やはり俺のスターウォーズはまちがっている。   作:伊勢村誠三

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遠い昔、遥か彼方の銀河系で……

『やはり俺のスターウォーズはまちがっている。』

第三話 やっぱりこの想いは掟に反している。


壮絶な小、中学校生活を送ってきたせいで死んだ目とねじ曲がった孤高体質になってしまったオタクな青少年、比企谷八幡は、高校入学式に向かう途中、道に飛び出したミニチュアダックスを助けて車に轢かれてしまう。

そして目を覚ますと彼の体は赤ん坊に戻り、地球から遥か遠く離れた惑星ロザル飛ばされていた。

だが運良くジェダイマスターに拾われた彼は聖堂に預けられ、ジェダイ・イニシエイトとなる。

しかしそれは彼だけの話ではない。
たまたまその事故の当事者となった二人の少女も八幡御同じように赤ん坊の姿で惑星ロザルに飛ばされていた……。


やっぱり私のこの想いは掟に反してる。

由比ヶ浜結衣は比企谷八幡を愛している。

ジェダイの掟に定められた無償の愛ではない、ただ一人に向ける愛で。

重大な掟破りだ。

執着を禁じるジェダイは所帯を持たない。

極まれに男性の出生率の低い種族は生殖のみを目的とした婚姻を許可される場合が有るが、結衣が八幡に求める愛はそう言った愛ではなかった。

支えてくれる愛だ。

 

まだイニシエイトだった頃、結衣は時折思い出したようにかつての記憶を夢に見る事が有った。

そこはまだ星単位の統一政府すらモテていない辺境領よりもっともっと向こう、太陽系第三惑星地球での出来事。

両親の愛を受けて生まれて、事故に遭ったと思った瞬間から赤ん坊になって惑星ロザルに誰にも見向きのされない孤児になるまでの16年間。

 

そんな特殊な経緯の有る彼女は本来ジェダイの知らない両親からの愛を知っているのだ。

もしかしたら八幡(は単に好かれているとしか思っていないが)と彼女がアナキン・スカイウォーカーと親友になれたのはこういった理由が有ったかもしれない。

 

兎に角、彼女は寂しかった。

言いようもなく寂しかった。結局自分は孤独。どこにも頼る当てはない。

聖堂も要は学校の様なもので『家』ではない。

しかし周りに合わせてしまう彼女の事だ。

その寂しさをため込んでため込んで……ある時暴発してしまった。

 

原始的ながら暴力的な暗黒面のフォースは彼女の意思に反して当たりの物を壊し、友人を傷つけた。

彼女は逃げ出した。ジェダイは暗黒面を忌避している。

残れない。もう居場所はない。

そう考える度に暗黒面は強くなった。

子供たちは初めて見る暗黒面に怯えながらもライトセーバーを構えた。

 

「アイツはシスだ!」

 

「暗黒面だ!」

 

「やっつけろ!」

 

ジェダイの訓練は訓練用セーバーと機械を相手に行う。

故に、初めて感じる本当の暗黒面に彼らは恐怖した。

故に剣を取り排除しようと動いた。

青や緑の刃が結衣に害意をもって振り下ろされる。

服を焦がし、髪を切り、彼女の肌を傷つける。

 

「やめて!やめてやめて!助けてぇえええ!」

 

振り下ろされた緑色のセーバーがマゼンタのセーバーに阻まれる。

ついこの前、自分と共にパダワンへの昇進試験を受け合格した八幡だった。

 

「何するんだヒキガヤ!」

 

「そいつの味方をするのか!」

 

「暗黒面は悪だ!」

 

「掟に反するぞ!」

 

所謂優等生な一派が八幡を糾弾した。

しかし八幡はがりがりと後頭部をかくと

 

「掟、掟、掟ってそれしか言えねえのか?

