ガンダムビルドライザーズ   作:shisuko

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前話から少し間を置いてしまいましたが、これより第4話始まります。

次回もまた投稿まで掛かりそうですが、どうか気長に宜しくお願いします。


第4話 挑戦! チュートリアルミッション!

「さーて、アイアンちゃんとトピアちゃんがいるなら、イツキ君のナビゲートは必要無いわね。このまま居座ってもお邪魔だろうし、アタシはそろそろ行くわ」

 

 せっかく出会ったのだから、とフレンド登録を交わした後、初GBN楽しんでってちょうだいね、と最後にウィンクしてその場から去って行ったマギー。

 その背を見送ったイツキ達は、現在、円形のロビーの中央にある“ミッションカウンター”へと向かっているところであった。

 

「ミッション受ける時ゃ、普通はここで手続きすりゃ良い。ただし、“クリエイトミッション”は別だ。アレはここじゃなくて、作った奴から直接受けるんだ」

 

「あのスカンクセイっておじさんがやってみたいに?」

 

「そーいうこった。だから、その辺の事知らねー初心者がさっきのオメーみてーに引っ掛かった挙句、行った先――特に“ヴァルガ”で、寄って(たか)ってサンドバックにされて、最悪の初GBNを味わったりするワケよ」

 

「うへぇ~……」

 

 ノンプレイヤーダイバー(NPD)達がミッションを受けに来たダイバー達の応対をしている円形のカウンターの前で、通常のミッションと、“クリエイトミッション”と呼ばれるダイバー達が独自に作ったオリジナルミッションとの違いの説明をコテツ、もといアイアンタイガーから受けていたイツキは、彼に止められる事無くスカンクセイのミッションを受けていた場合に辿っていたであろう顛末を想像して、思わず舌を出して呻いた。

 

「だから、スゲェ良いパーツが手に入るとか、“ダイバーポイント”や“ビルドコイン”めっちゃ溜まるとか、そーいうウマそうな話出しながらその場でミッション受けさせようとするような奴らの話なんて、絶対ぇ聞くんじゃねーぞ?」

 

 分かったな、と念を押すアイアンタイガーに、おう、とイツキは頷き返す。

 それに彼も満足げに、よし、と頷いた後、

 

「んじゃ、早速ミッション受けるとすっか」

 

一足先にミッションカウンターの方へと足を向けた。

 それにトピア、そして自分の順で続いたイツキは、先にカウンターへと辿り着いていたアイアンタイガーと彼女に招かれるまま、カウンター越しにNPDの女性の前に立った。

 

<ようこそ。ミッションを選んで、決定ボタンを押して下さい>

 

 そう抑揚の無い声でNPDがアナウンスした直後、ふっ、と受注可能なミッションの一覧が記載されたメニューウィンドウがイツキのすぐ手前に展開される。

 そのメニューウィンドウを人差し指でドラッグして、受注可能なミッションのタイトルに一通り目を通したイツキは、へー、と感心する。

 

「結構色々あるんだな、ミッション」

 

「まーな。けど、まずはチュートリアルだ。まともにガンプラ動かせねーうちから他のミッション受けたってロクな事にならねぇ」

 

「チュートリアルミッションの名前は“ガンプラ大地に立つ!”、ですよイツキくん」

 

「分かったよ、っと」

 

 注意するアイアンタイガーと目的のミッション名を告げるトピアに返事をしつつ、その名をメニューウィンドウ内から見つけたイツキは迷わずタッチ。即座にミッション概要に続いて“Do you accept this mission(このミッションを受注しますか)?”の案内と共に表示された“OK”と“CANCEL”のボタンの内、“OK”の方をタッチする。

 それによってミッションが受注された事により、役目を終えたメニューウィンドウがイツキの前から消失した。

 

「よし、受注出来た!」

 

「おーし。そんじゃあ、次は“格納庫”だな」

 

「格納庫?」

 

 パン、と手を打ち合わせたアイアンタイガーの口から出た聞き慣れない場所の名に、このまますぐにミッションの開始エリアまで行くものと思っていたイツキは、どっか行くの、と疑問の声を上げる。

 その疑問に、ニヤリ、と笑みを浮かべたアイアンタイガーが手元にメニューウィンドウを呼び出し、

 

「なーに」

 

ピッ、ピッ、とそのウィンドウ上で何かの操作を行った。

 かと思った次の瞬間、

 

「行ってみりゃあ、分かるってモンよ!」

 

不意に周囲の景観が大きくぶれて――辺りの景色が一変した。

 

「――えっ? えっ!?」

 

 唐突に襲って来た周囲の変化に一拍遅れて気づくや、驚きに目を見開いたイツキは大慌てで辺りを見回す。

 つい先程まで、確かに自分達がいたのはセントラルエリアのロビーだった筈だ。それがほんの一瞬、瞬きする間に、辺りはあの緑掛かった白い壁が円形を形作っていたあの場とは全く異なる、別の空間へと変化していた。

 

「驚いたろ? ここが格納庫だ」

 

「こ、ここが?」

 

