ガラルマフィアが行く悪統一戦記   作:焼き鯖

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どうもこんばんは。ストックの重要性に気づいた焼き鯖です。

今回は調査会です。

今回もよろしくお願いします。


第七話

 バウタウン。

 

 ガラル地方の中東部に位置する港町であり、シーフードレストラン『防波堤』の他、漢方薬やお香など、他の街では売られる事がないものが揃う、ガラル地方の台所とも言われる場所である。

 

「……マリア、メガロ、帰って来たか。底の方に何かあったか?」

 

 大小様々な船が所狭しと並ぶ波止場の一角に、シザリガーとガラル本土では見られないサメハダーが、水面からデビーの方へ顔を見せていた。

 

 そのサメハダーとシザリガーにデビーが問いかけると「ザリ……」「ハダ……」と体全体を横に振った。

 

「そうか……一番可能性がある所が潰れたか……となるともっと沖の方に沈められた可能性があるな……」

 

 呟きながら次の手を考え、ある程度の場所の目星をつけたデビーは、二匹に次なる指示を出す。

 

「分かった、ありがとう。次は先に行ったペリュトン達と一緒に沖の方を探してくれ」

 

 指示を受けたマリアとメガロは、「ハダー!」「ザリー!」と返事をすると、沖の方へと一直線に泳いで行った。

 

「……さて、こっちも動くとするか。ラーク、埠頭を中心に、怪しい匂いがしたらすぐに知らせるんだ」

 

「スライ!」

 

 フォクスライのラークに呼びかけると、すぐに行動を開始した。

 

 バウタウンに着いてから、デビーは皆に作戦を伝えた。

 

 それは、各々の得意な領域を探すという比較的シンプルなもの。

 

 ルリナは実家の漁船を借りての捜索、ペリュトン、ポポ、メガロ、マリアは連携して海底と空からの捜索、オニオンはミカルゲのゼーレと共にずぶ濡れの幽霊からの聞き込み、そしてデビーはフォクスライのラークと共に埠頭や波止場、路地裏を中心とした匂いによる捜索と聞き込みという形で各々調査に入った。

 

 バウタウンは、その性質上海に大変近く、陸地が狭い。その為裏路地らしい裏路地がなく、人を始末するのであれば必然的に埠頭か波止場のどちらかしかなくなる。

 

 その二つに死体がなかったという事は、沖の方で沈められたとしか考えられないが、その方法は船か空かの二種類しかない。

 

 空飛ぶタクシーは言わずもがな使えないと考えれば、自前の飛行出来るポケモンがない限り、船以外に沖に出る方法はない。

 

 その上バウタウンの船は貸し出し制で、お金が殆どないガラルマフィアには自前で用意出来る船がない。

 

 だからこそ、地道にレンタル業者に聞き込みしながら埠頭や波止場に出入りがあった人影がないかを探していけば、数うちゃ当たるだが確実に犯人に行き着く。

 

 デビーはそう考えて行動していたのだが……

 

「……そうですか。ありがとうございました」

 

 貸し舟業者の店主に挨拶すると、デビーは挨拶をして店を出て行った。その足取りは重い。

 

「……ラーク、どうだった?」

 

「ライ……」

 

 ラークもまた、しゅんとした顔で首を横に振る。

 

「そうか……これで全部の貸し舟屋を回ったが……」

 

 未だに成果はゼロであった。思わずデビーの顔が渋くなる。

 

『犯人』であろう人物とその取り巻きの匂いは、ラークに一度覚えさせている為、痕跡が残っていればすぐに見つけられる筈であるが、ここまで何もないというのは想定外である。怪しい人影を見たという情報もなく、陸の捜索は難航していた。

 

「そう考えると……何処か別の所から捨てた可能性があるが……」

 

 歩きながらデビーが思案に暮れたその時。

 

「……ライ? スライ! ラーイ!」

 

「あっ! ラーク!?」

 

 ラークが何かを感じ取ったのか、突然走り出した。行き先は先程の波止場を越えた更に奥の位置。街の中心からは若干外れた場所の少し手前で、ラークが止まった。

 

「どうしたんだラーク! 何か見つけたのか?」

 

 息急き切ってラークに追いついたデビーの視線には、中規模であるが人だかりが出来ていた。同時に何処からともなく音も聞こえてくる。

 

 デビーはこの音に聞き覚えがあった。

 

「これは……マキシマイザズの曲じゃないか。という事はここは灯台近くの広場か……」

 

 辺りを見回すと、確かに近くには灯台があり、それを守ったと伝えられている二匹のストリンダーであろうポケモンの像がある。

 

 ファンの数から見てもライブである事は間違いないのだが、デビーは言いようのない違和感を抱いていた。

 

「……仮にもマキシマイザズのライブなら、多少なりとも敷地が狭くても、もっと多くの人が来る筈……それに、新聞やテレビ、SNSもチェックしてたが何の告知もしてなかったぞ……?」

 

 もしかしてゲリラライブか? 

