獅子王アルトリア・ペンドラゴンが行く異世界転移 作:アルトリア・ブラック(Main)
ーネイアー
馬車が揺れる
この馬車は獅子王が所有する馬車で白亜の城と同じ素材なのか白銀の色に馬車の周りには魔法道具がぶら下がっていた
隠密を可能にできる物があるのはわかったが、それ以上にやってきた獅子王の威圧感に胃が痛くなったが、馬車に乗った瞬間には威圧感はなくなり、普通の女性のような笑顔を見せてくる
「今日はよろしく頼む」
「は、はい!こちらこそ恐悦ながら頑張らさせていただきます」
と本当に空回りしてしまわないか不安でたまらなかった
(にしても…本当に座り心地が良いなぁ)
長時間座っていてもお尻が痛くならない柔らかなクッションがネイアを感動させた。
ネイアは向かいの席で、外に視線を向けている獅子王を盗み見る
あの玉座の間では威圧感と王らしさが凄まじかったが、今はそんなプレッシャーを感じなかった
それでも、王にふさわしい威厳があるものだ。身振りの一つ一つに王者としての品格を滲ませている。
「?私の顔に何かついているか?」
「え?い、いえ、失礼いたしました!陛下、特に何もないのですが…」
どうやらボーとしていたのか獅子王をジッと見つめてしまっていたようだ
「何も話さないで馬車に乗っているのは、流石につらいか、君の話でも聞かせてくれないか?」
母親のような慈悲深い言葉で言ってくる
「…陛下が聞いて面白い…とは思えないような話ばかりだと思いますが…」
特段面白い話はない、そもそもどういった話をすれば面白いか分からない
「喜劇や悲劇のような物語は聞き飽きている、そうだな、君が従者になった話でも良い、そういった話を聞かせてくれないか」
「そのような話で良いのであれば…」
家族関係や仕事のことなどいろいろ話すが、馬車に乗る際にレメディオスから国内の情報を渡さないようにと言われているが、いちいちそこまで気にしていたら何も話せない
「バラハ殿は従者の中では珍しい弓使いということか」
「弓使いなどと胸を張って言えるほどではありません。陛下、単に私は剣より弓の方が得意だっただけなのです」
「いや…遠距離武器が得意な聖騎士候補生か…弓が得意なら弓を極めていけばいいと私は思うな、他に剣が得意な者がいるのであれば、剣はその者に任せて鍛えていけば良い、その方が自分のためにも国のためにもなる」
「ありがとうございます」
獅子王の言葉はとても真剣なもので、心の底からそう思っているとネイアに感じさせるには十分だった。
「騎士だからといって騎士にならなければいけないということはない、やりたいことをやれる、そういう社会を目指したいのだが、案外上手くいかないものだ、私の相手という面倒なことをさせられたことは心苦しいと思う。君の能力を生かすなら内ではなく外に配置した方が正解だろう」
優しい声で発せられる言葉にネイアは目を丸くする
これが、この王と話していて心臓に悪いところだ
親しい者にはこのように話しているのだろうか、そう思わされてしまう
ネイアは気を引き締める
「私が陛下のお付きを命じられていることは皆が知ること、お気にされずに。第一、陛下のお付き以上に重要なことはございません」
これは本音だ
獅子王と話して見て思ったのは存外、普通の王と大差ない(かつての王国を問題を起こさずまとめ上げる技量、魔導王が召喚したアンデットを簡単に葬り去れるだけの力はあるが)
「そうか?そう言ってもらえるならありがたい」
そう言って馬車の外を眺める
「聖王国は南北対立していると話を聞いた、こんな悪化している状況の中、協力し合わず、他国に援軍を頼むなど、単刀直入に言ってしまうが、あの騎士団団長でうまくまとめられないのか?少し言葉を強めに皇女が危機に陥っているから兵を出せーなどと言ったような」
I従者である自分にそこまでの権力はない。
質問にどう答えようと悩んでいると「すまない、これは着いた際に聖騎士団団長に聞くとしよう」と言われる
「申し訳ありません。陛下」
そう頭を下げると獅子王は『いや私も悪かった、すまない』と同じ目線に下がってきてまで謝ろうとする
「我々はヤルダバオトが現れた際の対処にあたることになっているが、率直な話をすれば、我々は大きくは動けない。分かってはいると思うが…聖騎士団の方々中心に動いてもらわなければ聖王国のためにもならないだろうからな」
ブリテン王国が活躍し続けてしまえば、聖王国内でも国家間においてもマズイことになるだろう
聖王国はブリテンの傀儡なのでは?と下手したら思われかねない
「は」
確かに亜人討伐はやるとレメディオスは言っていたが、その亜人達にすら勝てるのだろうか
馬車がつき、そこは崩壊した城塞が広がっていた
「陛下、失礼いたします」
そう馬に乗ってやってきたガウェインにネイアが少し驚く
立っている時でさえ、威圧感がすごいのに、馬になんて乗られたら遥か高みから見られているような感じに陥る
ガウェインは馬から降りると先に突撃しに言ったレメディオスが勝手に作戦を進めてしまったのか目印となる捕虜収容所に向かうと言っていた
(は?!陛下をお出迎えしてから進軍するのが普通なのに…!)
