ガンダムビルドライザーズ   作:shisuko

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長らくお待たせ致しました第16話。
少し時間が掛かった上にぶっちゃけつなぎの回なのでちょっとアレかもしれませんが、どうか読んでやって下さいまし。


第16話 アイアンタイガー(コテツ)の思惑

 今更ながら“フォース”について解説しよう。

 フォースとは、GBN内におけるチーム制度、およびその制度に(のっと)って結成されたチームの呼称であり、他のゲームで言うところの()()()()()()()のようなものに当たる。

 GBNではこのフォースを対象にした“フォースミッション”や“フォースフェス”などの他、異なるフォース間での集団戦である“フォースバトル”や同盟(アライアンス)締結(ていけつ)制度に“フォースポイント”など、様々な専用要素が設けられている。

 これに加えて所属人数にも制限は無く、数えきれない程の大人数で構成されている大所帯(おおじょたい)もあれば、逆にたった一人しか所属メンバーがいないフォースの存在も認められるなど、制度としての自由度も非常に高い。

 それ故に、このフォース制度をGBNを楽しむ上での醍醐味(だいごみ)として(とら)えるダイバーも少なくないのだが、その恩恵に(あやか)るには一つクリアしなければならない制限がある。

 ダイバーランクがD()()()である事だ。

 入門し立てのF、幾らか経験を積んだがまだまだのE、という流れでランクを上げていったダイバー達が初心者を脱却するか否かの境界線(ボーダーライン)。それがDランクだ。

 このランクに到達しているという事は、最低でも初心者から中級者へと移り変わる一歩手前程度の経験は積んで来たという証明であり、その事実がそのまま既存のフォースへの加入、或いは新規にフォースを立ち上げる権利の解放(アンロック)条件となっている。

 “Dランクへの昇格がGBNの本当の始まりである”と語るダイバーは数多いが、この解放条件が正にその所以(ゆえん)なのだ。

 よって、そこに達していないF、Eランクのダイバーにとって、こういったフォース関連の要素はまだ関わる資格の無い無縁の事象である。――と思われがちだが、実はそうでもない。

 フォースへの加入や設立はどう足掻(あが)いても不可能だが、それ以外の要素――フォースミッションやフォースバトルであれば、Dランクに達していないダイバーでも参加自体は出来る。――それを可能とする()()さえ知っていれば。

 それが――。

 

「“傭兵(ようへい)”?」

 

 相変わらず様々な姿のダイバー達が周囲を行き交う、GBNはセントラルエリアのロビー。そのど真ん中。

 これから行うというフォースバトルについて、相手のフォースと最後の待ち合わせを予定しているという事で、(くだん)のフォースが合流するまでの時間を潰す一環でアイアンタイガーからフォース制度のおさらい説明を受けていたイツキは、その過程で出て来た聞き慣れない言葉に、何それ、と首を傾げる。

 ちなみに、この場にトピアはいない。現実でモビルドール(自身の体)に戦闘用の追加装備を取り付けている最中である。

 

「さっきも言ったが、フォースにゃ人数制限は無ぇ。だから数え切れねーくらい人がいる“第七機甲師団”みてーなフォースもありゃ、“ZA-∀Z(ザッズ)”みてーに一人二人しかメンバーがいねーフォースだってある」

 

 その一方で、攻略するための推奨(すいしょう)人数や最低参加人数を定めているフォース向けのミッションやイベントがGBN上には幾つも存在している。そのため、構成人数の少ないフォースではメンバーの頭数が足りなくて攻略が困難になったり、そもそも参加が出来ないといった問題が常に付いて回るのだ。

 こういった問題を解消するための手段の一つとして設けられたのが、フォース外のダイバーを“傭兵”として一時的にフォースに所属させられる“傭兵制度”だ。

 だが、この制度にはちょっとした()がある。――Dランク以上のダイバーを対象としたフォースの補助制度でありながら、傭兵として招くダイバーのランクには特に制限が設けられていないという()が。

 つまり、本来ならばフォース関連の要素への参加資格を持たないF、Eランクのダイバーでも、傭兵としてどこかのフォースに一時所属する場合に限り、それらを楽しむ事が出来るというワケである。

 

