ガラルマフィアが行く悪統一戦記   作:焼き鯖

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どうもこんばんは。焼き鯖です。

なんと続いちゃいましたこのシリーズ。此方もゆるーくやっていく所存です。

それではどうぞ。


第二話

 キルクスタウン。

 

 ガラル地方のやや北東に位置する雪で覆われた街であり、古くから温泉街として有名な街である。

 

 ジムチャレンジの一つとして多くのジムチャレンジャーが立ち寄るこの街の裏で、ある一つの悪が蠢いていた。

 

「……それが、ウールーの不当飼育ってわけか」

 

 ホテルイオニアの一室にて、街から少し離れた場所にあるテラスハウスを見張りながら、ペリュトンは呟く。

 

 少し古い以外はなんの変哲もないテラスハウスなのだが、マユズミの調査によれば、ある時期を境に大量のウールーの毛が運ばれて来ているらしい。

 

「しっかし……ウールーなんか集めて一体何しようって言うのかね。毛なんて然程金になんねーだろ」

 

 退屈そうにボヤくペリュトンに対して、デビーは冷静に自分の見解を述べる。

 

「多分、他地方の輸入規制が原因だろうな。ウールー毛はシンオウ地方なんかの寒い地域には人気があるし、カーペットやキルトとしての使い道もある。高級なウールー毛を使ったものは高値で取引されるそうだ」

 

「なるほどな、それで他の地方が自分達の産業を守るために輸入量を抑えた結果、ウールー毛の価値が上がったって訳か」

 

「バイウールーでも同じ事は出来るだろうけど、ウールーに比べれば餌代もかかるだろうからな。大量の毛を少ないコストで集めるなら、ウールーの方が都合がいい。それに……」

 

「それに、なんだよ」

 

「多分、奴らは毛そのものだけでなく、加工と製造もして売り捌いてる」

 

「……はぁ?」

 

 あまりにも突破な考えに、思わずペリュトンは首を傾げた。

 

「加工ってどういう事だよ。奴らがやってるのはウールーの不当飼育の指示だけじゃないのか?」

 

「それに関してはちゃんと証拠がある……出てこい、マユズミ」

 

 デビーは懐からハイパーボールを取り出してマユズミを呼ぶと、「例のものを見せてくれ」と指示した。

 

 そのままマユズミは自分の体から一つのセーターを取り出す。

 

 シンプルながら何処か高貴さを感じさせるこのセーターに、ペリュトンは見覚えがあった。

 

「おまっ……これ、ヒジキ・オカの最新ブランドじゃねぇか! 一体どうやって……」

 

「違う、よく見ろペリュトン。これはヒジキ・オカの紛い物だ」

 

 言われた通りによく見てみると、タグに付いているブランドのマークが微妙に違っていた。

 

「マユズミの報告では、この建物から同じような製品が運ばれて行くのを目にしたらしい」

 

「……もしかして、奴らはこのニセブランドをガラルや他の地方へ売り捌いてんのか?」

 

「可能性は高そうだ」

 

「だがよ、人はどうするんだよ。作る人がいなけりゃ意味ねぇじゃねぇか」

 

「あぁ、それなら多分──」

 

 デビーが何か言いかけたその時、背後からヤミラミが姿を表した。何かを発見したのか「ヤミー! ヤミー!」としきりに鳴いている。

 

「お、帰ったかスプリガン。ペリュトン、通訳を」

 

「わぁーってるっつーの……えーっと、『見つけました、建物奥の地下です』だとさ」

 

「……よし、皆んな、出番だ。ペリュトンも準備しておけ」

 

「オーケー、漸く俺様が暴れられるってわけだな」

 

 ニヤリと笑うペリュトンに同じようにニヤリと笑みを返して、デビーは外に出る。そのまま指名したポケモン達をボールから出して、件の建物に向かう。

 

「さて……皆んな、作戦は向かう途中で伝えた通りに頼むぞ」

 

 扉の前で、デビーが静かに告げる。ポケモン達はコクリと頷くと、それを確認したデビーはそのまま扉をノックした。

 

「ごめんください、国税局の者なのですが」

 

 しかし、中からの返事はない。「ごめんください」と再び呼びかけてみても、やはり返事はなしのつぶてだった。

 

「……ミナミツ」

 

