どこまでも真っ直ぐでお人好しな酒場の白兎   作:花見崎

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EP9 女神アストレア

「シルさん、ヘスティア様の様態は・・・」

 

 

 

 

怪物祭(モンスターフィリア)後半は騒動の終息に追われ、祭りどころの騒ぎではなくなってしまった

 

 

 

 

 

あの後シルさんと合流できたものの、気を失ったヘスティア様を休ませるために『豊穣の女主人』の自分の部屋を貸して休んでもらうことにした

 

 

 

 

 

「疲労で眠ってしまったみたいです。それよりよろしいのですか?ベルさんも明日からヘルメス様の頼みでダンジョンに潜りっきりになるのに・・・」

 

 

 

 

 

「流石に女性に押し付ける訳にも行けませんから。」

 

 

 

 

 

「ヘルメス様がおっしゃるには下層に潜られるんですよね。」

 

 

 

 

 

「下層といってもまだ上の方。それに、()()()()()()()()()も居ますから。」

 

 

 

 

 

昔色々あって、下層でお世話になったファミリアが居る

 

 

 

 

 

風の噂で、最近色々と動いていると聞いた

 

 

 

 

言ってしまうと手を組むのは賭けみたいなものだけど0より1

 

 

 

 

「アスフィさん達も並行で調査してるそうですし。それでも、下層にはいい思い出なんて有りませんけど・・・」

 

 

 

 

あそこは本当に色々ありすぎた

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

 

「ははは、お主から手前を尋ねてくるとは珍しい。」

 

 

 

 

 

「いつもは椿さんが押しかけてきますもんね・・・」

 

 

 

 

椿・コルブランドさん

 

 

 

 

【へファイトス・ファミリア】団長というだけあって、鍛治師としての腕は一流であり、冒険者の腕も試し斬りでレベル5まで到達したとか色々とぶっ飛んでいる人だ

 

 

 

 

「どうしたどうした、試し斬りならしばし待ってくれ。今色々と混みあってて手前も忙しいのだ。」

 

 

 

 

「違いますよ!?てか、また試し斬り行くんですか!?」

 

 

 

 

椿さんとはオラリオ中でも関係は長い方で、ひょんなことから休日に椿さんの試し斬りに付き合わされる事がしばしば

 

 

 

 

そのお代としてナイフの整備を頼む

 

 

 

 

なんだかんだ互いにウィンウィンな関係でやって来てはいる

 

 

 

 

「それに…忙しそうなので戻ってきてからで大丈夫です。時間取らせてしまいごめんなさい。」

 

 

 

 

明日から下層で活動するからと、寄ってみたけどさすがに他の冒険者を押しのけて頼みたくはない

 

 

 

 

いきなり押しかけた謝礼を述べようと口を開く

 

 

 

 

「まぁ待て、せっかく来たのだ手前の話し相手にでもなってくれぬか。一緒にお主のナイフも整備してやろう。」

 

 

 

 

「でも、他の冒険者の依頼が・・」

 

 

 

 

「ついぞ主神様から暇を出されてしまってな。かと言って他の団員の邪魔などできんからちと1人で暇しとっところにお主が来たのだ。ちと付き合え。どうせ休みなのだろう?」

 

 

 

 

「そうですね。それじゃあお言葉に甘えて。」

 

 

 

 

促されるままに椅子に腰かける

 

 

 

 

「ところでお主、何かいいことでもあったか?」

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

「昔からお主はどこか影を含んでおった。だが今はどこか明るくなったように感じる。」

 

 

 

 

 

そんなもんなのかな、僕自身じゃ何も感じなかった

 

 

 

 

「椿さんやミアお母さん達のおかげかも知れません。」

 

 

 

もう、独りは嫌だから

 

 

 

 

全てを1度手放したあの日から、僕の中にどこか大きな穴が空いた感覚が続いた

 

 

 

 

 

多くの出会いと多くの別れを経て、得たものも失くしたものも

 

 

 

 

椿さんと出会い、馬車馬の如く試し斬りに付き合わされたおかげで余計な考えも飛んでしまった

 

 

 

 

 

ミアお母さん達が今の居場所をくれたからこそ、ダンジョンで墓標を探す日々も消えた

 

 

 

 

 

「お主と出会った時、【剣姫】がまだ【人形姫】だった時以上の()()を感じてしまったのだ。」

 

