これより第21話! どうぞお楽しみください。
『――というワケで、フラッグの方はどうにか僕とデアールさんで守りましたので』
一旦足を止めたダナジンのコックピットの中、モニター右端に表示された通信ウィンドウからのヒムロの報告に、ふー、とノフリは安堵の息を吐く。
直前まで行われていたデアールのザムドラーグと相手方のモビルドールとの戦闘。その過程でフラッグが発見され、あわや敗北の危機にあった事は彼も気づいていた。自身のダナジンの足では到底間に合わないと分かっていても、その場で踵を返し、急いで戻ろうとせずにはいられなかった。――フィールド概略図上を凄まじい速さで横断するマーカーを目にするまでは。
「助かったぜぇヒムロ君。デアールのアニキだけだったら、もう負けてるトコだったよ」
ヒムロがコアバクゥをマッハイェーガーへと換装させ、デアールとモビルドールの下へと急行している。――マーカーの動きからそう悟った時には、ノフリの内で
ヒムロなら何とかしてくれる。自分やデアールではどうしようもない状況でも、彼ならきっと何とでも出来る。――そういう信頼があったがための心境の変化であり、実際に何とかしてくれた。
『いえ、そんな事無いです。デアールさんがギリギリまで押さえていてくれたから、どうにか間に合ったんです』
それに、マッハイェーガーだけではモビルドールを相手にするには力が足りなかった。その内ジリ貧になって結局抜けられていただろうから、モビルドールを墜とし切れたのも、火力に優れたデアールのザムドラーグがいてくれればこそだった。
――そう小さく首を左右に振りながら
『――』
通信ウィンドウの向こうで、思いつめたような表情で微かに口元を動かしているヒムロの姿が、その最中で目に入ったために。
「――ヒムロ君?」
何かを呟いているように見えたが、しかし通信越しでは何の言葉も聞こえて来ない。
そんなヒムロの様子を
『それじゃあ、僕も今から
何事も無かったかのように微かな微笑みを浮かべた顔で、しかし
まるで、都合の悪い事を根掘り葉掘り訊かれる前に話を切り上げようとしているかのように。
そんなヒムロへ、いや、あの、とノフリは追い
『侵入するだけなら五分も掛からないけど、荒野側から回っていくんで、ノフリさんと合流するにはもう少し掛かると思います。相手側に残っているのはDX一機だけですけど、お互い最後まで油断せずにいきましょう。それじゃあ、また』
矢継ぎ早にそう言い終えるや一方的に通信を切られてしまったために、それと同時に消えた通信ウィンドウへと伸ばしていた手を彼は止めざるを得なかった。
そのまま、
「……やっぱ、何かおかしいぞぉ?」
眉を
「一体どうしたってんだよ、ヒムロ君?」
普段の――ノフリやデアールの知るヒムロなら、今のように一方的に
バトルが始まる前にしてきた
「“こっち”はまだ分かるんだけどなぁ……」
チラリ、とノフリは後方に目を遣る。
自身のダナジンのすぐ背後で
コアガンダムを誘導した後の別れ際、念の為に、とヒムロから引き連れて行くように頼まれた“それ”についてはまだ分かる。いずれはヒムロも相手フォース側のエリアへと到着するであろうから、その後で“それ”が必要になる事態に直面するかもしれないと踏んでの事だろう。そういう風に予想を立てて行動するための頼み事くらいなら、これまでも無かったワケじゃない。
だが、それ以外についてはやはり分からない。――
そんな妙な様子をヒムロが見せるようになった切欠として思い当たるものといえば、やはり――。
「――あの、コアガンダムってガンプラだよなぁ」
バトルが始まる直前の、三人で俺様とゆかいな仲間達のガンプラを――コアガンダムを見ていたあの時から、ヒムロの様子はおかしくなっていた。
信じられない物を見たかのように彼を取り乱させていた“何か”が、あの小さく珍しいガンダムタイプにあったというのだろうか?
その“何か”とは、一体――?
