どこまでも真っ直ぐでお人好しな酒場の白兎   作:花見崎

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EP.3 作戦実行

今から僕たちが向かう先は、『エルドラド・リゾート』

 

 

 

 

オラリオ南部、繁華街にある大賭博場(カジノ)の中でも娯楽都市(サントリオ・ベガ)最大賭博場(グラン・カジノ)である『エルドラド・リゾート』

 

 

 

 

そこに向かうため、僕たち4人は馬車に乗っている

 

 

 

 

「とりあえず今のうちに今回の作戦について確認しておきます。今回、潜入するのはオラリオに幾つかある中でも最大賭博場(グラン・カジノ)に当たる『エルドラド・リゾート』です。そこに買われたそうです。」

 

 

 

 

「手口から考えても経営者(オーナー)のテリー・セルバンティスが糸を引いてることは間違いないでしょうね。まったくあのドワーフも懲りないものねー。」

 

 

 

 

リューさんの言葉にアリーゼさんが続き、うんざりした顔で告げられる

 

 

 

 

 

「お2人ってそのテリーさんとお知り合いなんですか?」

 

 

 

 

「知り合いも何も【アストレア・ファミリア(私達)】は彼を1度捕まえてるのよ。ただ、その時は彼の嘆願に免じて許しちゃったのよねぇ。」

 

 

 

 

「なので今回は【アストレア・ファミリア(私達)】とは別の協力者が欲しかったのです。ご協力感謝します。」

 

 

 

 

リューさんが座りながらも感謝を述べてくる

 

 

 

 

毎度の事ながら律儀な人だと思う

 

 

 

 

「いえいえっ、確かにシルさんから頼まれた時は驚きましたけど。僕もあの両親や娘さんも助けたいと思いましたから!」

 

 

 

 

「コホン。とりあえず話を戻しますが、アンナさんを取り戻すには経営者(オーナー)がいる貴賓室(VIPルーム)に招かれる必要があります。そのためにも目立つ必要があります。羽振りがいい所を見せつけ、上客になると分かれば、いずれあちらから接触をしてくるでしょう。」

 

 

 

 

「そのためにも多く勝って元金を増やす必要があるわ。」

 

 

 

 

「テリーに顔が割れてしまっている私達では警戒されてしまう恐れがある。そこで貴女方の手を借りたいのです。」

 

 

 

 

「大丈夫ですよ。ベルさんの運は酒場でも評判ですもん。ね?」

 

 

 

 

し、シルさん!??そんなプレッシャーいきなり!?

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

最終確認を終え、怪しまれない程度に話し始めた頃、馬車が動きを止める

 

 

 

 

「いよいよ着いたようですね。」

 

 

 

 

「それではまず私から降りますので次にクラネルさんから降りてください。」

 

 

 

 

今回リューさん達は僕達のボディーガード役になってる

 

 

 

 

扉に1番近いリューさんがまず降りて続く形で僕が降りてシルさんを降ろして最後にアリーゼさんとなってる

 

 

 

 

「あ、シルさん。足下気をつけて。」

 

 

 

「ありがとうございます。」

 

 

 

 

この先、僕達はマクシミリアン夫妻としてなりきらなきゃいけない

 

 

 

いつ誰が見てるか分からない上に本物のマクシミリアン夫妻は初めて呼ばれたらしくて、嫌でも視線をあつめちゃう

 

 

 

 

下手な真似だけは避ける必要があるんだ

 

 

 

 

「それでは向かいましょう。」

 

 

 

 

シルさんの手を取り『エルドラド・リゾート』の入口までエスコートする

 

 

 

 

「書状をお見せ頂けますか?」

 

 

 

 

「はい、こちらで大丈夫ですか?」

 

 

 

 

中へ入ると給仕と思われる人から書状の確認を求められたので招聘状を取り出して渡す

 

 

 

 

 

「ようこそおいでくださいました、マクシミリアン様。素敵な夜をお過ごしください。」

 

 

 

 

 

表面上で繕っていても、彼の疑いの目は拭えていなかった

 

 

 

 

 

後々詮索されると動きにくいんだけどね

 

 

 

 

「彼女達に何かご不満な点でもございますか?」

 

 

 

 

「い、いえ、少々知己に似ておられたもので。失礼しました。改めて素敵な夜をお過ごしください。」

 