 

 

 

 

「僕そんなに酷かったですか?」

 

 

 

 

「うむ。手前とて鍛冶師として数多くの冒険者を見てきたがあそこまでのは見たことがなかった!だが同時に興味が湧いてな。生存確認がてら誘ってるって訳よ!」

 

 

 

 

 

生存確認で死ぬ思いしたくないんですけど・・・

 

 

 

 

「ところでお主はどこまで潜るつもりだ?」

 

 

 

 

「下層、27階層がメインですが恐らく場合によってはそれより潜ることもあるかと。」

 

 

 

 

 

27階層という言葉にいい顔はしない

 

 

 

 

「まあなんだ、あまり深く捉えない方がいいぞ。」

 

 

 

 

 

「ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

空はすっかり黒に染ってるもののオラリオの明かりは消えない

 

 

 

 

「こんばんは、クラネルさん。」

 

 

 

 

椿さんとの話が長引いてしまい、帰るのが遅くなってしまった

 

 

 

明かりに照らされた夜道を歩いていると、後ろから声をかけられる

 

 

 

 

振り返るとリューさんとアストレア様が買い物袋を持って立っていた

 

 

 

 

「こんばんはリューさんとアストレア様。買い物の帰りですか?」

 

 

 

 

「そうなの。本当はみんな疲れてるから私ひとりで大丈夫って言ったんだけどね。子供達がどうしてもって言うから・・」

 

 

 

 

 

「ア、アストレア様1人にさせる訳にはいけません!今回の件では裏で闇派閥(イヴィルス)が関わっていたと耳にしましたし。」

 

 

 

 

【アストレア・ファミリア】は探索系ファミリアでありながら【ガネーシャ・ファミリア】と連携して治安維持も兼ねてる

 

 

 

 

今回の騒ぎも彼女達は鎮静に動いてたのだからいたわりたい気持ちも分かる

 

 

 

 

でもやっぱり神様ひとり出歩かせるのも不安

 

 

 

 

()と子の想いとは相容れないものだとは誰かの言葉だった気がする

 

 

 

 

「えっと…こうやって直接話すのは初めましてですね。ベル・クラネルです。」

 

 

 

 

「カジノの件、ありがとう。リューのお願いを聞いてくれて。」

 

 

 

 

「いやいやそんな!頭を下げられるようなことなんて何も!ほとんどシルさんのおかげですし。最後もリューさん達に任せっぱなしでしたから。。」

 

 

 

 

 

「クラネルさん、貴方の謙遜は控えた方がいい。過度な謙遜は相手を傷つけることもある。」

 

 

 

 

「心に留めておきます。」

 

 

 

 

「ところで・・・」

 

 

 

 

アストレア様が僕たちを少し口元に笑みを浮かべながら見てくる

 

 

 

 

怖い怖い怖いって!シルさんから学んだんだ、物静かげな女性がこのような笑い方する時は大体よからぬ事を考えてる時だって!

 

 

 

 

こ、ここは逃げるが何とかだ!敏瞬にものをいわせてここを去らないと・・・

 

 

 

 

「クラネルさん、諦めてください。」

 

 

 

 

ちょっ!リューさんもそんな目で見ないでぇ!?

 

 

 

 

「うんうん。同じ団員内でも距離が縮まりにくいあのリューがまさかいつの間にね・・・」

 

 

 

 

 

この後、アストレア様から質問責めを喰らうこととなった

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

「今度、改めて時間貰えないかしら。」

 

 

 

 

 

あれから『星屑の庭』に着くまで散々いじられ続け、いざ別れる時にアストレア様からお誘いを受けた

 

 

 

 

 

「この子の()としての心配ももちろんだけど、何故かしら…貴方とはいずれ()()()()()()になってしまう。そんな気がするの。改めて紹介させて貰えないかしら。」

 

 

 

 

 

「・・・少し考えさせてください。」

 

 

 

 

ここオラリオで僕の存在を知る人は少ない

 

 

 

 

ましてや、過去を知る人はそれこそほんのひと握り

 

 

 

 

今までも、そしてこれからも

 

 

 

 

「そうね。突然言われても困るわよね。それと、リューのことよろしく頼むわね。この子、こう見えて寂しやがり屋だから。」

 

 

 

 

「はい。よく存じていますから。」

ベルにヒロインは

  • いる
  • いらない

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