一度発せられた音源は一定期間その空間に残り続ける。ベルの音の魔法もまた同じ特性を持っていた。
彼の魔法は範囲内にいる味方の能力を最大限まで引き出せる。
スキルによる
範囲魔法といえば聞こえはいいものの、補正スキルを持つ冒険者にはほぼ無意味であり、勝てない相手に勝てるようになる訳では無い。
ならば、この魔法の強みとはなんなのだと問われれば、それこそ
かすり傷から骨折まで、時間をかければ治すことが出来る傷ならば、ものの数分で完治してしまう。
更にこの魔法は敵にも効果が付与される。
内容は敵の戦意剥奪。ステイタス上の変化はゼロ。だが、"味方"に対する戦意を抱いた瞬間、それは全て消滅しその場にへたりこんでしまうのだ。
音による魔法のため、防御魔法は意味をなさない。響き続ける音と光は全身に染み渡る。
その上、スペルキーを発動すればもう一度効果を発動可能。一度魔法を付与した敵味方全員を対象にもう一度発動できる。
全体治癒×バッドステータス付与。一度でもこの魔法を撃たせてしまえば、たちまち一方的な殺戮が始まる。
「アスフィ達の怪我が癒えていく・・・」
「アスフィ達だけじゃないわ。ここにいる全員の怪我が治っていく・・・」
「闇派閥の奴らが逃げ腰なのは気になるが、後回しだ。それより、めんどくせぇ奴らがいやがる。おい、時間は稼いでやる。
後ろにいたレフィーヤか詠唱を始める。魔力に反応した食人花が一斉に襲いかかるも、全てベートによって蹴散らされる。
「【雨の如く降りそそぎ蛮族どもを焼き払え】!【ヒュゼレイド・ファラリーカ】!!」
広範囲にわたる炎属性の攻撃魔法。数百数千にもわたる炎の矢が食料庫に蔓延る食人花を一掃する。
「お前・・・確かレフィーヤだろ!?」
「ルルネさん!?」
「おいっアイズはいねぇのか!?答えろ!」
「け・・・【剣姫】はさっきまぇ私達と一緒にいたんだけど・・・」
「【
「アスフィ!?無事なの!?」
「え、えぇ。私にも良くはわかりませんが。傷は完全に塞がっています。」
「俺らはアイズを連れ戻しに来ただけだ。てめえらの用事なんざ知らねえが、アイズはどこにいる!答えやがれ!」
「生憎と我々は【剣姫】と分断させられた結果ここにいます。ですが、恐らくはあの謎の男が関係しているのは間違いないでしょう。こんな形ではありますが、力を貸してくれませんか【凶狼】。」
「ちっ・・・面倒くせぇがやってやる。アイズのこともあるが・・・あの野郎の眼も気に食わねぇ。」
「それにしても、この惨状はどういうことでしょう?どうして闇派閥の方々はあんなに逃げ回っているのでしょうか?聞いた話では彼らが操っているのですよね?」
「・・・うん。その通りなんだけど、私達が突入した時には既にあの状態だったんだ。私達も全く分からないんだよ!」
「・・・やはり来ていたか。」
「え?」
「行くぞウィリディス!我々で援護する!」
「は、はい!!」
・・・
「オリヴァス・アクト・・・!?」
何故だ・・・なぜお前がここにいる!?
