IS 翳り裂く白夜   作:菅原リディ

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052 無双の銀

side織斑一夏

 

 俺は砂浜の上にあった流木に白式と共に腰を掛けている。

 

 元の世界の状況が非常に気になるものの、俺は現状体が目覚められる状態ではない(今の俺の体の状態を懇切丁寧に細かく白式は教えてくれた。ちなみに俺の生命力からして絶対に死にはしないらしい)のでここで白式と談笑をしていた。

 

「なるほど、ISが主要部品を馴染ませるのに時間がかかる理由は、フィッティングで機体に会うように細かな調整をしているだけじゃなくて、霊的に自分の一部として馴染ませてるのか」

 

 白式からISの驚愕の真実の1つを知らされた俺。

 

「まさかISに魂まであるとは。日本には物にも大事にしてれば魂が宿るって言う概念があるわけだけど、そう言う理屈で宿ってるのか?」

 

 俺の質問に白式は首を横に振った。

 

「自己認識が可能なほどの能力を持ってる存在には自然と魂が形作られるんだよ。だから私たちISコアには魂があるの」

 

「あ、明確な理由があるんだな」

 

「うん。でも、一夏のさっき言った、物に魂が大切にしてると宿るってのも本当だよ。創造主がたどり着いた真実だよ」

 

 創造主は束さんのことだろう。

 

 しかし、すごいな。この世のスピリチュアルな側面も科学で解き明かせるんだな。

 

 束さんの天才性に俺は舌を巻く。 

 

 すると。

 

「いつも大事に扱ってくれてありがとう一夏」

 

 白式が頭を下げる。

 

 頭を下げたいのはこちらも同じだ。

 

「俺の方こそ、夢を叶えるための……そして誰かを護るための力になってくれたこと。すごく感謝してる。ありがとな白式」

 

 白式の頭をなでる。嬉しそうに微笑む白式。

 

 ひとしきり撫で終えると。

 

「ねぇ一夏。一夏の夢はもう叶ってるんじゃない?」

 

 白式はそう言って首を傾げた。

 

「確かに誰かのヒーローになれたのは自覚がある。傲慢かもしれないけどな。でも、まだ俺はなんて言ったらいいのかな……納得できてないんだ」

 

「夢にゴールが無いんだね」

 

「おう。でも、自分が自分で認められるようになるのがゴールのはずだって信じてる」

 

 俺が白式に笑いかけた直後。

 

「自分を認められるようになるのがゴールとは……。親近感がわくな」

 

 背後から男の声がした。

 

 白式と俺は振り返る。そこにいたのは黒髪紫目の美青年だった。銀灰色の武士の甲冑に身を包んでいる。

 

 銀灰色? まさか……。

 

「銀の福音とかじゃないよな?」

 

 俺が恐る恐る聞くと、青年は笑った後「自分はあいつではない」と言った。

 

「暮桜。出てきたんだ」

 

 白式が青年に笑いかける

 

「……暮桜!?」

 

 俺は思わず流木から立ち上がる。

 

 暮桜は第1世代IS。千冬姉の相棒で打鉄の原形となった機体。装甲材の性能を除けば打鉄以上の性能を誇るISだ。

 

「自分は暮桜だ。初めまして、織斑一夏。千冬の弟だから会いたいと思って出てきた」

 

「な、なるほど。でもどうして白式の世界に暮桜がいるんだ?」

 

 よくわからないんだが。

 

「暮桜はね、コアに大きな怪我をしてるの。今は自己修復中でISボディを駆動させられないから、コアネットワークで私の世界に意識を飛ばしてきてるの。それで前の私から力を学んでるの」

 

「なるほど。なんとなくわかった」

 

 そう言えば白式は新生する前の私がいるって言ってたな。

 

「白式と暮桜以外にもこの世界にいるのか?」

 

 気になって聞いてみると、真昼の空が突然夕暮れ空に変わった。

 

「なんだ!?」

 

「焦ることはないぞ織斑一夏。彼女が出てきただけだ」

 

 暮桜は何でもないことのように言うと、俺の背後を見つめていた。

 

 俺は振り返る。

 

