この素晴らしい英霊たちと異世界へ!   作:もえみ

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お待たせしました。

残酷描写があります。
苦手な方はご注意をお願いします。

自衛、大事。


第四話 オタク、覚悟を決める

カオルコさんとミコさんはやりたいことはまだ完全に決まった訳ではないが、それを見つけていく方向になった。

オッキーは薄い本を書きたいらしい。この世界線にサバフェスはないと思うけどいいのかな?

 

「この世界に萌えを広げていけばいいし、同志はどこにでもいるもんだよ」

 

、と格好よく告げてきた。驚くことにBLだけでなく、NLもGLもいけるそうだ。同志ならここに居ます。ちゃんと自分がそう(マイノリティ)だっていうのもカミングアウトするからもう少々お待ちください。

 

 

あれから、三人には交代で働いてもらう事に落ち着いた。元々が私の魔力がみんなの現界分をちゃんと保てるか、という不安から自由に過ごしてもらおうと思っていた部分があったのだが、それは伝わっていなかった。

そら働こうとしますわな。

マスターって立場の私があくせく働いている中で自分たちが遊んでいる状況を作ろうとしてたんだもの。

 

私としては彼女たちがやりたいことを見つけるため・見つけた後の実行までに費やす時間を確保。大前提はここなんだけど、夜の時間を霊体化で奪っている分、昼はゆっくり好きなコトしてて欲しい気持ちなんだよな。

 

 

でも完全な納得が得られなかったので、交代制。三人が朝から夕方まで現界するだけの魔力は今の私で十分にある。魔物と戦ったりなんかはまだ分からない。冬にクエスト受けるほど馬鹿じゃない。

 

(ま、ないことはないだろう。神様がつけてくれた常識的な魔力保有量だもの。でもそれは雑魚相手を想定していて、魔王軍のやつらとかは無理だと思っている。私、アクア様に魔王軍を倒してとか一切言われてないし)

 

なので、今はシフトのように一人ひとりがギルドで手の足りていない時に雑用やウエイターをしている。私は料理とは別に買い出しへ行ったり、薪割を行ったり、たまにピアノを弾いたり、そんなことをしている。

 

ピアノはぽつんとギルドの倉庫の中に眠っていたのを見つけた。過去、音楽家(現地人)の方が居てその人が引退してからは誰が触ることもなく、埃をかぶっていたらしい。

 

 

―前々世で好きだったボカロやアニメ曲などを前世で再現するために歌い手になり、ネットへ投稿するため、音楽や楽器に明るくなった。耳コピだったけど、それなりの再現度だったと思う。もちろん、前々世の作者が現れてきたらお返しする気満々だったよ?元々私が作ったものではないと公言していた。作者が公表できる状態じゃないので私が代役として投稿させてもらっているといつも但し書きをしていた。

 

 

そこに来たのが私だ!まあ、ギターなどの音階を合わせるのと違って、ピアノの調律までは出来ないので、ギルドを通して調律師にお願いした。このピアノがまた弾かれることに喜んでくれたお爺さん。

感謝を伝えながら、落ち着いた曲(メルトや君の知らない物語)アグレッシブな曲(躍動やKING)、色々弾いた。それがおじいさんだけでなくギルド職員たちにも評価されたようで、ピアノは食堂の方へ移されて、私は調理場が落ち着いたらピアノを弾きたいように弾く生活をしている。あ、これなんて素晴らしい人生?私、冒険者する前にめっちゃ充実してる・・・?このままの生活でいいかもしれない・・・。

 

そんな思いとは裏腹に、春が近づくにつれて、元々ギルドに居た職員たちが実家や長期休みから戻ってきた。当然今まで手の足りていなかった調理場もホールも裏方も問題なく回るようになってくる。

 

 

―親の介護などもあり、冬の時期は危ないのでという理由で実家に戻るものも多いようだ。そのため、私たちが雇ってもらえていたというわけだ。冒険者だけが冬に備えて蓄えるわけではないらしい。

 

来週からは固定だったシフトも忙しいときは手伝って欲しいという話になっている。ティムさんはずっと居てくれていいんだがな、と良い笑顔を見せてくれた。

責任のある立場とは言え、彼も雇われ。上の決定もあるし、調理場にはすでに戻ってきたスナーフさんも居る。まあ、バイトには来るし、ピアノも弾きに来るから、顔はいつでも見せれると思う。

最近は食堂でお酒を飲んでいる冒険者たちも増え、リクエストなんかもされるようになった。懐に余裕が出来たらこの世界の音楽に触れるのも良いだろう。自作なんかも出来たりしちゃったりしたら、カオルコに歌詞をつけてもらえないか、なんて。贅沢者だな・・・。なんて国宝?