 へへっ、としたり顔で笑いながらそう答えたアイアンタイガーに、もう一度イツキは周囲に目を配ってみる。

 淡く、それでいて重みを感じるグレーの、メカメカしいパネルラインが幾重にも走った壁が四方を囲う格納庫の中は、先程のロビーが比較にならない程に広い。

 単純に壁から壁までの距離が圧倒的に長いというのもあるが、壁と同じような色合いの天井までの高さが、ちょっと脚立を持って来て手を伸ばしたくらいじゃ届かないようなくらいに――それこそ、実寸大のMSが手を限界まで伸ばしてようやくじゃないかという程に――高いのも、そう感じる原因だろう。

 その広大な空間内を照らしているのは、壁の至る所に配された緑やオレンジの蛍光灯だ。

 それらの光は暗くは無く、むしろ壁の端から端を見渡せる程度には明るかったが、しかしどこか無機質で温かみは感じられない。そんな光のみが光源である事も、格納庫内のどこか重く気を張らせる空気を助長しているのかもしれない。

 が、そんな事は今のイツキには全く持って大した事ではない。

 

「っ!? なっ、何だ()()!?」

 

 背後に聳え立っていた()()の姿を見つけたイツキにしてみれば、格納庫そのものの内装がどうのなんていうのは些末(さまつ)な事でしかなかった。

 メカメカしいディテールが覗く巨大な仕切りの間で、天井まで届かんほどの巨体を以てイツキ達を見下ろすその()()()()()()()()を目にしては。

 その一方で、そのガンダムに驚く事無く、むしろ驚愕を顕わにするイツキに対してへへん、と得意げな笑みを浮かべながら、アイアンタイガーが一歩前に出る。

 

「教えてやるぜイツキ。こいつは、このアイアンタイガー様のガンプラ――“ガンダムDX(ダブルエックス)フルバスター”よぉ!」

 

「ガンプラって……これが!? しかも()()()の!?」

 

アイアンタイガー!!

 

 両手を腰に当ててそのガンダムの名を誇らしげに叫んだのも束の間、すぐに、現実(そっち)の名前で呼ぶんじゃねー、と怒鳴るアイアンタイガーを後目に、嘘だろ、とイツキは自分の耳を疑い、もう一度その巨体を見上げた。

 中央の胸と腹に当たる部分がクリアーグリーンになっているダークブルーの胴体と分厚い直方体状の両肩。そこから、同色のカバー状のパーツが付いた前腕と脹脛の外側、床と接するスリッパ部を除いた箇所が全て白一色の、長い四肢と頭部が伸びている。

 その頭部は、額に四又に広がった金色のブレードアンテナ()を、頬の部分に同色に輝く三角形の髭のようなパーツを生やし、その間からガンダムタイプ特有のツインアイが、光の灯っていない緑色を覗かせていた。

 更に、機体そのものと格納庫の壁に挟まっているためいまいち分かりづらいが、どうやらその背には翼のような平たいパーツ一対と、その間に挟まれた細長いパーツ二本を背負っているようだ。

 それらの特徴を、およそ17mという全高の中に収めた目の前のガンダム――“機動新世紀ガンダムX”における後期主役機“ガンダムDX”をベースとした、“ガンダムDXフルバスター”がガンプラであると言われても、(にわ)かには信じ難い話だった。

 

「い、いやだって! ガンプラってこのくらいだったじゃん!? これ、無茶苦茶デカいじゃん!」

 

 それ故に困惑しつつ、ついさっき見た1/144サイズのガンプラの大体の大きさを突き出した両の掌で表現するイツキの姿に何かを悟ったのか、おい、とアイアンタイガーが苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべた。

 

「まさかお前……GBNじゃガンプラが本物の大きさになるとか、直接乗って動かせるとかって事も知らないって言うんじゃねーだろな?」

 

「ええっ!? ガンプラでっかくなんの!? てか、乗れるの!?」

 

「マジかよ……」

 

 今の今まで全く知らなかったGBNでのガンプラと操縦の仕様を知るや、スゲー、とDXフルバスターを見上げる目を輝かせるイツキ。

 そのすぐ後ろでゲンナリ、とした表情で肩を落とすアイアンタイガーに代わって、背に回した両手で箒を横に持ったトピアがイツキの傍まで歩み出た。

 

「このフルバスターちゃんみたいに、GBNではガンプラがすっごく大きくなるんです。その大きくなったガンプラを格納庫(ここ)で大丈夫かチェックしてから、ミッションに行くんですよー」

 

「へー、なるほど。――って事は、俺やトピアのガンプラも、でっかくなってここにあるって事?」

 

 トピアの説明を聞いて納得したイツキは、その説明から、ひょっとして、と思い至った可能性について彼女に尋ねた。

 その問いに、はい、と頷いたトピアが、こっちですよー、と横を向いて歩き出したので、イツキもまたその背に続いた。

 そのまま20m程歩き、先程のDXフルバスターからガンプラが収まっている仕切られた空間――ハンガーというらしい―― 一機分を通り過ぎたところに、その二機は立っていた。

 

「こっちが、私のモビルドールですー」

 

 そうトピアが手を差し出して示した右手側のハンガー内には、確かに彼女の現実での体たるガンプラ――“モビルドールトピア”が悠然と佇んでいた。

 当然の事ながら、その姿は現実世界でのトピアの姿と殆ど変わらない。

 ただ、GBNにおいては彼女の体では無くあくまでガンプラとして扱われるためか、現実で見た時に比べて角ばった部分や尖った部分、それに細かなメカディテールが増えたように思える。

