ガラルマフィアが行く悪統一戦記   作:焼き鯖

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どうもこんばんは。いい加減にオリジナルを書きたい焼き鯖です。

今回はバトル編です。スキヌスの実力が伺えるかも?

それではどうぞ。


第九話

 オリーヴはその日、バトルタワーに残って書類仕事に追われていた。

 

 元チャンピオンであるダンデが現チャンピオンにその座を譲り、バトルタワーのオーナーとして活動を再開した時、彼女もまたローズの意志を継いで彼の補佐に就くようになった。

 

 そして、バトルなどの実働的な動きをダンデが、書類などの裏方の仕事をオリーヴがやるようになって、今のところタワーの運営は上手く行っている。

 

 今日もまた、自分のオフィスで溜まっていた書類に目を通していた。

 

 大きな爆発音が聞こえたのは、一息ついてコーヒーを飲もうとした時であった。

 

 そのあまりにも大きな音は、口をつけたコーヒーを吹き出すのには十分な音であり、その飛沫は確認した書類の幾つかを汚してしまった。

 

「……オリーヴ、キレそうだわ」

 

 デスクの惨状をキレ顔で睨みつけながら呟いたオリーヴの心情は、オリーヴにしか分からない。

 

 

 

 

 

 

 


 

 シュートシティの路地裏は、大変な事になっていた。

 

 建物という建物、地面という地面に穴が空き、ゴミ箱はボコボコにひしゃげ、近くにあるフットサルコートはボロボロに荒らされている。近くに生息していたヤブクロンやダストダスは逃げてしまったのか姿も見えない。

 

 そんな事などお構いなしと言わんばかりに、相対している二匹のポケモンとトレーナーがいた。

 

「ハァ……ハァ……」

 

「ハァー……ハァー……」

 

 肩で大きく息を吸いながらも、二人のトレーナーは睨み合う事をやめない。それはポケモン達も同じようで、お互いのバンギラスとパッチラゴンも一歩も退く気配はない。

 

「……へっへっへっ……やるじゃねぇか。この俺自慢の相棒のスピードと火力についていけるなんてよ」

 

「当たり前だ……こっちにはお爺さまの代からのベテランもいる……伊達に修羅場はくぐってないって事だ……」

 

 息も絶え絶えながらにお互いに軽口を叩き合う。

 

「……へっ、お前は口を開けばそればっかりだな。だからお前は古いんだよ」

 

「それは今決めることじゃない。どちらかのポケモンが最後まで立っていたか。それだけの話だ……ガラクロンド!」

 

「ホーミー!」

 

 ──ストーンエッジ! 

 

 ──でんげきくちばし! 

 

 両者が叫んだ。

 

 それに呼応する様にパッチラゴンのホーミーが突撃し、ガラクロンドは雄叫びを挙げる。

 

 稲妻を纏った嘴に、地面から飛び出した鋭い岩が激突した。

 

「行け! ホーミー! そのままぶち抜くんだ!」

 

「ガラクロンド! お前の強さはこんなものじゃない! お前の底力を見せてやれ!」

 

「ガァァァァァァァァァァァ!」

 

「ギャァァァァァァァァァァ!」

 

 互いのトレーナーがエールを送る。それに応えるようにポケモン達が雄叫びをあげ──

 

 その瞬間に、大きな爆発が起こった。

 

 砂塵を巻き上げ、煙を吐き出し、閃光が走ってトレーナーの視界を奪う。

 

「くっ……!」

 

「ど、どうなったんだ!?」

 

 光と煙から守るように顔を下げていたスキヌスが叫ぶ。デビー自身も、この戦いがどうなったかは分からない。後はガラクロンドの自力次第だ。

 

 そうして煙が晴れていく。そこで彼らが目にしたのは──

 

「グォォォォォォォォォォォ……ォ!」

 

 雄叫びをあげながら倒れ込んだガラクロンドと、目を回しながら倒れているホーミーの姿だった。

 

「ガラクロンド!?」

 

「ホーミー!?」

 

 すぐにスキヌスが駆け寄ってくる。デビーもまた、驚いた表情を浮かべながら駆け寄る。

 

 スキヌスのパッチラゴンの強さは把握していたとはいえ、主戦力であるガラクロンドと相討ちになるとは思っても見なかったが、裏を返せば相討ちにならざるを得ないほど、相手の強さの練度が上がっていたとも言える。

