フィクサー達の華麗なる日々   作:セルマァ…セルマァ…セルマァ…

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は!は!は! 意外と好評で草ですよ!
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冗談さておき、経験無いのであんまり期待シナイデ…シナイデ…


Side:F 底辺と上辺の日常

 フィクサーという職業は、社会には認知されていない。徹底的な秘匿がなされており、その実情を知ろうとすれば「知ろうとしたこと」すら忘れて表通りに放置されるのが関の山であり、最悪の場合この世から退場する。

 

 何しろ、取り扱う仕事が仕事。情報収集から殺しまで、十二協会と事務所が依頼として受諾してしまえば、文字通り何でもやるのがフィクサーという集団だ。

 

 十二協会とは、治安維持、戦闘、暗殺、情報、特許、取引、契約、など事務所に舞い込む多種多様な依頼を全て管理する組織のことを指す。

 また彼等自体も任務をこなす腕利きでもある。

 例えばハナ協会。管理を行う一番目である彼等の業務は多岐に渡るが、代表的なのが分類だ。

 社会の表裏両面───つまり遍く都市で発生する全ての出来事を依頼料ごとに「都市怪談」「都市伝説」「都市疾病」「都市悪夢」そして「都市の星」に分類する。

 

 そして依頼に等級があるように、フィクサー達にも等級が存在している。一番上の「特色」から最底辺の「9級」までが設けられた等級だ。

 彼等は己の特性ごとに「事務所」へ割り振られ、そこで己の腕を奮って行く。

 

 此処「ユン事務所」もその数ある事務所の一つである。大抵8から9級のフィクサー達が揃い踏みする、いわゆる底辺の事務所であった。

 

「リーダー! 猫探しの依頼、無事終わりました!」

 

 元気にあふれた若い少年の声が事務所に響く。彼の名前はフィン。新米中の新米である9級フィクサーであり、未だこの業界にも疎いところが多い少年だ。

 

「…ご苦労。ならもう今日で仕事は終わりだ、報酬はそのまま給料としてお前が持っていけ。それでここの経営がどうにかなる訳でも無い」

 

 炭酸飲料を冷蔵庫から取り出しながら、フィンの報告を受け取った金髪の男はユン、つまりこの事務所の長である。

 彼もブレずに下級のフィクサーだ。

 しかし同時に事務所の経営者でもあるため、常日頃から出費や給料に関しては頭を悩ませていた。

 下級ならば手配される依頼も当然、おざなりな物になり、最悪の場合「捨て石」にされる事もある。

 

「やっぱりコツコツこなすしか無いですよ、そうすればきっと実入りのいい仕事が…」

「猫探しにひったくり探し、こんな依頼ばかり片付けてるウチにそんな仕事が回されると思うか? …良いか、青二歳。これも需要なんだよ」

 

 ───そう、需要だ。

 いつも通りその言葉で自分を納得させる。ただでさえ〝ヒーロー〟が飽和している社会だ。必然、上に回される重要な仕事は「絶対勝利」「見つからない」「完全な隠蔽」と言った高いクオリティを求められる。

 だからこそ、簡単な仕事は俺たちのような底辺がこなし、上の奴等が余計なことに時間を取られないようにしている。そう納得するしか無い。

 

 …そうともなれば、フィンは運が無い奴だな、とユンは憐れんだ。彼は長だからこそ、目前の熱意ある少年が、上に登ることは極めて至難の道だと理解していた。

 しかし、当の本人はそうとも知らず、熱意を持った瞳で意地を露わにする。

 

「僕、いつかお金を貯めて、ここにいる皆の分の武器を買います! それで皆で強くなって、もっと稼いで…」

「………………」

 

 ユンは、何も言わない。

 言わないが、悪様に否定する事もなかった。

 ただ呆れたような、惜しむ様な溜息を吐く。

 

「いたっ」

「……そんな事よりお前は先ず自分の改造手術を受けろ」

 

 そんな事を言って、彼はフィンへまだ口をつけてなければ、開封もしていない炭酸飲料を頭に押し付ける。

 タバコを取り出し、火をつけながら席を立ち、そして少年に対しぶっきらぼうにこう告げた。

 

「…飲んだら出かける準備をしろ、昼時だ」

 

 フィンは一瞬きょとんとするも、満面の笑みでリーダーの背について行く。

 夢も何もかも妥協した人間ではあるが、情がない人間では無い。それがこの事務所の長だった。

 

 

 ───

 

 東京都保須市。摩天楼そびえる日本の都心部。経済や人が滞りなく流れ、巡るために必要な「心臓」の一部である此処には、十二協会のうち一つが存在する。

 名をシ協会。暗殺を取り扱う四番目であり、平等に「死」を与える。

 依頼人がどんな人材だろうと、差別せずに平等に接するのがシ協会の道理だ。依頼金さえ支払えば、依頼者の事情を問わずそれを遂行する。

 

「…〝ヒーロー殺し〟か」

 