掟が何より大事で絶対?お前ら執着を禁止してるくせに掟に執着するのはいいんだな?」

 

八幡がそう言い切ると後ろから

 

「ほう、それは興味深い意見だ。」

 

声が聞こえた。

振り返ると、人族のジェダイ・マスターが立っていた。

サイフォ・ディアスだ。

 

「見所のある少年だ。君はまだイニシエイトかい?」

 

「……いえ、つい先週パダワンになりました。」

 

だらだらと汗を流す八幡。

当然だろう。どこから見られていたか分からないが明確に暗黒面をかばう発言をしたのだ。

下手をすれば評議会から処分が下る。

 

八幡のセーバーを握る手と、結衣の彼の服を掴む手に力がこもる。

冷や汗も止まらない。しかしサイフォ・ディアスは

 

「私の弟子もこの前独立してね。

是非君のような自由なパダワンを持たせたいと思っていたのだ。

どうかね?私の孫弟子になってはくれないか?」

 

そう告げた。

八幡はこうして同年代で初めてマスターを持ったパダワンとなった。

まあしかし

 

「マスター!!!部屋からまた例の手榴弾が出て来たぞこらぁあああ!!!」

 

「まだ何に使うか言ってないじゃんかー!!」

 

「知るかぁああああ!!ウィンドウに怒られるのは俺もなんだよぉおおお!」

 

どっちがマスターか分からないありさまだが。

 

「おーいヒッキー!」

 

「由比ヶ浜!そいつを取り押さえろ!」

 

まだ苗字でしか呼んでくれないけど

 

「ユイちゃん見逃してー!」

 

絶対にあきらめない。

彼女の愛は、もう押さえない。だからきっと、今の彼女は掟に反してる。

 

(ヒッキー、ううん、八幡くん。わたしは、あなたを……サブレを、わたしを助けてくれたあの日からずっと…。)

 

 

 

はじめての弟子が出来る。

マスターであるサイフォ・ディアスに告げられた時、彼女、アリス・アマリリスは不安よりも興味が勝っていた。

なんでも仮に掟に定められたことでもおかしいと思う事は堂々と言って見せる勇気ある人族の少年だそうだ。

 

(あー、そりゃウチのマスターやマスタードゥークーに気に入られるわけだ。)

 

自分がついこの前楽器の所有を評議会に咎められたことなんか棚にあげてウチはどうあがいても問題児の系譜だなとため息をつく。

そして数日後

 

「よろしくお願いします。」

 

(うっわ。どぶ川でもまだ綺麗な色した目。一体何が有ったのよ?)

 

顔にこそ出さなかったがアリスは本気で引きかけた。

一体高々数年の人生で何を見たというのだろう?

それともジェダイの禁欲生活で歪んでしまったんだろうか?

はたまた、ジェダイを信じていないのか。

 

どれにせよこの少年はそのままにしておけば磨り減って、擦り切れて、そのどぶより酷い目に暗黒面を映したまま消えてしまうだろう。

 

(マスター、これはとんでもない贈り物をしてくれましたね。

この試練、必ずや乗り越えてみせましょう!)

 

そしてアリスが取った選択は彼に手を焼かせるという決断だった。

不甲斐ないマスターを律するパダワン。

幾ら八幡が捻くれ者でもここまでやれば悪く言われることはないだろう。

 

そんな日々が年単位で続いた。

そしてそろそろナイト昇格試験を受けさせようか、となった時にアリスは以前から気にかけて貰っていたマスタープロに呼び出された。

 

「お呼びでしょうか?」

 

「マスターアリス。君の指導は素晴らしい。

君の与える試練は彼に忍耐と戦いを教えた。

一見ふざけてるようにしか見えない本気の指導と一見しなくても本気の指導を常に並行して行い、彼は曲がりなりにも一人前のジェダイになった。だからもういいのではないか?」

 

「な、何がでしょうか?」

 

「もう君の自慢の一番弟子は迷っても君が教えた道標を頼りに帰ってこれるという意味だ。」

 