 

 そうデビーが考えたその時。

 

『イェーイ! 今日は俺とマキシマイザズのゲリラライブに来てくれてありがとーう!』

 

 曲が終わり、観客の歓声が上がる中、MCタイムに突入したと同時に聞こえてきた声に、デビーは目を見開いた。

 

「この声……! という事はやはり!」

 

 自分の推理が正しかった事に確信しながらライブ会場へ向かおうとした時、タイミング悪くスマホロトムの着信が入った。

 

「……もしもし?」

 

『もしもしデビー!? 私よ、ルリナ! 今何処にいるのかしら!?』

 

「波止場の奥の、灯台がある広場ですが……どうしたのですか?」

 

『すぐに私達が別れた埠頭に来て頂戴! 死体を発見したの!』

 

「……何ですって?」

 

 死体、という言葉に、デビーは大きく反応する。

 

「分かりました。すぐに戻ります。警察は?」

 

『貴方が来てから連絡入れようと思ってたの!』

 

「ありがとうございます。では、ルリナさんは私が来るまで埠頭から人を遠ざけて下さい」

 

『分かったわ! 気をつけてね!』

 

 そう言って電話を切ると、一度ラークをボールの中に戻し、駆け足で埠頭へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 バウタウンの埠頭は異様な雰囲気に包まれていた。警察や漁業組合の幹部、更には野次馬にテレビ局が集まって、ある者は不安を、ある者は憶測を、またある者は諦観をそれぞれ身勝手に口にし、場内はまさに混沌とも言うべき状況になっていた。

 

「……まさか本当に死体が見つかるなんて……」

 

 その場内から少し離れたところで、ルリナが残念そうにため息を吐いた。

 

「本当はね……死体なんてあの一体だけかと思っていたの。精々見つかってももう一、二体だと予想して捜索してたの。そう思って帰って来たら……」

 

 ──四体も見つかるなんて。

 

 震えた声でそう吐き出す。

 

 ジムリーダーとは言え、ルリナも一人の女性であり、表の世界の人間である。

 

 そんな人間が、いきなり四つの死体を目の当たりにしたら、そんな反応になるのも無理はない。

 

「し……しかも……霊の人達からも……聞いていましたが……かなり酷いものでした……」

 

 横の方からオニオンが口を添える。あまりにショッキングであるため、子供の彼には見せなかったが、彼の言う通り駆けつけた時の死体の状況はデビーですら言葉を失った程であった。

 

 四つの遺体は、皆全てドラム缶に入れられ、頭以外コンクリートで固められていた。よくある古典的な手法ではあるが、ガラルマフィアが衰退して以降は見られなかったもので、デビー自身も実物を見たのは初めてである。

 

 醜く、赤黒く膨らんだ顔には、分かりにくかったが大きな裂傷があり、その傷はガラル語の『罰』と刻まれているようにも見えた。

 

 何より、その遺体の主は、三週間前にサイトウを侮辱し、ガラクロンドで威嚇して追い払ったキャプタファミリーの下っ端、バースとその仲間であった。

 

「本当に信じられない……まさか私の街でこんな……」

 

 いよいよ声がこもり始めたルリナを落ち着かせるように、自分のジャケットを彼女の方にかけようとした時。

 

「……あのー、すみません、どうかなされたのですか?」

 

 背後から誰かに声をかけられた。

 

 振り返って見ると、ラッパーのような出立ちの、大柄な黒人男性が、心配そうな顔をしてこちらを覗き込んでいる。

 

 その声に顔を上げたルリナの顔が一瞬で驚きの表情に染まった。

 

「ド、ドクターペッパーじゃない! どうしてこんな所に!?」

 

「……あっ、ルリナさんでしたか。ご無沙汰しています。撮影会の時以来ですかね?」

 