唄える人がいたらさらに最高じゃない?いや、英霊たちの声帯は絶対に唄えるんだけどね?紫式部(茅野愛衣)刑部姫(福圓美里)卑弥呼(田村ゆかり)の三人だもの。

 

 

「おーい、ジャイアントトードを捌くの手伝ってくんね?」

「ほーい!」

「イチカは解体初めてまだ三ヵ月って思えない手際の良さだから助かる。まあ、期待の新人って紹介された時はちょっとばかり焦ったが」

「何言ってんですか。こんなぽっと出よりもよっぽど手際がいいのに」

「そりゃ年数やってますから」

「来週からは持ち込む側になりたいと思うのでよろしくお願いします」

「・・・もうギルド職員にならね?」

「魅力的過ぎて悩む・・・」

「変なトコで常識のねぇ箱入りだし、良い就職先だぞ?アクセルは治安もいい」

 

 

常識はこれから学ぶから良いの。まだこの世界に来て三ヵ月の赤ん坊だから。

 

こちら、先ほど話題に出たスナーフさん。親の介護と下の兄弟の世話をするため、冬の間はいつも実家に戻っているらしい。茶髪に赤い目を見て、紅魔族ですか!?とわくわくしながら聞いてみたら溜息顔で否定された。違うらしい。そして謂れ慣れていてうんざりのご様子。アルカンレティアの付近にある村出身で一応遠縁らしいが、彼曰く、―あのノリ(変人集団)にはついていけない。

 

なるほど。それは否定できそうにもない。雑談に花を咲かせながらジャイアントトードを手際よく解体していった。三ヵ月もしていたら慣れた解体作業。しかし、今回はいつもと違ったことで違和感。

 

「あれ?胃が妙に膨らんでません?」

「あー、春の時期だからな」

「?」

「あ、今までの解体って冬眠中のやつだけだったか?なら今回初めてか。まあ、開けてみろよ」

「はい?」

 

 

全力で嫌そうなスナーフさん。ジャイアントトードの胃だし、ピンときた。魔物も食す。モンスターか山羊か。そう思って開くと、山羊の白い色ではなく、肌色。

 

 

うっわ!一番最悪の奴だ」

「・・・」

「あー、手はまだ綺麗だな。顔は・・・爛れてやがる。うへー。だからこの時期は嫌いだ」

「・・・・・」

「この感じだとまだ行方不明の捜索もでてないだろう」

「は?」

「受付に連絡が必要になる。覚えておいてくれ」

 

 

開いて出てきた中身は胃酸で溶けている人間の子供だったものが入っていた。そうだ、ルナさんも言っていた。

 

―ジャイアントトードは山羊や()()()()()を喰らう。ただ鉄を嫌うので初心者の冒険者には持って来いのモンスターである、と。

 

それが現実にやってきた。今までもそうだったんだろう。私の目の前に現れた。魔物とは正しく人を喰らう者。ファンタジーやギャグではない。実感して、胃にムカつきを感じ、そのまま酸っぱいものが込みあげてきた。

子どもはじわじわと自分の身体が溶けてしまっていく恐怖に何も出来ずに死んでいったのだろう。足や皮膚が痛んでも助けを求めて、手を伸ばし続けたのだろう。この子の身は、すでに下半身がなく、顔も半分ほどになって爛れてしまい、上半身の右側もほとんどなかった。それでも左手だけが綺麗に伸びていた。最後を過ぎてしまっても助けを求めて。

 

 

「おい?」

うぇぇぇぇぇぇ・・・

「あー・・・」

 

 

スナーフさんに返答する余裕もなく、胃の中身を床にぶちまけた。初めて目の当たりにした人の死(子供の死体)。日本で見ていたお葬式とは全然違う。死に化粧なんてしてやれない。正しくここは異世界だ。日本の常識で見てはいけない。量ってはいけない。前提が違うのだから。これが現実だ。

 

「箱入りには刺激が強すぎたよな、すまん」

「・・・(ブンブン)」

「キツイ事言うけどさ、冒険者なら慣れんとしんどいぞ」

 

 

これ以上ぶちまけてしまわないように口を押えて、首を振る事で返事をした。こんな日常。()()()()()()()()()()()()()()()()()。その一部。必死に首を振った。

 

 

「とりあえず外に出て新鮮な空気を吸ってこい。オレも受付行くし」

「・・わたじも」

「今度教える。今日は休んでくれ」

 

 

驚愕と悔しさから涙が出た。苦しい。違う。この子はもっと苦しかったし、怖かった。背中をさすってくれるスナーフさん。本当に申し訳ないが、とても助かる。ただのオタク、人の死に耐性などない。行動イケメン。私は貴方と恋人との幸せを祈りましょう。

受付に居た本日当番のカオルコさんと一緒にギルドの外に出た。ついていてくれというスナーフさんから私を受け取って休んでいた。彼女も私の顔を見て、とても驚いていた。

 