どうやらこのマスターにはお見通しだったらしい。

彼女は少し心が軽くなった。

 

「感謝します。マスタープロ・クーン。貴方に変らぬ敬意を。」

 

「親友の忘れ形見のもう一人のマスターが君の様なマスターであった事は実に幸運だった。

君達師弟と、フォースの意思に深く感謝する。

君はアナキンに最高の親友をくれた。ありがとう。」

 

アリスは真っ直ぐ八幡の元に向かった。

 

「ハチマン!ちょっといいかい?」

 

「マスター?ええ。大丈夫ですよ?」

 

「今日はずいぶん遅いじゃないか。何か用事が?」

 

「アミダラ議員の護衛任務を受けたスカイウォーカーと少し話していました。

美人の護衛とあって張り切ってましたよ。」

 

「そっか…ハチマン。」

 

「はい、なんでしょっ!!?」

 

アリスは八幡を抱きしめたそしてこういった。

 

「今まで苦労も迷惑も散々かけたね。

そんな私に、こんなマスターに愛想つかさないでマスターにしてくれてありがとう。

あなたは最高の弟子よ。本物の弟みたいに想ってる。」

 

「ま、ま、マスター?急に何を?」

 

「ついて来てハチマン。最後に教える事が有ります。」

 

アリスは八幡を楽譜と丸まった紙に諸々の武器の部品が散乱私室に案内した。

そして彼女は修行を通して自分だけが思い立ったことを明かした。

 

「あなたはかつてジェダイは今、掟に執着する掟破りと言ったそうね。」

 

「え、ええ。けどあの時は由比ヶ浜をかばおうと必死で…」

 

「間違いじゃないわ。」

 

「え?」

 

「ジェダイは掟に、オーダーに、ライトサイドに執着している。

少なくともわたしやマスターサイフォ・ディアスやマスタードゥークーはオーダーに限界を感じていた。

流石に電波ジャックからの過激演説する程じゃないけど。」

 

「………。」

 

八幡は驚いていた。そりゃあそうだろう。

今までのおちゃらけてふざけたマスターの面影はどこへやら。

真剣に弟子に教えを授けるマスターがそこにいた。

 

「そしてこれはわたしは、個人的にだけど、ジョカスタ・ヌーやマスタードゥークーの集めたシスの遺産を見せてもらってもう一つの考えを得たの。」

 

八幡は真剣に話を聞いていた。

 

「ライトサイドを憎み拒んだ今のシスは『あらゆる力の取得』というシスの教義に反した背教者。

つまりこの銀河に正しいフォースの使い手は一人としていないのよ。

あなた以外は。」

 

「は、はぁ!?」

 

「あなたの様に、誰かを心の底から愛せるジェダイだけが本物ジェダイよ。

分け隔てなく力を収集し、おのれと愛する者の為に使える者が本物のシスよ。

誇っていいわ。誰が何と言おうと、あなたはジェダイ始まって以来逸材よ。

私は貴方が一番弟子で本当に鼻が高いわ。」

 

ビスには鼻無いけどね。と、最後におどけて笑う。

八幡は、泣いていた。

 

「ほん、もの?俺なんかが?俺なんかが?」

 

「ええ。今のあなたは本物ジェダイにも本物のシスにもなれる。

私が保証する!例え誰に否定されてもね。」

 

「……あんたは本物のマスターだ。」

 

不器用で捻くれた最高の誉め言葉にアリスは心の底からのうれし涙を流した。

 

 

雪ノ下雪乃は嫉妬していた。

それも三人の同い年のパダワンに。

 

1人は、アナキン・スカイウォーカー。

フォースの申し子、シスを滅ぼす選ばれし者。

彼が聖堂に来た時、同い年のパダワンの中でも頭一つ抜けていた彼女はその選ばれし者がどの程度の者か見に行った。

 