そんな思考のまま、自然と腕を組み出すノフリ。
何も起こらなければ、そのままうーん、とでも唸りながら思案に耽り出すところであっただろう。が、そうはならなかった。
「――んん?」
現在、ノフリがいるのは敵軍側森林エリア内――その最奥とまではいかないまでも、荒野エリアとの
その青空に、変化が起きた。
遥か上空から森林に
「アレは、まさか――」
その光を目にした時に、真っ先にその正体について思い当たるものがノフリにはあった。
だから、彼はすぐさまダナジンを発進させた。
もし光の正体が想像通りのものであるならば、無視してフラッグの捜索を続行するのは自分のみならず他のメンバーにとっても危険だったからだ。
そうして、並び立つ木々の隙間を潜り抜けつつダナジンを走らせ続け――視界が開けるような感覚と共に荒野エリアへと抜け出ると共に、彼はその姿を見た。
開放した背の六枚三対のリフレクターと両肩、両腕、両足のラジエータプレート。そして全身に走るラインから――スーパーマイクロウェーブの受信、及びエネルギーのチャージを完了した事を示す――
「おーし、引っ掛かったなぁ……!」
林立する木々の中から白いダナジンの改造機が抜け出して来る様を目にした時、アイアンタイガーはニヤリ、と口角を持ち上げていた。
サテライトシステムによってエネルギーを供給する際、必ず月面の発電施設から照射されたスーパーマイクロウェーブを受信する工程が発生する。このスーパーマイクロウェーブを撒き餌として敵機を自分の方へと引き寄せ、フラッグ捜索の手を止めさせるという作戦が
「んじゃあ、次いっとかねーとなぁ!」
威勢良く声を発しながら、アイアンタイガーは操縦桿を操作。モニター上に現れたロックオンカーソルの位置を合わせると共に、親指で押し込んでいた天面のボタンを解放する。
それに合わせ、DXフルバスターが腹部ブレストランチャーを発砲。軽妙な音の
こちらの攻撃による強引なものだろうが何だろうが、向こうは一歩踏み出したのだ。それでまず
そして、これに加えてもう
すかさずアイアンタイガーは足をよろめかせているダナジンへと通信を繋ぎ、程無くして現れた通信ウィンドウ向けて威勢の良い声を放った。
「やってくれたじゃねーッスか、イツキだけじゃなくてトピアまで墜としちまうなんてよーぉッ!」
『君は――
「
通信ウィンドウの中に現れるや否や、開口一番ダイバーネームを間違えて呼ぶダナジンのダイバー ――ノフリに、ゾ〇ドじゃねーか! 、と反射的にツッコむアイアンタイガー。
その遣り取りのせいで出鼻を
「ったく参ったぜ! あとちょいでフラッグ頂いて俺らの勝ちってトコだったのに、気が付きゃ俺一人だけで大ピンチって奴だ! これがホントの大逆転、ってかァ!? まー、だからってこのまま大人しくやられてやる気なんて無ぇッスけどねーッ!」
そこまで捲し立てたところでアイアンタイガーは一旦言葉を区切り、それと同時に両の操縦桿を押し込んで、武器スロットを呼び出す。
操縦桿の周囲に扇状にアイコン表記で展開する装備の一覧。その中から目的の物を選び出してDXフルバスターに構えさせた直後、通信ウィンドウの中のノフリの顔が、うっ、と
それと共に、危機を察知した蛙のようにダナジンが左へ飛び跳ねようとするのを待たず、アイアンタイガーはトリガーを押し――砲身の展開を完了させていたツインサテライトキャノンカスタムを発射した。
刹那、迸る青白い極光。
鉄砲水のように砲口から溢れ出ては視界を埋め尽くす光の激流が、目の前に広がる全てを飲み込み、跡形も無く消滅させていく。暫しの間を置いて止んだ後に残る、赤黒く焼け
とはいえ、
『あ……あっぶねぇ~……』
まぁ、
今の一撃で倒してしまえれば儲けものだったのは間違いなかったが、取り敢えず
だから、舌打ちこそすれど、アイアンタイガーが顔に浮かべていた笑みは崩れなかった。
「やるじゃねーッスか、俺様のフルバスター必殺のツインサテライトから逃げるなんてよぉ! けどよー……これで終わりじゃねーんだぜ!」
言いつつ、アイアンタイガーは操縦桿を僅かに捻ってDXフルバスターの向きを微調整。発射の反動によってブレたツインサテライトの射線を合わせ直す。――ノフリのいる方向ではなく、フィールド概略図上のある ――ヒムロの位置を示すマーカーがある方向へと。
「DXのツインサテライトは、GXのサテライトキャノンとは違ぇ」
DXフルバスターのベースであるガンダムDXと、その前身であるガンダムXを比較した時、何が最も大きく進化したかと問われれば、真っ先に目に付くのはやはり各機の代名詞ともいうべきサテライトキャノンの変化であろう。
では、サテライトキャノンからツインサテライトキャノンへと変わるに当たって、具体的にはどのような変化があるだろうか? 砲身の数? 威力? 攻撃範囲?