 また、現実では人間の肌のような肌色だった手足や顔は白色に変わり、特に顔は今のトピアと殆ど変わらなかった現実(あちら)と違って、緑色の大きなツインアイ以外は何もない、文字通り人形(ドール)のような無機質なものへと変化していた。

 更によくよく見てみると、そのモビルドールには現実の彼女には無かった部品が幾つか見受けられた。

 例えば、顔の上から後を覆う黄色のヘルメットの左右に付いた、付け根から離れるに連れて太くなるように傾斜が付いた円筒形で、先端にプロペラが付いたメカメカしいツインテールの根本の辺りには、ボディの色と同じ赤み掛かったピンク色の、長い直方体状のパーツが一対増えている。

 それ以外にも、左腕の前腕、及び長いスカート状のアーマーの左右の付け根にも、台形型のポシェットのようなパーツ、またはツインテールに付いている物より小型の直方体状のパーツが加えられているし、右手には今のトピアが持っているような、長い箒のような武器を握られていた。

 

「何か、色々増えてない?」

 

 それらの部品が何なのか、順に指差しながらイツキが言及すると、

 

「ヒカルさんが作ってくれたパーツですー」

 

そのままではバトルやミッションで使える武器の無い自分のためにヒカルが作った、追加の武装であるとトピアが答えた。

 

「へー、ヒカル兄ちゃんが?」

 

「ヒカルさん、色んな物作れるんですよー。イツキくんのために持って来たあのガンプラちゃん達も皆ヒカルさんに作られた子達ですし。この前も、完全変形出来る“プリムローズⅡ”ちゃんとか、アー〇ビー〇ルダッ〇ュちゃんとか作ってたんですよ」

 

「ええ、そうなの?」

 

 そう語るトピアに、少しばかりだがイツキは驚く。

 全てにじっくり目を通したワケではないのではっきりとは言えなかったが、あのガンプラ達は素人(イツキ)の目から見てもそうと分かる程、丁寧に作られた出来の良いガンプラのように思えた。あのガンプラ達が、いずれもヒカルの手によって作られた物だったとは……。

 

「じゃあ、ひょっとしてコイツも?」

 

 そう問い掛けつつ、イツキは左手側、モビルドールトピアの向かい側のハンガーへと体を向け、そこに立つガンプラを指差した。

 そこに立つ、紺色の胴体に白い頭部と四肢を生やし、額から黄色いブレードアンテナ()を生やした、ガンダムタイプの機体を。

 

「はい、そうです。その“陸戦型ガンダム”ちゃんも、ヒカルさんが作ったガンプラなんですー」

 

 “HGUC 陸戦型ガンダム”――それが、GBNにログインする前にイツキが借りたガンプラだった。

 “機動戦士ガンダム 第08MS小隊”にて登場したこの機体は、世にガンダムという名の代名詞として広く知られるRX-78-2用の部品から、規格に見合わない型落ち品や未使用に終わった不採用部品など流用して作られた、量産型ガンダムだ。例え型落ち品なれどRX-78-2と同じ部品が一部使われていた本機の性能は高かったが、故に生産コストも高く、その生産数はほんの20機程に留まったという。

 そんなガンプラをイツキがレンタルした理由は、たった一つ。

 

「――コイツ、本当に俺に力を貸してくれるって言ってたんだよね?」

 

「はい、そうですー」

 

 そう。イツキ(使う側)が選んだのではなく、陸戦型ガンダム(使われる側)が自ら名乗り出たからだ。

 

「ガンプラの声――か。何か、まだ信じらんないや」

 

 ガンプラの声を聞く。――それが、ELダイバーという種族が持つ能力であり、イツキがトピアを介して陸戦型ガンダムの声を知るに至った理由であった。

 何でも、元々ELダイバーというのはガンプラをスキャンした際に発生する余剰データがGBNに蓄積して生まれる存在らしく、その生命の根幹たる余剰データ――ガンプラに込められた“想い”や“感情”の影響によって、大なり小なりこの能力が備わっているのだそうだ。

 それで、その能力によってあの場にあったレンタル用のガンプラ達の声をトピアが聞いて回った結果、ほぼ唯一協力的だったのがこの陸戦型ガンダムだったらしい。

 何でも、当時のトピア曰く、

 

『この子、すっごくノリノリですー! 今日だけ! 俺は! お前と! 添い遂げる!! ――って言ってますー!」

 

と、まるで08MS小隊劇中にて陸戦型ガンダムに搭乗していた主人公“シロー・アマダ”の有名な台詞を模したような事を言っていたとか何とか。なお、この台詞を言った時のシローが――全く陸戦型ガンダムと縁が無い訳では無いが――別の機体に乗っていた事はご愛敬である。

 ちなみに、直前にヒカルが勧めていたヘイズル改とロゼットだが、

 

――ブチ殺すぞスペースノイド……!――

 

――失せろ。G3ガス撒かれん内にな――

 

などと、A.O.Zにて二機を運用していたT3部隊が直接参加していない筈の、かの“30バンチ事件”を連想させるような散々な事をイツキに対して言っていたとか何とか。

 

「しっかし……やっぱ、すっごいなぁ」

 