一言で言えば、化け物。

下手をすればヨーダよりも強いフォースを彼女はアナキンから感じた。

そして彼女は自分程度の才能など『雪ノ下雪乃のx倍強いのがアナキン・スカイウォーカー』と認識させるため程度の者なんじゃないかと本気で思った。

まるでかつての生でいた姉を見ていた時の様な、羨望と嫉妬の入り混じった視線を向けていた。

 

しかし幸いにもそれは他の全員もだった気がする。

ポッと出に追い抜かれたのは程度の差はあれ他も同じだったからだ。

けどそんな選ばれしアナキンに初めて土を付けたのが可もなく不可もない、精々気配の隠し方が他よりうまい程度の比企谷八幡だったことは全員の度肝を抜いた。

 

たまたまその場に居合わせた雪乃は驚きながら八幡を見上げるアナキンと、彼から奪ったセーバーを付きつけながらも目を丸くする八幡をよく覚えている。

 

「君、名前は?」

 

「え?あ、えっと…ひき、じゃない。ハチマン・ヒキガヤだ。」

 

「……ハチマン!一週間後同じ時間にここに来てくれ。その時こそ僕が勝つ!」

 

「えぇ…」

 

ハチマンからセーバーを受け取るとアナキンが去って行った。

もしアナキンに勝ったのが幾らか先輩だったらそこまで雪乃は思うことなどなかっただろう。

 

だが勝ったのは比企谷八幡。

彼女にとってモブその1程度だった完全にノーマークだったどうでも良かったはずの男。

それが選ばれし者を打ち負かした。

自分はアイツ以下だと誰かに言われた気がした。

これが二人目の嫉妬。

そして三人目が

 

「ゆきのんやっはろー!」

 

イニシエイト時代、同じクラン、まあ学校の班やクラスみたいなものに所属していた由比ヶ浜結衣だ。

同じ日本人とあって彼女とはよく話した。

 

「今日ヒッキーがね!」

 

「この前アニーがね!」

 

嬉々として二人の事を話す彼女がうざったかった。

それ以上に、彼女に悪気なんかまったくないのに『わたしはお前のようなものと違って二人を支えられるんだ』と言われているようだった。

 

彼女の純粋に『ゆきのんってセーバーもフォースも上手だよね。』という言葉も皮肉にしか聞こえない。

こんな事は良くない被害妄想、掟に反すると分かっていた。

しかし彼女はそれを止められなかった。

それの膨らんだ思いは、間もなく始まるクローン戦争で……




ガイルキャラ解説

由比ヶ浜結衣

人間種の女性ジェダイ・パダワン。
マスターフィーモアの弟子。
非情にフレンドリーで同期と後輩は大抵あだ名か下の名前に愛称付け、マスタークラスの人物にはファミリーネームに先生付けで呼ぶ。

人の強く思い浮かべたものを読み取るなど、心に関したフォース術に長ける。
が、一度暗黒面を爆発させたトラウマから無意識にフォース・プッシュなどの直接攻撃に出るような技を避ける傾向にある。

音楽全般が得意で八幡のマスター、アリスとは趣味の一致から姉妹のように仲が良い。

使うセーバーのタイプはノーマルヒルトで、色は緑、型はシャイ=チョー。
本人要領が悪いので他の型を覚えさせるよりそのまま今できる型を磨いた方がいいというマスターの判断で、特に新しい型は教わっていない。
簡単な物ならソレスやシエンなどの動きを八幡、アリスの2人から教わっている。

趣味は恋バナ。
だが大抵マスターに見つかって咎められる。

地球に居た頃の記憶が非常に強く残っており、ホームシックを起こして泣き出すと、その度に八幡の元に行くなり通信する。
その頻度は結構高く、もうイニシエイト達の間で色々尾鰭が付いて噂になってるレベル。
八幡を慕う連中は面白がって結衣とくっ付けようと色々画策してるとかなんとか。
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