無論それらも正解だが、これに加えてもう一つ大きな変化がある。
連射能力だ。
スーパーマイクロウェーブの受信とそれを介したエネルギーの再変換を担うリフレクターの枚数増加と、四肢のラジエータプレートの増設。それによる排熱の効率化により、ガンダムXでは出来なかったサテライトキャノンの連続発射がDXでは可能となっており、実際に機動新世紀ガンダムX劇中においても一度のチャージで合計三発の連射を行い、内二発を威嚇に用いつつコロニーレーザーを破壊する活躍を見せている。
ではGBNでは――ガンプラバトルにおいて、その辺りはどうなっているのか?
結論から言えば、この連射能力は完全再現されている。
通常の、HGAWのキットそのままのDXでも、一度のチャージで最大三発はツインサテライトを連射する事が出来るのだ。
ましてや、DXフルバスターはそこから更に全身にリフレクトスラスターを刻み込み、両肩部にラジエータプレート、胴体部等にエネルギーコンダクターを増設している。一度のチャージで供給出来るエネルギーと排熱効率が更に強化されている本機のツインサテライトキャノンカスタムの最大連射数は、理論上六連射まで可能となっている。
よって――。
「当たんなかったっつーんなら、もっぺんぶち込むだけだぜ。――
そう威勢良く叫ぶアイアンタイガーに呼応するように、ツインサテライトの砲口の奥に青白い光が灯る。
彼の宣言通り、もう一度撃ち込んで仕留める、と言わんばかりに。
すると、
『撃たせるかよぉ!』
そうはさせないとばかりに、半ばから先が消えた尾を振ってノフリのダナジンが走り出す。
ものの数秒で距離を詰め、地面を蹴って飛び掛かって来る。
そうして足の裏を突き出し、勢いの乗った飛び蹴りを繰り出してツインサテライトの二射目を阻止しようとする敵機の姿を前に、アイアンタイガーは――
「そー来るよなぁッ!」
たった一機のみで、相手から自軍のフラッグを守りつつ仲間が復帰する時間を稼ぐ。――それが今のアイアンタイガーに課せられたミッションで、それを為すためにはどうすべきか真っ先に彼が考え至ったのは、自身を無視してフラッグを取られてしまわないよう、敵機の意識をそこから
そのために打った二手目――ツインサテライトを眼前で撃ち込み、その威力を見せ付けると共に、仲間への狙撃もチラつかせる事で
こうなってしまえば、もうノフリの頭には、踵を返し、DXフルバスターから離れつつフラッグ探索を再開する、という選択は存在しない。――アイアンタイガーとの戦闘、排除が最優先事項になる。
ここまでは予定通り。
そして――
「イツキ! トピア! お前らあとどんだけだ!?」
武器スロットを呼び出して使用武器を選択し直す傍ら、展開済みの通信ウィンドウ二つへとアイアンタイガーは叫び掛ける。
それに応じて、ウィンドウの中に映るイツキとトピアが順に復帰まで残り時間を申告した。
『あと5分とちょっと!』
『まだ8分ありますー!』
つまり、最低でもあと5分はアイアンタイガー一人で戦い抜かなければいけないワケだ。
現状、相手はノフリ一人。1対1で、かつ万全の状況のアイアンタイガーに対して、向こうは手負いだ。ツインサテライトに頼らない真っ向勝負でも、分は彼の方にある。
だが、絶対に勝てるという保証は無い。もし返り討ちに
それに、時間も無い。
今も向かっている筈だ。ヒムロが――コアバクゥだかマッハイェーガーだかどうも良く分からないが、ともかく強力なガンプラらしい、あの小さなバクゥタイプが。
合流され、2対1の状況に持ち込まれようものなら――いよいよとなれば、ここぞという時の
だからこそ――胸の内に抱えた不安から冷や汗を掻きつつも、アイアンタイガーはへっ、と笑う。
だからこそ、
「
ツインサテライトの砲身から持ち手を引き抜かせたハイパービームソードをDXフルバスターに振り被らせ、躍り掛かるダナジンを