「お前は確かにあの時
「生きていたのですか・・・」
「いや、死んだ。紛れもなく、貴様の手によって私は死に追いやられたのだ。・・・だが死の淵から私は蘇った。」
破れた服から見えるやつの下半身はとても人間のそれとは異物。そこから導かれる答えは一つ。
「私は二つ目の命を授かったのだ!他ならない『彼女』に!!」
やつの胸に埋め込まれているのは極彩式の魔石。本来モンスターにのみ存在するそれはやつが人外であることの何よりの証。
「人とモンスター。二つの力を兼ね備えた至上の存在だ。」
「・・・ざけんな!ふざけんなよっ!!闇派閥の残党が今度は半分モンスターになって調教師のマネごとか!?」
「私をあの様な残りカス・・・神に踊らされる人形と一緒にされるとは心外だな。ましてや調教などという児戯と同列に見られるとは・・・食人花も私も全て『彼女』という起源を同じくする同胞!『彼女』の代行者として私の意思にモンスターどもは従う!!」
「・・・何故です。なんでそんな事を!?」
「迷宮都市を滅ぼす。」
迷宮都市とはいわば大きな『蓋』だ。モンスターが跋扈するダンジョンからモンスターが出てくるのを食い止めるための唯一の砦。それが失われてしまえば地上はモンスターで溢れかえってしまう。
「私は理解した上、自らの意思でこの都市を滅ぼす!!全ては『彼女』の願いを叶えるために!」
「とにかくてめぇは大人しくくたばれ。回復の時間かせぎにベラベラしゃべりがって。 どうせもう碌に動けやしねぇんだろ。」
「見抜いていたとは恐れ入る・・・私を生かそうとして下さる『彼女』の加護は未だこの身には過ぎた代物・・・貴様の言う通り今の私は碌に動けん。」
「ー
「やれ。
食料庫中央の主柱に巻きついていた一体の触手型モンスターが倒れ込んでくる。推定さえできない巨躯による押し潰し。巻き込まれれば間違いなく死ぬ。
「散れぇ!!」
いち早く反応したベートが叫ぶ。その甲斐あってか、なんとか全員が巻き込まれることなく済んだが、あくまで倒れ込んだだけ。巨大な怪物はちり紙程度の冒険者を蹴散らすために暴れ始める。
「ふはははははっ!!行け巨大花!この神聖な空間に足を踏み入れた冒険者どもを根絶やしにしろ!!」
「オリヴァス・アクト!!」
ベートは巨大花の対応に周り、オリヴァスと対峙する冒険者はフィルヴィスに交代する。
「あれだけの惨劇を引き起こしていながら今日までのうのうと生きていたのか貴様は!?お前のせいで仲間はっ・・・
「・・・ああお前か。思い出したぞ、折角助けに来てくれたお仲間をむごむごと窮地においやるような臆病者め。そんなだからお前は『彼女』に選ばれなかったのだ!お前には最初から
「ふざ・・・っけるな!!お前だけは・・・私が倒さねばならない!」
「相手をしてやってもいいが、同胞を放っておいていいのか?エルフの娘よ。」
・・・
一時期、冒険者達から私はそう呼ばれていた。
同胞からは公然とそう罵られた。
心が痛むことは無かった。
それは事実だから。
私は”汚い”のだから。
そんな私を最初に救ってくれたのは『ベル・クラネル』だった。アイツは本当に不思議な男だった。
いくら私から拒絶しようと、奴は一切折れようとしなかった。『フィルヴィスさんは凄くいい人ですから。』などと恥ずかしげもなくあそこまで言い切れる奴はデュオニュソス様だけだと思っていた。
『大丈夫です!僕強いんで死にません!』
一切裏がなく、本心から放たれる彼の言葉は、汚れていた当時の私の心を少しずつ溶かしてくれたのだ。
もし、彼のの出会いが
そして、もう1人私のことを綺麗だと言ってくれたウィリディス。
『貴方は汚れてなんかいない!私なんかよりずっと美しくて優しい人です!!』
その言葉に
アイツと同じ言葉に私は2度も救われた。
何の因縁もない。初対面のお前の言葉だからこそより救われたんだ。
だから
お前だけは絶対に!私が死なせはしない!!
「ウィリディス武器を!」
「は・・・はい!」
・・・
あの日の更新を最後に、僕のステイタスが変わることは無かった。
もう二度と、ステイタス更新はしないだろうと決めたのだからいずれにしろ・・か。
魔法に自信がないわけじゃないけど、どうも先にあんなどデカい一発見せられちゃったら自信なくしちゃうよ・・・
長文詠唱は余裕ないから簡単に済ませよう。
「【
借りるよ、お義母さん!