どこまでも真っ直ぐでお人好しな酒場の白兎   作:花見崎

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ロリ女神はちらほらいるけどショタの男神っているんかな?


ニョルズ様

「おじさん!野菜買いに来たよ!」

 

 

「よぉ坊主、【豊穣の女主人】の服も様になってきたじゃねぇの。」

 

 

「はい、おかげさまで。」

 

 

ある程度仕事になれてくると、シルさんのお供なしでも任されるようになった

たくさんの仕事量を5人で分担してこなしていく必要がある

 

「ところでいつもの嬢ちゃんは居ないのかい?」

 

 

「ははは、ふられちゃいました。」

 

 

シルさん曰く、良い関係を築くには会話が大切なのだと

 

 

「おっしゃ!おじさんからサービスだ!シルちゃんにもよろしく伝えてくれな!」

 

 

「おじさんこそいつもありがとうございます!」

 

 

頼まれた野菜を袋詰めしてもらって、店主と軽い挨拶を交わして店を後にしていく

 

 

「それにしても・・・」

 

 

さっきから誰かに見られてる気がする

数は2つ、それも極限にまで気配を殺した暗殺者の眼

 

 

「心当たりは・・・闇派閥(イヴィルス)だよね。どう考えても。」

 

 

今までも何度か、夜襲に遭ったことはある

問題なく返り討ちにしできたけど、今回は明らかに違うものだった

 

 

彼らが易易出向くとは思えないから今まで通り雇われ者なのは確か

それでも、今回の()()とは違っている

 

 

「今回はやりにくそうだ・・・」

 

 

今日も蒼き穹はどこまでも澄み渡っていた

 

 

・・・

 

 

「ただいま戻りました!」

 

 

その後も大きなことも起きず、【豊穣の女主人】へと戻ってきた

 

 

「おかえりなさいベルさん。お客さんが来てますよ?」

 

 

シルさんの目線の先、窓際に設けられていた席の1つ

そこに1人のヒューマンが座っている

 

 

「ミアお母さんには私から伝えておくので待たせないように言ってきてください。」

 

 

買い物袋をシルさんに渡してシルさんに呼ばれた場所へと向かっていく

 

 

「すみません、お待たせしました。」

 

 

「いえ、大丈夫です。ここの料理美味しいですし!」

 

 

「・・・とりあえず本題に入りましょう。まどろっこしいのは無しです。要件を教えてください。」

 

 

オラリオ広しといえど、僕の名を知るものは限られている

ましてや、ここで働いていることを知ってるひとはそれこそ指でこと足りるほど

人手不足で臨時のウェイターとして駆り出される事はあるけど、それは()()()()()()ベル・クラネルの呼び出し

【ベル・クラネル】として呼び出された場合はほとんどがヘルメス様からの無茶振りがほとんどだった

なので今回もその類のはず

 

 

「ブルーノ商会を探って欲しいと。」

 

 

「探って欲しい?捕縛とかではなく捜査?」

 

 

「はっ!はい!へ、ヘルメス様が『【豊穣の女主人】で働いているベル・クラネルに伝えといて☆』とおっしゃって・・・」

 

 

「・・・」

 

 

やっぱりあの神様1回殴ってみようかな

アスフィさん達の恨みもついでに込めて・・・

 

 

「団長に頼んだら死んだ魚の様な目で睨まれたらしくて・・・」

 

 

「暗黒期が終わってもあそこは忙しそうだね。」

 

 

「ヘルメス様にいいように使われてるだけな気がするけど・・・」

 

 

労基(ギルド)にでも駆け込んでみたら?」

 

 

「あの人達がまともに受けてくれるとも思わないけど?」

 

 

「デスヨネー。」

 

 

蜂起運動(ストライキ)の方が案外効果的なのでは?

 

 

「ところでところでベルさんや。」

 

 

「どうしたんじゃ婆さんや。」

 

 

「とある女神様から聞いた話なんだけどさ。ベルってあのフレイヤ様を()()()()()()()()ってほんと?」

 

 

「ぶっ!」

 

 

危ない危ない、突然過ぎて口の中のものをぶちまける所だった

そんなことになったら色々とマズイ!

 

 

って、そんなことよりな誰ですかそんな噂流したの!

この子純粋なんだから信じちゃうじゃん!

 

 

「ベルってすんごーく奥手そうに見えてもやっぱり狼だったんだね。それも相手があのフレイヤ様だなんて。」

 

 

「ち、違うからね!?マリー!?僕そこまでやり手じゃないからね!?」

 

 

「大丈夫!ベルがどんな人でも私は君の味方だから!」

 

 

あぁ…ダメだ、やっぱりこの子人の話を聞いてくれない!