「噂じゃ、“AVALON(アヴァロン)”や第七機甲師団みてーな上位フォースじゃこの()使って、まだDランクになってねー有望(ゆーぼー)な新人候補もバトルやミッションに参加させたりしてるらしーな。――ま、ともかくそーいうワケだから、まだEのオメーでも今日のフォースバトルくらいなら参加できるってワケよ」

 

 そう言い纏め、最後に、分かったか、と確認を取るアイアンタイガー。

 それに対してイツキは、

 

「……あのさ?」

 

「あん?」

 

「何で俺なの?」

 

新たに浮かんだ別の疑問を尋ねた。

 

「話は分かったよ。その傭兵ってヤツやるのも別に良いってゆーか……」

 

 そもそも、これまでの助力の対価としてやれ、という話なので断れないのだが――それはそれとして、どうも解せなかった。

 今回のログインでは、イツキは先程出来上がったばかりのコアガンダムをスキャンして来ている。組み上がったばかりで、まだ一度もGBN上での試運転を行っていない。戦えるかどうか以前に、そもそも支障無く動かせるかどうかすら現状分からないガンプラを、だ。

 それに加えて、先のアイアンタイガーの説明をそのまま鵜呑(うの)みにするならば、本来傭兵システムは足りない頭数を補うための制度なのだから、招き入れるべきは自分達と同等か、それ以上の実力を持つダイバーが推奨される筈だ。にも(かかわ)らず、アイアンタイガーはまだEランクのままのイツキを目前に控えたフォースバトルに参加させようとしている。

 疑問を覚えない理由が無かった。

 

「“アーマー”だってまだだしさー……」

 

 そういうワケで、どうにもアイアンタイガーの意図が分からないイツキは疑念の視線を彼へと向けるのだが――それに対して返って来たのは、

 

「ヒロトさんからパーツデータ貰ってから今日まで、オメー何してたよ?」

 

意味あり気な笑みを浮かべたアイアンタイガーからの問い掛けであった。

 

「? 何だよ急に? 何って――色々ミッション受けて回ってたじゃん?」

 

「そーだ、ミッションだ! 片っ端からミッション受けて回ったんだ。コアガンダムのパーツ出すのに要る(ビルドコイン)稼ぐためにな」

 

 その過程で、少しでも効率を上げるためにアイアンタイガーやトピアに協力を頼んだりもした。今にして思えば、その際のいやに乗り気だった彼の態度も、今回の要求が念頭にあったからなのだろうが……。

 それはそれとして、イツキの頭には一つ抜けている事があった。

 ビルドコインを集める手段としてミッションを受け続けていたために失念していた、もう一つの要素が。

 

「つー事はだ、当然ビルドコイン以外にも溜まってるモンがあるよなぁ?」

 

「溜まってるもの? ――あ! ()()()()()()()()!」

 

「そーよ、それだ!」

 

 これまで受けたミッションは、いずれも得られるビルドコインの金額を優先して選んでいた。そのため、ダイバーポイントの方は殆ど気にしていなかったし、ミッション一つ毎に得られたポイントも恐らく大した量では無かった筈だ。

 だが、塵も積もれば何とやら。一回毎に得られるポイント自体は然程(さほど)ではなくとも、積み重なっていった最終的な量はそれなりのものになって来る。

 となれば――。

 

「今日まで、お前はミッションいくつもクリアしてきた。そんだけダイバーポイントだって溜まってる。だから、俺の見立てじゃ多分あと少しだ。今回のバトルで勝ちゃ、お前のランクは多分D()()()()()

 

 そうなれば、今回のような傭兵システムの穴を利用した裏技など使う必要は無くなる。

 そんなものに頼らずとも、イツキは正式に――。

 

「フォースに入れるようになるっつーワケよ! ()()()()()()()()()()!」

 

「へ?」

 

 妙な言葉が聞こえた気がした。

 思わず、素っ頓狂(すっとんきょ)な声を上げてしまう言葉が。

 だから、流石にそれは無いよな、とイツキはすぐに思い直し、実際には何を言っていたのかをアイアンタイガーに確認しようとする。

 が、そんな必要は無かった。

 

「イツキ、()()()()()()()()()

 

「え? ……ええっ!?」

 

 続けられたアイアンタイガーの台詞によって、先程聞こえた言葉が聞き間違いでは無かったと、尋ねる間も無く知らされたがために。

 

アガタ模型店()ん中じゃバトルの事しか言わなかったが、ありゃ全部じゃねー。ホントにお前にやって貰いてーのは、最初っから()()()なんだわ」

 

