「てめぇ、どこのファミリアだ?」
24階層の事件は解決した。事件の発端だった闇派閥の残党は全滅。オリヴァスはレヴィスに喰われ、消滅。魔石により強化された彼女は歯止めが効かず、ベートさん達上級冒険者に任せっきりになってしまった。
結果として、レヴィスは取り逃してしまったものの、犠牲無くして幕を降ろす結果となった。
「・・・」
「答えられねぇのか?」
「ちょっと!ベートさん!私たちに手を貸して貰ったのですからそういうことを聞くのは野暮じゃあ・・・」
「だってそうじゃねえか。あの仮面野郎とまともにやり合えるのに名前も聞いたことがねぇ。不自然じゃねえか。」
「おい
「・・・チィッ。」
この場はフィルヴィスさんのおかげで収められたけど、今思えば派手に動きすぎたのかも・・・
「色々と聞き出したいことはありますが、ヘルメス様から言及はしないようにとの言伝ですので私からは何も。ですが、力添え感謝します。」
「いえ、こちらこそです。貴方達が来てくれなければ苦戦を強いられていたでしょうし。」
「ヘルメス様に振り回される同士、また手を合わせることになるでしょう。」
「・・・あまり呼び出されるような事件が起きないで欲しいですけど。」
「えぇ。ですが、何ひとつとして元凶は倒せていない。」
「にしてもさー、誰だったんだろうなあの仮面の奴。」
崩落する寸前、突如姿を現した黒いローブを被った仮面をつけた誰かが埋もれていた
「ヤツがエニュオと読んでいたところからも我々の敵と見て間違いないでしょう。加えて報告しておきます。」
僕達は神妙な面持ちで食料庫を後にした。
・・・
「シルさん?」
「あちゃー、バレちゃいましたか。」
24階層の事件は死傷者も出ずに戻ってくることが出来た。ただ、やけに派手に動きすぎたのかもしれない。
1人になりたい時、僕はここを訪れる。街全体を見下ろし、夜風に当たりながら何も考えずにただ時を過ごしていられるから。
「バレちゃいましたかって・・・どうして着けてきたんですか?明日もお店の仕事とかあるでしょうに。」
「大丈夫です。それに、ベルさんを放っておけませんから。」
いつものような笑顔のまま告げるシルさん。5年前、僕を助けてくれたあの日から、何かと僕と絡むことが多くなっていた。
「シルさんって、僕に構うの好きですよね。」
「そんな事ないですよ?ベルさんはもちろん、アーニャ達や酒場に来て下さる皆さんと話すこと自体、私が大好きなことです。」
シルさんは酒場に来てくれた冒険者やオラリオに住んでいる一般の人達。強いては神様達まで、実に沢山の人達に顔が利いている。
「でも、ベルさんが
「・・・え?」
シルさんが突然発した言葉に僕は声が出せないでいる。今この子なんて言った?
「私にとってベルさんは特別な存在なんです。そう、誰よりも。」
「えっ、でもシルさんにはアルが・・・」
「確かにアルさんにもすごく興味はあります。そう、例えるとしたら初めて親から真っ白な自分だけのキャンバスを貰った子供を見つめる親になったような気持ち。まだ何色にも染められてないキャンバスがどう染められていくのか。言ってしまえば興味が湧いえしまったんです。」
「そ、そうなんですね。」
「それに、最初はベルさんから構ってくれたじゃないですか。忘れちゃったんですか?」
「そ、そうでしたっけ?」
「忘れちゃうなんてひどーい。私すごく嬉しかったんですからね!」
本当に、彼女はどこまで僕のことを見透かしているのだろうか。
「ベルさん。」
いつもの笑顔から一転、真剣な顔付きでこちらを見つめてくる。こういう時のシルさんはすごく確信を着いてくるから緊張してしまう。
「はっ、はい!」
「疲れてませんか?」
「えっ、えーっと・・・それは、まぁダンジョンから帰ってきたばかりですし。多少は・・・」
「いえ、体力的のお話ではありません。精神的に疲れていませんか?」
そう言われて、改めて自分の体を顧みる。7年前、お義母さん達を追ってオラリオに戻ってきたあの日から、闇派閥の殲滅に明け暮れる日々。壊滅させた後でも、この戦いから開放されることは無い。
ウラノス様の命で奴らの残党が関わると見られる事件に駆り出される日々。
椿さんの付き添いや、リューさんとの手合わせやシルさんに振りわされる方が幾分か救いだったほど。
「ベルさんは、全てが終わったあとはどうなされるおつもりですか?」
全てが終わったあと。つまりは闇派閥との因果をたった後。ここにいる意味がなくなったその時。僕はどう動くだろう。
「実の所僕にも分かりません。オラリオの追放か、はたまた用済みと切り捨てられるか。何にせよ、僕はオラリオに居られないでしょうね。」
本来ならばオラリオにいることさえ許されていないのだ。ここに滞在することを許可する代わりとして出された条件が達成された以上、僕がオラリオに長居する道理はない。
「酷い!手伝うだけ手伝わせたのに全てが終わったら捨てるだなんて!」
「元々僕はギルドにとって危険人物だった。そこを無理を聞いてもらってまでたされた条件が、神ウラヌスの手伝いです。それが果たされたならば、ギルドにとって僕は邪魔者になるだろう。」
本当なら7年前にとうに落としていた命。オラリオを守るために果てるのならば本望だ。
「もし、もしでしたらでいいんですけど。もしベルさんが開放された時、少しの間でいいので私に付き合って貰えませんか?」
「え?今じゃなくてですか?」
「はい。今のままでは何かと動きにくいでしょう?何より、今から悲しい結末を想像するくらいでしたらその先に楽しい未来を考えた方がいいと思いまして。」
「いや・・・いえ、そうですね。もし、その時になったらどんなことにでも付き合いますよ。最強の騎士様に殺される前にね。」
「ふふっ、楽しみにしてます。」
いつになるか、そもそも守れるかどうかも分からない約束だ。それでも、これか先のイバラの道のような未来に、一輪のきれいな花を咲かせようとしたってバチは当たらない・・・かな?
「ありがとうございました。色々と吹っ切れた気がします。」
「ベルさんのお役に立てたのなら私も嬉しいです!」
「それじゃあ帰りましょうか。そろそろ帰らないとミアお母さんに怒られちゃいます。」
「そうですね。」
どこからか突き刺さる殺意の視線に目を背けながら、僕達は帰路に着いた。