 

 

 

「とりあえず最初の関門は突破したかな?」

 

 

 

 

「はい。ですが、一番の問題はここからです。」

 

 

 

 

「そうね、まずは元手を増やす必要があるわ。招かれる為にも賭札(チップ)は多いに越したことはないわ。」

 

 

 

 

「ルーレットなんていかがですか?賭札(チップ)をテーブルに置くだけなので簡単ですよ?」

 

 

 

 

「そうですね。ルーレットなら問題は無いでしょう。」

 

 

 

ルーレットの台にはルーレットの他に赤と黒の数字が記されてる

 

 

 

 

シルさんの説明通りならこの色や数字で賭けるのかな?

 

 

 

 

「このシートにお金を置けばいいんですか?」

 

 

 

 

「賭ける方法によって配当は異なります。赤か黒か、色に賭けたなら2倍、数字単体なら最大36倍です。」

 

 

 

「さ、36倍・・・!じゃ、じゃあ、これで・・・・」

 

 

 

 

流石に最初から飛ばすのは不味いし・・・・

 

 

 

 

地道でもいいのでまずは元金を増やしていこう

 

 

 

 

アーニャ達とはトランプ位しかやったことないからルーレットには自信は余りないし・・・

 

 

 

 

トランプでもアーニャ達からは「ゲームにならないニャ!」と言われて最近相手してくれないけど・・

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

「ウソッ・・・・高額賭札(チップ)300枚、一点(ストレート)、数字一つ賭け・・・配当36倍・・・です・・・・」

 

 

 

 

結果から言うと僕の不安は杞憂で終わった

 

 

 

 

色賭けから少しずつ上げていったらまぐれにも当てまくってしまい遂にはここまで勝ち上がってしまった・・・

 

 

 

 

「きゃあ!すごい、貴方!」

 

 

 

 

リューさん達は護衛を装いながらも気づかれない範疇で周囲を見渡してるみたいだ

 

 

 

「貴方、私ポーカーをやってみたいです。」

 

 

 

 

「ポ、ポーカーでしたらあちらのテーブルにどうぞ。」

 

 

 

 

「(賭博場(カジノ)に有利な進行役(ディーラー)との勝負では無いので問題は無いでしょう。ですが、シルがギャンブルですか・・)」

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

「やったぁ!また私の勝ちですね!」

 

 

 

 

多分神様を抜いて彼女と心理戦で勝てる人は居ないんじゃ無いかって思う

 

 

 

 

こちらの心の奥底を見透かされているかのような・・・

 

 

 

 

それこそ嘘を見抜く神と対峙しているかのようなそんな感じで・・

 

 

 

 

「なんです!なんですかな!?」

 

 

 

 

「なんという賭札(チップ)の山!見たところ一見さんのようですがなんという幸運!」

 

 

 

 

「何でも白聖石(セイロス)の山をたまたま掘り当て、そのため領地が潤っててこの大賭博場(カジノ)で遊んでるらしいですぞ。」

 

 

 

 

「いやはやなんと凄まじい豪運。是非とも分けて欲しいものですなぁ。」

 

 

 

 

「なんでもアリュード伯爵はルーレットで大当たりしたとか。」

 

 

 

 

「夫妻で豪運持ちとは、実に羨ましい。」

 

 

 

 

な、なんか大分噂が飛躍しちゃってるような・・・

 

 

 

 

「・・・お客様。経営者のセルバンティスが、是非お会いしたいと。」

 

 

 

 

オーナーからの誘いってことは、間違いなく貴賓室(VIPルーム)への招待

 

 

 

 

落ち着こう、ここで取り乱したらバレちゃうかもしれない

 

 

 

 

「私のような若輩者に、経営者(オーナー)自らそう言って頂けるとは光栄です。」

 

 

 

 

 

「どうぞ、こちらへ。セルバンティスがお待ちしています。」

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

「おお、貴方がマクシミリアン殿ですか?」

 

 

 

 

 

茶色の髪に髭を随分と生やし、スーツを着込んだ1人のドワーフに話しかけられる

 

 

 

 

流れからして彼がテリーさんなんだと思う

 

 

 

 

「私はテリー・セルバンティス、この大賭博場(カジノ)経営者(オーナー)を務めておる者です。今夜は遠路はるばるお越しくださって誠にありがとうございます。」

 