 現実では掌の大きさを超えるかどうかというくらい小さくて見下ろしていたガンプラが、このGBNではまるで本物のMSのように巨大化し、今そうしているように見上げ、挙句乗り込む事になるのだ。その事実は、例え目の前に立つのが借り物であったとして、イツキに例え様の無い感動を与えるに至っていた。

 だからこそ、ついイツキは思ってしまう。

 本当なら、こんな風に見上げていたのか、と

 本当なら、借り物のガンプラではなく、ちゃんと自分が選んだ、自分だけのガンプラを見て、こんな風に、あるいはそれ以上の感動に身を震わせていたのか、と。

 本当ならここに立っていたのは――欲して止まなかった、あのコアガンダムだったはずなのに、と

 そんな事を考えている内に、気づけば、

 

「コ゛ア゛ガン゛ダ゛ム゛うう~ぅ……!」

 

耐え切れなくなったイツキの視界は、溢れる涙ですっかりぐちゃぐちゃになっていた。

 

 

 

『だーッ! 何でGBN来てまでぴーぴー泣いてんだテメーは!?』

 

「うぅう……! だってぇ……だってえ~ぇ……!」

 

 下方からの淡い緑色の光が中を照らす陸戦型ガンダムのコックピットの中、その右側の通信ウィンドウに映るアイアンタイガーの呆れたような叱咤に、イツキは嗚咽混じりの言葉にならない声を滲ませる。

 先の格納庫にて、陸戦型ガンダムを見上げている内に再びイツキが泣き出してから早二十分程。暫く泣き止ませようとするも全く涙の止まる気配の無かった彼をアイアンタイガーとトピアが半ば強引に陸戦型ガンダムのコックピットへと乗せ、そのまま出撃させたのだ。

 そうして、現在イツキはチュートリアルミッションの開始エリアへと向かっている最中なのだが……見ての通り、未だに陸戦型ガンダムの中でぐずっていた。

 なお、イツキを送り出した後の二人は、あくまで今回のミッションは彼が主役という事で、ギャラリーモードで出撃後のイツキをナビゲートするために格納庫に残っている。

 

「ホントだったら! あそこにあったの、コアガンダムだったんだ! なのにぃ、コアガンダムぅ゛、スク゛ラ゛ッチってえ゛っ……! うぅうううぅぅ……!」

 

『仕方ねーだろ! 売ってねーモンは売ってねーんだから! 泣こうが喚こうがどうしよーもねーんだから、いい加減泣き止め!』

 

()()()()タイガーくんの言う通りですよぉ、イツキくん? 陸戦型ガンダムちゃんも、泣くなラリー! って言ってます。もう泣くの止めましょう?』

 

だから()()()()タイガーだっつのォ!

 

誰だよラリーってええええぇぇぇ!!

 

 誰が南の島のおサルじゃあッ、と怒鳴り付けるアイアンタイガーと、ごめんなさいですー、と身を縮こまらせて謝るトピアの騒がしい遣り取りを通信ウィンドウ越しに、“機動戦士ガンダム戦記”の主人公“マッド・ヒーリィ”の悪名高い台詞を基にしたような事を言ったらしい陸戦型ガンダムに、涙声の絶叫でイツキはツッこんだ。

 そんな騒がしい遣り取りを通信ウィンドウ越しの二人と共に続けつつも、黄色い光のリングを通して左右の何もない空間から生えている操縦桿を離す事無く、陸戦型ガンダムのツインアイが捉えた映像がそのまま映る正面と左右のモニターを、涙目ながらもイツキはしっかりと見据える。

 その思考(イメージ)のままに陸戦型ガンダムが、下に広がる森林と上に広がる青空の中を、背に背負っている重そうなウェポンコンテナが支障になるようなことも無く、真っ直ぐ飛んで行く。

 その最中で、一旦操縦桿から手を離し、ダンダラ羽織の袖で目元の拭ったイツキは、ふと気になった事を尋ねてみた。

 

「あのさ、()()()

 

()()()()()()()()だっつーの!! ――何だ?』

 

「コアガンダムって、誰かが作った自分だけのガンプラなんだよな?」

 

『あ?』

 

「それってさ、今コアガンダムを使ってる人が、つまりコアガンダムを作った人、って事だよな?」

 

 それは、先程までコアガンダムの事を思い出して泣いている間に、ふと頭に過った()()()の確認であった。

 コアガンダムは一般には売っていないから、購入する事は出来ない。ならば作るかと言っても、ガンプラ初心者のイツキにはそれはおよそ不可能な事。

 そう、イツキ()()、コアガンダムを一から作る事は不可能なのだ。

 ならば――。

 

『……オメー、何考えてやがる?』

 

 そんなイツキの考えを読み取ったのか、通信ウィンドウの向こうでアイアンタイガーが疑わし気に顔を顰める。

 そんな彼の様子を無視し、いいから、と強引に答えを求めたイツキに、少し考えるような素振りを見せてからアイアンタイガーがこう返した。

 

『……絶対ってワケじゃねー。世の中にゃ製作代行っつー、ガンプラっつーかプラモを代わりに作る仕事もあるからな。でもまぁ、そーいうのは基本売ってるキット作るだけだから、あのコアガンダムは多分使ってる奴がそのまんま作ったもんだろーよ』

 

「やっぱそうなんだ! て事は――」

 