「初めまして、一夏君。我が名は白騎士。かつての白式であり、消えることのできなかった存在です」

 

 なんと、現行のISよりも小型で、ぱっと見、メカニカルな鎧という印象を受けるISを纏った、高校生の頃の千冬姉が浅瀬に立っていた。

 

 白騎士だ。本人の言う通り、フルフェイスのハイパーセンサーを頭にかぶっていないこと以外はそのものな見た目をしている。

 

「新生する前の私だよ一夏」

 

 白式が胸を張って答えた。

 


 

 

 銀の福音がタクティシュヴァッフェンの刺突攻撃を胸部に喰らい、ナターシャの胸骨に切っ先が食い込んだ瞬間。突如銀の輝きを放って消えた。

 

「な!? 消滅した!?」

 

 まずはラウラが真っ先に焦る。

 

「レーダーに感ありですわ!!」

 

 セシリアが叫んだ。セシリアは仲間にすぐさま銀の福音の座標を伝達した。

 

 銀の福音がいたのは……。包囲部隊と近接戦闘部隊の直上だった。

 

 シルバーベルを生きている砲門全てから連射する銀の福音。

 

 消滅したと思ったら突如上空に移動していたため、反応が遅れてシルバーベルをそれなりに喰らう包囲部隊。

 

「させませんわ!!」

 

「止まれ!!」

 

 セシリアと箒が銀の福音に攻撃を殺到させる。

 

 それをその場からさっきのように銀の輝きを放って消滅して回避した銀の福音。

 

「な!? 後ろ!?」

 

 銀の福音はセシリアの背後にいた。左手の爪で、ブルー・ティアーズの左の非固定浮遊部位を破壊する。

 

「セシリア!!」

 

 箒が銀の福音に突撃する。セシリアを救出するために。しかし今度は箒の背後に突然現れる銀の福音。

 

「どうなっている!?」

 

 箒は非固定浮遊部位をソードの如く稼働させて銀の福音を自分から遠ざける。

 

『山田先生。今のはまさか!?』

 

『皆さん気を付けてください!! 銀の福音は空間移動の単一仕様能力を持っています!!!!』

 

 千冬と真耶が仮説指令室で銀の福音のやっていることを空間の歪みなどから解析結果を出し、大慌てしながら、通信を16機のISに送る。

 

「まさか、そんな!?」

 

 シャルロットが悲鳴を上げる。

 

「な、なんて……インチキな……」

 

 簪がそう呟いて表情がこわばる。

 

「テレポーポートってこと!? クソッ!!」

 

 響の背後から強襲しシルバーベルを撃ちまくる銀の福音。

 

 ランスビット・撃槍を盾代わりにしてシルバーベルを防ぎ、ランスビットが爆散すると同時に響はブレーカドリルで殴り掛かる。

 

 銀の福音は最小限の動きで回避すると、シルバーベルをまた響に連射。それを喰らって打鉄撃槍はダメージレベルがBになる。

 

「くっ!?」

 

「させるかぁぁぁぁ!!」

 

 ラウラはタクティシュヴァッフェンを変形させる。剣身を2つに割ってウイングにして。大剣モードの後端のブースターを本体の追加ブースターとして運用。イグニッションブーストを発動し交差させたプラズマブレードで銀の福音に体当りを仕掛けるが、ぎりぎりでまた座標移動を発動し、その場から消失する銀の福音。

 

「どうするみんな!? これじゃあ包囲できないわよ!!」

 

 鈴がこのまま東京にまでワープされるのではないかと警戒しながら、新たな銀の福音のワープ地点である、簪の背後に急行する。

 

 背部の春雷を、銀の福音の左手で2機とも破壊される簪。焦りながらも簪は最適な選択をする。それは非固定浮遊部位に突っ込んだ通常のミサイルを全弾発射して銀の福音を追い払うというものだった。

 

 銀の福音は簪から離れてやがて座標移動を発動した。

 

 簪は真耶に連絡を入れて、銀の福音のテレポートに弱点が無いか調べることにする。

 

 そんな中で銀の福音は、連携が取り辛くなった16機のISに報復を始めた。

 