 

「イチカ様、大丈夫ですか?」

「ごめんなさい」

「無理は禁物ですよ」

「はぁい」

 

 

私、みんなのマスターなのに、格好悪い。

藤丸(FGOの主人公)はすごいなぁ。人の死にも動じず(痛ましく思っても目を逸らすことはなかったと思う)、人理修復をやりきった。二部完結(現在も動いているコンテンツ)までは生きていなかったからどうなったかとても気になるけど、私には彼のように振舞う事は無理だ。でもこれが現実。私はまず、自分を落ち着かせた。

 

()()()()()()()。殺されない為に私は彼女ら英雄とともにあること(英霊召喚という特典)を選んだ。この世界の人にはそもそもそれがない。あの子はエリス様の下に行ったのだろうか?あんな年齢であんな死に方で自分を受け入れられたんだろうか?そして、その先は何を選ぶのだろうか?

死んだらエリス様の下へ行く。これ、エリス様めっちゃきつい仕事じゃない?アクア様もなんだけど、彼女の雰囲気とノリが軽かったからなぁ。神様だから人間の死に一々囚われないか。

 

でも今度エリス教の教会へ祈りに行こう。そう決める事で心も十分に落ち着いた。

カオルコさんに謝罪をして一緒にギルドの中に戻った。まずはみんなに謝罪。一気に二人も抜けることになって本当にすみません・・・。でもその謝罪は受け入れられなかった。悪い意味ではない。

 

 

「むしろ箱入り娘って忘れていたわ。貴女、ほんと働き者だもの」

「箱入り娘ではないです」

「イチカは常識知らずって聞いてるわ?」

「それ、誰が言いまわってるんです?」

「リーフよ」

 

 

―彼女はユーリ。先週王都の方の実家から戻ってこられた受付嬢だ。ルナさんほどの露出はないがとても美人。短髪に赤い髪が溌溂とした彼女に良く似合っている。オッキーとはあまり相性が良くなさそうな陽キャな委員長タイプ。

 

―リーフとは彼女と同じく受付担当の男性。先月戻ってきて、冒険者としてのいろはを教わっていたのだが、その時のやり取りのせいで私は常識知らずにされてしまったらしい。確かに事実ではあるのだが、それを周りへ広めるのは止めて欲しい。

 

 

もうこのギルド全員が箱入り娘と認識しているだと!?否定してもあんまり効果が出ないので、自分のやらかした後処理をして、あの子をジャイアントトードの胃から取り出した。カオルコさんは渋って私の傍から離れようとしない。受付の仕事もあるのに、ユーリさんもそのままついてて欲しいと送り出してくれた。正直助かった。一人だときっと泣いてしまっていた。訳も分からず私が泣いていても、この子が戸惑ってしまう。手を合わせて心の中で“次の人生、もっと楽しんでね”と告げた。こういうことがある世界なんだ。

 

作戦名、()()()()、で生きて行こう。

 

後日、私の我儘でギルドの裏手に積石とクリスの花を置かせてもらった。これから毎回こういうことをする訳にはいかないが、彼らの常識ではこういうのは珍しい事ではない。だからこそ供養ではないが、何かしてあげられることはないかな、と思った時にこれだった。

 

―日本では親より先に死ぬ事が親不孝で、その罪を贖うために、賽の河原で石を積んで子供の霊は過ごすのだろう。

 

だから私がここで積石しておけば彼らのその時間が短くなるかもしれない。(この世界は日本ではないからそうする必要すらもないかもだが)私がすぐに転生できたように彼らにも楽しい人生を過ごして欲しいものである。

 




英霊たちとのやりとりよりもオリキャラとのやり取り多くない?
この世界に慣れるところからかな、と考えて書いた話。

※ユーリ、リーフ、スナーフは私の考えたオリキャラです。前話で出ていたティムさんも含む。モブがいっぱい出るのはご了承ください。続けば原作の時も恐らく出てきます。
簡単プロフィール
ユーリ:女性。20代前半。既婚。エリス教。受付嬢。物ははきはきという。
リーフ:男性。20代半ば。既婚。強面。受付。用心棒も兼ねているが、見た目だけ。構いたがり。解体も出来るので手が足りない時はかり出される。
スナーフ:男性。19歳。未婚。恋人アリ。調理場担当。解体も出来る。長男気質で背負い込みがち。使えるものは何でも使え。
ティム:男性。40になる。既婚。エリス教。調理場責任者。この人のお墨付きがないと、調理場は任せてもらえない。


※残酷描写について
ジャイアントトードに歯がなかったので、丸呑みが通常の食し方と推察し、あのような描写になりました。間違った知識だったらすみません。


次回は初クエスト回。
戦闘描写はなし。なのに初クエスト回とは・・・?


また何かあればコメントよろしくお願いします。
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