初っ端から大変な状況になりました(ロックが)。
ダガーかミスリルナイフかで迷いました。何がかはすぐにお分かりいただけるかと。
魔大戦――かつてその世界の千年前に起こった魔法を巡る大戦争。その戦争によって魔法は失われ、その世界では機械文明が発展した。
しかし、帝国の皇帝ガストラはある時を境に『魔導』と呼ばれる力を行使するようになる。
そしてその魔導の力を使った兵器・魔導アーマーを始めとする強大な軍事力をもって世界征服を目論むガストラ皇帝は、炭鉱都市ナルシェにて氷漬けの幻獣が発見されたという情報を耳にする。それを奪取すべく帝国兵二名……正確には三名を送り込んだが、そのうち共鳴した一名を残し、残る二名は消滅。
共鳴した一名……ティナという少女はジュンという老人の手引でナルシェから脱出しようとするが、炭鉱内での足場の崩落でそのまま落下、意識を手放してしまう。
万が一に備えてジュンはある人物と連絡をとっており、その人物が彼の自宅の裏口より訪問する事になっていた。
……のだが……
☆☆☆
「ふむ、初期転移先としては悪くないな。自然に囲まれ機械と炭鉱で発展した都市か」
「ああぁぁぁ……結局来ちゃった……逃げられなかった……」
二名の男女……今回の主役とヒロインであるノアとアクアがこの世界へと最初に転移してきたのは炭鉱都市ナルシェ、しかもあろう事か先のジュンの家の裏口前である。
「さて、目の前にはドアがある。そして後ろには何処かへ続く道がある。お前ならどうする?」
「寒いので炬燵に入りたいです」
「そうか、ならば目の前のドアを開けるのみ!」
そこまで言っておきながら何故か腕組みしたまま動こうとしないノア。アクアも両腕を摩っているが、こっちも動こうとしていない。
「……ねえ、ノア様」
「何だ?」
「開けないの?こう、『たのもー!』的に」
「何を言う。今回の旅はお前の性根を叩き直す為のものだ。お前が開けて頭を下げないでどうする」
「やっぱりぃぃぃ!!」
ノアはアクアにやらせる気だったようだが、自分がやらなければいけないと言われたアクアはへたりこんだ。
「いきなり裏口から入ってきたりしたら間違いなく不審者じゃない!ゲームみたくいきなり入って話しかけたら情報くれるとかありえるわけないじゃないぃぃぃ!!」
「まずはやってみろ。話はそれからだ」
「無理!絶対に無理ぃぃぃ!!」
ギャーギャー騒ぐアクアと腕組みしたまま仁王立ちで動かないノア。人様の家の裏口で騒いでいるのは傍迷惑である。
しかし、そこに神か悪魔か誰かの声がかけられた。
「……あんた達、そこで何やってんだ?」
「「!!」」
ノアとアクアが揃って顔を向けるとそこにはバンダナをつけた如何にも『アイアム冒険者』的な格好の男性が。
「もしやこの家の住人の方か?」
「へ?いや、違うけど……」
「うああああ!せっかく希望が見えたとこだったのに!私の期待を返しなさいよ!」
「はあ!?いきなり何なんだよ!そもそも初対面だろ俺とそっちは!!」
アクアの八つ当たりに冒険者(仮)はさすがに抗議する。そりゃそうだわな。
そんな時、冒険者はハッとして腰から武器……たぶんダガーっぽいものを引き抜いて飛び下がった。
「まさか……帝国の刺客か!?」
「……は?」
「……む?」
「くそっ!まさか俺がリターナーのパイプ役だと分かって先手を打ってきたのか!?」
冒険者(仮)は何やら一人で突っ走ってる感が否めない。ノアもアクアも帝国などと関係はない。というかついさっきこの世界へと来たばかりなのに。
「ノア様、なんかコイツヤバそうな奴じゃない?」
「うむ、ポーション飲みまくった挙げ句、思考が変なところに言ってしまったアル中もどきのようだな」
「誰がアル中もどきだっ!?」
お前だよ。そう言いそうになった二人だが、冒険者(仮)はダガーを収める気はないらしい。
「さすがに命を奪う気はないが……動きや武器の一つは奪わせてもらうぜ!」
「ん?」
ノアへ向けて冒険者(仮)が割と素早く向かってくるが、ノアからしてみれば早いというのは最低でも能力封印しているレジェンド並くらいからであって、こんなものは早いどころかノロマレベルだ。
(悪いが……もらった!)
目の前のノアが腕組み仁王立ちのまま動こうとしないのをいい事にすれ違うように通り過ぎる冒険者(仮)。
ヒュ〜……という一迅の風がナルシェに吹く。どことなく緊迫感が流れている。
(……あいつは武器の類を持っていなかった。隠し武器の類もありそうにない。この様子だと向こうの女の子も……しかし、何だ……この寒気は……まるでまだ何か起きそうな悪寒がする。一体何が……)
そこまで考えて、冒険者(仮)はノアが何かを手にしていたのを確認する。まさか武器を、と思ったがそれにしては何かがおかしい。
(……あれは、布……?ん?)
視線を感じてそっちを向けばアクアが両手で顔を隠している。指の隙間から普通に見ているが。というかガン見。
「ふっ……」
「!?」
ノアが何かを含んだ笑みを浮かべると、冒険者は先程以上に背筋がゾクッとした。それもそのはず……
「随分ご立派なダガーだな」
冒険者(仮)が身に着けていたのは靴だけだったのである。
「ホワァァァゥ!?」
慌てて股間を隠す冒険者(仮)。よく見るとノアの手には布……即ち冒険者(仮)の服だけでなく、手にしていたはずのダガーまで握られていた。
「いっ……いつの間に!?」
「ふ……これぞ秘技『盗み返し』也!!」
簡単な事である。先程の動きがノアにとって遅すぎたため、すれ違う直前に冒険者(仮)の腕を弾いて武器を奪い、続けざまに衣服を剥ぎ取ったのだ。どうやって下着まで剥ぎ取ったかは企業秘密。
「返せ!俺の服!」
「武器はいいのか?」
「武器も!」
「どちらも断る!!」
まるで子供のやりとりだ。そしてそこにトドメと言わんばかりの一言がアクアから発せられた。
「……ちっさ」
「!!」
冒険者(仮)のHPが1になった!