 

 誤算だったとはいえ、彼は仕事をきっちりと果たした。これ以上を求めるのは酷と言える。

 

「……よく頑張ってくれた……ありがとう」

 

 ガラクロンドの肌を撫でながらボールに戻すと、ホーミーを労っているスキヌスの方へ視線を向ける。

 

「さて……まだやるのか?」

 

「……あたりめぇよ。俺の辞書に降参の文字はねぇ」

 

 そう言いながらホーミーをボールの中に戻すと、見慣れないボールを取り出して立ち上がった。

 

「はぁ……仕方ないな。出てこいペリュトン!」

 

 デビーが空に呼びかけると、上空からガラルの姿のファイヤーが姿を現す。最後に回されて倒せるポケモンの数が減っているのが不満なのか、少し不機嫌な様子である。

 

「へっ、けったくその悪いのポケモンだなぁ。だがよ、俺はもっとすげぇもんを捕まえてきてんだよ」

 

「何?」

 

「行ってこい! 俺の新兵器、ノトーリアス!」

 

 彼の声と共にボールから飛び出したのは、見たこともない姿のポケモンであった。

 

 全身が黄色く彩られた小さな電球のような姿をしたそのポケモンは、ぴょんぴょんと飛びながら両腕のひらひらを靡かせている。顔には点字のような丸い模様があり、その模様にデビーは見覚えがあった。

 

「お前……そのポケモンは……」

 

「こいつか? こいつはな、俺がカンムリ雪原に行った時に見つけた隠し球よ」

 

「カンムリ雪原……古びた遺跡が幾つかあると聞いていたが……」

 

「そうさ、その遺跡に眠っていたのがこいつってわけだ。名前は確か……レジエレキと言ったか」

 

 レジエレキ。

 

 初めて聞くポケモンだが、レジと名のつくポケモンである事から、ホウエンに棲息していると言われている伝説のポケモン、レジ系統の一種である事が伺える。

 

 しかし、だからと言って臆している暇はない。

 

 気を落ち着かせて、デビーはペリュトンに命じる。

 

「ペリュトン! 燃え上がるいか──」

 

「おせぇ! ノトーリアス! サンダープリズン!」

 

 スキヌスが命じた瞬間、レジエレキの姿が一瞬にして消えた。

 

「なっ……速い……!?」

 

 デビーが驚く間も無く、頭上から雷の雨がペリュトンに降り注ぐ。

 

『ギャァァァァァァァァァァ!』

 

「ペリュトン!」

 

 さながらそれは電気で出来た牢屋のよう。強力な電力がなければ出来ない芸当である。

 

 流石のデビーもこれには焦った。何せ相手は未知数である上に、現状驚異的なスピードを誇っている。

 

 真っ向勝負では確実にこちらが負けると、少なからず悟っていた。

 

 だがしかし、腐ってもマフィアのボスである彼は、そんな事はおくびにも出さず、そのままペリュトンに命令する。

 

「ペリュトン! 暴風でその檻を壊せ!」

 

 ペリュトンの目が更に紅く光っている事を確認すると、彼は最大打点である暴風を選択する。それに応えるようにペリュトンは羽ばたき、文字通りの風の暴力が辺りを包み込む。

 

 その風は、自身を捕らえていた雷の檻を粉々に破壊した。

 

「ほーう、成る程。逆上ねぇ。こりゃあ少し厄介だな」

 

 唇を舐めながら、スキヌスはつぶやく。

 

「まっ、そんな事関係はねぇけどな! ノトーリアス! ワイルドボルト!」

 

「させるか! 不意打ちで上にかちあげろ!」

 

 レジエレキのノトーリアスの体が発光し始めた隙を見計らって、ペリュトンがサマーソルトの要領で尻尾をぶち当て上にかちあげた。小さな体が屋根よりも高く飛ぶ。

 

「何!? あいつは特性的に特殊型じゃないのか!?」

 

 驚くスキヌスだったが、すぐにその理由に気がついた。

 

 ペリュトンの紅い羽毛の中に、保険証程の大きさを持つカードが隠れていたからだ。

 

「成る程、弱点保険か……」

 

「力と力のぶつかり合いには、こう言う芸もあるって事だ」

 