 

 

 

「こちらこそ、招待して頂いて感謝しています。私はアリュード・マクシミリアン。こちらは妻のシレーネです。」

 

 

 

 

「夫ともども楽しませてもらっています、経営者(オーナー)。」

 

 

 

 

「おお、マクシミリアン殿はとてもお美しい奥様をお連れになられているようだ・・・ふふ、羨ましい限りです。それに傍付きの方々も実にお美しい。」

 

 

 

 

「えぇ。私にとって勿体ないほどでございます。」

 

 

 

 

「お聞きしたところ、本日は相当ツいているご様子・・・そこでご提案なのですが、あちらの貴賓室(VIPルーム)に来られませんか?」

 

 

 

 

貴賓室(VIPルーム)、ですか・・・・・」

 

 

 

 

「要は、より高額の賭博(ゲーム)を楽しもうというわけです。最高級の奉仕(サービス)や、あの部屋でしかできない賭博(ゲーム)は勿論のこと・・金満家の方々も揃われています。同じ境遇の者にしかわからない話もあることでしょう。お気に召してもらえるかと。是非傍付きの方々もご一緒にいかがですかな?」

 

 

 

 

 

「貴方、私もぜひ行ってみたいです。」

 

 

 

 

「妻もこう言っているので、よろしければ。」

 

 

 

 

 

「がははははっ、決まりですな!それでは参りましょう。」

 

 

 

 

貴賓室(VIPルーム)への扉が開かれる

 

 

 

 

 

ここからが本当の決戦、気を引き締めないと

 

 

 

 

「こちらが我が大賭博場(カジノ)貴賓室(VIPルーム)でございます。」

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

見るからに豪勢な装飾、中央に余計なものは配置しておらず、形からもその気品さが伝わってくる

 

 

 

 

言うなればまるで社交室(サロン)のようだ

 

 

 

 

招待客(ゲスト)の仕草1つとっても別格の富者ということが見て取れる

 

 

 

 

間違いなく抱えている用心棒も強いはず

 

 

 

 

「では、こちらのテーブルへどうぞ。」

 

 

 

 

招かれたテーブルには既にテリー以外にも2人の招待客(ゲスト)が座っている

 

 

 

 

「ささ、マクシミリアン殿、おかけください。他の招待客をご紹介します。」

 

 

 

「今夜も楽しませてもらっていますぞ、経営者(オーナー)。」

 

 

 

 

「ところで、そちらの方は?」

 

 

 

 

老齢の狼人(ウェアウルフ)にドワーフ・・・いや、人族(ヒューマン)かな?

 

 

 

 

「こちらはアリュード・マクシミリアン殿です。お隣におられるのは、そのご夫人のシレーネ殿。今宵初めて来られたのですが・・・・随分と羽振りがいいので招待させていただきました。」

 

 

 

 

「お初にお目にかかります皆さん。」

 

 

 

 

経営者(オーナー)のご厚意でこちらへ来させて頂きました。宜しくお願い致します。」

 

 

 

 

「お飲み物をどうぞ。」

 

 

 

 

「ありがとう。」

 

 

 

 

エルフの女性からは一切の感情が感じられなかった

 

 

 

 

彼女らもまた、アンナさんと同様に被害者なのだろうか

 

 

 

 

経営者(オーナー)、先程から見かけるこの麗しい方々は・・・」

 

 

 

 

「彼女達は、まぁ聞こえが悪いかもしれませんが・・・私の愛人です。

自分で言うのもなんですが・・・多情な私めの求愛に真摯に答えてくれました。」

 

 

 

 

 

「この貴賓室(VIPルーム)にいる女性たち全てが・・ですか?かなりの女性がいらっしゃるように思えますが・・・」

 

 

 

 

「えぇ。私の愛に答えてくれた美姫達ですが、独り占めしようものなら美の女神から小言が飛んでくることでしょう。そこで僭越ながら皆様の目を潤す一役になって頂ければと、こうして酌に協力して頂いているというわけです。」

 

 

 

 

怒りで我を忘れそうになりながらも何とか押さえ込みながら接する

 

 

 

 

後ろで控えるリューさん達からも僅かながら殺気が感じられる。恐らく彼女達も同じ感情なんだ

 

 

 

 

