フィクサー達の華麗なる日々   作:セルマァ…セルマァ…セルマァ…

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Side:L 個性特異点→Side:F 沈黙と残響

〝個性特異点〟───氏子達磨が提唱した論説だ。

 人類に突如として発現した個性は、世代を経るごとに混ざり合い、より複雑かつ曖昧に変貌して行く。

 赤の女王説のように、人の進化が個性の進化に追い付けなくなり、個性のコントロール自体が不可能と化す…というものだ。

 

 しかしこの論説を真面目に受け取った者はいない。

 結果、提唱者のみが彼に向き合うこととなった。

 

 だが、それは大きな勘違いだ。

〝個性〟が混ざり合う事は認知されていた。それを目的とした個性婚なんていうものも存在していた程だ。

 混ざり合いが続けばどうなるか、それを考えない学者がいない訳がない。

 

 そう、とどのつまり───()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 そして提唱者である氏子達磨がだけがこの論に向き合った、というのも語弊がある。

 厳密に言えば、もう一人存在する。今や社会の表舞台から「幾人かの人材」を連れて消え去った女学者。

 

 その名を〝C(カルメン)〟 

 

 赤い双眸を持ち、多くの人の心を掴んだ存在だ。

 

 

 

 

 

 ───

 

 

 人の悲鳴、治らない煙、怒号と慟哭。

 煙のせいで狂っているのか、

 狂ったせいで煙が出ているのかわからない。

 

 …分かっている、これは夢だ。

 

 黎明期から現在の間に、二つの戦争が起こった。

 〝特許戦争〟と〝煙戦争〟だ。

 前者は周期的に訪れるが、後者は違う。

 これは、俺達が作り上げた戦争だ。

 

 俺達は翼に満たない存在だった。

 だが〝C(カルメン)〟と俺が目的を果たすためには、どうしても世界の屋台骨でもある翼と、それを牽引するA社…『頭』に取り入る必要があった。

 …巻き込まれた人々に対し、心を砕く暇は無かった。

 

 だが、そうだ。

 

 俺は、苦手な機械にはなれなかった。

 人でなしであり、悪霊そのもののような男だ。

 だからこうして今も、その時の夢を見る。

 繰り返し、繰り返し、忘れないように。

 

「…! …きて!」

 

 …甲高い声が、聞こえる。

 そろそろ、この夢も終わる。

 意識が上り始め、光景が霞出し…

 

「…! 起きてってば! 〝A(アイン)〟!!」

 

 俺を呼ぶ〝C(カルメン)〟の声で、完全に視界が切り替わった。

 

 この部屋には、幾つものモニターが設置されている。

 モニターには無数の部屋と、その部屋を忙しなく行き来する職員達の姿がいつも通り、映し出されていた。

 このモニターに映る光景と、この部屋は通信で繋がっている。

 そのため、時折スピーカーから『管理人はまだ起きないのか?』やら『今からあの野郎を叩き斬ってやる』やら聞こえて来る。

 俺は頭を抱えながら、傍に立つ〝C(カルメン)〟に聞いた。

 

「…どれくらい寝ていた?」

「十分だけよ、一応待機命令は出しておいたけど…少し休憩する? エネルギーも溜まっているから少しだけTT2で時間を止めても問題は…」

「いや、続行する…早く終わらせよう」

 

 一つ、深呼吸。目眩はするが問題無い。

 モニター近くのマイクをオンにし、アナウンス。

 

『すまない、直ちに業務に戻る。

 待機命令は現時刻をもって解除する。

 指示を出す。バジル、ジョシュアは───』

 

 指示を出し終わってから、俺は椅子に深く座った。

 …やはり体調は優れない。だがゆっくりもしていられない。早く、このシナリオを終わらせなければならない。

 

『管理人、報告です。個性:何も無いですが───』

『管理人! 個性:シャーデンフロイデは…』

『管理人!』『管理人』『管理人さん』『なぁ管理人』『おーい管理人』『管理人』『管理人!』『管理人』

 

 目眩くように上がる報告。

 その一つ一つを余さず対処させる。

 それがL社における俺の在り方だ。

 

 翼の一つである此処は「エネルギー生産」を業務としている。その生産元は今や収集に困らない「個性」そのものだ。

 我々は、長い研究の末に「個性」を「抽出」し実体を与える術を得た。

 実体を持つ「個性」…此処では幻想体(アブノーマリティ)と呼ぶが、ともかくこれらを管理することでエネルギーを作り出し、それを各国の都市や他の翼へ配分する。

 それこそがL社の事業だ。

 