『だからって、作ってもらおう、なんて考えんなよ?』

 

 自分の思った通りの回答をするアイアンタイガーに喜んだのも束の間、すぐにそう図星を突き、釘を刺して来る彼に、イツキは思わず、むぐ、と言い淀んだ。

 

「な、何で分かったんだよ?」

 

『何年幼馴染やってると思ってんだ? オメーが考えそうな事くらい、ちょっと頭捻りゃ分かるわ。――もっぺん言っとくぞ? 作ってもらおうなんて、考えんな』

 

 唯でさえ、二千万人以上という膨大なアクセス数を抱えるGBNだ。その中の、たった一人の特定の人物と偶然出会える可能性など高が知れている。よしんば会えたとしても、その人物がイツキのためにコアガンダムを作る義理など、どこにも無いのだ。

 それは、イツキ自身も分かっている。

 だからこそ、口を酸っぱくして言うアイアンタイガーに、分かってるよ、とバツの悪さを覚えて口を尖らせつつも返したのだ。

 ……それでも、一度思い付いた考えは彼の頭からは消えない。

 

(カザミの動画でコアガンダムを使っていた人が、きっとコアガンダムを作った人だ!)

 

 今、コアガンダムを使っている“誰か”。自分のためのオリジナル機体としてコアガンダムを作り上げた、“誰か”。

 その“誰か”と出会う事が出来れば、話す事が出来れば、ひょっとしたら自分もコアガンダムを手に入れられるかもしれない。

 その“誰か”――。

 

(確か……“ヒロト”、って呼ばれてたっけ?)

 

 ――“BUILD DiVERS(ビルドダイバーズ)のヒロト”に会う事が出来れば……!

 自分の中に生まれたその希望に、イツキは無意識に操縦桿を握る力を強めていた。

 不意にコックピット内にアラート音が響いたのは、その時だった。

 

「何だ?」

 

 突然の音に顔を振り上げたイツキは、何事かと正面のモニターを凝視した。

 見れば、正面をやや右に逸れた辺りに、半透明の強大なドームのようなものが映り込んでいる。

 その存在はアイアンタイガーとトピアにも確認できたらしく、思わず目を剥いたイツキが何かを言う前に、通信ウィンドウ越しの二人が口々に告げた。

 

『そろそろミッション開始エリアが近いですー』

 

『二時方向に半透明のドームみてーのが見えんだろ? そいつがミッションの開始エリアと周りを区切る境界だ。入ったらすぐミッションが始まる』

 

「あそこでミッションが……」

 

 いよいよ間近に迫った初ミッションの時だ。

 二人の言葉で画面に映るドームが、今回受注したチュートリアルミッションの開始エリアを示すものであると知ったイツキは、自然と体が強張るのを感じた。

 そんな彼を、なーに緊張してんだよ、とアイアンタイガーが笑い飛ばす。

 

『ミッションつったってチュートリアルなんだ。出て来る奴らのレベル設定だって最低なんだから、オメーがよっぽどへっぽこでもねー限りはそうそう失敗しねーよ。――()()()()考えてなきゃな!』

 

「分かってるって言ったろ!」

 

 先程のコアガンダムに関する遣り取りの事を蒸し返すアイアンタイガーに、通信ウィンドウに振り返る事無くイツキは文句を言う。

 じっと前方のミッション開始エリアのみを見据える今の彼の頭には、ミッション以外の事は何一つ存在していない。

 

『へっ、そうかよ。そんじゃあ―― 一気に突っ込めェーッ!!』

 

「おう!!」

 

 気合の籠った一声を上げるままに、両手の操縦桿をイツキは前方へと強く押し込む。

 その操作のままに、背部のバーニアから噴き出す炎の勢いが増した陸戦型ガンダムが一直線にミッション開始エリアのドームへと飛び込んで行った。

 

 

 

<MISSION START>

 

 ドーム内に侵入するや、ミッション開始を告げる無機質な電子アナウンスがすぐ正面のコンソールから流れ、続けて再び鳴り響くアラートがイツキの耳朶を打った。

 

『敵機来まーす!』

 

 そう通信ウィンドウの向こうのトピアが言ったすぐ後に、正面モニターの下方奥、鬱蒼と生い茂る森の中から飛び出した小さな点のようなその姿を――瞬時にモニター上に自動拡大された事もあって――、またイツキも捉えていた。

 今回のチュートリアルミッションにおける敵キャラ。他のミッションにおいてもダイバーのミッション遂行を阻む存在として広く登場するMS――“リーオーNPD”の姿を。

 

「えっと数は……三体か!」

 

 “新機動戦記ガンダムW”に登場する量産機“リーオー”をベースにした薄紫の四肢に、胴体や肩、頭部等が薄緑色の専用のパーツへと置き換えられたその機体の数を、目を動かしてイツキは数える。

 その間にも、上側に二機、下側に一機と三角形を描く様なポジションで飛行するリーオーNPD達がバックパックから蒼い噴射炎を上げて迫って来るが、攻撃はして来ない。

 あくまでこれはチュートリアルミッション。初心者向けの調整がされたリーオーNPD達は、先に攻撃されるか、あるいは敵機との彼我距離(ひがきょり)が一定以下になるまで攻撃に移る事が無いためだ。

 その事自体はイツキが知る由も無い事だったが、しかしこれ幸いとばかりに、

 