「そういえば・・・・ここに来る途中、経営者(オーナー)は傾国の美女を手に入れたと耳にしました。」

 

 

 

 

「おおっ、私も聞きしましたぞ!何でも遠い異邦の国から娶ったのだとか。」

 

 

 

 

 

「がはははは!皆さんは耳が早い!ええ。おっしゃる通り、新しい愛人として迎えたのです。せっかくですので紹介しましょう!おい!」

 

 

 

 

「初め、まして・・・・アンナと申します。」

 

 

 

 

伝え聞いた通りの容貌、彼女で間違いはず

 

 

 

 

それにしても・・・

 

 

 

 

綺麗だなぁ・・・・

 

 

 

 

って、ダメダメ!今は集中集中!

 

 

 

 

ようやく出逢えたんだ、何がなんでも救出するんだ

 

 

 

 

 

「実は異国の地で巡り会いましてな。この愛らしさと美しさに私めもすぐに虜になってしまったのです。・・・・ん?マクシミリアン殿、彼女の顔になにか付いていますかな?」

 

 

 

 

「いえ・・・・ただ、彼女と似ている娘を知っていまして。とある知人の話なのですが、彼は悪漢達の誘いに乗って賭博に手を染めてしまい・・・多くの財産を奪われてしまた挙句、自慢の一人娘も攫われてしまったのです。」

 

 

 

 

「・・・・!?」

 

 

 

 

大きく崩れてはないけど、経営者(オーナー)の顔が曇り始めている

 

 

 

 

 

「知人が愚かだったのは間違いありません。しかし調べてみると、その件は誰かの差し金だったらしく・・・」

 

 

 

 

「・・・・」

 

 

 

 

「娘を手に入れるために、ならず者達をけしかけ、全てが終わった後は悠々と彼女を懐に囲っているそうです。心を痛めるばかりです・・・・私は、今でも彼女の身を案じ、その行方を追いかけています。」

 

 

 

 

「・・・興味深い話ですなぁ、マクシミリアン殿?ところで、貴殿は彼のフェルナスの伯爵と聞いておりますが・・・」

 

 

 

 

「ええ、ただの田舎貴族です。愚かな友人さえ見捨てることの出来ないどうしようもない正義気取りのヒューマンです。」

 

 

 

 

「何を勘違いされてるかは存じませんが・・・・どうやら、マクシミリアン殿は奥様を差し置いて、このアンナにご執心の様子だ。ならば、賭博(ゲーム)をしませんか?」

 

 

 

 

 

ここまでは打ち合わせ通り、遠回しにほのめかすことでテリーの逃げ筋を潰していく。

 

 

 

 

ここまでが第1段階だった

 

 

 

 

賭博(ゲーム)・・・?」

 

 

 

 

 

「そうです。賭博(ゲーム)に勝った者は敗者に願いを聞き入れてもらう。勝者は求めるものを手に入れることが出来るのです。あと、最高額の賭札(チップ)もお貸ししましょう。こうでなければ我々の求める賭博(ゲーム)は成り立たない。」

 

 

 

 

 

用心棒の立ち位置も変わっているし、逃がすつもりは毛頭無さそうだ

 

 

 

 

最初からその選択肢はないですけど・・・

 

 

 

 

「富や地位、名声も勝ち得た私達が欲するもの・・・それは命懸けの緊張感。違いますかな?」

 

 

 

 

 

「・・・いいでしょう。その賭博(ゲーム)、受けます。」

 

 

 

 

「貴方・・・・」

 

 

 

 

「大丈夫です、シレーネ。私は負けない。」

 

 

 

 

不安そうに僕の手を握るシルさんをなだめ、改めて彼らと向かい合わせる

 

 

 

 

「皆様もどうですかな!ここは最大賭博場(グラン・カジノ)!私とマクシミリアン殿との一騎打ちでは実に味気ない!条件はみな一緒です、勝者の願いは私が叶えましょう!流石にお前の命が欲しいなどと物騒な望みは御免被りますがな!」

 

 

 

 

「せっかくの機会(チャンス)だ、私も宜しいかな?」

 

 

 

 

「では、私も。」

 

 

 

 

「どうぞどうぞ、参加者は拒みませんぞ。」

 

 

 

 

賭博(ゲーム)に何かご希望はありますかな?無ければポーカーを行おうと思いますが。」

 

 

 

 

 