 次々と撃滅部隊のISを、座標移動と機動力と運動性を生かしたヒット&アウェイでダメージを与えていく銀の福音。

 

 箒だけはビームシールドを全面に展開することで攻撃を防いでいたが、やがて銀の福音はそれを学習して、箒を後回しにする。

 

 まずは、教員部隊の2機のラファール・リヴァイヴがウイングからのシルバーベル掃射でシールドエネルギー残量を0にされ予備のシールドエネルギーに切り替えられる。

 

「ごめんなさい!!」

 

「離脱します!!」

 

 後退していくラファール・リヴァイブ2機。

 

 もはや戦場は、銀の福音の座標移動によって連携がたたれた状態になっていた。完全に乱戦である。

 

『各機、今送ったガイドに基づき、指定された味方のフォローをするんだ。銀の福音に学習されてはいけないので随時パターンは更新し続ける!!』

 

 仮説指令室から送られた、自らがフォローする味方の位置情報が網膜投影HUDに表示される14機のIS。

 

 その効果はそれなりにあり、銀の福音による一方的なヒット&アウェイの連続攻撃をある程度阻止するのだがそれでもダメージがどんどん各機は蓄積していった。

 

 国際IS条約に調印して、ISを分配される基準を満たしている21の国と地域のISコア分配数はどこも20機である。例外的に日本がテロリストに逆戻りする前の束にISコア付きのゴーレムⅡを14機と同じくISコア付きの紅椿1機を提供されて数時間の間だけISコア保有数が30機を超えていたが、本当に例外である。

 

 先ほどまでは16機もいた撃滅部隊のIS、つまり国家のIS保有数の約75%という恐るべき数であり、小国の軍隊であれば簡単に捻り潰せる数なのだが、それを単一仕様能力を手に入れた半壊した第4世代機は1機でどんどん追い詰めていくのである。

 

 銀の福音は止まらない。強制される命令を遂行するために。そして相棒であるナターシャを護るために。そしてナターシャを傷つけた存在達に報復するために。

 


 

 

 夜になったポイントDGでは、デュアルデバスター・イチイバルという名が与えられた、シンフォギアの上から纏えるISを装備した雪音クリスがガトリング砲をぶっ放し、ミサイルを撃ちまくり、ハンドガンを連射し、とにかく自衛隊の投入される無人兵器のこと如くを撃退し、何度もISを撤退に追い込む。その大火力を生かしてポイントDGの10層あるドームをすでに3層まで破壊しているクリス。

 

 雪色の美しい髪に紫の目をしているトランジスタグラマーな体形のクリス。四肢をISで覆い、その下にシンフォギアを纏った彼女はヘッドギアから降ろされたバイザーで目元を隠しているが、奥にあるその瞳に生気はなく、口元からは戦いを忌避する抑揚のない歌が紡がれている。

 

 クリスは本当に悲しく不幸としか言いようのない少女だ。音楽家である両親のNGO活動に幼いころに同行して訪れた南米のバルベルデ共和国。そこで両親を爆弾テロで殺され、さらに自身は捕虜生活を余儀なくされ、幼い体には身に余る非道な奴隷同然の扱いを受けた。その後日本に救出されてからは、戦争を憎みその火種を無くしたい気持ちをフィーネに、「戦う意思と力を持つ者を滅ぼせばいいと」言葉巧みに意思を誘導されて、公から行方不明になり、フィーネの元でソロモンの杖を争いを沈めるために使うものとして起動させるために利用された。挙句にフィーネからは「痛みだけが人をつなぐという」持論から、時々拷問のようなものを受けてフィーネに従順になるように教育された。さらに志半ばでフィーネが死亡。どんな形であれ信頼していた大人が、またいなくなったうえ、今度は聖遺物を起動させられるだけのフォニックゲインを生み出せる歌声を発することができるという理由で束に捕縛され、ついには聖遺物、神獣鏡の欠片を使って作ったダイレクトフィードバックシステムという人間の脳内に介入する一種の洗脳装置で自意識をほとんど奪われた。

 

 そして今はダイレクトフィードバックシステムで戦いを忌避する気持ちだけを増幅させられて、シンフォギアを起動。ただただ束の送ってきた命令を機械的に処理する人形と化していた。

 

 唯一幸いなのは、ソロモンの杖で間接的に人を殺しただけで、直接はまだ手を汚していないことだ。クリスは優しい少女である。もし罪のない人を殺めるようなことを直接させられれば、心が壊れてしまうだろう。今の時点でもすでに壊れかけているのだから。

 

 無人兵器を一通り、再び一掃して、クリスはまたポイントDGのドームを吹き飛ばそうとする。

 

 だが!!