 ドクターペッパーと呼ばれる黒人男性がルリナに気付くと、ペコペコと頭を下げて挨拶する。

 

「……ル、ルリナさん……この方は……?」

 

 オニオンが戸惑いながら尋ねると、ルリナは立ち上がって彼を紹介する。

 

「紹介するわ。この人はドクターペッパー。ガラル地方に彗星の如く現れて、ガラルラップを広めたパイオニアなの。今やその人気はあのネズと同等と言われるくらいよ」

 

「いやいやそんな……私なんかまだまだ下っ端ですよ。ネズさんと同じなんて、ルリナさんもお世辞が上手いんだから」

 

 参ったなぁと、大柄な体を精一杯縮こませてドクターペッパーが頭をかく。それを見たオニオンが「そ……そんな凄い人なんですね……」と、素直に驚いていた。

 

「あははは……それで、こちらの方々は?」

 

 ふと、ドクターペッパーがデビーとオニオンを指さす。どうやら彼は二人のことを知らないらしかった。それを察知したオニオンが先に口を開く。

 

「……ぼ、僕はオニオン……ラテラルタウンの新しいジムリーダー……です」

 

「ラテラルタウン……あぁ! ニュースでやってたあの新進気鋭のゴースト使いの方でしたか! 初めまして、こんな所で会えるなんて嬉しいです!」

 

 ガシッとオニオンの手を掴んでブンブンと腕を振るうドクターペッパー。その煽りを受けたオニオンの目はぐるぐると回っており、「力……強い……」と弱々しく呟いていた。

 

 一通り腕を振り終えた後、彼はオニオンの手を離し、デビーの方を向いた。

 

「それで、そちらの方は?」

 

「……申し遅れました。私はデビー。デビー・リベリーと申します」

 

 以後お見知り置きを。

 デビーがそうお辞儀すると、ペッパーは「はい、よろしくお願いします」と同じくお辞儀し返す。

 

「それにしても……普段あれだけ忙しい貴方が、なんで今日ここにいるのよ?」

 

「実は、今日はマキシマイザズとのライブだったんですよ。さっきまで灯台がある広場でやってたんですけど……」

 

「えっ、なにそれ聞いてないんだけど!?」

 

「それは……ゲリラライブですから告知とかないですし……」

 

 それを聞いたルリナが悔しそうに頭を掻きむしった。

 

「何よ! こっそり連絡くれたっていいじゃない! アタシさっきまで海にいたのよ! それを知ってたら大急ぎで聞く準備して来たのに!」

 

「ルリナさん……それ、完全に職務放棄……です……」

 

 あまりにもあんまりなルリナの言動にオニオンがツッコむも、そんな事はお構いなしにルリナがペッパーに詰め寄ってくる。

 

「ねぇ! 物販はないの!? 最新のシングルとか! あれ私結構いいなって思ってたの!」

 

「すみません……もう売れちゃいまして……」

 

「何よー! ちょっとくらい融通してもいいじゃない! 全く、今日は厄日だわ……」

 

 とうとうルリナが頭を抱えた。その様子を見ていたペッパーが心配そうに尋ねる。

 

「あの……ルリナさん、この埠頭で何かあったんですか? さっきからずっと無理してそうな感じですし、今朝のニュースもありましたから……」

 

「えっとね、実は──」

 

「お待ち下さい」

 

 ルリナが話し始めようとした時、先程まで黙っていたデビーが急に口を開いた。

 

「ルリナさん、ニュースで後に知られる事になるとは言え、一般の方に教えるのはお控えいただけますか? 特に今回の場合は状況が状況ですので、ドクターペッパーさんがショックを受けてしまう可能性もあるので……」

 

「確かにそうかもしれないけど……」

 

 ルリナが口籠もった時、ドクターペッパーが口を開いた

 

「デビーさん……と言いましたね? 私なら大丈夫です。この業界にいると、色んな話を聞きますので、どんな事でも受け止められる覚悟はあります」

 

「……では、これだけお約束下さい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事を」

 

「はい、お約束致します」

 

 その言葉にデビーは頷き、ルリナに話してもいいと目で合図する。

 

「実はね……この街の沖合の方で若い子の水死体があがったの。それも四体も。その様子が酷くてね……ショック受けてたのよ」

 

「死体……それも若い子ですか。それは大変ショックですね……」

 

