どこまでも真っ直ぐでお人好しな酒場の白兎   作:花見崎

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EP15 英雄が為に鐘は鳴る

「オオオオオッ!」

 

 

モンスターの咆哮が天を衝き、僕たちのいる場所より後方で女体型のモンスターが産声を挙げる

距離のせいで詳しい容貌は掴めないけど、あれが異質であることは容易に想像が着いた

 

 

「なにあれ!?」

 

 

「ったく、ようやくあらかた片付けたってのに・・・!」

 

 

「どこから現れた…と言いたい所だが、始末する方が先決だな。」

 

 

「あぁ、そうだね。」

 

 

こんな異常事態(イレギュラー)の渦中でも冷静さを保てていられるのはやはり最大派閥であり上級冒険者であるがゆえの特権ってものだろうか

 

 

かくいう僕もどこかで好奇心が抑えられないのは元冒険者が故ということなのかな?

 

 

「君は後悔してないかい?」

 

 

「してないと言えば嘘になるかもしれません。あの日、僕が起こした行動が正しかったとも間違っていたかなんて考えたことはありませんし、教えて欲しいとも思いません。それでも、僕はこの選択(ものがたり)に迷いはありません。」

 

 

「君からその応えが聞けて安心したよ。愚問だと笑われるかも知れないけど一緒に戦ってくれるかい?」

 

 

()()()とはまったく逆の問いかけ

 

 

あの時とは環境も、世界も、多くが変化している

 

 

それでも、誰かに頼られるというのはここまでむず痒いものなんだろうか

 

 

されど、共に戦おうではないか

 

 

『英雄』達が産まれるこの場所(オラリオ)に大鐘楼は鳴らされる

 

 

持たざる者から、持つべき英雄(もの)達へ全ての祝福を

 

 

「グォァオァアアアアア」

 

 

僕たちのいるわずか後方、最初に襲撃してきた食人花の咆哮が木霊する

闇派閥の差し金か、新たに増援として投入されたんだと思う

 

 

ただ、僕のやるべきことは変わらない

 

「数分でいい!リヴェリアさん達が攻撃する時間さえ稼げれば!」

 

 

「【我は汝を救おう】【生誕を祝え、祝福されし我が宝よ】

原罪(つみ)を赦せ、万物に浄化の輝きを】【鳴らせ、鐘の音を】

【愛を持たぬ悲しき者に愛情の慈悲を】【さぁ、心を持て。矢を捨てよ】

【汝の誓いを今果たさん】【ゾオアス・アンジェラス】!」

 

 

18階層全域に大鐘楼の音が響き渡る

 

 

暗闇から刹那、フィールドは光に包まれる

 

 

大鐘楼がもたらすは勇気

 

 

光が奪うは闘志

 

 

怪物は地に伏し、先まで感じていた緊張感すらをも失っている

 

 

打って変わり、冒険者たちは武器を取り、より闘志を燃やし力の湧き上がりを感じる

 

 

鐘はなる、数多の英雄たちの欠片のためにその音を響かせる

 

 

・・・

 

 

「こ、これは一体何が起きてるんですか!」

 

 

刹那のことでした

 

 

ハシャーナさんを殺した殺人鬼とアイズさんに助太刀も出来ず、ただひたすら新種のモンスターから逃げることしか出来ないでいると、突然鐘の音が響いてきて

直後に光に包まれたと思ってたらいつの間にか殺人鬼の人が倒れてて・・・

 

 

「ア、アイズさん!やりましたね!」

 

 

「・・・私じゃない。」

 

 

モンスターから逃げることに必死だった私とルルネさんはもちろん不可能ですし、誰か他の人が乱入してきた様子もありません

考えられるとしたらアイズさんが倒した以外考えられません!

 

 

でも、その肝心のアイズさんも驚いて何が起こっているのかも分からない様子ですし・・・

 

 

もしアイズさんじゃないとしたら考えられるのは先程の鐘の音と光・・・

誰かの魔法でしょうか?いえでもそんな魔法は聞いたことがありませんし

リヴェリア様なら何かご存知なのでしょうか・・・

 

 

「チッ・・・アイツの介入は想定外だ。惜しいが、お前とはいずれ()()()が来るだろう。」

 

 

そう言い残すと、彼女はおぼつかない足取りのまま崖へと身を投じてしまいました

 

 

「追わないと!」

 

 

「待って!追いかけちゃダメ。」

 

 

アイズさんの声で何とか踏みとどまることが出来ました

 

 

「そっ、そうですよね!深追いは危険ですよね・・・すみません。」

 

 

「それより今はあのモンスターが先。」

 

 

先程から暴れていたはずのモンスターの音が聞こえなくなってる

 

 

「やれやれ、派手にやってくれたじゃないか。」

 