 

 心が壊れかけており、感情など死滅しかかっているクリスですら後方から恐怖を感じて、ダイレクトフィードバックシステムもまたそれを敵と判断したため振り向いた。

 

「ふん。やはり雪音クリス。シンフォギアの第一種適合者か」

 

 修羅が呟く。

 

 クリスの敵とは、風鳴訃堂だった。

 

 訃堂は昼間から各地を転々として天叢雲剣と共に無人ISを殲滅してきた。さすがに意思無き機械であるうえ、空を飛び、連携までするゴーレムⅡを倒すのには相当な時間を要した。だが、特異災害対策機動部IS部隊が対応した瑞鶴を襲撃したゴーレムⅡ4機を除いて、すべて訃堂が倒したのである。

 

 訃堂は昼間から変わらず、大日本帝国時代の風鳴機関が聖遺物研究で得た技術を使って聖遺物を素材に造り出した鉛色の鎧……強化外骨格「防人装甲・烈」を身に纏っていた。装甲の下のフレームに鋳込まれた幾多の聖遺物の欠片が訃堂の戦意に……夷狄を撃ち滅ぼさんとする憎悪に共鳴して紫色の輝きを放ち、継ぎ目から漏れ出て、暗い夜の中、不気味に存在感を放っていた。

 

「ひっ……」

 

 クリスが歌を中断してしまう。ダイレクトフィードバックシステムの強制力を上回る恐怖を訃堂が睨みつけただけでヘルメット越しだというのに感じてしまったからだ。

 

 訃堂の意志が圧となりクリスの心を飲み込んだ。

 

 クリスは訃堂の背後に修羅や鬼神と言った、超苛烈な攻撃的存在の幻影を見る。それも超巨大で禍々しい。

 

「呆れるほどに脆弱な意思よ。その上、哀れな傀儡と化しておるか。果敢無き哉!!!!」

 

 訃堂がアスファルトを踏みしめる。アスファルトが巻き上がる。

 

「防人にして護国の鬼!! 風鳴訃堂、いざ参る!!!!」

 

 見るものすべてに恐怖を植え付ける、訃堂の力強く地を踏みしめながら歩む様。

 

 クリスは震えながら両腕のダブルガトリングを訃堂に撃ちつつ、上昇して、距離を取った。

 

 訃堂は天叢雲剣の機能である分割能力を使用し、反りのない片刃の剣にして両腕に保持。ガトリングの弾丸をひたすら切り落としながら進んでいく。

 

 常人であればそのけたたましいガトリングの音だけで恐怖を感じるというのに、それに動じることのない。むしろ撃っている側に恐ろしさを抱かせる訃堂。

 

 クリスを一定距離から包囲している味方である自衛隊すらも自分たちを圧倒したクリスへと迫っていく訃堂に、修羅を感じて恐怖心を抱く。

 

「や、やだ。くるな!!!!」

 

 不幸にも、ダイレクトフィードバックシステムの洗脳効果よりも、恐怖心に伴って自意識が強く覚醒するクリス。

 

 小型ミサイルを腰部アーマーの側面や、ISボディの手足から一斉発射する。

 

「ふぅぅぅぅん!!!!」

 

 訃堂はふくらはぎに備わった噴進装置を起動させ圧倒的爆風と共に飛び立つ。まっすぐクリスへと驀進する訃堂。

 

 そんな中で、訃堂は飛んでくるミサイルを全弾切り裂いて爆砕する。

 

 ISですらない何かが、一般的ISとは比べ物にならない性能を持つデュアルデバスター・イチイバルの攻撃を撃破して突き進む様に、自衛隊はもはや呆気に取られていた。

 