 沈痛な表情を浮かべるドクターペッパーであったが、すぐにスマホロトムを取り出して何処かへ電話をし始める。

 

「もしもし、俺だ。すぐにスピーカーとマイクを埠頭まで持ってこい……簡単なものでいいから。兎に角五分までには持って来て欲しい。頼む」

 

「……あの、ペッパーさん……一体何を……」

 

 電話を切り終わって、オニオンがおずおずと尋ねると、ドクターペッパーはにこりと笑った。

 

「第二回ゲリラライブの敢行です。暗い雰囲気を払拭したいですし、何より私が、この気持ちを抑えられませんから」

 

 ちょっと行って来ますね。と一言告げてペッパーがその場を離れると、今までの比じゃない位の大声で「ワッサー! 皆さん調子どうですかー!」と群衆に呼びかけた。

 

「俺は今歌いたくて歌いたくてたまんねぇんだ! だからマイクが届くまで、いやマイクが届いても歌い続ける! アカペラだけど盛り上がってくれますかー!?」

 

 この掛け声に、最初はどよめいていた人達の心が一つになった。皆彼に熱狂する様に大きな声で歓声をあげている。

 

「っしゃあ! じゃあまずは一曲歌わせて貰うぜ! 『ガラルマインド』!」

 

 一際大きな歓声が上がった。そのまま力強い声で歌い始めたペッパーを、ルリナとオニオンは圧倒された表情で見つめていた。

 

「凄いわ……私、彼のライブは何度か見た事があるけど……ここまで迫力があるの、初めてかもしれない」

 

「ガラルに……こんな音楽があるなんて……知りませんでした……」

 

 二人がペッパーのライブに見惚れる中、デビーは一人、冷めた目つきでそれを眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 


 

「今日はご協力ありがとうございました」

 

 すっかり時間が経ち、日が沈みかけてきた頃、デビーは二人に挨拶をしていた。

 

「そんな、お礼を言うのはこっちの方よ。あんな事があってから言う事じゃないけど、今日は色々貴重な体験をさせて貰ったわ」

 

「僕も……デビーさんに会えて……良かった……」

 

 二人が口々にお礼を言う中、デビーは「ありがとうございます」と頭を一つ下げると、少しだけ真面目な顔をつくった。

 

「ですが……ここから先は私達の領域。結果がどのようなものであれ、それに納得出来ないからと、余計な詮索はしないでください。ルリナさんは特に」

 

「分かってるわよ……」

 

 釘を刺され、頬を膨らませるルリナに、デビーはクスリと笑う。

 

「では、今日はこれで。報告は追って連絡します」

 

「良い結果になる事を祈ってるわ。無事に帰って来てね」

 

「が……頑張って下さい……!」

 

 各々別れの挨拶を告げて、その場は解散となった。街灯が灯り始めた道を、ジムリーダーの二人が歩く。

 

「ハァー、今日は本当に濃い一日だったわ。まさかこんな事になるなんて……ここから大変な事になりそうで嫌になるわ」

 

「ぼ……僕も警察の人達に……色々聞かれそうです……」

 

 並びながら軽く息を吐くと、ふと、ルリナがこんな事を聞いて来た。

 

「ねぇ、そういえばオニオン君が言ってたあのずぶ濡れの幽霊って、今どうなってるの?」

 

「あっ……彼らなら遺体が見つかった後に……僕とデビーさんのミカルゲで成仏させました……」

 

「という事は、もうこの世にはいないのね。何か言ってなかった?」

 

「えっと……特には……あっ、でもこんな事を言ってたような……」

 

「何それ。ちょっと気になるから教えてくれない?」

 

「はい……えっと……」

 

 ルリナが尋ねると、思い出すようにオニオンが言った。

 

 それを聞いたルリナが小首を傾げる。

 

「何それ……そんな名前の人、私聞いた事ないんだけど?」

 

「はい……僕も全く知らないんです……」

 

「まぁ、でも兎に角、その人に注意すれば良いのね。またデビーのポケモンに護衛して貰おうかしら」

 

「はい……お互い、夜道には気をつけましょう……」

 

 そう言いながら、二人は各々のジムへと帰って行った。

 

『スキヌスには気をつけろ』という言葉の裏の意味を知る事なく。

 

 

 




さて、スキヌスとは一体誰でしょうね?

もちっと伏線を上手く張りたいなぁ……
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