 そのためには、まずイツキがDランクへと昇格してフォースへの参加権を得る必要があり、そこで必要となる残り僅かなダイバーポイントを稼ぐための手段として、丁度良く予定があったフォースバトルに傭兵として参加させる事にした。――というのがアイアンタイガーの本当の狙いだったらしい。

 が、その説明をイツキがすんなり受け入れられたのかといえばそんな事は全く無く、すぐさま彼は反発する。

 

「い、いきなりそんな事言われても……。ってか、結局何で俺なのかって答えになってないじゃんかそれ!」

 

 アイアンタイガーのこれまでの言い分の要点を()(つま)めば、最終的に自分のフォースにイツキを入れるため、という事になる。

 だが、当のイツキが訊いているのはそこではない。

 彼が知りたいのはもっと根本――“何故、(ようや)くコアガンダムを手に入れたばかりの自分をそうまでしてフォースに加えてたがっているのか?”――だ。それがはっきりと説明されるまでは納得出来ない。

 と、その時だった。

 

「俺はここまでお前の戦いを見て来た!」

 

 そう強い口調で言うのが早いか否か、素早く伸びたアイアンタイガーの両手がイツキの肩を左右からがっしりと掴んだのは。

 

「ハッキリ言っちまえばお前はまだまだだ! 自分(テメー)のガンプラやっと作り上げたばっかで手の込んだ改造だって出来っこねーし、動かし方だって全然なっちゃいねー! けど、それでもお前はここまでやって来た。初心者狩りの連中だって俺らの手助け込みだけど勝ったし、ヒロトさんのミッションだってクリアこそ出来なかったが、それでもあの人を認めさせた。そいつは全部偶々(たまたま)か? まぐれ当たりの、唯のラッキーか?」

 

 ずいっ、とアイアンタイガーが身を乗り出す。

 反射的に首を後に()らせたイツキのすぐ目の前で、いーや、違うぜ、と大きく首を左右に振って見せる。

 

「全部偶然なんかじゃねー。全部、お前が勝ち取った結果だ。――全部勝ち取れるだけの底力が、お前ん中にあるんだ!」

 

 アイアンタイガーの目が、まっすぐにイツキへと向けられる。

 現実と変わらない黒い瞳が、ブレるの事の無い熱の籠った視線を彼へと注いでくる。

 

「俺にゃ()がある。作ってまだ一ヵ月ちょいで、メンバーも俺とトピアしかいねー全然弱っちい俺のフォースを、いつかAVALONや第七機甲師団、マギーさんとこのアダムの林檎やBUILD DIVERSみてーな――いや、そいつらも超えるトップフォースにするって()()がよ!」

 

 そのためには、もっとメンバーが必要になる。もっと強いダイバーが。

 だから、フォースにイツキを所属させようと決めた。

 決して幼馴染だからでも、またこれまでの恩を返させるのに丁度良いからでも無い。

 これまでの大きな試練を乗り越えて来た彼ならば、いずれその夢を叶えるための大きな力へ成り得ると見込んだから。

 ――真っ直ぐに向かい合ったまま、情熱が込められた真剣な口調でイツキを自らのフォースに加えようとする理由をそう語るアイアンタイガー。

 それが終わった後、

 

「コテツ……」

 

イツキは鼻先十数センチほどにある彼の顔を向き合い、互いの視線を交わし合う。

 まっすぐに向けられたアイアンタイガーの熱意の(こも)った瞳を通し、その奥にあるものを知ろうと、彼もまた真剣な眼差しを向け返す。

 そして暫しの沈黙を経て、

 

「……()()()()?」

 

まっすぐに向けていた眼差しを胡乱気(うろんげ)に歪ませて、イツキは問うた。

 途端、はぁ、とアイアンタイガーが動揺し出す。

 

「な、何言ってんだオメーは? ぜ、全部マジに決まってんじゃねーか、いい、今言った事はよー!」

 

 ホントもへったくれも無ぇし、とすぐさま言い返して来るアイアンタイガーであったが、しかし、先程まで熱意が籠っていたその声はあからさまに上擦り、一直線にイツキへと向けていたその視線はあからさまに彼の追究の視線から逃れようとしている。

 どう見ても図星である。

 

「嘘吐け! お前が俺の事こんなあからさまに褒めるワケ無いだろ!」

 