「いいねぇ、そう言うパワーアップなんかは大好きだぜ。俺も後で考えてみようかな! ノトーリアス! 上からもう一度サンダープリズン!」

 

「同じ手は二度は食わない! ペリュトン! 低く飛んで雷を遮れ!」

 

 デビーが指示を出すと、ペリュトンはすぐに急降下して建物の影に入った。雷の槍が幾つか壁を貫くが、死角が多く、捕らえるには至らない。

 

「ちっ……」

 

 流石にこれには鬱陶しく思ったのか、スキヌスが舌打ちをする。

 

 上空というアドバンテージを取ってはいるものの、ここは建物が乱立している路地の裏。遮る物が多い分、雷は通りにくいのだろう。

 

「背後を取れペリュトン! 取ったら燃え上がる怒りで攻撃を──」

 

「……あー、めんどくせぇ」

 

 苛立ち気味に呟いたスキヌスの言葉を、デビーは聞き逃す事はなかった。

 

「がっかりだぜデビー、あれだけ力で真っ向勝負するって言ってたじゃねぇかよ。それが蓋を開けたら俺の新兵器にびびって逆戻りか? お前の舌は二枚も三枚もあるのかよ?」

 

「お前……何を」

 

「ノトーリアス! ワイルドボルトで邪魔な建物全部ぶっ壊せ!」

 

 スキヌスが叫ぶ。

 

 その命令通り、ノトーリアスの体が発光したかと思うと、先程見せた超高速のスピードで建物に突撃し始めた。

 

「な……! おい! これはやりすぎだ! 民間人に被害が及ぶぞ!」

 

「知るか! これが俺のやり方なんだよ!」

 

 聞く耳を持たないスキヌスは、尚もノトーリアスに建物を壊させ、上空からの視界を開かせようと躍起になっている。

 

 そうこうしているうちに騒ぎが大きくなってきたのか、遠くの方でサイレンが鳴り、人のざわめきが聞こえ始めてくる。

 

「……っ! ペリュトン! 暴風で巻き上げろ!」

 

「させるか! ノトーリアス! 一度ワイルドボルトを解除しろ!」

 

 騒ぎが大きくなる前に決着をつけようとデビーが事を急いだ。

 

 だが、それすらも見越していたように、あれだけ暴れていたノトーリアスの動きがピタリと止まった。

 

 風を挟んでノトーリアスの目がペリュトンを射抜く。

 

 まるで、スナイパーがスコープ越しに狙いを定めているかのように。

 

「っ! 避けろペリュトン!」

 

「ブチ抜けノトーリアス! 破壊光線!」

 

 ノトーリアスの目の前に、圧縮されたエネルギーの塊が現れ、それが一気に射出された。

 

 圧倒的な破壊力と速さの前に、ペリュトンは避けることすら叶わず、モロにその砲弾を食らってしまった。

 

「ペリュトン!」

 

 地に落ちるペリュトンにデビーが駆け寄る。先のサンダープリズンのダメージも大きく、その体はボロボロで戦闘は不可能に近い。

 

「さーて、これで形成は逆転だなぁ」

 

 ニヤニヤと意地悪く笑うスキヌスと、それに連れられてやってくるノトーリアス。

 

「どうするよデビー・リベリー。お得意の策略でなんとかしてみろよ?」

 

「……くっ」

 

 手持ちはほぼ全滅。

 

 相棒のペリュトンも戦闘不能。

 

 何よりも圧倒的に相手の情報が足りない。

 

 ここまで追い詰められては、デビーも打つ手がなかった。

 

「まっ、この俺様をここまで白熱させたのは褒めてやるよ。これに懲りたら二度と俺のやり方に口出すんじゃ──」

 

「……ドクターペッパー」

 

 顔を伏せたデビーが、苦しげに言葉を発する。

 

「確かに……お前はガラルマフィアの役割の中では制裁役……つまり、暴力装置としての機能を持っている事は分かっている……」

 

 ガラルマフィアには、幾つかの役割がある。

 

 かつてガラルマフィアが裏社会の取り締まりをすると決めた時、自分達の専門分野を活かそうと、各々が得意とする稼業に分けた。それは今日のガラルマフィアにも受け継がれている。

 

 デビー率いるアービターファミリーは悪人の捕縛、調査を担っており、スキヌスが率いるキャプタファミリーは、制裁役として、力による犯罪の抑止を担っている。

 

