「はぁっ...はっ、お"えぇっ......っは、はっ」
近くの川辺に行き血染めの手を洗う。こびりついた赤黒いそれはいくら洗っても取れない気がしてならない。いや、既に落ちているかもしれないが...しれないが、生暖かい、ぐちゃりとしたあの感触を忘れることはできない...まだ吐き気がする。息が荒い
口元を拭う。もうそこには赤は見当たらない...少しずつ、少しずつだが呼吸も整い始めた。思考もクリアになっていく。そして鮮明に思い出す...血溜まりの中、茫然自失...気がつけば夜は明けていた
「はぁっ...はぁっ......ひ、人...人を...た、べた...?」
獣に似た化け物に食い散らかされ、亡骸に成り果てていた...それでも、アレは紛うことなき人、だった。舌に残る鉄の味、喉を通った腐肉の匂い。突如として放り出された山奥での、自分自身の行為...私は、狂ってしまったのだろうか...?
水面に映った顔を見る。最早それが自分の顔なのか...自分以外のナニか、なのか...確証が持てない、否、持ちたくなかった。あの時脳裏を駆け巡ったアレは...本当に私の意思、なのか...?
「...少し...少し休みたい......」
ふらりふらりと、どこか休める場所を探してさ迷う。苛まれた空腹も、喉の乾きも...ドス黒いナニかに潤わされていた
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目を覚ます。私は...そうだ、丁度良い洞穴を見つけて眠ったんだった...。恐る恐る自分の手を見る。その手は赤く...無かった。口元を拭ってもその事実は変わらない。安堵の息を漏らす
その安堵も長くは続かなかった。腐臭、血の匂い、低い唸り声...そんな存在が幾つも周りに満ちていた。洞穴の入り口、あの時の獣に似たナニか...その群れがそこには居た
一瞥する。声が出ない。肉食獣に囲まれた兎になった気分...身体も上手く動かせない。脳裏に過るのはあの死体。あれと同じ末路が今では容易に想像できる
「...あ、れ...?」
が、それも杞憂に終わる。獣達は踵を返し、どこかへ去っていった...あの時と、同じように...そう、あの時もそうだった......なんで?
困惑が拭いきれないまま、洞穴から出る。呆然とするしかなかった。意味が分からない。どうして......
恐れていた...?一つの結論が出る。それなら説明が着く。自身よりも上位の存在が現れ、食事を取り止め逃げた。弱肉強食に沿った、生物の生存本能...それの表れ
...なら、なんで?私は...私は人で......でも、人を食べて...でも何も覚えてなくて...一人で...独りで...あ、れ...?
「私は、ナニ...?」
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「人喰い妖怪は他の妖怪にも恐れられていました」
「妖怪も怖がるんだねー!」
それではまた次回