 伊達にそれなりの期間を幼馴染として付き合っているワケでは無い。

 さっき語られたクサい理由とは別の、面と向かって話せないような理由がある事をとっくに見抜いていたイツキは、それが何であるのか問い詰めようとする。

 

「お待たせしましたー」

 

 準備を終えてログインして来たトピアの声が耳に入って来たのは、その時だった。

 

「あれ? 二人ともどうしたんですかー?」

 

 睨み合っていた二人の様子を訝しんでか、振り返ったイツキとアイアンタイガーのすぐ傍まで手を振りながら歩み寄って来たトピアが首を傾げる。

 直後、よぉ、とぎこちない笑顔を浮かべてアイアンタイガーが――この場を誤魔化すために――トピアに声を掛けようとしたが、そうはさせまいとイツキは二人の間へと踏み込んで、彼を制した。

 そしてそのままの勢いを維持して、トピアへと問い掛ける。

 

「ねートピア! さっきコテツから聞いたんだけど、二人のフォースに俺を入れるつもりってホント?」

 

「あ、もう()()()()してたんですね」

 

 ほんとうですよー、と頭に被ったとんがり帽子の(つば)を揺らして頷くトピア。

 その肯定の様子を見るに、どうやらDランクに昇格した暁にイツキをフォースに入れる話は彼女も知っていたらしい。

 であれば、アイアンタイガーがひた隠しにする本当の理由についても知っているかもしれない。――そう踏んだイツキは重ねて質問しようとしたが、

 

「それにしても、私びっくりしちゃいました。イツキくんって()()()()()()()()()んですね」

 

「――え?」

 

続くトピアの耳を疑う言葉に思わず瞠目(どうもく)してしまい、その機会を逸してしまった。

 

「ご、ごめん、今何て? 何か、良く聞こえなくって」

 

「だから、イツキくんが()()()()()()()()()って教えてもらって、びっくりしちゃったんですぅ」

 

「う、ううん?」

 

 パンダというと、あの白黒の、笹食べてたりペンギンに仕事押し付けてたりする姿を偶にテレビやG-TUBEで見かけたりする、あのパンダだろうか? それに、なれる? 俺が?

 全く意味の分からないトピアの発言に、イツキは目を白黒させるしかない。

 一体何故、彼女はそんな事を思うに至ったのだろうか?

 

「ね、ねぇトピア? 何で、俺がパンダになれるって思ったの? 俺、そんな事出来ないけど?」

 

 ダイバールックを設定し直せばあるいは可能かもしれないが……自分よりプレイ歴が長い彼女が驚いた、と感想を述べている事を省みるに、どうやらGBN上の話では無さそうだ。

 が、そうなると尚の事意味が分からなくなってくる。

 そのせいで困惑を深めるイツキの様子を流石に訝しんだのか、あれー、とトピアが首を傾げる。

 

「でも、()()()()()()()()くんが言ってましたよぉ? コアガンダムちゃんを手に入れたイツキくんは、えーとー……()()()()()()()になれるって。だから、私たちのフォースに入ってもらおう、って――」

 

「ば、バカっ!」

 

「んむっ?」

 

 と、イツキを押し退けて伸ばされたアイアンタイガーの手が彼女の口を塞いだのは、その時であった。

 

「それ言うなっつったろ!?」

 

「え? ……あ! 忘れてたですー!」

 

 慌てた様子で叱責するアイアンタイガーに、一度きょとんとした様子を見せたトピアが何かを思い出したようにはっとし、ごめんなさいですー、と頭を下げた。

 が、もう遅い。

 

「――コテツ?」

 

 トーンを大きく落とした声で、イツキは背を向けるアイアンタイガーに呼び掛けた。

 途端、ギクリ、とアイアンタイガーの肩が露骨なまでに跳ねた。

 

「そーいえばさ、この前国語の授業でやってたよな? 見た目とか話題とかで人を集められるパンダみたいな人や物の事。――あれ、何て言ってたっけ?」

 

「そ、そんな事言ってたけっか? 悪ぃ、覚えてねーわ。お、俺、ベンキョー苦手だからよぉ。あと、アイアンタイ――」

 

「うん、知ってる。そー言うと思ってたから、教えてやるよ。――()()()()()()っていうんだって」

 