「……キーリ」

 

 静かにデビーが呼びかけると、キリキザンのミナミツが前に出た。

 

「少し荒っぽいが……やれ」

 

 その命令通り、ミナミツが動いた。

 

 目にも止まらない速さで腕を振り抜くと、気が付いた時には扉は細切れに切り裂かれていた。

 

 粉々にされた扉を踏みつけ、そのまま勝手知ったる様子でデビーは部屋に乗り込む。

 

「なんだテメェこの野郎! 何処のモンだオイ!」

 

 こじんまりとした部屋の中には、如何にも仕事していますと言わんばかりの五人の男がいた。そのうちの一人である大柄な白人の男がデビーに詰め寄って来た。

 

「どうも、ガラル国税局の者です。先程ノックしたんですけど、反応がなかったもので」

 

「だからって扉ごとぶっ飛ばしていいって法律が何処にあるんだコラァ!」

 

 男が拳を振り上げる。がしかし、振り下ろした瞬間にミナミツが前に出て受け止め、そのまま弾き飛ばした。そのまま男は吹き飛ばされ、尻餅をつく。

 

「……さて、ここの主人は誰だ」

 

 返答の代わりに奥の男が立ち上がり、こちらに近づいてくる。メガネをかけた小綺麗な格好のヒスパニックだった。

 

「部下が申し訳ありませんでした。私が責任者のアーロンです」

 

「アーロンさんね、私はデビーです。突然の訪問ですみませんね」

 

「いえいえ御心配なく。私達も仕事に集中していましたから……それで、今日はどう言った御用向きで?」

 

「えぇ、まぁ、そんな大した事じゃないんですけど……」

 

 大仰な笑みを浮かべながら、デビーは静かな部屋に一言告げる。

 

「どうやらここの何処かに……脱税した金を詰め込んだ隠し金庫があるとの情報が入り込んで来まして」

 

 静かな部屋の空気がさらにピンと張り詰める。

 

「さぁ……私には分かりませんな……何処でその情報を?」

 

「いやいや、ここでは言えませんね。ですがまぁ、そう言う訳なので少々騒がしくなりますが、この部屋を改めさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

 

「……いいでしょう、隅々まで好きなだけ探して下さって構いません。オイ、今すぐ手持ちの資料を……」

 

「あー、お構いなく。場所は大体()()()()()()()()()()……スプリガン、案内しろ」

 

「ラミー!」

 

 スプリガンの案内の下、そのままデビー達はスタスタとアーロンのデスクまで近づいた。

 

「……ふむ、確かにここと後ろの壁の間が妙に広いな……という事はこの下か……」

 

「な、何を言って……」

 

「マルガリタ、頼む」

 

「ラピーオン!」

 

 命令通り、ドラピオンのマルガリタが床に向かってどくづきを放った。

 

 するとどうだろうか、ガラガラと崩れ去った床の下には隠し階段があり、その先には重苦しい鉄扉が鎮座していた。

 

「やっぱりここか。後はここを調べればこの組織の全貌が──」

 

 瞬間、デビーの頬を炎の球が掠めた。

 

 見ると、アーロンの隣には彼が出したであろうエンニュートが警戒心剥き出しで唸っていた。他の四人もまた、ダゲキ、ナゲキ、オトスパス、ストリンダーとそれぞれにポケモンを出している。

 

「……アーロンさん、これはどう言う事でしょうか?」

 

「……どうもこうもねぇよ。ここまでバレたんなら消すしかねぇって事だよ」

 

「ほぅ、つまりはアーロンさん、認める訳だな? ウールーの不当飼育の件も、偽物のブランドの加工製造も全部」

 

「……あぁ、その通りさ。オレ達が指示してたんだ。このご時世、ウールー毛は高く売れる。それこそ馬鹿みてぇにな。だがそれだけじゃ足りない、今時SNSを使う頭の足りんガキの大半は、外見ばかり見繕って中身がねぇ。オレ達はそこに目をつけた。ガラルの有名ブランドにウールー毛という()()をつければ、後は勝手に魚が食いつく。それこそぼろっきれの釣竿で釣れるコイキングみてぇにな」

 