 余談であるがこの防人装甲・烈にはショックアブソーバーなどの親切なものは一切合切搭載されていない。ただ人外じみた人間の身体能力を戦意で高め、防御力を向上させてくれるだけのものである。なので、常人が纏えばまず、幾多の聖遺物の欠片の不協和音によって発生する破壊衝動の増幅効果に飲まれて発狂して死に、精神が伴っていても、今度はパワーアシストの負荷に肉体が耐えきれずに死ぬ。これを纏えるのは鍛え抜かれた精神力と、人でありながら人を超える肉体強度が必要なのだ。この条件を満たしている人間はそう多くはない。両手で数えられる数しかいないだろう。

 

「はぁぁぁぁ!!!!」

 

 訃堂が恐怖で冷静な判断ができずにその場で弾幕を張るという選択を取ってしまったクリスの両腕のダブルガトリングを天叢雲剣でシールドバリアごと切り刻んで破壊する。

 

 続いて、訃堂はクリスの四肢のISボディを、破壊しようとする。だが、クリスはイグニッションブーストを発動して後退する。

 

 訃堂はふくらはぎの噴進装置を細かく何度も噴かせて、空中で態勢を整える。コンピューターなどで制御されていないのにこんな芸当ができるのは100年単位で防人装甲・烈を纏ってきた訃堂くらいである。

 

 そして訃堂は2本の天叢雲剣から、青いエネルギー斬撃波を発射。クリスを護るシールドバリアを突破し、非固定浮遊部位を2機とも破壊する。

 

「いやだ、パパ、ママ助けて!!!? あたしは戦いたくなんかない!! この人が怖い!!」

 

「恐怖は一瞬で終わらせてやろう。だからそれ以上逃げるでないぞ雪音クリス……!!」

 

 訃堂は、発狂し泣きながらハンドガンを撃ちまくるクリスから迫ってくる弾丸をことごとく切り捨てクリスに接近した。そして、まずは回し蹴りでクリスのヘッドギアを粉砕した。

 

「あぐっ!?」

 

 それから圧倒的な力量差による一方的解体が始まる。

 

 回し蹴りで回転した勢いで、まず右腕のISボディをクリスの腕は切り取らない神業で訃堂は破壊。続いて膝蹴りでクリスの腹にダメージを与え、絶対防御を突き破りクリスの呼吸のリズムを崩させて脳の機能を低下させる。

 

 さらに、訃堂はクリスの両脚部のISボディに天叢雲剣を突き刺し、エネルギーを送り込み爆砕させる。絶対防御のおかげで怪我はしないクリス。

 

「いや、いやぁぁぁぁ!!!?」

 

 クリスが泣きじゃくる中、訃堂は淡々と天叢雲剣を合体させるとクリスの左腕部のISボディも一閃して破壊する。さらに天叢雲剣を握っていない左手でシンフォギア部分であるクリスの腰部アーマーを引きちぎって壊す。クリスの体を浮かせるだけの機能を失ったデュアルデバスター・イチイバルはクリスと共に落下を始めるがそれを訃堂はクリスの胴を右腕で抱く。

 

 クリスは訃堂の纏う防人装甲・烈から伝わる冷たい感触。それによって背筋が凍る。声を出すことすらできないほどに圧迫するような恐怖が湧き上がる。

 

 すると訃堂はクリスの後頭部についていた円形のユニット……。ダイレクトフィードバックシステムを左手で引きちぎった。その瞬間、クリスの体が一瞬ピンと伸びて痙攣したのち動かなくなる。

 

「これは、おそらく米国が神獣鏡の欠片で開発したらしいダイレクトフィードバックシステムか」

 

 訃堂は左手に握ったそれを見て、「これは使えるぞ」とほくそ笑みながら噴進装置をオフにして、着地した。

 

 防人装甲・烈は非常に重い。だから着地しただけで重苦しい金属音が周囲に響き渡った。

 

 すると遠巻きから自分に畏怖している自衛隊の視線を感じる訃堂。それにより、今度は怒りの感情が彼にの中に湧き上がる。

 