 そう言った刹那、イツキはアイアンタイガーの腕を掴み、強引に彼を自分の方へと振り向かせた。

 それによって現れたアイアンタイガーの顔は冷や汗に塗れて引き()っており、マズい事がバレてしまった、とこれ以上無く分かりやすく書かれていた。

 すかさず、イツキは詰め寄る。

 

「どーいう事だよ、俺が客寄せパンダって!?」

 

「きゃ、客寄せなんて一言も言ってねーだろ!? お、俺がトピアに言ったのは、マジで上手いパンダのモノマネが出来る特技をオメーが持ってるってだけで――」

 

「あるワケ無いだろ、そんな特技! あったとして、それがどーして俺をお前らのフォースに入れる理由になるんだよ!?」

 

 叱責しつつ、更にイツキはアイアンタイガーとの距離を縮める。

 それによって、互いの鼻先が触れ合うかどうかというところまで顔が近づいた彼の、逃げようとするように斜め上を向く目を、無言の圧力を込めた視線で(もっ)て睨み付ける。

 それに対し、暫く口をもごもごと動かしては何かを言い(よど)む様子を見せていたアイアンタイガーであったが、暫くしてそうしている事に耐え切れなくなったのか、

 

「……あーッ! 分ぁった! 分ぁったよ! ホントの事言やいーんだろ!」

 

遂に観念し、その本心を白状した。

 

「いーかッ!? オメーのコアガンダムはな、ホントならヒロトさんくらいしか持ってねー超レアガンプラだ!」

 

 本来はヒロトが自分のためだけに作り上げたフルスクラッチ機。リーダーであるカザミのG-TUBERとしての躍進(やくしん)に伴ってBUILD DiVERSが大きく知名度を上げた事により――アイアンタイガー当人は当初知らなかったとはいえ――、他に使う者などいないであろうそのガンプラの名を知る者も今や少なくは無い。

 そんなコアガンダムをヒロト以外に持つ数少ない者達の一人となった今のイツキがフォースに加わったならば、果たしてどうなるか?

 

「俺のフォースの一員としてオメーが活躍すりゃ、ヒロトさん以外にコアガンダム持ってる奴がいるって噂が広まる! そいつを聞きつけた奴らが集まって来て、オメーの噂と一緒に俺のフォースの名前も広がっていく! そーなりゃ、俺のフォースに入りてーってヤツもガンガン増えてく!」

 

 そうして、先程告げた()()――より多く、より強いダイバーを迎え入れ、並居る強豪フォース達をも超えるトップフォースへと自らのフォースを成長させる、その一助とする。

 ――そう自らの真意をヤケクソ気味に一気に語り終えるや、その勢いの反動から肩を激しく上下させていたアイアンタイガーであったが、暫くして息を落ち着けた彼は、クルリ、とイツキに背を向け、逆さ被りの帽子越しの後頭部に両手を当てて、だったのによー、と残念そうな声を上げた。

 

「ホントの事知られちまったからにはなー……」

 

 イツキ個人の実力よりも、コアガンダムを持っているという事実――引いては、コアガンダムそのものが持つ話題性を重視した()()()()()()

 そんな、考えようによってはお前の方はオマケと侮辱(ぶじょく)しているともとれる採用理由を知って、なお、はい分かりました、と二つ返事でフォースに参加してやれる者がいるとすれば、その者は聖人と呼ばれて然るだけの慈悲深さと(ふところ)の広さを備えているといえよう。少なくとも、イツキはそれ程までに出来た人間ではない。

 それを分かっているからこそ、アイアンタイガーも本心を悟らせないための別の理由を最初に伝えた。

 だからこそ、その真意を知ってしまったからには、イツキはアイアンタイガーのフォースへの加入要請を受け入れない。

 

「……別にいいよ、お前のフォースに入っても」

 

 本当のところなら。

 

「あー分かってる分かってる。もう入る気起きねーよなぁ――って、何ぃ!?