「おぅそうだな。俺が怒ったのはよ、そこにオメェがグチグチとやめておけだのなんだの言ったから怒ったんだよ」

 

 やっと分かったのか。と、スキヌスは笑ったが、デビーは尚も言葉を続ける。

 

「だがそれは……あくまでも裏社会の常識だからこそ通用する部分がある。キルクスの入江やスパイクタウン近くの海岸の事例のように、自然に死体が上がれば単なる海難事故として処理されるような出来事もあるだろうが……今回のバウタウンはやりすぎだ。明らかに人の手を加えすぎている」

 

「テメェ……それはさっき終わった話じゃねぇか。今蒸し返してどうするつもりだよ」

 

「なら言ってやる……はっきり言って、あれは迷惑だ。自分の組の名を出した奴を制裁する事が悪いと言っている訳じゃない、それを見せしめるように俺に知らせて、表の人達を怖がらせるような真似はするなと言っているんだ。俺達はあくまで裏側の人間……一部の人間しか知られてない存在だ。だから次また同じ事をしたらその時は──」

 

 そこまで言って、デビーの胸ぐらをスキヌスが掴む。

 

 その顔に表情というものはなく、しかし視線だけはナイフのような鋭さで睨みつけてくる。

 

「いいか? 僕ちゃん。よく聞いときな。俺は確かに馬鹿だが、自分の置かれた立場を客観視出来ない程馬鹿じゃねえ。むしろ、古いしきたりに拘りすぎて、自分の立ち位置が分からなくなってるオメェの方がよっぽど重症だ」

 

「何……を」

 

「確かに、ガラルマフィアは裏側でしか生きられない存在だ。それはよーく分かる。過去の因縁がそうさせてんだ。だがよ、今は状況が違う。今のガラルマフィアは、表に出て然るべきだ」

 

 なんでか分かるか? とスキヌスが問いかける。が、答えに期待していないのか「分かんねぇだろうなぁ」と、そのまま話を続ける。

 

「今のガラルの刑罰はどうだ? 取り締まるっつったって刑は軽いものばかりで、金さえ積めば刑は軽くなる。俺に言わせりゃぬるいの一言だ。その点、ガラルマフィア──まぁ、ここでは俺のやり方なんだが──は徹底している。ガラルマフィアを合法のものにして、別組織として独立させれば、表立って犯罪者を撲滅出来る」

 

 ──俺のやり方でな。

 

 ニヤリとスキヌスが笑った。

 

「だからよデビー。俺は別にガラルをめちゃくちゃにしようとか、一般の皆様を怖がらせようなんて事は思っちゃねぇよ。まぁビッグになりてぇとは、常々思ってるがな」

 

 そこまで言って、スキヌスはパッと襟から手を離した。

 

「ここまで説明したら、流石のお前でも分かるよな? 分からねぇってんなら、殴ってでも分からせるぞ?」

 

「スキヌス……お前は……」

 

 デビーが口を開いたその時だった。

 

「あそこだ! あそこに人影があるぞ!」

 

 荒れ果てた路地の何処かから、人の声が聞こえてきた。

 

「……チッ、邪魔が入ったか」

 

 スキヌスはノトーリアスをボールの中に戻すと、足早にその場を去って行った。

 

「今回のところはここまでにしといてやる。だが次またお節介な事をやったら……覚悟しておけよ」

 

 という台詞も残して。

 

 程なくして、ガラル警察の制服を着た男二人が、大急ぎでこちらにやってきた。

 

「お前……デビー・リベリーだな? 少し話を聞かせて貰うぞ」

 

 男の一人にそう言われて、デビーは立ち上がる。

 

「おい、あそこにいる男は……」

 

 もう一人の男が、ペリュトンが倒れている場所を指さす。既にペリュトンの姿は人間の形態に戻っていた。

 

「……病院へ連れて行って下さい。私の相棒なんです」

 

「……おい、至急救急車を」

 

「分かりました」

 

 そのままスマホロトムが起動されたタイミングで、デビーは警察に連行されて行く。

 

 ──スキヌス、お前のその野望に、ついて来られる奴はいるのか?

 

 心中で、密かにそう問いかけながら。

 

 

 

 





最近はもっぱらサイファーやってます。
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