どこまでも真っ直ぐでお人好しな酒場の白兎   作:花見崎

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EP18 ベル・クラネル

「レヴィス、侵入者だ。」

 

 

赤光に照らされる不気味な大空洞、男の警告がもたらされる。

 

 

「モンスターか?」

 

 

「いや、冒険者だ。それもたった1人。」

 

 

レヴィスの問いに、警告をもたらした男は「やはり来た」と憎々しげに答える。二人の周囲では、ローブに身を包んだ者達がそれぞれ嘲る声を立てている。最初こそ侵入者の存在を危ぶんでいたものの、1人でのこのこ現れた冒険者の愚かさを哀れんでいるのだろう。

 

 

「1人だからと高を括るなよ。奴の能力はかの【猛者】にも匹敵する。」

 

 

男の言葉にローブの連中は慌ただしく駆けずり回る。

 

 

肉壁の1部、月の表面を思わせる蒼白い水膜には、食人花をなぎ払いながら突き進む1人の冒険者が映し出されていた。

 

 

「敵は1人だ。お前達だけで何とかしろ。私は興味無い。」

 

 

「ぐっ!レヴィス、お前にも説明したはずだぞ!あいつ1人がどれだけ規格外か!奴とまともにやれる()()()も姿を見せない!」

 

 

「それがどうした。まさかお前の言う『彼女』から貰った体でも勝てぬとは言うまいな?」

 

 

「ちぃっ!行くぞお前ら!ありったけの食人花(ヴィオラス)で押しつぶす!」

 

 

男は白いローブに身を包んだ者達を引連れてレヴィスを残してこの大空洞から動き出した。

 

 

・・・・

 

 

「私なんかよりずっと美しくて、優しい人です!」

 

 

レフィーヤはフィルヴィスにこう言い募った。

フィルヴィスの過去を聞き、彼女自身の思いを聞いた上でのレフィーヤの本心からの言葉だった。

レフィーヤのエルフとしての誇りと、フィルヴィスへの友愛が、理屈では説明できない感情を激発させた。

 

 

「なぜそんなことが分かるっ、いい加減なことを言うなっ。私とお前はまだ会って間も無いはずだ。」

 

 

怒気を滲ませた声をレフィーヤの鼻っ面に叩きつけるフィルヴィス。

正論という名の反論にレフィーヤはことはを詰まらせるも、勢いのまま、反射的に言い返した。

 

 

「こっ、これから一杯見つけていきます!!貴方のいいところをっ!」

 

 

「・・・」

 

 

フィルヴィスはその言葉にしばらくキョトンとするが、直ぐに「くっ」と噴き出した。

 

 

「いや、すまない。()()()と似たような事を恥ずかしげもなく口にする奴が他にもいるとは思わなくてな。」

 

 

一度、崩れてしまった硬い表情は戻ることも無く、小鳥が囀るような細い笑い声を零しながら、どこか懐かしそうに昔を思い出していた。

 

 

「えっ!?えぇぇぇっ!?」

 

 

「その男と初めてパーティを組んだのは今回みたいな『即席コンビ』だった。お前も聞いたと思うが、パーティが私を残して全滅しかしていなかった。最初こそ断ったのだが、なし崩し的に組むことになったんだ。」

 

 

「凄く良い人なんですね、その人。」

 

 

「良い奴には変わりないんだが・・・一度懐に入り込むと気が済むまでグイグイと来るやつでな。私が何度『あまり関わるな』と忠告しても『僕なら大丈夫です!』やら『フィルヴィスさんが噂通りの人とは思えません!』などと言い出す始末。あの男は底無しのお人好しなんだ。」

 

 

「な、なんか、凄い人なんですね。でも!フィルヴィスさんがその人の事を大切に思っていることは凄く感じられました!私も負けていられません!」

 

 

「お、おい!私は何もそこまで言っていない!あとお前まで目指そうとするな!辞めろ!」

 

 

「ーおい、馬鹿エルフどもっ、さっさと来い!」

 

 

ベートの怒声によって、二人の会話は終止符が打たれ。リヴィラを後にしていった。

 

 

・・・・

 

 

食料庫(パントリー)ってこんな場所だったっけ・・・?」

 

 

塞がれた通路のせいで大量発生したモンスター達をなぎ払いながら奥へ奥へと進んでいき、目的の食料庫までやってきた。・・・のはいいんだけど

記憶に残ってる食料庫の景色と比べてあまりにも異様だった。

 

 

広場中央にある大主柱にはやけに見覚えのあるモンスターが絡みついており、天井からは食人花が常に生まれ続けていた。

 

 

「まさに巣穴と言うわけか・・・」

 

 