 

 溜息交じりに告げたその返事に、最初は背を見せたまま落胆していたアイアンタイガーが、一拍遅れて慌ただしく振り返る。

 瞼から眼球が零れ落ちんほどに見開いた目ですかさず凝視して来るその顔に、もう一度息を吐いてからイツキは言う。

 

「これからやるフォースバトルだって、ここまでお前やトピアが力貸してくれた恩返しに、って話だったろ?」

 

 そう。アイアンタイガーの思惑がどうであれ、GBNを始めてからコアガンダムを手に入れるまで、彼やトピアから幾度も助力を得た事に間違いは無いのだ。

 それに、真意を問い詰める前のアイアンタイガーの口からカバーの理由も語られたが、あれも全くの嘘っぱちというワケでも無い。客寄せパンダに比べれば弱くなってしまうが、あれも確かに彼の本心の一部であった、と幼馴染としての直感からイツキは悟っていた。

 であれば、フォースバトルの件のついで程度には、アイアンタイガーのフォースへの参加も検討しても良いのではないか? ――そういう結論が出来上がっていたのだ。

 

「言っとくけど、考えるだけだからな? まだ俺Eランクだし」

 

 あくまで検討するだけであると、最後に念押しを付け加えるのを忘れないイツキ。

 それでも彼のその返答は、一度は落胆し掛けていたアイアンタイガーを満足させるには十分だったらしく、

 

「良ーく言ったイツキ! それでこそオメーに協力してやった甲斐があるってもんだぜ!持つべきモンはやっぱ頼れるダチだよなー!」

 

なーっはっはっは、と大声で笑いながら隣に並び、その背をバシバシ、と調子良く叩いて来る。

 そんな幼馴染の姿に、現金な奴だなー、と背中の弾けるような衝撃の連続に顔を顰めつつも、イツキもまた笑い返した。

 

「うーん、よく分からないけど……()()()()()()()()くんとイツキくんが楽しそうで良かったですー」

 

 状況をいまいち理解出来ていない様子ながらも、取り敢えず先程までの剣呑な雰囲気が消え去った事に喜ぶトピアの微笑みを受けながら。

 ……続くアイアンタイガーの言葉をその耳に入れるまで。

 

「まー、何はともあれだ! まずぁ今日のフォースバトルに勝たねーとな! そこんとこ頼むぜイツキー? 傭兵だろーが何だろーが、オメーも俺らのフォースの一人として戦うんだからよぉ。俺の――“俺様とゆかいな仲間達”のよぉ!!」

 

「分かって……んん?」

 

 分かってる、と意気込んで見せようとしたのも束の間、直前に聞こえた妙な単語に思わずイツキは口を(つぐ)んで目を瞬かせた。

 

「……何て言った?」

 

「あん?」

 

「今の……ううん、お前らのフォースの、名前? 何て言ったの?」

 

 直前の文脈を思い出すに恐らくそうなのだが……今度こそ聞き間違えたのかと、イツキはつい首を傾げる。

 しかしながら、己が耳で捉えた()()は今度も間違いではない。

 

「何だよ、聞いてなかったのか? しゃーねーな、もっぺん言ってやる。“俺様とゆかいな仲間達”だ! それが、いつかこのGBNの天辺に昇り詰める俺様のフォースの名前――」

 

何だそのダサい名前っ!?

 

 その事を、呆れた様子のアイアンタイガーが続けた言葉で知ったイツキは、反射的にそう叫び返していた。

 途端、あ゛あ゛、とアイアンタイガーの顔が顰められる。

 

「今、オメー何つった!?」

 

「ダサいって言ったんだよ、お前のフォースの名前が! 誰だよ俺様って!?」

 

()()に決まってんだろが!」

 

 自らの顔を立てた親指で指し示すアイアンタイガー。

 その答え自体は予想していたものの、それでも困惑せずにいられず、えぇ、と声を漏らすイツキに、続けて彼がやれやれ、と言わんばかりに頭を振る。

 

「こんなカッコよくてサイッコーな名前だっつーのに、何でダサいなんて感想出て来るかねー?」

 

 ホント分かってねーなオメーはよー、といつだったかダイバーネームを名乗った時のような小馬鹿にした態度で肩を(すく)め、鼻を鳴らすアイアンタイガー。

 そんな、心の底から自分のフォースの名前をイカしていると思っているといわんばかりの彼の態度や、俺様とゆかいな仲間達というフォース名に対してまだまだ色々と言いたい事が浮かんで来るイツキであったが、しかしこの場でそれを口にする事はもう叶わなかった。

 

「いやー、済まない! 待たせてしまったね」

 

 そんな台詞と共に現れた二人組の男の姿が、待ち合わせの時間が来た事を彼らに報せて来たがために。

 




次回、またまた原作キャラ登場予定です。
ちょっと意外な奴らが出てきますので、そこのところはお楽しみという事で。
それでは。
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