幕間 阻害要素
「(君は確かに駆け出し冒険者とは思えないほどに強い・・・でも、何故だろう。その力を阻害している
オラリオを囲む城壁の上、人や神がオラリオ内や壁外の様子を見れるような通路として整備されているその場所で、2人の冒険者が剣を交えていた。
訓練とは名ばかりの、明らかな一方的ないじめとも思える決闘は、まだ日が登り始めた早朝から始まっていた。
「どうしましたか?アイズさん。」
「ちょっと1回休憩しよっか。」
「え?でもさっき始めたばっか・・・」
「休憩、しよ?」
「・・・はい。」
上級冒険者の圧に押され、渋々とその場に正座する白髪のヒューマン。レベル1の彼ではどう転んでも戦闘で敵うはずは無い。それでも、アルは彼女との戦闘で少しづつでも確かに力をつけてきていた。
「君は強いよ。余り誰かに教えたことは無いから上手くは言えないけど・・・同じレベルの子と比べても上の方に入ると思う。」
アルが冒険者になってから約1ヶ月。彼の成長速度は著しいものだった。他派閥のアイズの目からもその異様さは明らかだった。
「あ、ありがとうございます。」
「・・・でも。」
アイズの微笑みから一転、少し険しい顔をしだす。
「君はどこか何かを無意識に恐れてる。成長するのが怖いとか、モンスターと対峙するのが怖いとかとは別の・・・神様の言う
人が生きるために恐怖感は大切である。人が恐怖を忘れる時は無謀に走る時だけだ。恐怖を完全に消し去ることは勇敢に立ち向かうことではない。
恐怖があるからこそ、人はモンスターと戦い続けられるのだ。
「この前私は君に臆病者だって言ったよね?」
「はい。僕が何かに怯えているとも教えていただきました。」
「私も詳しくは分かんないんだけど、多分その怯えている
アイズの目に少年は2つの姿が見えていた。何かを目指そうと努力をし続ける彼と、何かに怯えて成長を恐てしまっている彼。
どちらも同じアル・クラネルであり、だからこそお互いに阻害しあい彼自身に悪影響を与えてしまう。そうアイズは捉えていた。
「今の君の成長速度は確かに早い。けど、どこか伸び悩んでるように見えるの。もしかしたらだけど、その何かが阻害してるんだと思う。」
「えっ、えーっと・・・つまり?」
「君がもっと強くなりたいならその劣等感を捨てること。今すぐにとは言わない。けど、今のままだと必ず転んじゃう。」
「1体どうすれば・・・」
「私は君じゃないから何が起こったのかは分からない。でも、因果というのはそんなに直ぐにどうこうなるものでは無いよ。その時は必ず来る。」
「それなら、それまでに強くなる必要があるってことですね?」
「うん。それじゃ、続き。しよっか。」
「お願いします!」
・・・
「ところでアルはさ。」
「何でしょうか?」
「確かオラリオに来る前に誰かから師事を受けてたって言ってたけどどんな人だったの?」
「どんな人かって言われると困りますね・・・結構昔のことで記憶も曖昧で。」
「そっか。」
「顔とかは思い出せませんが、凄く怖い人だったことだけは覚えてます。」
「・・・」
その瞬間、アイズの頭に光るものがあった。
「ア、アイズさん?」
「もしかしたら、アルが恐れているのはその人だと思う。」
「え?いやいやでも顔もまともに覚えてないんですよ!?」
「ううん、ダメ。1度恐怖を感じたらそれは体にずっと残るから。」
あからさまに顔が青ざめていくアイズにアルはただただタジタジになるだけだった。
「(これって実体験だよね・・・絶対。)」
・・・
「うニャー・・・・」
「サボってないで働けアホ猫!またミアお母さんにドヤされるよ!」
「ルノアは何も感じなかったのかニャ?」
「またそんなデタラメ言って!ほらさっさと仕事に戻った戻った!」
「いいから待つのにゃ!さっきから誰かに見られてる気がするのニャ!」
「一体誰がアーニャなんか見るのよ・・・」
「ふっ、オラリオがついにミャーの美しさに気がついたのにゃ。美しいって罪だニャー。」
「いや、それだけは無い。で?その視線の主とやらは見つかった?」
「それがミャーが外に出た瞬間消えちゃったニャ。きっと『きゅーきょく』の恥ずかしがり屋ニャ!」
「全く。ほら!さっさと仕事戻った戻った!」
「ニャァー・・・」