「構いません。」

 

 

 

 

「では、賭札(チップ)の有無。元手の賭札(チップ)が無くなった時点で、その者は敗者です。」

 

 

 

 

一見すると1vs1vs1のロワイヤル制。ただ、ここは敵地。間違いなく2人はあちら側、かといってポーカー以外の選択肢も取れない

 

 

 

 

「私は・・・手始めに賭札(チップ)二十枚から賭けるとしましょうかな。」

 

 

 

 

「私はその倍を!」

 

 

 

 

長い長い夜になりそうです

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

「フルハウス。今回は私の勝ちのようですね。」

 

 

 

 

まさかこんな所でクロエ直伝の駆け引きが役立つとは・・

 

 

 

 

とはいえ、3vs1の不利な状況。なんとか勝ち越してはいられるけどギリギリな状況に変わりなかった

 

 

 

 

賭札(チップ)が随分と減ってしまったようですが、大丈夫ですかな?マクシミリアン殿?」

 

 

 

 

手札の役は悪くない。それでも最初から勝負を仕掛けてこない彼らには部が悪すぎる

 

 

 

 

「そういえば・・・まだ私が勝った時の願いを言っていませんでしたな。」

 

 

 

 

「私が勝った暁には、貴方の伴侶・・・隣にいる奥様をしばらく貸して頂きましょうか。お若い奥様をもらわれて羨ましい限り。私もぜひ、そのおこぼれに預かりたいと思いましてなぁ。なに、私が暇な時に晩酌に付き合ってもらうだけです。・・・・・2人きりのね。」

 

 

 

 

気持ち悪い目付きだ、オラリオのとある男神(太陽神)を彷彿とさせる

 

 

 

 

「ふふ・・・生意気な者や欲に目が眩んだ者、あとは貴方のような正義感に突き動かされる者・・・・私は全て、食い物にしてやりましたよ。さあ、どうしますかな?賭博(ゲーム)を続けますか?それとも・・・」

 

 

 

 

 

この依頼をリューさんから持ちかけられてから1度たりとも投げ出そうなんて考えたことなんてなかったし、つもりなんてなかった

 

 

 

 

なにより女性を食い物にしているこの男が許せなかった

 

 

 

 

昔、僕の生き方を導いてくれたお爺ちゃんが教えてくれたんだ

 

 

 

 

『女の子は大切にするもの』だと

 

 

 

それをバカにしたような目の前の男がなにより嫌いだった

 

 

 

 

「少し、よろしいでしょうか?」

 

 

 

 

ふと、シルさんが声を上げた

 

 

 

 

「いかがされましたかな?奥様?」

 

 

 

 

 

「皆さん、夫は少々疲れているようです。ですので、ここからは私も賭博(ゲーム)をせていただけませんか?経営者(オーナー)、負けた際は私は望む通りにいたします。だから、夫には何もしないで。」

 

 

 

 

「ふふふっ、ははははは・・・・真に美しいものですなぁ、夫婦愛というものは。ええ、約束しましょう、奥様。」

 

 

 

 

 

シルさんに限って心配は要らないはずだけど・・・最後の最後に頼っちゃうのは男して不甲斐ないというか・・・

 

 

 

 

それでも今は、シルさんに賭けるしかなかった

 

 

 

 

「早速再開といたしましょう。奥様はポーカーがお得意とお聞きしました。一応なにかご要望はありますかな?」

 

 

 

 

「お恥ずかしいですが、ドローポーカーでもよろしいでしょうか?それと、勝負を下りる際には、参加料(アンディ)の2倍の額を支払うというのはどうでしょうか?」

 

 

 

 

 

「2倍の参加料(アンディ)?・・・・まぁ、いいでしょう。では、そのルールで。」

 

 

 

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

「ああ!また私の勝ちですね!」

 

 

 

 

 

「馬鹿なっ!?」

 

 

 

 

シルさんと交代してからは負けることはなかった

 

 

 

 

最初は手札を明かし始めてびっくりしたけど、彼らは見事に術中にハマったかのように焦り始めていた

 

 

 

 

「ふふ・・ストレート。」

 

 

 

 

「スリーカード。」

 

 

 

 

「フルハウス。」

 

 

 

 

シルさんの予告手札(ハンド)に見事に掻き回されたみたいで、彼らの賭札(チップ)はどんどん減っていく

 