ふと食人花が産まれ落ちる壁に目を向ければそこには謎の玉が埋まっている。中は謎の胎児が入っており、これは卵なのだろうかと予測はしてみる。

 

 

「やはり食人花(ヴィオラス)だけでは不足なようだな・・・」

 

 

「・・・チッ」

 

 

「仕事をしろ闇派閥の残党ども。『彼女』を守る礎となれ。」

 

 

「言われなくとも。」

 

 

食料庫の僕がいる場所から対面に位置している場所に白いローブに身を包んだ集団がこちらに向かってきている。

 

 

「大体の予想は着いていたけど、やっぱり黒幕は闇派閥かぁ。」

 

 

今向かってきている白いローブの人達はほぼ特攻隊と言っていい。タダでは死のうとせず、悪あがきに自爆を仕掛けてくる。言ってしまえば感情の持たない生きる爆弾のようなもの。

 

 

だからこそ、僕も()()になれる。

相手を知った上で突っ込んでくると言うなら彼らに僕の魔法は知られていない。なればここからは一方的な殺戮(ショー)

 

 

「【我は汝を救おう】【生誕を祝え、祝福されし我が宝よ】ー」

 

 

僕は詠唱(うた)を紡ぎながら、彼らの元にぶつかって行く。【平行詠唱】。この魔法は敵に一切のダメージも与えられない魔法だけど、敵が何人いても効力は一切変わらない。範囲内にいる敵ならば何百人だろうと問答無用で適用される。その代わりマインド消費は激しくなっちゃうけど

 

 

「【ゾオアス・アンジュラス】!」

 

 

詠唱の完了と共に、食料庫全体に大鐘楼の音が響き渡る。

 

 

「な、なんだっ!?今のは!?」

 

 

「ち、力が!?力が入らない!」

 

 

「く、来るなぁァぁぁ!!??」

 

 

魔法でまともに回避行動を取れない残党を片っ端からはねていく。

 

 

「壊れた連中め、神に縛られる愚者ども・・・まともに刃を向けることも出来ないとは・・・食人花。」

 

 

奥の方に見た男が食人花の名を呼ぶ。すると、後方から大量の食人花が姿を表す。残党さえ巻き込んで、一気に叩こうとしたのでしょうけど、それは愚策ですよ。

 

 

「魔法の残り香に引き寄せられた食人花にとって、戦意喪失した死兵(糸の切れたマリオネット)はただの餌です。すみませんが、最大活用させてもらいますよ!」

 

 

食人花に食い散らかされる残党を尻目に、僕は男の方に向かった。

 

 

・・・

 

 

「また分かれ道か・・・アスフィ今度はどっちに?」

 

 

「いえ・・・います。」

 

 

何度目か分からない分かれ道。ルルネがアスフィに行き先を確認しようとしたとき、その先のふたつの穴から大量の食人花が出てくる。

 

 

「【剣姫】片方お任せしても?」

 

 

「わかりました。」

 

 

アスフィがアイズに指示し、もう一方の穴から出てきた食人花を託す。彼女のレベルを考慮した上で最善策だとアスフィが判断したためである。

 

 

「ではっ!」

 

 

片方をアイズが、もう片方を【ヘルメス・ファミリア】が相手をする形となった。

二手にわかれ、アイズが食人花と対峙しようとした

 

 

その時だった。

 

 

「そちらから出向いてくれるとはな。」

 

 

分かれ道の穴の奥から、赤髪の女がこちらに歩いてくる。彼女こそ、18階層でリヴィラを襲った張本人、レヴィスだった。

 

 

「本来ならば、分断したかったところだが・・・まぁいい。お前に会いたがっている奴がいる。来てもらうぞ『アリア』。」

 

 

「私は『アリア』じゃない。『アリア』は私のお母さん。」

 

 

「世迷い言を抜かすな。『アリア』に子がいる筈がない。」

 

 

アイズはすぐさま臨戦態勢になる。あの時とはレベルがひとつ上がった赤髪の女との戦闘。気など一切抜けるわけもない。

 

 

「行くぞ。」

 

 

・・・・

 

 

アスフィ達は目下の状況に戦慄を覚えていた。

 

 

白髪の青年と見られる冒険者が白いフードを被った闇派閥の残党と思しき連中を片っ端から殺していく凄惨な光景を。更にはそこに大量の食人花が次々に残党を食い散らかしていく地獄絵図が目下に完成していたのだ。

 

 

「彼は本当に・・・私たちと同じく冒険者なのですか?」

 

 

アスフィ達にも、闇派閥と戦う上で最悪の状態に陥った場合の覚悟はしているつもりだが、あそこまで無情に殺戮できることは出来ない。

人が人を嬲る目下の光景に彼女達は微動だに出来ずにいたのだった。

 

 

 

 

ベルにヒロインは

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