「攻撃ってどうやれば良いんだっけ!?」

 

『右側の操縦桿だ! 人差し指んトコのボタン押しながらターゲットサイト合わせて、ビームライフルぶち込んでやれ!』

 

「右だな!」

 

叫ぶアイアンタイガーの指示のまま、右の操縦桿の人差し指が触れているボタンを押し込み、現れたターゲットサイトを操縦桿で微調整してリーオーNPDの一体へと重ね合わせる。

 そして、

 

「いっけー!」

 

角を落とした三角形状のサイトが黄色から、ロック完了を示す赤色へと変わった瞬間、ボタンから指を離したイツキに合わせ、陸戦型ガンダムが右手に構えていた白いカバーのビームライフルからピンク色のビームを発射。

 (あやま)たず、放たれたビームがイツキから見て一番左側のリーオーNPDの胴へと飛び込み、赤く融けた風穴を穿つやその機体を爆散せしめた。

 

「いよっし!」

 

 オレンジ掛かった爆炎を上げたかと思いや、飛散して森の中へと真っ逆さまに落ちていく途中だった破片ごと細かなテクスチャ片となってその場から消失したリーオーNPDに、イツキは歯を剥いてガッツポーズを取る。

 初撃破の喜びに、ともすればそのまま小躍りし出しそうな程の興奮がイツキの中で滾ったが、そうするのはまだ早い、とでもいうようにけたたましく響いたアラート音が瞬時に彼の意識を引き戻した。

 

「うわっ!?」

 

 刹那、激しく揺れるコックピット。

 思わず怯んだイツキは両手の操縦桿を支えに態勢を立て直すや、急激に、まるで離れているように残る二機のリーオーNPDの姿が小さくなっていく正面モニターの方を、一体何が起こったのかと凝視した。

 見れば、下側を飛行していた一機の、その右肩に担がれていた長砲身の大砲――ドーバーガン――の砲口がこちらへと向けられ、そこから灰色の硝煙が燻っていた。

 それを目にして撃たれた事を悟ったイツキは、このっ、と先程と同じようにビームライフルを見舞おうと右手に意識を向ける。

 が、それに待ったを掛けるように再びアラートが鳴り響き、程無くして――ドーバーガンを撃ったのとは別のリーオーNPDが急接近。瞬く間に正面モニターを上半身によって埋め尽くしたそのリーオーNPDが、更に左肩にマウントしている円形の盾の裏に回していた右腕を素早く振り上げた。

 盾の裏から引き抜かれるや、その先端からピンク色の刀身を形成した、ビームサーベルを。

 それを目にし、やべっ、と危機感から呟いたイツキは、急いで陸戦型ガンダムにビームライフルを構えさせる。

 しかし、その銃口が胴へと向けられると同時にリーオーNPDがビームサーベルを一閃。右上から左へと振られたビーム刃によって銃口から銃身の中程までに切込みを入れられたビームライフルが、先程の様に閃光を放つ間も無く爆散してしまう。

 更に、その爆風と、直後に腹部へ叩き込まれたリーオーNPDの蹴りによって陸戦型ガンダムが大きく後方下へと後退。

 激しく振動するコックピット内に歯を食い縛って耐えたイツキは、何とか左右の操縦桿を前へ突き出す事で、陸戦型ガンダムを地表へと落とす事無く中空に留まらせるが、少なく無い隙がその際に生じてしまう。

 その隙を逃さんとばかりに、再びリーオーNPDがビームサーベルを腰溜めに構えて迫って来る。

 そのリーオーNPDを迎え撃たんがため、イツキは右手の操縦桿に意識を向けて――はっ、と気づいた。

 

「しまった、ライフルが……!」

 

 先の攻撃で、ビームライフルは破壊されてしまっている。唯一陸戦型ガンダムの手にあった武器が失われた現状、向かって来る敵機に対してこちらは丸裸同然だ。

 その事を悟るやイツキは頭を右往左往させて何か無いか探るが、しかし差し迫った危機に真っ白になってしまった彼の頭には、適切な対処法は浮かばない。

 それこそ、唯一陸戦型ガンダムがその手に持っていたビームライフル()()が失われたという事に自力で気づけない程に。

 だから、

 

『イツキくん、シールドですぅ!』

 

不意に飛び込んだトピアの声は正に寝耳に水で、故に、

 

「っ! うおおおぉ――」

 

陸戦型ガンダムの左前腕にマウントされていたそれ――先端が二又に分かれたシールドの存在を思い出すや否や、左手側の操縦桿を無我夢中で前へ突き込んだ事は、正に偶然の産物であった。

 次の瞬間、そのイツキの動きに沿うように陸戦型ガンダムが左腕を突き込み、既に距離を詰め切ったリーオーNPDが降り抜いたビームサーベルの進行方向へとシールドを侵入。その表面でピンク色の刀身を受け止めるや、逆に大きく左側へと振り払う事でその斬撃を防ぎ切った。

 それだけに終わらず、シールドの前腕との接続部が可変し、打突形態へと変形。サーベルを振り払われた事で、まるで迎え入れるように両腕を広げたポーズになったリーオーNPDの、隙だらけになったその胴体部へと、

 

「――りゃああああぁぁっ!!」

 