アイアンタイガーのDXが、左右の脇下から迫り出したツインサテライトの砲身から、握っていた固定用のグリップを引き抜いた。――そういう風にしか、当初ノフリには見えなかった。
故に、
「うぉ……!?」
そのグリップから黄緑色のビームが発信される様を目の当たりにし、それがハイパービームソードの持ち手であったと気づいた時には、既に彼のダナジンは突き出した足の裏をDXの胸部へと叩き付ける直前で――同時に、左右から挟み込むように振られた黄緑色の刃が機体に振れる間近でもあった。
顔を引き攣らせつつ、
それに合わせ、ダナジンが伸ばし切っていた足を
ただ、完全回避とはならなかったが。
「クソッ! 足がやられちまった!」
一拍の間を置いて後方の地面へと着地した瞬間、強い違和感を
それですぐさまコンソール上の機体ステータスを確認してみれば、右脚部側面――人間でいうところの
恐らく、ハイパービームソードの切っ先が寸前のところで触れてしまったのだろう。
思わず吐き捨てるノフリであったが、しかし彼に余裕は無い。
続けて鳴り響くアラート。それに反応するままモニターの方へ持ち上げた視界に入って来たのは――白煙の尾を引いて迫る幾つものミサイル!
「うおおおぉぉ!?」
いつの間にか跳ね上がるように展開していたDXの両肩から飛び出していたそれらに、慌ててノフリは右方向へと振り向かせたダナジンを駈け出させる。
それが間に合い、ミサイルの何発かが直前までダナジンが立っていた地面へと着弾した事で発生した爆発の音が背後から響いて来る。
しかし、まだ終わりではない。
それ以外のミサイルは進行方向を変え、今も走り続けているダナジンの背を追尾している。
「しつけぇよォッ!」
ある程度走らせたところで、ノフリはダナジンの足を止めさせて方向転換。
迫り来るミサイルの群れに真正面から向き直ると共に両腕を構えさせ、それぞれの先端に備えた“アームバルカン”を放った。
各4本ある砲門が回転を始め、即座にばら撒かれる実体弾の雨。その弾幕に打たれた端からミサイルが弾け、激しい爆炎の連鎖が発生した。
その際の眩しい光から目を腕で
幸いにして、その光が彼のダナジンまで射抜く事は無かったが、それでも一瞬緩み掛けていた緊張を否応無く引き締め直さざるを得なかったノフリが、焦りの宿った双眸をそれらが飛来した方へと向けるには十分なものだった。
そして程無くして、
右手に持つハイパービームソードを真横に振り抜いたDXの姿が、すぐ目の前に。
『もらったぜェ!』
通信を介してコックピット内にアイアンタイガーの勝ち誇った叫びが響き渡り、同時にDXが右手首を
その動きを見るや否や、ノフリは操縦桿を引いてダナジンを飛び退かせようとする。
が、間に合わない。――光刃の切っ先が、切り飛ばさんとばかりにダナジンの首へと迫る。
反射的にノフリは武器スロットを展開。呻き声を上げながら大慌てで選択した武装――頭部先端に備えられた“ビームシューター”からビーム刃を発振し、それをハイパービームソードの刀身と首の間に間一髪で割り込ませて事無きを得た。
更に、その
「こっちこそ貰ったァッ!」
『まだまだァ!』
叫びつつトリガーを引こうとしたノフリに、通信を介してアイアンタイガーが叫び返し、更にDXの背部リフレクターと全身の金色のラインが一際強く輝いた。
――かと思った次の瞬間、
「うぉおお!?」
見えない何かに押し出されたかのように、ダナジンが突然後方へと弾き飛ばされた。
「な、何だ!? 今、何が!?」
全く予期せぬ現象だった。
それ故、どうにか吹き飛んだダナジンの足を後方の地面へと無事着地させつつも、困惑が拭い切れなかったノフリは、一瞬とはいえ眼前の敵機への注意が薄れてしまう。
それがこの場において大きなミスだと気づいたのは、その一瞬の間の後、DXが左手に何かを握り、それを自分向けて構えている姿を見つけてはっとした時だった。