まるで獅子王なんて見えてない扱いにネイアは『ここから急ぎ、追います!!』と声を出し、行こうとすると、獅子王の手で静止される
「捕虜収容所の周りはどうだ?」
そう空に向けて言うと、どこからともなく黒装束の男が現れる
「複数の亜人を感知、捕虜もいます。周辺にナザリックの影は今の所見えません」
その言葉に獅子王は「そうか」と言って戻ってきたガウェインとランスロット、馬車の後ろに乗っていたジャンヌが走ってくる
「…流石にこれは想定外だったが、急ぎ向かおう、アサシン達は引き続き監視を頼む」
「御意」
そう言って消えるアサシンと呼ばれた彼ら
「ここから走っていくのは遅くなる。バラハ殿は…」
いつの間にか白銀の装飾がされた馬を取り出していたのか、獅子王の真横には馬がいた
「私が連れて行きます。ネイアさん、失礼します!!」
「うぇ!?ジャンヌ様!?」
聖女と思っていたジャンヌが軽々とネイアを抱えて自分の馬の方に走っていく
「行くぞ」
そう言って獅子王が馬に乗って捕虜収容所へ向かう
聖騎士達が門に到着し、物見櫓から矢が聖騎士に放たれようとしていた
「父上!突っ込むぜ!」
「頼む」
重い鎧を着ているとは思えない程、軽々と城壁を駆け上がっていくモードレット
すぐに物見櫓からバフォルクの死体が三体落下してきた
それを見て何が起こったのか分かっていないのか愕然としていたが、モードレットが櫓の上から「ボーとしてるやつがいるか!!」と怒鳴り、ハッとなる聖騎士団達
丸太で作られた門が揺らぎ、ミシィという音が聞こえてくる。
『もう一度だ!』という聖騎士達の声
再び門が揺れ、今度の揺れはもっと大きい
門を構成する丸太の一本が大きくへし曲がり、聖騎士達の歓声がここまで聞こえてくる
「下がれ!!」
突然の大声に視線が集中する
突破された門の中からバフォルクが出てくる
その手に持っているものに聖騎士団員達は尻込みする
モードレットがいつの間にか獅子王の隣に戻ってきていた
バフォルクの右手には少女、7歳ほどの子供の姿があった。その子供の喉元にはナイフが押し当てられていた
「お前達が下がらないのであれば、この人間を殺すぞ!」
「卑怯な!」
聖騎士の一人が怒鳴る
「早く下がれ!見ろ!!」
子供の喉から血が流れている
「良いから下がれ!!」
そう言って聖騎士団員達が離れ続けているのを見て獅子王は「悪手だ、彼らにできることはない」
そう言って合図すると、既に動いていたのか、バフォルクの後ろに先ほどのアサシンと呼ばれた人とは別人の女性が現れており、バフォルクの首を一気に斬り、落ちてきた少女を抱えて退避してくる
その余りにも手際の良さにネイアは一瞬何が起こっているのかわからなかったが、アサシンの女性は少女の表情や魔法をかけたのか「人間です」と言った後、手当てをしていた
「いつまでそんなことをしている、早く入らなければもっと犠牲が増えるぞ、横槍を入れてすまないが、貴公らの動きは遅い」
そう言って獅子王の手から強烈な光が捕虜収容所に向けて放たれる
外壁がけたたましい音を上げて破壊される
「団長!」
グスターボが破壊された外壁の中を見る
「ぐぎぎ…突撃だ!!」
レメディオスの言葉に聖騎士達が動き出す。何が起こったのか分かっていない者もいるのか、命令に全てを委ねたという方が正解に正しい
「獅子王陛下!感謝いたします!」
先に突撃したレメディオスがいなくなった後、グスターボがそう言って頭を下げると走り出す
「モードレット卿、バフォルクの強さはどうだった?」
「木を切っている並に弱かったぜ」
「そうか」
そう言う獅子王
ネイアはハッとなり、ジャンヌの後ろに乗っていたが慌てて降りていき、獅子王に謝罪する
余りにも勝手すぎるレメディオスの行動に先んじて謝罪するのは悪くない
今ここで謝罪しなければ、今後、聖王国が安定した際に限りなく悪い印象しか抱かれないだろう。下手をしたら獅子王陛下の国と戦闘になりかねない
(もう、悪印象しかないだろうけど…!)
頭を深々と下げ謝罪すると、獅子王は「良い、我らと行動していた貴公には何の咎もないだろう」と言ってくる
「そうだぞ、お前は悪くねぇ、つうか…救出したいのは分かるんだけどよ…」
「…モードレット卿」
咳払いをしたガウェイン
「ガウェイン卿、モードレット卿、周囲に高レベル帯のものがいないか警戒を怠らないように」
「「は!!」」