競り出たその先端部を迷う事無く陸戦型ガンダムは――イツキは突き込んだ。

 刹那、メリメリ、と金属が軋み、拉げる耳障りな音と共にシールドが1/3程までめり込んだリーオーNPDのヘルメットを被ったような頭部から覗く、青い単眼(モノアイ)が消灯。ガクリ、と四肢が垂れ下がったその機体が先程撃墜した機体と同じように細かなテクスチャの破片と化して、その場から消失した。

 

「……こんな事出来るんだ、これ」

 

 正面モニターに映る陸戦型ガンダムのシールドが打突兵器としての特性も併せ持っていた事への驚きを、ぼんやりとイツキは呟く。

 と同時に、目の前から消えた敵機に、一山超えたような気がしてその口から安堵の息が出そうになる。

 が、それはまだ早い。

 

『ボサっとすんな! まだ残ってんぞ!』

 

「そうだった!」

 

 通信ウィンドウから響いたアイアンタイガーの怒鳴り声に、再三のアラートがコックピット内に響き渡る早いか否かというタイミングではっとしたイツキは、反射的に左手の操縦桿を引いた。

 それに合わせて陸戦型ガンダムが半身を引き、間髪入れずにそのすぐ手前を何かが通り過ぎた。

 その“何か”が飛来した方向へと、瞬時にイツキは目を走らせた。

 残った一機、最後のリーオーNPDが灰煙燻るドーバーガンの砲身を跳ね上げている、その方向を。

 

『あと一機ですー!』

 

「あと……一機!」

 

『そーよぉ! そいつを堕としゃあ、ミッションクリアだ!』

 

 口々に告げるトピアとアイアンタイガーの言葉に、いよいよ初ミッションの終わりが間近に迫っている事をひしひしと感じたイツキの口角が、無意識に吊り上がった。

 

『もうビームライフルが無ぇ。近づかねーとロクな攻撃できねーから、まずはあのドーバーガン何とかすんぞ!』

 

「分かったけど……どうするんだよ? こっち、もうシールドしか無いけど?」

 

『まだあんだろーが! 胸んトコのバルカンが!』

 

「バルカン? ――あっ!」

 

 言われ、格納庫で見上げた陸戦型ガンダムの胸部左側に、確かにそれらしい筒状の部分が上下に二ヶ所並んでいたのをイツキは思い出す。

 

『ガンプラそのものに与えられるダメージなんざ高が知れてるが、武器ぶっ壊すだけならそれで十分だ!』

 

『人差し指のボタンを押しながら、操縦桿を下に押し込んでくださーい!』

 

「よーし!」

 

 言われた通り、イツキは左の操縦桿を、人差し指部分のスイッチを押しながら下へと押し込んだ。

 それと共に、操縦桿下の光のリングから装備している武器の名と、大まかな形状のアイコンが描かれた武器スロットが展開。三つある武器スロットの中からバルカンを見つけたイツキは、すぐさま操縦桿を捻ってそれを選択する。

 それと時同じくして、鳴り響くアラート。

 見れば、正面モニターの向こうのリーオーNPDが、再びドーバーガンを構えている。

 発射間近だ。真っ直ぐにこちらに向けられる砲口が、否応無くその事を報せる。

 そして同時にこれは――チャンスだ。

 

「そこだああぁぁっ!!」

 

 リーオーNPDへ、砲口が向くその真正面へと、迷う事無くイツキは陸戦型ガンダムを振り向かせ、左の操縦桿の親指部分のボタンを押し込んだ。

 刹那、瞬く閃光と断続的な発射音を発しながら、陸戦型ガンダムの胸部より無数の弾丸が放たれ、リーオーNPDへと殺到。殆どがトタンの屋根に豪雨が降ったような音を立てて装甲を叩き回る中、何発かがまだ弾頭を放っていないドーバーガンの砲口へと飛び込んだ。

 そして次の瞬間、ドーバーガンが盛大に弾けた。

 内部に残っていた弾頭に引火した故のその爆発に、保持していた右腕が肩口から消失し、同時に大きくバランスを崩すリーオーNPD。

 待ってました、とばかりのその隙に、

 

「これで――」

 

イツキは両の操縦桿を前方へと一気に突き込み、陸戦型ガンダムを全速前進。その加速を乗せ、がら明きとなったリーオーNPDの胸部へと、

 

「――終わりだああぁぁッ!!」

 

シールドを突き込んだ。

 

 

 

<BATTLE ENDED>

 

 仕留められた最後のリーオーNPDが爆散し、程無くしてその電子アナウンスと共に“MISSION COMPLETE”の表示が中空に現れる。

 それを目にして、おっしゃー、とガッツポーズを取って喜ぶイツキを通信ウィンドウ越しに、おめでとうですー、と両手を合わせて祝いの言葉を掛けるトピアを横目に見ていたアイアンタイガーは、ふー、と息を吐いた。

 

『ねーねー! どーだった? 俺の初ミッション、どーだった!?』

 

「まーまー、っつートコじゃねーの?」

 

 目を輝かせて先のミッションの感想を訊いて来るイツキに、そう気の無い声でアイアンタイガーは返答した。

 実際のところ、二、三度ヒヤヒヤさせられそうになった場面はあったし、ビームライフルも失ってしまったが、それ以外に装備の損失や機体の損傷は無い。低難易度のチュートリアルである事や、使ったガンプラが出来の良いレンタル品である事を差し引いても、GBNどころかガンプラもまともに触って来なかった奴の戦果としては中々のものといえるだろう。

 まぁ、素直にそう伝えるのも面白く無かったのでぶっきらぼうな言い方をしたせいもあって、当のイツキからは、まーまー、って何だよ、と不満げな声が返って来たが。

 

『ちぇっ。ねーねー、トピアはどうだった? 俺の活躍ー?』

 

「イツキくん、とっても頑張ってました」

 

『だよね、だよねー! トピアは話分かるよなー、()()()と違って』

 

だからアイアンタイガーだっつの!!