「全く。大群でかからねば鹵獲不可能な戦闘能力であったのは確かだが、この程度の小娘1人倒せぬとは、不肖の防人どもめ……。ゴーレムⅡを殲滅するよりもはるかに速く片が付いたわ!!」

 

 クリスを鹵獲どころか、彼女とまともに戦うことができなかったDGの防衛に割かれた者たちに憤る。

 

 事実、訃堂はゴーレムⅡを撃破する作業にかなり時間がかかったのだがクリスに関しては、恐怖心を感じることができたせいで文字通り瞬殺だった。なおデュアルデバスター・イチイバルの世代は一応第4世代機に区分されるので圧倒的なのだが、人が乗っていることが逆に弱点となってしまった。

 

 訃堂の右腕の中で気絶しているクリスのギアが解除された。クリスは首から下げた特殊な装置の装備されたギアペンダント以外身に着けていない一糸まとわぬ姿で、口を半開きにしてよだれをたらし、失禁した。

 

「こんな状態だが、シンフォギア装者。神獣鏡の量産型シンフォギア製造計画を遂行する上で役には立つだろう。いや、死なせずにおいてやったのだ、役に立って見せよ」 

 

(さて、残った脅威は銀の福音か、儂が迎え撃とうにもさすがに上空から超高速で爆撃されては儂でもまともに対応ができん。特異災害対策機動部も、自衛隊IS部隊も。どちらに配備されている機体であっても銀の福音の撃墜は難しいか……。仕方がない。東京をまた火の海にするなど許せる道理などないのだから、IS学園が撃墜できぬ場合を想定して、儂を中心に投入可能な全戦力で防衛ラインを敷きなおしてIS部隊で包囲させて、儂が無理やりにでも叩き落してくれるわ)

 

 訃堂はクリスを小脇に抱え直し、クリスをとりあえずは風鳴機関で拘束すべく、後方で待機している風鳴機関の車両に向かった。

 

 


 

 

 IS学園の教師たちは大人だった。だからこそ、生徒が傷つきそうであれば庇う。だから教員部隊はすでに銀の福音の攻撃で戦闘不能になっていた。

 

 ISの予備のシールドエネルギーすらまともに残っていない状態で退避したり、ISボディのダメージレベルがEを超えて飛行不可になってしまい岩礁に着陸している教員もいる、幸いなことに死者は出ていない。

 

 だが、今戦えるのは、1年生の専用機持ちだけだった。

 

「どうしろっていうのよこんちくしょー!!」

 

 鈴が悪態をつきながら銀の福音と近接戦を繰り広げるが、ほとんど一方的に攻撃を喰らい、反撃を当てようとすれば銀の福音は座標移動でその場から消失した。

 

 今度はシャルロットが標的だ。銀の福音は腕部からシルバーベルをシャルロットの真下から発射する。それをぎりぎりで回避するシャルロットは、ビームジェネレーターのうち拳に装備されたものからビームスパイクを、両腕側面のものからはビームシールド生成機能を一部だけ使用してビームソードを展開し銀の福音に襲い掛かる。

 

 拳を突き出したり、横なぎに腕を振るったり、ビームソードの展開位置をいきなり変更して変則的な格闘を行ってみたりと工夫して攻撃するシャルロットだったが、結局ビームスパイクの一撃が銀の福音の左ウイングスラスターに小さな穴をあけたにとどまった。シャルロットの前から消失し、次はセシリアの真ん前に現れる銀の福音。

 

 そんな中簪は、やっと見つけた小さく笑う。

 

 真耶から随時送られてくる情報をもとに解析した結果。銀の福音の瞬間移動の弱点を割り出したのだ。

 

〈みんな、やっと、解析できました!! 銀の福音の……単一仕様能力と思われる空間移動は、最短でも10秒に1回しかできない。あと、シルバーベルの内、背部のウイングから、フルオート射撃してきた場合は……そこからさらに10秒は空間移動できなくなる。それと、空間移動を発動する予兆として、発動の1秒前に銀の福音の周囲の重力場が歪んでる。なお空間移動可能な距離はIS粒子の残量で決まる様子。でも、銀の福音はすでに機体にプール可能なIS粒子は使い果たしてるようだから、もうISコアから生成されている分のIS粒子でしか空間移動を発動できない。だから現状のペースで空間移動させ続ければ、移動可能距離は約400メートルが限界のはず!!〉