 

 

 

「皆さん、ご存知ですか?神様の中には『魂』の色を見抜いてしまう女神がいるそうですよ?何でも彼女の瞳は『魂』の色の揺らぎを見て、子供たちの心まで暴いてしまうのだとか。」

 

 

 

 

 

アーニャさん達がシルさんを『魔女』と揶揄する理由が分かった気がする・・

 

 

 

 

 

「さぁ、再開しましょうか?」

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

降りる(フォールド)・・・」

 

 

 

 

「忘れずに参加料(アンディ)の二倍を払ってくださいね?」

 

 

 

 

「(賭札(チップ)から見ても・・・ここは賭けたい・・・俺の手札(ハンド)は・・・・これは!?)」

 

 

 

 

 

「(フォーカード!これならば・・・これならば見透かされていても関係ない!最後に勝利の女神が微笑んだのはこの俺!ここで・・こいつらは終わりだ!)」

 

 

 

 

 

全賭札投入(オールイン)だ!」

 

 

 

 

「ちょっとだけ、あやかれたら・・・なんて思ってただけなのに。」

 

 

 

 

シルさんからは今まで以上の笑みをこぼしている

 

 

 

 

「私も全賭札投入(オールイン)で。」

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 

テリーの顔から驚愕が隠せないでいる

 

 

 

 

「そ、それでは・・・・手札開示(ショーダウン)!」

 

 

 

 

「今日の私は、どうやら『幸運の兎』さんに祝福されているみたいです。」

 

 

 

 

2人の手札を開示する

 

 

 

 

テリーはフォーカード、対してシルさんは

 

 

 

 

「ロイヤルストレートフラッシュ!」

 

 

 

 

「ファ、ファウスト!」

 

 

 

 

「・・・・不正は、ありません。」

 

 

 

 

「では、約束通り・・・主人の願いを聞いて頂けますか?」

 

 

 

 

「・・・よろしい、彼女にはしばらく暇を出すことにしましょう。思えば異国から来たばかりで疲れてるでしょうからなぁ・・・・」

 

 

 

 

よし、あとはここから畳み掛けるだけ!

 

 

 

 

「これで・・・よろしいでしょうかな?マクシミリアン殿。」

 

 

 

 

「いや、まだだ。」

 

 

 

 

「・・・なんですかな。このアンナだけでは、ご満足して頂けないと?マクシミリアン殿は実に強欲でいらっしゃる。私はどれほど愛する者を手放せばいいのでしょう?」

 

 

 

 

 

許せない、ここまで女性(女の子)をバカにするような()()()だけは!

 

 

 

 

「全員だ。」

 

 

 

 

だから、ここにいる全員助け出す。それこそ僕の目指した()()()だから!

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

「貴方が金にものを言わせ奪い取った全ての女性を解放してもらいます。」

 

 

 

 

「ふっふふっ、・・・・・うふふふっ。主人はとても欲張りなんです。ふふっ」

 

 

 

 

 

「こ、このっ、調子に乗るなよ、若造・・・何を勘違いしている?何様のつもりだ?たかが賭博(ゲーム)に一度勝ったくらいで!ギルドが守ってくれるなんて考えているのなら間違いだ!!娯楽都市(サントリオ・ベガ)から出向している俺はっ」

 

 

 

 

「違います。貴方は娯楽都市(サントリオ・ベガ)の人間ではない。」

 

 

 

 

今まで口を開かなかったリューさんがその口を開いて語り始める

 

 

 

 

「そもそも、テリー・セルバンティスなどという名前ですらない。・・・貴方の名前は・・・テッド。」

 

 

 

 

「オラリオで違法賭博を繰り返していた店の胴元。都市から追放された主神が天界に送還されていたとしても・・・その背には封印された【ステイタス】が残っています。この開錠薬(ステイタスシーフ)がそれを教えてくれるはずです。」

 

 

 

 

「・・・ふ、ふふ。これは、飛んだ言いがかりを付けられたものだ。くだらない出まかせに耳を貸すつもりなど毛頭ないが・・・この俺、ひいては店の沽券に関わる戯言を吹聴して回る輩を、生きて帰す訳にはいかん!おい!お前達!」

 

 

 

 

「ひっ!」

 

 

 

 

周りにいた2人の用心棒がテリーを護る形で構え始める

 

