「皆さん、昨日は試合お疲れさまでした。さて、突然ですが芳乃さんと協議した結果GWに強化合宿を行うことにしました。最終日は、藤和高校と伊勢崎聖陽学院とののダブルヘッダーを組みました」
柳大川越戦の次の日、顧問で監督の藤井先生に強化合宿を行うことを伝えられた。
「藤和って去年の東東京代表だったよな!」
「それに伊勢崎聖陽に関しては去年の全国ベスト4の超強豪校じゃない。二軍とはいえどウチには十分過ぎる脅威よ」
「伊勢崎聖陽は藤和と違って一軍だよ」
これは驚きだ。伊勢崎聖陽と言えば俊足好守の選手が多く、盗塁企画数や犠打数が異常に多い機動力野球をそのまま具現化したチームと聞いたことがある。積極的な走塁、積極的な守備、積極的な打撃と全てに置いて積極的なチームとして知られており、選手の大半がセーフティバントを実行出来る走力を持っていて試合相手のエラーもよく二桁に到達するほどよく走ってくる。そんなスピードお化け集団が練習試合の相手をしてくれと言ってきたのだ。しかも一軍なので新越谷の選手間では戸惑いが広がる。
「え!?一軍がウチの試合相手なの?」
「そうだよ、向こうの新4番がこの高校と試合をやりたくて仕方がないって言ってるから主将の鶴岡さんからウチに連絡が来たって監督が言ってたよ」
「向こうの新4番って誰なの?前の全国大会で大暴れした筒香さんは卒業したはずだよね?」
筒香孝美、前回の夏の全国大会で一回戦に一試合三本塁打や二回戦のサイクルヒット、三回戦では決勝ホームラン、準々決勝では猛打賞とサヨナラタイムリー、準決勝でも、一本塁打と大暴れして台風の目となった人物で、この大会だけでも打率.600、7本塁打、18点、4盗塁という化け物じみた活躍をした。今大会で最も優れたホームランバッターという称号を背負い、ドラフト3球団競合の末プロ入りしたここ最近の最強選手だ。
「新しい4番は・・・・・・佐野真桜ってあの佐野さんなの?」
球姫が言った名前には聞き覚えあった。
「タマちゃん、知ってるの?」
「私が知っているのが合っていたら晃佑くんのいたガールズチームの4番バッターだよ!」
「え!晃佑くんって中学時代4番じゃないの?」
「俺は当てるのが上手いタイプだから3番センターが多かった。後は1番か2番だったから4番は一回も打ったことない。今言った佐野がいたからな。というか佐野って伊勢崎聖陽で4番やってるのか?」
「そうだよ、伊勢崎聖陽って今年、三年生が少ないから二年生がスタメンに多いんだよね。三年生はキャッチャーでキャプテンの鶴岡さんと2番で群馬一の強肩って言われてる荒波さんの二人だけで後は大体、二年生で構成されてるよ。その中で数少ないホームランを広角に打てる人材だから一年生で4番に抜擢されてるみたい」
「そんなチームがウチに・・・・・・」
「勝てるのかな・・・・・・?」
相手の情報を伝えると菫と球姫は落ち込みを露わにする。
「私はタマちゃんがいたらどんなチームにも通用するから大丈夫だよー!」
「ヨミちゃん、暑苦しいから離れて!」
ヨミが間の抜けた声で球姫に抱き着く。
「百合だな」
「百合ね」
その光景を見て元に戻った菫と俺はそんなことを呟いた。
GW前夜、自宅にて合宿の準備を終えた俺はベットに寝転がっていると、スマホがバイブする。スマホを手に取り画面を確認するとメールが来ていた。送り主は智景さんだった。
『こんばんは、晃佑くん。この前に話していた海釣りの件だけど、GW中に行かない?』
「すいません、GW中はずっと合宿があるので行けないんです。GWが終わったらすぐにもう少し休みがあるのでその時なら行けます」
『じゃあその時にまた連絡してね。そういえば、GWの最後の日に伊勢崎聖陽の一軍と試合するって聞いたよ』
「そうなんですよ、なんでそれを知ってるんですか?」
『伊勢崎聖陽の1番の桑原とピッチャーの加賀は私と同じガールズチームの選手だったから知り合いなんだ。今でも連絡を取り合っててこの前の試合のことを話したら、今度向こうとも試合するって聞いたから』
「そうだったんですね」
『私も試合、見に行くから頑張ってね』
「ありがとうございます!」
『それじゃあ、おやすみなさい』
「おやすみなさい」
そう言って会話は終了し、スマホを傍らに置いた。だが、智景さんが見に来ることを聞いてしまった。
「ああああああああぁぁぁ!やばい!やばいやばい!智景さんが見に来るって嘘だろー!」
その夜、恥ずかしさの余りベットの上を悶死して転がり回る男子高校生がいた。その音がうるさ過ぎて姉さんに怒られたのは別の話。
ここでどうでもいい情報、伊勢崎聖陽の5番の内村と菫は同じ中学にします。(分かる人には分かるネタ)