 勿論「個性」は無理矢理収集したわけじゃ無い。

 現代でも「個性」を疎ましく思う者や、「個性」によって人生が思うままに行かなくなった者は存在する。我々はそういった者達から「個性」を「抽出」して、収集した。

 全ては「個性特異点」回避のためだ。

 

「……カーリーの帰りは、何時になりそうだ? 数あるうちの一つとは言え、何時までもR社の人材を頼りには出来ない」

「そう? ミョは大丈夫って言ってたけど」

「……言い方を変えよう、彼女では〝赤い霧〟の代用にはならない」

「…不安なの?」

 

 すう、と〝C(カルメン)〟の目が細くなる。

 

「……ああ、もう『あんな惨事』は起こせない。その為にガリオンを引き込み、翼になってR社やT社…他の翼とも結託した。あとはカーリーが揃えば、万全だ」

 

 …我々とて、無傷で此処まで来たわけでは無い。

 今は眠っている「魔王」に、一度大敗している。

 だからこそ、同じ轍はもう踏めない。

 

「…大丈夫よ、〝A(アイン)〟まだ時間はあるから」

「……………早い方が良い」

「うーん、貴方ってそんな頑固だったけ?」

 

 

 

 ───

 

 セブン協会支部───情報を取り扱う七番目

 

 勤務中の職員は、皆一様に青い顔をしていた。

 また、多くの職員が会議室の扉を遠巻きに取り囲んでおり、いつでも逃げられるような体制をとっている。

 

 会議室内部には、四人の人間がいた。

 一人は胃薬を手放さないセブン協会職員の一人であり、残りの三人はセブン協会には所属していない、他の事務所に席を置くフィクサーだった。

 だがそのフィクサーこそが、此処セブン支部の総員が青い顔をする原因である。

 

「やっぱり、デトラネット社が怪しいと思うんだよ」

 

 金の装飾をあしらった青い服に、白い髪の男がそう言う。彼の手元には「状況レポート:デトラネット社」と書かれた書類がひらひらと踊っている。

 それを見る黒スーツに黒手袋、そして黒髪の男であるローランは、剣呑な目つきで青い服の男を睨み、不機嫌そうな声で呟いた。

 

「……何で此処にいるんですか、青いキチガイさん」

「とうとう脳までイカれたのかな? ちゃんと〝青い残響〟って言わないと。それかアルガリアお義兄さんって呼んでみたらどう?」

「……………」

「ストップですローラン、『手袋』から手を離して。

〝青い残響〟も煽らない。あと何で此処にいるんですか、出来れば帰ってください」

「…俺、泣きそうだよアンジェリカ…昔みたいにお兄ちゃんって…」

「歳を考えてろ」

 

 白髪の女ことアンジェリカに青い残響と呼ばれたアルガリア、フィクサーで色を冠する称号を持つならば、持つ等級は言うまでもなくフィクサー最高位の「特色」だ。  

 

 特色の一人、青い残響

 彼の実力や変人ぶりは言うまでもなく最高峰。

「特色」はある程度の自由行動が許されているが、だからといってこの状況は勘弁して欲しいというのが、セブン職員の内心だった。

 

「まぁ、真面目な話をしよっか。俺が今追ってる『都市悪夢』がリ・デストロが使ってるみたいだし、一緒に解体しに行こうと思って」

「うるせぇよシスコン」

「…………本当に〝沈黙〟にしてあげようか?」

 

 彼に悪態をつくローランも、セブン職員にしては恐怖の種だ。

 彼は一時期相当「やらかした」らしく、その伝説は今もなお色濃く語られている。

 そしてローランの隣にいるアンジェリカ、彼女は彼女でローランと共に都市の星「血染めの夜」を下している歴戦の強者。

 ───この場にいる三人が、もし喧嘩でも始めたらどうなるか。それを考えるだけで、セブン職員は震えた。

 何より胃の痛みが止まらなかった。

 

「し、失礼ですが…アルガリア様の追っておられる『都市悪夢』は『異能解放戦線』のことでしょうか…?」

「…は? ただの本じゃないのか、あれ?」

「はぁ…ローランは何も知らないんだね」

 

 セブン職員は必死に話題を提供し、何とか口論を収めようと必死に頭を巡らせる。

 ちなみにそんな涙ぐましい努力をする彼は、アンジェリカから密かにサムズアップが送られたが、反応したら間違いなくローランとアルガリアに殺されるなと思い、何も見なかったことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ローラン…決起日に備え、セブン協会と情報のすり合わせや足並み揃えを行おうとしたがアルガリアがエントリーして来て不機嫌マックス
アルガリア…妹といちゃついてんじゃねぇぞオラ
アンジェリカ…夫も兄も落ち着いて欲しい
セブン協会支部職員…助けて

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