どこまでも真っ直ぐでお人好しな酒場の白兎   作:花見崎

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EP16 豊饒の女主人

お義母さん達は、今の僕を見てどう思うだろうか、

 

 

酷く落胆し、嘲笑(わら)ってくれるかな

それとも、笑って見守ってくれるのかな

 

 

誰よりも讃えられるべき英雄たちは『悪』に身を染めた

 

 

数多の希望のために礎を築くための礎となり、『踏み台』にもなった2人を僕はいつまでも心想い続けると思う

あの日、僕がお義母さん達と最後に言葉を交わしたあの日彼女たちは僕に『最後の英雄』になることを望んでくれた

 

 

今思えば、あの抗争に僕を巻き込まない為の配慮だったのかもしれない

それでも、僕は裏切ってしまった

彼らを止めるためでもなく、この抗争を止めるためでもなく、エレボス様の思惑にノることにした

 

 

あの日、僕のファミリアが解散したあの日、お義母さん達が何を感じ、どう考えたのかはわかんない

どうしてお義母さん達が『英雄』にこだわるのかも、理解出来ないと思う

 

 

それでも、お義母さん達が望んだのなら僕はその思いを引き継ごう

 

 

将来、誰かの笑顔を守れるなら道化にだってなって見せよう

 

 

かつての『英雄』が、1人のヒロイン。否、多くの笑顔のために道化として振舞ったように

僕は、みんなの笑顔のために彼らの前に立ちはだかろう

 

 

彼らが待ち望んだ『最後の英雄』の誕生を見届け、この身を礎とするために僕は、『絶対悪』にも身を落とすだろう

 

 

これは、僕だけの物語だ

 

 

あの日、あの時、僕は本来の目的を忘れ

長く、果てしない茨の道を進むことにしたんだ

 

 

「いつか、数多の英雄の前に立ちはだからん事を。」

 

 

背中に刻まれたゼウスの血が深く、淡く光った

 

 

そんな気がした

 

 

・・・・

 

 

「さぁ!ネタは上がってるニャ!いい加減吐くのニャ!」

 

 

「だからなんの事ですか!?」

 

 

ダンジョンから戻ってきた僕を迎えたのはアーニャさんによる質問(尋問)だった

てかっ!なんでアーニャさんはそんな憲兵のような真似事してるんですか!

いや!本当にしてるかは分かりませんけど!

 

 

「あ、あのー?」

 

 

「ふっふっふ、まぁそう焦るな少年よ。まぁこれでも食べて落ち着くニャ。」

 

 

なんでクロエさんまでノリノリなんですか!?それとそのじゃが丸くんどこから取り出したんです!?

いや、でも2人はたまに『名探偵』とかにハマってるって聞いたような・・・

 

 

「さぁ!さっさと吐いて楽になるのニャ!」

 

 

「とまぁ、アホ猫2人は置いといて。ベルって弟君本当に居ないの?」

 

 

「だから何度も言ってるじゃないですか!僕は一人っ子ですって!」

 

 

「うーん、こういう時にシルが居たら1発なんだけどねぇ・・・」

 

 

「そうニャ、こういう時の少年の口は超硬金属(アダマンタイト)並に堅いのニャ。」

 

 

「いやそれはちょっと使い方違うけどね。」

 

 

「あ、あのー?僕もう戻っても・・・」

 

 

「ダメにゃ!吐くもん吐くまで許さないニャ!」

 

 

「えー・・・そもそもその僕に弟がいるかもって誰に聞いたんですか。」

 

 

「シルからニャ!」

 

 

いやそんな堂々と言われても・・・

 

 

「まぁ、小動物(ベル)をいたぶる趣味はないし私は辞退するよ。後はご自由に〜。」

 

 

ちょ、今聞き捨てならない言葉が聞こえたんですが!?

 

 

「そうニャ〜、明日寝坊すると怖いしアホは放っておいて寝るとするかにゃ。」

 

 

いやいや、クロエさんもさっきまでノリノリでしたよね!?

 

 

そうして、この部屋に僕だけ残して他のみんなは立ち去って行った

 

 

「見間違いじゃなかったんだ・・・」

 

 

1人、取り残された部屋でパタンと机に突っ伏した

頭の上で照らす魔石灯が揺れている

 

 

「やっぱり、こうなる運命だったんだ。」

 

 

動き始めた歯車は止まらない

例えどんなに壊れかけの歯車だって、1度回り始めればその回転は止まれない

 

 

彼の『英雄』への道はもう決まってる

 

 

そのために僕はこの茨の道を進むことを決めたから

 

 

「神々よご笑覧あれ!これが【アル・クラネル】の進む物語だ!」

 

 

ここから先は僕が綴る冒険譚じゃない

 

 

たった1人の、『英雄の欠片』がつむぎ出す

 

 

英雄譚だ

 

 

・・・

 

 

「そういえばさ、ずっと気になってたんだけど。」

 

 

各々の寝室に戻る際、ルノアが立ち止まってこう呟いた

 

 

「最初はアーニャとミア母さんとシルの3人でやってたわけでしょ?」

 

 

「そうニャ。まーシルはあの時にいつの間にか入ってたから感覚はにゃいけどニャ。」

 

 

「アホーニャのことだから忘れてるだけでしょ。」

 

 

「ニャ!?ミャーはアホーニャじゃないにゃ!」

 

 

「はいはい、話が進まないから。んで、その後にベル達が入って私たちが最後って感じで入ってきたわけじゃん?の割には部屋数的に余裕があるなーって。」

 

 

「言われてみればそうニャ。不本意とはいえミア母ちゃんに無理やり入れられた流れ的にはやけに高待遇だとは思ってたニャ。」

 

 

『豊饒の女主人』の従業員は8人、店内自体が結構大きいとはいえ従業員たちの生活場所も兼ねているためそのスペースは結構カツカツなのだ

暗黒期から続いてきた『豊饒の女主人』のスタートは2人

 

 

当時の大きさがどれ位だったかはさておいても、8人分の寝床確保は難しいのでは無いかと彼女たちは括っていた

それにも関わず、部屋一つ一つのスペースは狭いものの、一人一人のスペースは確保されていた

 

 

「ふっふっふ、おミャーらは知らないのも仕方ないにゃ。それにはダンジョンよりも深ーい深ーい訳があってにゃ?」

 

 

「コラあんた達!何時まで起きてんだい!明日も早いんだよ!さっさと寝な!」

 

 

「「は、はい!」」

ベルにヒロインは

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