伊勢崎聖陽戦の数日後、俺と怜さん、芳乃は夏の県大会の抽選会場に来ていた。
「怜さん、頼みますよ。なるべく試合を多くできるブロックでお願いしますよ」
「わ、分かってる。だけど緊張するな・・・・・・」
「頼みますよ!キャプテン!」
さすがに怜さんも緊張しているが、そういう事を口に出されるとこちらまで緊張してしまう。
「すいません怜さん、少しトイレ行ってきます!」
「お、おい・・・・・・」
試合でチャンスの場面では緊張しないがこういう場面はやはり苦手だ。トイレを済まし、元の場所まで戻ろうとすると、誰かとぶつかり恥ずかしながら尻もちをついてしまう。
「あ、すいません」
「いや、こちらの不注意だった。こちらこそ済まない」
ぶつかった相手は梁幽館と書かれたユニフォーム姿の年上の選手だった。
「大丈夫ですか?」
そう言って片目が前髪で隠れた選手が手を貸してくれる。
「すいません、ぶつかった上に手を貸して頂いて」
「おあいこさまだ・・・・・・ところでもしかして藤原晃佑か?人違いだったら済まないが」
「いえ、貴女の言う通りの藤原晃佑ですけど、貴女方は?」
「梁幽館高校の中田奈緒だ」
「同じく、陽秋月です」
「え・・・・・・かの有名な中田さんに陽さんですか?」
「そうだが」
「すいません、俺はお二人のファンなんですがサインしてもらっていいですか?」
そう言って俺はサイン用色紙を二枚ずつ二人に渡す。
「?構わないが、なんで二人分なんだ?」
「ウチのマネージャーが選手マニアなものでして・・・・・・」
「そういうことか、そういえばここに居るということは藤原も大会に出るのか?」
「はい、新越谷高校で出させてもらう予定です」
「新越谷か・・・・・・よし、覚えておこう。当たったらその時は全力で相手をさせてもらう」
そう答えながら色紙を二枚書いてもらう。
「ありがとうございます。次会うとしたら試合なのでその時はよろしくお願いします!まあウチは当たるまで残れるか微妙ですが」
「ああ、君は良い選手になるよ。そうだ今度、後輩に君に会いたがっているやつがいてな、そいつと会ってやってくれないか?」
「構いませんよ、もうそろそろ戻らないと行けないので詳細はまたの機会にお願いします。では!」
「ああ、またな」
そう言って俺は元いた場所に走って戻る。
side 中田奈緒
私のファンといった青年、藤原晃佑は中々の選手であることが容易に想像出来る。去り際の走りもかなり速かった。
「彼、いい選手ですね」
「どうした、急に?」
「ネットで彼の記事や動画を見かけたことがあります。左投左打の二刀流、昨年の全国ベスト4相手に連続三振ショーを披露した上に、多彩な変化球、球速ともに吉川クラスのピッチャーで、更に打つ方でもここ三試で七割以上キープしてる化け物です。吉川の妹も憧れるのは納得が行きます」
「藤原晃佑、新越谷高校・・・・・・本当に要注意しないとな・・・・・・」
side out
抽選会場に入ると奇異の目で見られる。それもそうだ、暴力事件は県内でも大々的、報道されたし野球部員の多くが転校もしくは退部している。更に現在の高校一年生の世代最高外野手が、しかも男がいるとなるとそうもなる。案の定、怜さんは視線を受け続け若干萎えていそうだ。着席し、抽選会が始まると次々と枠が埋まっている。その中でもかなり激戦なのが1番と2番の埼玉宗陣高校VS梁幽館高校の県内屈指の有力校対決だろうちなみに二回戦でどちらかに当たる3番の枠がまだ空いている。ここは絶対、3番は引きたくない。怜さんを信じるとしよう。
「お腹が痛いから、済まないが晃佑が行ってくれないか?・・・・・・」
「え、え・・・・・・まじですか・・・・・・分かりました、行きましょう」
『新越谷高校!』
名前を呼ばれて籤を引きに行く。その途中で様々な小言を言われるが、無視し籤を引く。
『新越谷高校!3番!』
「・・・・・・あっ、やらかしたな、これ」
俺はここぞという時の運の悪さを呪い、その後席で固まっていた、
次回、晃佑死す!(ネタです)
恐らく次話から夏大会始まります。