「なるほどねぇ……よく考えたものだよ。儲けのスキームとしては完璧だ。だがアンタらは()()()()()()()。ヤローさんがウールーの一頭一頭を大切にしていて、毛の一本まで健康状態を把握していなかったら、飼育業者が怪しまれる事もなかっただろうな」

 

 可哀想にと、他人事のようにデビーは呟く。その裏にある意味を知ってか知らずか、アーロンとその一味はフンと鼻を鳴らす。

 

「そんな事、今のオレらには関係ねぇ。ここでお前達を消して、あのクソッタレなヤローも潰せば永遠にオレらの天下だ。アンタには悪いがこのまま消えてもらうぜ……エンニュート! ヘドロばくだ──」

 

 アーロンが指示を出そうとしたその時、エンニュートに異変が起こった。突然体が痙攣し、地面に倒れたのだ。他のポケモンもまた、同じような症状を起こして地面に倒れている。

 

「ど、どうしたんだエンニュート! 何が起こって……まさか!」

 

 アーロンがパッと顔を上げると、デビーの背後にはオーロンゲが立っていた。

 

「その通り、オベロンの電磁波さ。ついでに光の壁とリフレクターも貼らせて貰ったよ。こういう時の悪戯心は便利だよな」

 

「ぐっ……! だが電磁波は不味かったな! オイ!」

 

「任せろ! ストリンダー! オーバードライ──」

 

「ミナミツ! じごくづきだ!」

 

「リザッ!」

 

 電気タイプ故に麻痺していなかったストリンダーが動こうとした瞬間、彼の動きが途端に鈍くなり、ミナミツのじごくづきによって敢えなく不発となった。

 

「オイ! 一体どうなってんだ!」

 

「わ、わかんねぇ! オレも一体何がなんだか……!」

 

「あぁ、スプリガンがプレゼントしてくれたんだよ。こいつは贈り物を贈るのが大好きだからなぁ」

 

「ラミッ! ラーミ!」

 

「もしや……!」

 

 アーロンの予想は当たっていた。ストリンダーの懐には、いつ入っていたかも分からないイワークのような大きな尻尾が忍ばされていたのだ。

 

「後攻の尻尾……! 汚ねぇ事を!」

 

「お前達が今までして来た事に比べればまだマシな方さ。まぁ兎も角、そろそろ年貢の納め時だ。出てこい! ペリュトン!」

 

 デビーが高らかに呼びかけた瞬間、入り口の壁をぶち破って大きな鳥の影が部屋を覆う。

 

 闇のような禍々しい黒に差す、血のような紅の線。燃え盛るように靡くたてがみと、傲岸不遜で邪悪な笑み。

 

「ひっ……!」

 

 見る者が見れば邪神と間違えそうな佇まいのそれは、アーロンの一味全員を例外なく圧倒した。

 

「さぁ、このまま大人しくしていれば手荒な事はしない。それとも、精一杯抗ってみるか?」

 

「お……お前は……お前は一体、何者なんだ!」

 

「俺か? いや、俺たちは……」

 

 アービターファミリーだ。

 

 真っ黒なオーラが辺りを包んだ。

 

 

 

 

 

 

 


 

「いやーこの度は本当にありがとうございました!」

 

 あどけない笑顔を浮かべながらお礼をしたのは、ターフタウンジムリーダーのヤローである。

 

 童顔な顔つきとは正反対の筋肉質な体格の彼は、一連の事件の依頼人であり、デビーの報告を受けてわざわざターフタウンからすっ飛んで来たのである。

 

 新規の飼育業者のウールー毛の品質が他と比べて悪いということに気づいた事が発端であるが、生来の彼の優しさと排他的な業者の姿勢から、正面からの調査は危険と判断。今回デビーの元に依頼したのであった。

 

「いえ、ヤローさんの依頼がなかったらもっと悪い状況になっていた可能性もあります。頼ってくれて本当に良かった」

 

「そんなご謙遜なさらんで下さい! こうやって事件が解決出来たのも、デビーさんのおかげじゃき! ウールー達も保護して頂いて万々歳じゃ!」

 

 屈強な体躯でデビーの手を握り、無邪気な笑顔でブンブンと振り回すヤローに、デビーはにこやかな顔つきで応対する。

 

 ふと、ヤローがボロボロになった家に目を向けた。

 