 

「あと、陸戦型ガンダムちゃんも、やるなラリー! 、って言ってますー」

 

『だから誰だよラリーって……』

 

 そんな遣り取りを少しやった後、そろそろ戻って来いよ、とアイアンタイガーはイツキに告げた。

 まだ受注したミッションを達成した事をミッションカウンターで報告し、正式に完了させると共に報酬を受け取る作業が残っている。

 遠足は帰るまで、と続けてアイアンタイガーがその事も伝えようとした、正にその時だった。

 

『うん?』

 

 不意に、アラートが通信ウィンドウ越しに――つまりは、イツキがいる陸戦型ガンダムのコックピット内に鳴り響き、そして間髪置かず――轟音が画面の向こうを激しく揺らした。

 

『うわあああぁぁぁっ!?』

 

「イツキ!」

 

「イツキくん!」

 

 画面の向こうで悲鳴を上げるイツキに、隣のトピアと共に叫び掛けるアイアンタイガー。

 その目が、正面と左右モニターに映る空と雲が激しい勢いで下から上へと流れていっている様を捉え、そして察した。――陸戦型ガンダムが、猛スピードで地表向けて落下している事を。

 そうしてものの十秒と経たず、再び轟音と振動が発生。同時にモニターの向こうで舞い上がった枝葉や土砂が、機体が森の中に墜落した事を報せていた。

 

『ってて……』

 

 手を当てた頭を振りながら、イツキが呻く。

 感覚フィードバック範囲の関係で痛みこそ無い筈だが、それでも直に音や揺れに襲われた彼には、思わずそんなリアクションを取ってしまう程にそれらは激しいものだった。

 そんな彼に、心配げにトピアが呼び掛ける。

 

「イツキくん、大丈夫ですかぁ!?」

 

『あ、ああ、俺は大丈夫だけど……』

 

「機体の方は――良いのもらったみてーだな」

 

 その一方で、ギャラリーモードのメニューから陸戦型ガンダムのステータス画面を呼び出し見ていたアイアンタイガーは、そこに表示されている状況に顔を顰めていた。

 その理由は機体の左肩と右膝の軽微な――しかし、先程までは確かに無かった筈の損傷であった。

 既に、チュートリアルミッションは終わっている。敵であったリーオーNPDは全て撃破済なのだから、これ以上攻撃が加えられる筈は無いのだ。

 にも関わらず、イツキは攻撃を受け、そのせいで森の中へと落ちる事となった。

 だとすれば、その攻撃の主は――!

 

『惜っしい~!』

 

 ふと、アイアンタイガー達とは違う誰かの声が聞こえ、続いて、正面モニターの上方から何かの影が悠然と降下して来た。

 

『初心者のガキ相手なら、ファングの2,3発突っ込ませりゃ楽勝だと思ったんだけどなぁ』

 

『あ! やっぱり()()ぃ独り占めする気だったんだ! ずっる~い!』

 

 現れたのは二機のガンプラ――“機動戦士ガンダム00”にて登場した“アルケーガンダム”と、そのバリエーション機“アルケーガンダムドライ”。

 共に胴の中央で紫色のレンズ状の“GNコンデンサー”を怪しく輝かせ、背や脹脛の辺りから血の様に赤い“GN粒子”を噴き出すその二機は、アルケーの方は同じく00出身の“ガンダムスローネツヴァイ”のような濃いオレンジ色に、アルケードライの方はやはり00出身の“ガンダムスローネドライ”のような赤紫色に塗り分けられている。

 その二機のアルケーからオープン通信で垂れ流される男女の声に、さっぱり状況に追い付けていないイツキが困惑を顕わに言う。

 

『えっ? な、何これ? ミッション、終わったんじゃ――』

 

(ちげ)ぇ」

 

 その疑問にアイアンタイガーが答える。

 心中に湧き出る苦々しさを隠さない声で。

 

「ミッションの敵なんかじゃねぇ。そいつらはただの――」

 

『まぁまぁ、そう言うなって。俺が君を差し置いてそんな事するワケ無いだろ、マイシスター? それに、獲物だってまだ活き活きしてんだ。こっからは――』

 

 オレンジ色のアルケーが、右腕にマウントした“GNバスターソード”を前方にスライドさせ、分離したその柄を右手に握る。

 一度振り上げられたその切っ先が、

 

「――()()()()()だ」

 

『―― 一緒に“ダイバーポイント”ごっそり頂こうぜー!!』

 

まっすぐにイツキへと向けられた。

 




一難去ってまた一難とはこの事かッ(ガトー並感

次回、VS初心者狩りーズ。そして、遂にアイツらが……?
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