 それは対象が(ヴィラン)であろうと変わらない。ヒーローの仕事など関係なく、彼等は何であろうと葬ってきた。

 たった今、とあるヴィランの名を呟いた女傑ことユジンもそうだった。

 

「…少し、考える必要があるな」

 

 彼女は眉間を抑え、思案する。

 ヴィランの暗殺自体は、特に珍しいことでは無い。ヴィランにもハナ協会により分類がされているからだ。

 都市悪夢〝ヒーロー殺しのステイン〟

 これまで多くのヒーローを殺し、またフィクサーも返り討ちにしている屈指の実力者。

 彼の病的なまでの頑固さと、意地から来る気迫は本物だ。実力もそれに沿っている。

 

 ハナ協会は彼の実力や信条…では無く、もたらした被害の大きさや、彼に目をつけている組織を加味し、依頼料の上昇を予期する。

 そしてそれは的中し、都市悪夢への昇格がなされ、それと同時に暗殺依頼がシ協会に舞い込んだ。

 

「…ヴァレンティン、今週こちらに回された案件を読み上げてくれ」

 

 ただでさえ、ヴィランへの暗殺任務が多いシ協会。情報の整理は欠かしてはならない。

 ユジンは自分の部下の一人である長身の男、ヴァレンティンにそう言いながら書類の整理を始めた。

 

「はい。月曜に都市悪夢〝鋳鉄兄弟〟三日ほど前に都市疾病〝オーバーホール〟が非営利団体より依頼。

 一昨日には各方向から都市伝説〝歯車の教団〟の暗殺が依頼されています」

 

 ヴァレンティンも書類の整理をしながら、つつがなく上司の求めに答える。

 ユジンはまた少し思案してから、新たに書類の作成に取り掛かる。

 

「幾つか他の事務所に回す。情報通りなら、事務所の方が確実な遂行が出来る筈だ」

 

 コピー機から、複数枚の書類が吐き出される。

 ユジンはその書類を手に取り、自分のデスクの中から幾つかの書類をまとめ、それらを束ねてから封筒へ入れる。

 そしてそれを、もう一人の部下である黒い長髪の少女、テンマへと手渡す。

 

「テンマ、ヴァレンティン。これを二人で終止符事務所に回してくれ。菓子折り代は経費でいい」

「了解です、部長」

 

 新たな仕事を請け負った二人は、切りのいいところで現在進行している仕事を中断し、黒い装束を身に纏い、日本刀を竹刀袋に入れ肩に下げた。

 身支度を整えながら、ふとヴァレンティンが呟く。

 

「…この国、何なんだろうな」

「どうしたの、ヴァレンティン」

「たまに思うんだ」

 

 やや遠い目をしながら、男は此処に配属されてからのことを思い返す。

 舞い込む依頼に、潜り抜けてきた死闘。目撃した凄惨、または陰惨な事件。

 遠い目がさらに遠くなり、テンマは心配そうな顔をするが、ヴァレンティンは自分の思考を吐き出した。

 

「幾つもの都市の星や都市悪夢が現れ、それに対処出来る事務所がある。屈強なヴィランも多く、強力なヒーローも多い…日本でこれなら、他の国は…」

「いや、そうとも限らない」

 

 しかし、それをユジンは遮った。

 彼女は自身の経験や、自ら触れた情報に基づいた知見を自分の部下へ語る。

 

「オールマイトの活躍で、多くのヴィランが抑制されたが、それはかえってヴィランに『潜伏と増強』という選択肢を提示した事にも繋がった。

 それが皮肉にも現状を招いたとも言える」

 

 オールマイト、それを知らない存在はほぼ無い。

 No1ヒーローに相応しい、特色フィクサーにも引けを取らない実力を持つ「平和の象徴」その人だ。存在そのものが犯罪の抑止力。ナチュラルボーンヒーローとも称される生ける伝説。

 ハナ協会は、彼の出現前と後が一つの時代の区切りと考えており、彼が本格的に前線を退いた際の場合も警戒している。

 その理由は至って単純な構造だ。

 

「押さえつける力が大きいほど反発は強くなる、ですね」

 

 非情ではあるが、それが世の流れだった。

 ハナ協会はそれを熟知しており、だからこそヴィランの分類を重点的に行い始め「事前の掃除」を円滑に進めて行く。

 また、ハナだけでは無く、十二協会に身を置く者ならば必ず懸念するものもあった。

 

「そうだ。それに、この土地には〝魔王〟がいた」

 

 表と裏、その両面に〝魔王〟と畏怖された存在。

 彼の残した爪痕は、誰もが警戒している。

 

「…落ちた都市の星〝魔王オール・フォー・ワン〟

 彼の残した遺物がある限り、この国は冷たい動乱の中にいるだろう」

 

 




都市の星…「魔王」
備考:落ちた星
  遺体が存在しないため、再発の可能性有
都市疾病…「オーバーホール」
備考:ヒーローでも十分対処可能
  しかし能力に利用価値が大きく、L社より依頼が来る可能性があるため、昇格候補

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