「それにしても……連中も酷いことなさいますねぇ、まさかあんな事もやっていたとは……」

 

「まぁ、予想はしていましたけどね。木を隠すなら森、部屋を隠すなら地下って感じですよ」

 

 すっかり廃人と化したアーロン一味が連行される様を見て、涼しげな顔をしてデビーは言いのける。

 

 話は、ヤローと警察が到着する前に遡る──

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

「……ところでよぉ、デビー」

 

 人型に戻り、荒れ果てた部屋を見渡していたペリュトンが、デビーに水を向けた。アーロン一味とそのポケモン達は、ペリュトンのオーラと他の悪ポケモン達の活躍によって制圧され、部屋の隅で縛られて転がされている。

 

「さっきの話の続きだけどよぉ、こいつらが偽ブランドの洋服やら何やらを作ってるんだとしたら、人は一体何処でかき集めてるんだよ。こいつらだけじゃあ確実に人手は足りねぇだろ?」

 

「ん……あぁ、その話か。その話なら簡単だ。この地下の先にヒントがある」

 

 ついてこいと彼は命じ、他のポケモン達を連れて階段を降りる。

 

 鉄の扉を開いた先には、大量のセーターや絨毯が所狭しと並べられていた。中にはコートやマフラーも積まれており、その全てが偽ブランドである事が容易に想像出来た。

 

 その隙間を縫うようにして、デビーはスタスタと歩き出していく。

 

「おいおい……こりゃ想像以上だぜ。アイツらどんだけ金儲けしようとしてたんだよ……」

 

「まぁ、規模を考えればこれくらいの量はあるだろう。さて、ペリュトン、ガラル地方はどんな地方だ?」

 

「はぁ? いきなりなんだよ……えーっとそうだな……」

 

 少し考えた後、ペリュトンは答える。

 

「寒冷だが、様々なポケモンと人種が住む地方……だ」

 

「そう、一昔前まで、この国はそこかしこに移民がいた。その移民と現地の人の血が混ざって、今のガラルが出来上がった。それはガラル地方にいい面を齎したが同時に悪い面も齎した。それは……」

 

「……まさか」

 

「そう、そのまさかだ。その答えがここにある」

 

 そうしてデビーが足を止めた先には、これまた重苦しい鉄の開き扉があった。中で何が行われているのか微かに音が聞こえる。

 

 その扉を、デビーは躊躇なく開け放つ。

 

「な……なんじゃこりゃあ!?」

 

 ペリュトンが驚くのも無理はなかった。

 

 何故ならそこにあったのは、奥までズラッと並んだミシンに座る、大量の人間だったからだ。

 

 皆一様に同じ動きを繰り返し、死んだ顔をしても尚、ミシンから離れる事を辞めない。

 

 その殆どが有色人種であり、服装から貧困層の出身である事が窺えた。

 

「これがこの組織の全てだ。マユズミが報告してくれた時、部屋の広さの割に生産量が見合ってないからな。しかも、製品はこの家からすぐに出荷されてる。となれば、この家の地下に押し込んである以外に考えられない」

 

「しかも見た限り貧困層だけじゃなくて、不法入国の奴らも多そうだ……こいつら騙してここに閉じ込めての強制労働か……なんともまぁえげつない話だ」

 

「この後の処遇はガラルの司法と警察がなんとかするだろう。既に警察とヤローさんには連絡を入れてある。俺達の役目はもう終わった」

 

 後始末して帰るぞ。

 

 そう言い残して、デビー達は地上へと戻って行った──

 

 

 

 

 

 

 


 

 そうして現在、地下にいた大量の人達は保護され、偽ブランドは証拠品の一部を除いて全て焼却された。

 

 この組織が復活する事はもうないだろう。

 

「まぁ、人間のエゴというか欲というか、そう言うのは底なしじゃからなぁ。それが今回の一件でよう分かりましたよ」

 

「それと同時に移民問題の根深さもですね……これは歴史の功罪とも言えるでしょう」

 

 各々に結論を出し合っていた時、ジムの方面から二つの人影が出てきた。

 

「おや? あれは……メロンさんにマクワさんじゃないですか! オーイ!」

 

 ヤローが手を振ると、それに気づいたのか、二つの人影は此方に向かって来た。

 

