶっ飛ぶ視界の端の端で遠坂の唇が動いていた。継ぎ接ぎの思考が理解する。
たった4文字、『ランサー』と。
==Tips==
御三家
原作と同じ「遠坂」「間桐」「アインツベルン」の三つ。舞台が変わったため遠坂は八ヶ山の管理をしている。