どこまでも真っ直ぐでお人好しな酒場の白兎   作:花見崎

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ヒロイン考えてねぇや・・・


EP19. 仮面の男

「いったい、なんなのですかあれは・・・」

 

 

アイズとは分断され、アイズだけ残したまま【ヘルメス・ファミリア】は食料庫に辿り着いたが、既に行われていた抗争という名の一方的な殺戮に足を止めていた。

まず彼女達の視界と意識を奪ったのは、食料庫の大主柱に寄生する()()()()()()()()

更に、大空洞内に存在した謎の集団。上半身を隠す大型のローブに、口もとまで覆う頭巾、額当て。集団の一人一人が()()()()()()()()()()慌てるように逃げ惑っている。侵入者のアスフィ達に気づくどころか気にする暇さえない状態だった。

その上、彼らに襲いかかる大量の食人花。モンスターの咆哮と、ローブの集団から発せられる悲鳴によって奏でられる阿鼻叫喚が響き渡る。

 

 

「食人花は奴らが調教しているんじゃないのか?どうして奴らは襲われている?」

 

 

「私が来た時には既にあの状態でした。()()は恐らく謎の魔法を撃った何者かでしょう。」

 

 

「さっきの魔法なんだけどさ、アスフィ。私、18階層で見覚えがあるんだよ。」

 

 

「ルルネ、詳細を。」

 

 

彼女達が食料庫に突入する前、彼女達は鐘の音を聞いた。無論、ダンジョン内に鐘が鳴るはずは無い。間違いなく人為的なものは明確だった。

 

 

「18階層で起きた食人花と謎の赤髪の女の襲撃を話しただろ?本当はその時、赤髪の女に襲われたんだけど、その時もあの鐘の音が聞こえたんだ。【九魔姫(ナイン・ヘル)】が言うには、あれは魔法らしいんだ。」

 

 

「魔法ですか・・・」

 

 

「詳細については分かんなかったんだけど、恐らく【能力(ステイタス)上昇】だと思うんだ。それも、広範囲に及ぶようなどでかいヤツ。」

 

 

「広範囲の能力上昇(バフ)効果なんて聞いたことありませんね・・・あの鐘の音以来やけに動きにズレがあると感じていたのはそのためですか。ですが、それだけでは彼らの状態を説明するには物足りませんね。ルルネ、他に気づいたことはありませんか?」

 

 

「そういえば、赤髪の女の動きが変だったんだ。魔法が撃たれる前までアイズとドンパチやってたのに直後逃亡したんだよ!」

 

 

「うーん・・・たしかに変だが、魔法のせいだと言い切るには少し足りないなぁ。」

 

 

「そうですね。何にせよ、今の手持ちでは決めきるには至りません。今見極めるべきは目下で闇派閥と戦っている青年が我々に味方してくれるかどうかです。実力は恐らく我々より上。あまり考えたくはありませんが、【剣姫】以上と見れるでしょう。」

 

 

遠くで闇派閥の残党を片っ端から倒し続ける青年を見て、【ヘルメス・ファミリア】は血の気が引いていく。

 

 

「瞳の色までは確認できないが、白髪の青年ヘルメス様がおっしゃってた【ベル・クラネル】なる青年ではないだろうか?」

 

 

「確かに風貌は一致しています。ヘルメス様の言う通りであれば、我々に力添えしてくれるでしょう。ですが、我々の中で彼を知るものが居ないのも事実。」

 

 

「私はアイツに賭けてみてもいいと思う。」

 

 

「・・・行きましょう。彼が我々の味方であろうと、敵であろうと、このまま進まなければ我々の目的は果たされません。」

 

 

「あぁ、そうだな。このまま後退しても無駄足なんだ。だったら正面突破あるのみだ。」

 

 

「あの【剣姫】だって頑張ってるのよ!私達がここで逃げたら彼女に笑われちゃうわね。」

 

 

アスフィの決断に【ヘルメス・ファミリア】全員が腹を括る。

 

 

「残党は彼に任せましょう。まず私たちは食人花を警戒しながら距離を詰めます。この役は前衛に任せます。距離を詰めたあとは彼らの動きを伺いながら中衛の後に下がりなさい。中衛は接敵後前に出て交戦。最悪の場合死体で構いません。可能であれば敵一人を捕縛しなさい。後衛は合図するまで魔法・魔剣は禁止、回復薬の準備を。」

 

 

アスフィは改めて陣営の指揮を伝えていく。最後にセインの提案でアスフィは後方で全体を見据える形に置く。

 

 

「かかりなさい!」

 

アスフィの号令とともに前衛を先頭として、集団にぶつかりに行く。残党の方は彼女たちに気づいていないのか、はたまた対応する余裕もないのか、何かに怯え、逃げ惑い、斬られ、食い散らかされるだけだった。

 

 

「アイツら、おれたちにみむきもしねぇな。」

 

 

「むしろ好都合じゃない。食人花だけでも面倒なのに、残党まで相手するなんてごめんよ。」

 

 

「そういえばさ、みんなって【ベル・クラネル】についてどこまで知ってるんだ?」

 

 

「・・・あぁ、ルルネはあの抗争の時は外にいたから知らないんだったな。」

 