「こんな時間に一体何の騒ぎだい? ……って、ヤローとデビーじゃないかい」

 

「メロンさん、ご無沙汰しとります! 今回の一件は僕がデビーさんに依頼して、さっき解決したところなんですわ!」

 

「もしかして、アンタが前に言ってたあのウールーの件かい? まさかうちの街にあったなんて……定期的に見回りをするよう指示は出してたんだけどねぇ」

 

「ここは街からも少しはずれた所にありますからね、気づかれないように慎重に立ち回ってたのでしょう」

 

「……これはジムリーダーとして失格だねぇ。あたしからもお礼をさせて貰うさねデビー。事件を解決してくれて本当にありがとう」

 

 そう言いながら、メロンさんは頭を下げる。

 

「いえ、いいんですよ。今回の一件も私達のポケモンが頑張っただけですので、私は何もしていません」

 

「いいんだよ、こういうのは素直に受け取っておくもんなんだから」

 

「……か、母さん、その方は一体……」

 

 ここで、事態が飲み込めていないマクワが戸惑うように口を開いた。

 

「あぁ、マイナーリーグにはこの話は伝わってなかったっけね。紹介するよ、この人はデビー。この歳でガラルマフィアのアービターファミリーで首領やってんだよ」

 

「……はい!? 確かガラルマフィアって、もう何年も前に衰退したって記憶が……」

 

 予想通りの反応だなと内心思いながら、デビーはマクワに手を差し出す。

 

「初めまして、デビーと申します。マフィアなんて大それた名前ですが、実態はしがない自警団みたいなものですよ」

 

「そ、そうなんですか……取り敢えず、僕はマクワ。岩タイプジムリーダーやってます……」

 

 一旦は彼の手を握り返すマクワだが、全てに納得したわけではない。彼には聞きたい事が山ほどあるのだ。

 

 その矛先は、紹介したメロンの方に向かった。

 

「大体……ガラルマフィアがまだ生きている事自体が初耳ですよ。なんで母さんはこんな大事な事を教えてくれなかったんですか」

 

「おや、それであたしを責めるのは筋違いじゃないかい? ジムの引き継ぎで説明しようと思ったら勝手に反抗して出て行ったのはどこの誰だったっけねぇ?」

 

「ちょっと……今更そんな昔の話を持ち出さなくてもいいでしょう!?」

 

「そりゃあ言うさね。あたしは母親だから、あんたの事が心配で心配で言ってるんだよ。それなのにあんたは……」

 

「ですけどそれは……!」

 

「そもそもあんたはね……!」

 

 ワーワーギャーギャー。

 

 気づいた時にはヤローもデビーもそっちのけで、メロン親子は喧嘩を始めてしまった。

 

「……それじゃあ、俺たちこのまま帰りますね。ヤローさん、後は頼みました」

 

「おぅ! デビーさんもお疲れ様じゃった! 謝礼は後日届けさせてもらうからなぁー!」

 

 親子喧嘩そっちのけで、ヤローに挨拶をしてデビーは去って行った。

 

 街を出て空飛ぶタクシーを呼び込むと、隠れていたペリュトンが姿を表す。

 

「はぁーあ、蓋を開けてみりゃ、今日はそんなに暴れなかったな」

 

「言ってるだろ。暴対法からこっち、色々厳しいんだ。派手に暴れるのはそれこそ大きな修羅場の時だけだよ」

 

「でもよぉ、あれくらいの絶望感じゃあ俺は満足しないぜ? もっとこう……相手が恐れ慄くような感じがさ」

 

「あれで十分だよ。これ以上やったらそれこそ本当の廃人になるだろうし、アレくらいが丁度いい」

 

「そんなもんかねぇ……」

 

 いいようにあしらわれた気がすると、ペリュトンは首を傾げるが、「まぁいいや」と調子を取り戻す。

 

「で、今回の報酬は?」

 

「五十万ポケドル。後、廃用ミルタンクの肉と野菜ときのみがどっさり貰えるらしいから、届いた日にバーベキューでもしようと思ってる」

 

「おっ、いいなそれ! 今から楽しみにしてるぜ〜!」

 

 嬉しそうにするペリュトン共に笑いながら、二人は降りて来た空飛ぶタクシーに乗り込み、アジトであるエンジンシティ倉庫へと戻って行った。





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