 

 プライベートチャンネルで全員にメッセージを送る簪。

 

 セシリアを護るべく、箒とラウラが銀の福音に突撃すると、不利を悟り銀の福音はまともに取り合わず、後方にしばらくの間退避したのち簪の言ったように重力場を歪めて1秒後に消失した。

 

〈なるほど。簪の言うように確かに重力場が歪んでいた〉

 

 ラウラがにやりと笑う。

 

〈つまり、襲われたら大体10秒持ちこたえたらいいんだね!!〉

 

 シャルロットが拡散ビームを4機のジェネレーターから連射して、真上から専用機持ちたちにシルバーベルの雨あられを降らせようとするのを阻止する。

 

(やってやろうじゃない!!〉

 

 鈴が拡散衝撃砲を銀の福音に接近しながら発射しつつ気合を入れなおすためにプライベートチャンネル内ではあるが声を張り上げた。

 

〈ええ、わたくしたちならばできますわ!!〉

 

 セシリアが捉えられないようにできるだけ動き回りながら、攻撃のために索敵を続けつつ仲間を鼓舞する。

 

〈セシリアの言う通りだな。私たちならば絶対に銀の福音を倒せる!! 人々を護れる!!!!〉

 

 響のところに今度は現れた銀の福音に箒は急行。響と箒は2人がかりで銀の福音に近接格闘を仕掛ける。

 

 ブレーカドリルと雨月が左脚部にぶち当たり、損壊率60%になったバランスを崩した銀の福音は何とか1秒後にその場から消失し、全員から一度距離を取った。

 

〈みんな、絶対あいつを倒そう。一夏君のためにも……!!〉

 

『了解!!!!』

 

 響の呼びかけに、同時に声に出して応答する箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、簪。

 

 すると千冬から通信が全員に入った。

 

『フォーメーションを練った。今から伝える!! ボーデヴィッヒ、鳳、立花は攻撃担当だ。今転送したかなり近い距離感で連携。立花を中央、右翼をボーデヴィッヒ、左翼を鳳が担当。ひたすら一斉攻撃を加えつつ銀の福音を追い回せ。そして3方向からの同時攻撃で銀の福音を仕留めよ!! 篠ノ之とデュノアがビームシールドによる防御を担当。攻撃ではなく防御だけを考えろ。オルコットは篠ノ之、更識はデュノアと、防御担当の背後をポジションにして狙撃に徹するんだ。銀の福音の運動性能を奪い、味方を援護しろ。頼むぞ!!』

 

 それを聞いた専用機持ちは「はい!!」と返事をした後、今銀の福音に絡まれていた箒から銀の福音を突き放し、フォーメーションを組む。

 

 そして、反撃を開始した。

 

 まず攻撃担当の3人が銀の福音をひたすら追い回し始める。響のマシンキャノンや鈴の拡散衝撃砲、ラウラのワイヤーブレードとタクティシュヴァッフェンガトリングモードの一斉射撃が距離を取った銀の福音に殺到する。銀の福音は座標移動を発動して逃げて、簪を強襲するがシャルロットが間に割って入ってビームシールドで阻む。銀の福音にすかさず狙撃を行うセシリアと簪。それらが銀の福音に命中し銀の福音のダメージレベルを1段階上げる。

 

 銀の福音は再び電子音の咆哮を上げてセシリアの方に背部ウイングのシルバーベルを使用して攻撃するが、箒がセシリアの前に躍り出て全弾防ぐ。

 

 その隙に攻撃担当は、銀の福音の座標移動による逃げる時間が伸びたことで一気に畳みかける。射撃攻撃のフルバーストが銀の福音のシールドエネルギーを削った。さらに、簪が銀の福音のシールドバリアのもっとも負荷のかかっているところに春雷を撃ちまくり。シールドバリアに穴をあけて……そこからセシリアの狙撃が銀の福音の頭部に突き刺さる。セシリアはこの一撃でナターシャの命を奪うことを覚悟していたがクリア素材のフルフェイスのヘルメットが半壊するにとどまり、ナターシャの顔が露出する。