 

静かに距離を詰めながら【ヘルメス・ファミリア】のパーティは食人花を狩っていく。とはいえ、食人花は彼らに見向きもせずに残党集団に襲いかかっていく。

 

 

「俺も詳しくは知らないんだが、どうもベル・クラネルに関する良い噂は聞けなかった。」

 

 

「へぇー。」

 

 

「さて、もうすぐそこだ。引き締めろよ。」

 

 

大した障害もなく、パーティ全員が集団と合流する。

 

 

「・・・」

 

 

ベル・クラネルは【ヘルメス・ファミリア】の方を一瞥だけすると、声もかけず一人白いローブの集団を追い抜き、その向こうにいる男にひたすら向かっていく。

そんな彼を追い抜くように、飛翔するアスフィに気づくことも無く。

 

 

・・・・

 

 

後方から【ヘルメス・ファミリア】の人達が入ってきたのは気づいていた。それでも僕がやることは変わらない。敵意を無くし、恐怖と逃亡しか頭にない奴らを全員倒すのみ。

とうの昔に置いてきた()に対する慈悲は置いてきた。

餌に釣られた食人花に食い散らかされるか、首を飛ばされるか。彼らの未来はこの2つしかないのだ。

 

 

「キリがないっ!」

 

 

何人斬ったところで、湯水のように湧き出てくる残党は増え続ける一方。やはり頭をうたなければ問題解決にはならない。ならば、ここは彼らに託そう。ここまで問題なくやってこれたんだ。それならこの場を凌ぐことも大丈夫なはず。

 

 

「愚かなるこの身にしゅくぐわぁぁぁ!!!!」

 

 

僕の魔法では自爆までは防げない。ならどうするか、自爆するより前に奴らの息の根を止める。何より確実で効率が良い。

視界の隅に捉えた【ヘルメス・ファミリア】の人達はもうすぐこにらと合流できる。後は、一言だけ断りを入れておこう。舞台は整えたものの、押し付けるのは失礼だ。

 

 

「すまないが、君はベル・クラネルで合ってるか?」

 

 

「は、はい!ヘルメス様から話は聞いています。【ヘルメス・ファミリア】ですよね?」

 

 

「あぁ。主神様から是非とも頼ってやってくれと言われてる。今日あったばかりで信頼してくれなんて言わないが、力を貸してくれ!」

 

 

パーティの前衛にいた獣人から共闘を持ちかけられる。こちらとしても、変に敵を増やすのは本意ではないのでこれを蹴る必要性はない。

 

 

「白いオーブの人達は任せてください!なので、ここは任せて良いですか!」

 

 

「あ、あぁ。それは構わないが、何をするつもりだ?」

 

 

「頭を叩くんですよ。奴を潰せば面倒な食人花は統率の取れないデカブツと化します。そうなれば後は戦意喪失した白いローブの集団とモンスターのみです。」

 

 

「あ、あぁ。頼む。」

 

 

彼らが頷いたのを確認して、僕はローブの集団の脇を過ぎていく。即席パーティを組むよりは分担した方が効率がいい。何より、動きやすい。

後ろを彼らに託して僕は1人、集団を避けて仮面の男に近づいていく。

 

 

・・・

 

 

「貴様は何度私たちの邪魔をすれば気が済むのだ!」

 

 

「掃除ってのは綺麗サッパリ片付かない限り終わらない。違うか?」

 

 

アスフィさんから流れ出る血の滴が地面に血溜まりを作っていく。早めに手を打たねば間違いなく死ぬ。

 

 

「お前、知っているぞ。6年前、"27階層の悪夢(あの計画)"の生き残りだろう?そして、私たちの同類(仲間)でもある。」

 

 

「仲間?お前たちみたいな非道と一緒にされたくはないな。」

 

 

「同じであろう?貴様は今まで何人の残党共を葬ってきた?」

 

 

「何度も言わすな。殺戮ではない、あれはただの掃除に過ぎない。」

 

 

「何も変わらないではないか。いや、これ以上言い合っていても何も進まない。いずれにせよ貴様らを葬ることは変わらない。」

 

 

 

 

 

ドゴォッ

 

 

 

 

僕達が立つはるか後方。食料庫の入口から破砕音と共に1人の獣人が姿を現す。

 

 

「なんだと!!?」

 

 

「もういいだろう・・・【暴発(スフォゴ)】。」

 

 

ここから大詰めと行こうじゃないか。

 

 

・・・

 

 

いつも、都合の悪い真実は大きな力によって書き変わるものだ。

【27階層の悪夢】は事実とは全く異なる虚偽が広まっている。

共通認識である【27階層の悪夢】を惨劇と言うならば、真の【27階層の悪夢】は言うなれば『誕生の奇跡』。

産み出されてはならない怪物が世に放たれるきっかけを作った悪夢と呼ぶべき最悪の奇跡に他ならない。

 

 

『私ノ願イヲ叶エテ。』

 

 

『犠牲なくして英雄はなれない・・・か。なってやろうじゃないか!英雄の(生贄)に!』

 

 

誰も知らない。誰にも語られない。たった1人命を賭した男の物語。

 

 

 

 

 

ベルにヒロインは

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