0にしないだけマシなのかもしれないが、ギリギリのところで活かしておくというのも生殺しに近くて嫌だと思う。
ガックリ両手両膝をついてしまう冒険者(仮)。おい、見えてんぞお前の固定武器のダガー。
「終わりだ……どうせ俺はトレジャーハンターから『単小の冒険家』に格下げされてしまうんだ……」
「何やっとるんじゃお前ら」
「「「!!」」」
さすがに騒ぎすぎたのか、もしくはその冒険者(仮)が訪ねてくるのが遅すぎたからか分からないが、その家の裏口のドアが開いて老人―ジュンが出て来た。
「ロック、いつまで経ってもやってこないかと思えば地面に這いつくばって何しておるんじゃ。おまけに何も身に着けず……新しいプレイでも始めたのか?」
「ちげーよ!!誰がンなプレイするか!!」
ロックと呼ばれた冒険者は思いっきり反論するが、ジュンとしては彼よりもノアとアクアが気になっている。
「してお前さんたちは?格好からして帝国とは関係なさそうじゃが」
「ふむ、辺境ばかり巡りすぎて世間に疎くてな。帝国とは何だ?」
「「……え?」」
アクアとロックは揃って間抜けな声を出した。アクアはノアがあまりにも自然な形で帝国とやらについて聞いている事に。そしてロックは目の前の人物が帝国の刺客ではない事に。
「……嘘ではないようじゃな。そっちの娘もか?」
「うむ。なにせ今回はその娘の根性叩き直しの旅でな。どちらかと言えば自然相手の旅路だったから街へはたまにしか寄っておらんのだ」
「それはまた難儀な……訳あって詳しく教えてる暇はないが、もし力になってくれるのであれば……」
「構わんぞ。旅とは言っても根性叩き直しというからには困難に自分から立ち向かわねば」
「私じゃなくてノア様が行動の主導権握ってるんだけど!?」
仕方ない。アクアに答えさせたら間違いなくNOと言う。
「急ぐ必要はあるがとりあえず中へ。ロック、お前もいつまでそうしているんじゃ。さっさとこんか」
「……おう」
釈然としないまま、三人はジュンに促され彼の家に入る。
余談だが、後日このナルシェには突然真っ裸になる青い変態が出るという情報が駆け巡った。
☆☆☆
「まあ、何はともあれだ。よく来たなロック。ドロボウから足は洗ったのか?」
「じいさん、ドロボウじゃなくてトレジャーハンターだぜ」
「同じようなもんじゃろう」
「チッチッチ……大違いだぜ!」
指を振って力説するロックだが、いい加減に自分で気付いてほしい。――片手で指を振り、片手は腰に当てている彼は未だに靴しか身に着けていないという事を。
「おいトレジャーハンターとやら。まずはその粗末なトレジャーを仕舞え」
「ヘアァッ!?」
「早く服着なさいよ!さっきからプラプラプラプラとドヤ顔しながらぶら下げて!」
お前はガン見してただろ。正しくは現在進行形でも見ているが。
いそいそと服を着直すロックだが、おそらく今後彼はこれをネタにからかわれ続ける事になるのだろう。
それはさておき、ざっくばらんに帝国について説明されたノアとアクアは当面の間、ロックと共に行動する事にし、ジュンから帝国の操り人形にされていた少女の救出を頼まれる。
「じゃあ、俺たちはその娘を連れてナルシェから出ればいいんだな?」
「うむ。まずはフィガロ王のところへ」
「仕方ないとはいえ乗りかかった船、私達も付き合うとしよう」
「えええ……私たちはそのまま出ればいいじゃない……で、後で合流……」
「Don't say four or five!」
ノアの言葉は訳すると『四の五の言うな』だ。ターボな風紀委員長がよく言っていた台詞である。しかも妙に発音が良い。変なところで芸達者なノア様。
「炭鉱の一部で崩落があったようでな。ガード達が気付くのもそう時間はかかるまい。頼むぞ、三人とも」
「任せときな!」
「逆境はさらなる高みへ進むために最高の環境だ」
「全ッ然私の意志は反映されてないんだけど!?」
「「「Don't say four or five!」」」
「伝染るの早すぎィ!!」
ロックどころかジュンまでも侵食(?)する驚異のノアパワー。アクアだけではツッコミが足りなくなる可能性が出てきたぞ。
かくして三人は少女が落ちた場所へと向かう。
果たして少女を無事救出することが出来るのか。
ロックはまたひん剥かれるのか。
アクアは悲惨な目に合わずに済むのか。
何よりノアはちゃんとフォローする気があるのか。
しかしそれより何より重要なのは、次回遭遇するであろうガードリーダーが件の青い変態扱いされないかという事であった。
実際ロックはどれくらいのサイズか検討もつかない(そこかよ)。
次回はふかふかするあの生き物や原作ヒロインとの邂逅です。
激突!青い変態(脱がされた)VS青い変態(犬はいいが部下がマンモスまで連れてくる)!
もし本作で、無理のない範囲でキャラ追加するなら?
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定春(マスコット枠)
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桂&エリザベス(ボケ加速)
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高杉(シリアス枠)
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お妙(ある意味女性キャラ最強)