「まっじぃ――」
そう言い終わるや否やというタイミングで、DXの左手から放たれる黄緑色の発光。
それに続けて発生した爆音と振動に、すぐさまノフリはコンソールへと目を遣り――やられた、と
ダナジンの背部にダメージ発生。同時に残っていたビームライフル一門も
おまけに、今の一撃で機体の
『スキ有りってなァッ!』
ビームライフルの爆散による衝撃がまだ抜け切らないノフリとダナジンへ、すかさず右手のハイパービームソードを振り被ったDXが背部スラスターを噴かせて襲い掛かって来る。
くっ、と呻きつつもノフリはもう一度ビームシューターを起動。展開した黄色いビーム刃を下から
刹那、それぞれの刃が接触し合い、
しかし、それも一瞬の事。
「ぐぅっ!」
機体の出力差や
理由はともかく、ダナジンとDXとのビーム刃での鍔迫り合いはDXに軍配が上がり、負けてしまったダナジンがそのままハイパービームソードを振り抜かれるままに、頭部を大きく横へ弾かれてしまったという事実に変わりは無い。
それによって、今のノフリには大きな隙が生じてしまっている事にも。
「ぅうおおおお!」
幸いにして、鍔迫り合いに負けたために
すぐさま、ノフリは操縦桿を引き、ダナジンをその場から後退。更に両腕――アームバルカンを構えさせ、バルカン弾による
しかし、
『逃がすかよォーッ!!』
そうしてノフリが引き金を引くのを待たず、DXの左腕が持ち上がり、その手に握る何か――側面にディフェンスプレートを
その銃口から黄緑色の光が二度瞬いたかと思った瞬間、アームバルカンが左右とも爆散。牽制射が不発に終わる。
更に間の悪い事に、アームバルカンの爆発による衝撃が滞空中のダナジンを
一度作ってしまった隙をカバーするための行動が、結果的に新たな隙を作ってしまったのだ。
その新たな隙を逃さず差し込もうと――揺れるコックピットの中で焦るノフリの双眸の先で、DXが構えたままのバスターライフルの銃口が微かに、正確にダナジンの胴を捉えられる位置へと調整される。
「やっべぇ……!」
バランスを失った今のダナジンは、ただ空中を浮遊しているような状態に他ならない。その状態から、更なる回避行動を取るのはほぼ不可能だ。
つまり、次なる攻撃から逃れる手段は、もうノフリには無い。
そうして目を見張る彼の視線の先で、再びDXのバスターライフルが銃口の奥に黄緑色の光を灯して、そして――
『――ああ?』
側面の赤と白のディフェンスプレートと、その下の白いカバーに覆われた銃身。
それぞれが半ばから縦に
その唐突極まるバスターライフルの喪失過程が全く理解出来なかったのか、間の抜けたアイアンタイガーの驚きの声が聞こえて以降、呆然とした感じで前方に佇むDXがそれ以上の追撃に動く気配は無かった。
無理も無い、とノフリは思った。その瞬間に驚いてしまったのは、彼も同じだったのだから。
だが、アイアンタイガーと違って彼はすぐに察する事が出来た。DXのバスターライフルが分断されたその瞬間、何が起こったのかを。
正確には、
着地にしくじり、固く乾いた地面を砕きながら転がったダナジンを再び立ち上がらせたその直後、自らとDXの間に激しい砂塵と烈風を伴って滑り込んで来た、その
『どうにか、間に合ったみたいですね』
藍色の影の主から通信が入る。
その声を聞いただけで、ノフリの口から自然と安堵の息が噴き出た。
一安心だ、と思った。
まだ相手フラッグは見つけていないが、それでも、
だから、湧き上がる歓喜に自然と出来上がっていた笑みを新たに展開した通信ウィンドウへと向けて、ノフリはその名を呼んだ。
「ヒムロ君!」
傷付いたダナジンを庇うようにその前に立ちながらDXと
そのコックピットに立つエース――ヒムロの名を。
辿り着いてしまった敵エース! 果たしてイツキ達はこの状況を切り抜けられるのか? 初フォースバトルを勝ち抜く事が出来るのか?
次回も今しばらくお待ちを。