いや、まぁ・・・啼かしたというか、思い当たる節は無くはないんだけど

泣かした、というか泣かれたというかなんというか・・・

 

 

「まっ!ベルいじりはこれくらいにして。用事も済んだし私はこれでおいとまさせてもらうよ。」

 

 

「うん、ありがとう。」

 

 

【豊穣の女主人】を後にする彼女を僕は手を振りながら見送った

 

 

「なんだい、もう終わったのかい?ならさっさと戻りな!」

 

 

「は、はい!」

 

 

・・・・

 

 

「あれがベル・クラネル・・・」

 

 

依頼者からの情報を頼りに【豊穣の女主人】を訪れた

ギルドからも彼に関するまともな情報はなかった

 

 

レベルは5、それも10年以上も前のものなので低く見積っても現在レベル6

所属ファミリアは【ゼウス・ファミリア】

 

 

分かっているだけでも彼の強さを証明するには十分すぎた

 

 

「どうしてオラリオの冒険者って強い人ばっかなのよ・・・」

 

 

オラリオの冒険者と戦ったことは何度かあるけど、そのほとんどが苦戦か失敗に終わっていた

その中でも彼は別格なのは明白だった

 

 

「やっぱり断ろっかなぁ。でも、最後って決めたもんなぁ・・・」

 

 

最初は路銀稼ぎで始めた賞金稼ぎも今じゃ苦行に変わっていた

強い標的を倒せば、噂は広まりまた新しい依頼が迷い込む

終わりのない悪循環だけが巡っていた

 

 

「最後に、ぶつかって散るってのも悪くないのかも。どうして酒場でこき使われているのかは謎だけど・・・」

 

 

それでも、ちゃんとした居場所を見つけられた彼を羨んでるのかも

 

 

・・・・

 

 

「ベル・クラネル?」

 

 

「そうニャ、そいつがミャーの最後のターゲットニャ。」

 

 

何故かオラリオを訪れていたニョルズ様にお願い()して更新を頼んだのニャ

 

 

「俺はお前の暗殺術含めて腕は認めている。だがな、()()()だけは辞めておけ。」

 

 

「あ、珍しくニョルズ様が真剣な顔してるニャ。明日はきっとビヒーモスでも復活するニャ。」

 

 

「縁起でもないこと言うんじゃない!・・・なんにしろ、お前は今回の件から降りろ。」

 

 

「残念だけどそれは出来ないニャ。今回はミャーが最後だと決めた以上はやりきるつもりニャ。」

 

 

「お前がそこまで言うのなら止めはしねぇよ。でもな、アイツだけは関わらない方がいい。いい噂は聞かないぞ?」

 

 

「それはニョルズ様が闇派閥(そっち)寄りの神様だからニャ。」

 

 

「うぐっ、それを言われると辛い・・・」

 

 

ニョルズ様は港町(メレン)の方で闇派閥(イヴィルス)と交流があるニャ

 

 

「武器は短剣だったり大剣だったり、魔法だったりで決まってないらしい。それもとんでもない強い使い手らしい。それこそ、【猛者(おうじゃ)】に負けないくらいにな。」

 

 

「辞めるニャ、暗殺する前から気が滅入るのニャ。」

 

 

標的が規格外なのは最初から承知の上、肝心なのはいかに対峙せずして確実に仕留められるか

その点だけに関しては暗殺者とさては利があった

 

 

「なあ?お前、疲れてるだろ?」

 

 

「こんなご時世だから、仕方ないのニャ。」

 

 

「お前さえよければ、俺の【ファミリア】に来るか?それこそ、今回の仕事が終わって、真っ白になった時にでも。」

 

 

「何ニャ?美しいミャーの虜になって、ミャーが欲しくなってしまったのかニャ?」

 

 

「ああ、そうだな。そういうことでいい。お前のような可愛い女手が入れば漁師達も喜ぶだろう。何より、俺達も色々と危ないことやってるんだ。用心棒くらい欲しくなっちまうのさ。」

 

 

「・・・ニョルズ様はいい神ニャ。イケメンだし、身長高いし、子供思い。美少年の神様じゃないけど、きっといい【ファミリア】ニャ。」

 

 

「・・・」

 

 

「けど・・・」

 

 

ここで一言断る。それだけで済むはずだった

人殺しをやめた猫が魚に夢中になって改心なんて、滑稽だニャ

 

 

それだけ伝えれば、神のいいニョルズ様は身を引くはずだニャ

それにゃのに、いざ口に出そうとした時、【豊穣の女主人】での光景が蘇った

 

 

「そうだニャ、考えておいてやるニャ。」

 

 

「・・・そうか。」

 

 

ニョルズ様は最初豆鉄砲食ったような顔をしてたものの、直ぐにいつものイケメン顔に戻って、一言だけ呟いていたニャ

 

 

「クロエ、最後に一つだけ聞いてくれるか?」

 

 

「なんニャ?」

 

 

「死んでも死ぬなよ?」

 

 

「誰に言ってるニャ。」




ベルきゅんの名誉のために補足しておきますが、決してベルきゅんとフレイヤ様との間に変な関係はありません。


えぇ、決してありません。あってはなりません。どこかの女神が般若の顔で襲いかかってきます死んでしまいます

ちなみにマリーにこの情報を吹き込んだのはヘルメス様の入れ知恵です

罪な男よ

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