 

 しかし頭部はハイパーセンサーが備わっている場所である。よって銀の福音は一時的に処理能力が低下し、体勢を崩した。

 

「いまだ!!」

 

 ラウラがワイヤーブレードで銀の福音の四肢を固定する。これならもしかすると消失を阻止できるかもしれないと踏んだからだ。

 

 だが銀の福音の座標移動は、原初粒子たるIS粒子を埒外物理の魔方陣で変換した銀の輝きを放つ粒子で自身を包み、次元の壁に穴をあけてその場から消失し、別の空間の次元の壁に穴をあけて移動する能力だ。あらかじめ包み込ませた銀の輝きを放つ粒子の量で空間を移動できる距離が決まる。

 

 このような能力なので、拘束しても空間転移は防げないのだが……。しかし銀の福音を一時的にその場に縫い留めることには成功している。

 

 だがラウラに背部左ウイングのシルバーベルを発射した銀の福音。しかしラウラは焦らない。信頼できる友人が「あたしが相殺する!!」と自分の前に躍り出てくれたからだ。

 

 鈴は拡散衝撃砲のリミッターを外して連射し、銀の福音が放つシルバーベルにブチ当てて相殺した。

 

 一時的に完全に抵抗する力を失った銀の福音。

 

 その隙を見逃す響ではない。

 

「メガソニック……ドライバー!!!!」

 

 ブレーカドリルと、ヴァイスプライヤは先端は違うが基部は同じだ。そして基部の後端同士を接続することができる。合体させることで片方の先端に出力を一極集中し、破壊力を上昇させられる。

 

 そして連結した状態こそ、メガソニックドライバー……。右腕にそれを接続した状態でドリルを超高速回転させた響。

 

 まず銀の福音のシールドバリアを思いっきりドリルで殴りつけて一気にシールドエネルギーを0にする。そして、予備のシールドエネルギーすらもメガソニックドライバーの圧倒的パワーで瞬時に底をつかせる。

 

 メガソニックドライバーがとっさに突き出された銀の福音の左掌に命中し、木っ端みじんにぶっ壊す!! 

 

「スイッチングクロー!!!!」

 

 メガソニックドライバーの腕部接続軸は回転およびスライドが可能だ。今度はペンチクロー部分を前に突き出すように切り替える。

 

「うぉぉぉぉ!!!!」

 

 圧倒的握力になったペンチクローが銀の福音の左ウイングを無理やり挟み込み、先端を回転。ウイングを引きちぎった!!

 

 その瞬間銀の福音は、左ウイングにエネルギーを収束させていたことでエネルギーバイパスが安定しなくなり、各部が爆発を起こした。

 

 それによってラウラのワイヤーを吹き飛ばして落下していく銀の福音。

 

「銀の福音の戦闘能力喪失!! これなら……ナターシャ大尉を助けられる!!」

 

 簪が銀の福音の状態を瞬時に分析し、声を上げる。

 

「私に任せろ!!」

 

 箒はイグニッションブーストを発動した。とてつもない速度で銀の福音の下に回り込みナターシャ大尉の体をキャッチしようとした箒だが……。

 

 突如、銀の福音がエネルギーを機体の全身から放出させた。

 

 箒は攻撃ではないかと判断しとっさに距離を取る。

 

「え、嘘……!?」

 

 簪がその銀の福音の光景を見て焦る。

 

「ま、まさか、そんな!?」

 

 セシリアもまたその光景を直に目にしたことがあるので身の毛がよだつ。

 

 なぜならそのエネルギーの放出は……段階移行の際に放たれるものだからだ。

 

『これは……セカンドシフトだとぉ!?』

 

 千冬が奇跡を目の当たりにして驚嘆する。

 

 この土壇場で、銀の福音が新たな体と共に復活するのだ。

 

 エネルギーの放出が止んだ時。

 

 青白いエネルギーの翼を3対備えた、新たなる銀の福音が爆誕した。

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