 

団長とリヴェリア様が来られた

 

 

「とりあえず状況を説明してくれるかい?」

 

 

「先程までハシャーナさんを殺した殺人鬼と思われる女性がいて戦っていたんです。と言っても、私じゃまるで歯がたちませんでした。アイズさんと同等かそれ以上の実力を持ってると思います。」

 

 

「そうか。それで今そいつはどこに。」

 

 

「あの光が消えた直後、まるで人が変わったように逃げていきました。詳しい行先は分かりませんが、そこの崖を飛び降りていきました。」

 

 

「そうか…よく頑張ったな。」

 

 

「い、いえ!私なんてほとんど傍観しか出来ませんでしたので・・・」

 

 

一呼吸置いて、リヴェリア様にあの魔法について聞いてみることにしましょう

 

 

「それでリヴェリア様、質問があるのですが。」

 

 

「大体の予想はついている。大方あの魔法についてなのだろう?」

 

 

「は、はい。今まであのような魔法は見たことありませんし、何よりあの光から色々と変化が多すぎます!」

 

 

殺人鬼が去ったのも、モンスター達が急に大人しくなったのも、あの不思議な光が出現したあとの事だった

私でもアイズさんでもないなら1番の要因として考えられるのはあの光

 

 

リヴェリア様には遠く及びませんが、魔法の知識はある方だと思ってますが、あのような魔法は見たことがありません

 

 

「・・・そうだな、お前たちは知らないんだったな。」

 

 

「そうだね、なんて説明したらいいかな。」

 

 

団長もリヴェリア様もあまり浮かない表情をしてる

 

 

もしかしたら私聞いちゃいけないこと聞いちゃった!?

 

 

「す、すみません!野暮な事聞いちゃって!」

 

 

「いや、いいんだ。いずれは団員達に伝える必要があるって考えてたからね。」

 

 

「あの魔法は昔、とある最大ファミリアの1つの眷属が使用していた魔法だったんだ。と言っても、彼女は末端。実力は低かった。それでも、彼女は誰からも愛されていた。まぁ、もう死んでしまっているがな。」

 

 

「え?じゃ、じゃああの魔法は一体誰が・・・」

 

 

「おっと、敵は悠長には待ってくれないみたいだ。」

 

 

団長の言葉の通り、先程まで戦意喪失していたモンスターはまだ状況が掴めていないのか狼狽えながらも臨戦態勢に入っている

 

 

「レフィーヤ。以前行った連携を覚えているよな?あれをやるぞ!」

 

 

「わ、わかりました!」

 

 

今はこの現状を打破するのが先決、詳しいことはホームに戻ってから考えることにしましょう

 

 

気を取り直し杖を持ち、詠唱を始める

 

 

「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に風を巻け】」

 

 

魔力に反応したモンスターがリヴェリア様へと向かっていく

 

 

「【閉ざされる光、凍てつく大地。吹雪け、三度の・・・】」

 

 

ここでリヴェリア様が詠唱を止めることでモンスターに隙が生まれ

 

 

「レフィーヤ!今だ!」

 

 

「【雨の如く降り注ぎ、蛮族どもを焼き払え】【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!」

 

 

その隙に私の魔法をぶつける

結果、上手く決まってモンスターに命中

さすがに新種とはいえ倒せるはずです!

 

 

「アァァアアアアア・・・・」

 

 

モンスターは無事焼かれ、魔石となって塵と化していきました

 

 

・・・・

 

 

「ははは…相変わらずのバカ魔力で・・・」

 

 

後は【ロキ・ファミリア】に託したのは僕だけど、やっぱりレフィーヤさん達の魔法を見ているとどこかしら悲しく感じてきちゃう

 

 

「我々からしたらお前も大概だと思うぞベル・クラネル。」

 

 

「そ、そんな事ないですよ!お義母さんに比べたら全然ですし・・・」

 

 

「いやそれは【静寂】が規格外なだけだ。まともに比べるだけ虚しくなるだけだ。」

 

 

「ソ、ソウデスネ。」

 

 

後から出てきた食人花もティオナさん達によって片付けられ

18階層にようやく平穏が訪れた

 

 

「さてと、だいぶ遅れちゃったけど本来の目的を達成しないと。」

 

 

僕の本来の目的は27階層

色々あって足止めをくらってしまったけど僕は進まなきゃいけない

 

 

「すまないが、主神から呼ばれてしまってな。私は1度地上に戻ることになった。」

 

 

「い、いえ!そもそも引き止めたのは僕ですし。ディオニュソス様のご伝達であれば引き止める訳にも行きません。こちらこそありがとうございました。」

 

 

と言い残して僕は、19階層へ続く道へと進んで行った

ベルにヒロインは

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