 

 

 

「一応・・・・そう一応、殺す前に聞いておいてやろう。貴様、何者だ?」

 

 

 

 

「名乗る程じゃないけど教えておいてあげるわ!」

 

 

 

 

今まで喋らせて貰えなかった反動からか、ここぞとばかりに声を上げるアリーゼさん

 

 

 

 

それとそのポーズは必要ないと思うんですが・・・・

 

 

 

 

「アリーゼ・ローヴェルよ!忘れたとは言わせないわよ!」

 

 

 

 

「・・・・っ!?ま、まさかっ貴様はリオンか!?」

 

 

 

 

「1度は主神であるアストレア様がお許しになる機会を与えたお前が、あの方の厚情を無無碍にし、私欲を貪り続けたお前にもう免罪の余地はない!」

 

 

 

 

 

「や、やれぇ、お前等ぁ!」

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

「ぐぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

「あの方に代わって、私達がお前を裁く!」

 

 

 

 

「ファ、ファウスト!?ロロ!?やれぇ!奴を殺せぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

2人に命じた後、テリーはアンナを連れて逃げようとしていた

 

 

 

 

不味い!とにかく追いかけないと!

 

 

 

 

「こいつらは『黒猫』と『黒拳』だ!名を聞いた事くらいは有るだろう?」

 

 

 

 

「2対2、どうしますか・・・」

 

 

 

 

「リューさん達はテリーを追ってください!ここで奴を逃がしたら追えなくなっちゃいます!その上これ以上護衛が増えてしまえば手に負えなくなっちゃいます!だから急いで!」

 

 

 

 

 

 

「恩にきりますクラネルさん!ご武運を!行きましょう、アリーゼ。」

 

 

 

 

「わ、わかったわ!」

 

 

 

 

「追わせるわけないっぐふっ!??」

 

 

 

 

リューさん達の後を追おうとした1人に体当たりでぶつかる

 

 

 

 

「いいから急いで!」

 

 

 

 

「どうやら死にたいようだなぁ?」

 

 

 

 

「これでも冒険者なんで、いつでも死ぬ覚悟は出来てますから。」

 

 

 

 

 

大丈夫、彼らは本物の『黒猫』と『黒拳』じゃない

 

 

 

 

 

騙ることしか出来ない彼らに負けるほど、よわくない!

 

 

 

 

「もう・・・・もうこんなところに居たくない!」

 

 

 

 

「ウチに帰すニャー!」

 

 

 

 

 

どうやらテリーに買われた子達も動いてくれた

 

 

 

 

さてと、ここから急がないと

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

「ちょっと!リオン!あのまま残しっちゃっていいの!?」

 

 

 

 

「問題ありません。それより今はテッドを捕まえる方が優先です。」

 

 

 

 

「まぁ、それなら問題ないでしょ。ほら、リオンさっさとやっちゃって!」

 

 

 

 

「全く・・・【今は遠き森の空。無窮の夜天に散りば無限の星々-】」

 

 

 

 

超硬金属(アダマンタイト)で固められた金庫に向け、リューは詠唱していく

 

 

 

 

「【来れ、さすらう風、流浪の旅人、空を渡り荒野を駆け、何物より疾く走れ-】【星屑の光を宿し敵を討て】!【ルミノス・ウィンド】!」

 

 

 

 

 

魔力の衝突により、金庫はこじ開けられ、中の様子が顕になる

 

 

 

 

「なっ、ぎゃぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

超硬金属(アダマンタイト)には、硬度に直結する純度が存在する。確かに「深層」で取れる最高純度の破壊は困難を極めますが・・・この金庫の素材は、上層や中層で採掘されたもの。強度を落としたものであれば、私の魔法でも貫ける。粗悪品を掴まされたようですね?金にものを言わせていたツケ・・というものでしょうか。」

 

 

 

 

 

「まさか、商人どもも、俺を騙してやがったのか・・・?ちくしょう!どいつもこいつも、全員ブチ殺してやる!」

 

 

 

 

「いい加減にしなさい!」

 

 

 

 

 

アリーゼがいい加減聞き飽きたのかテッドを気絶させる

 

 

 

 

 

「アリーゼ・・・貴方って人は。」

 

 

 

 

「いいのよリオン!終わりよければすべてよしってね!さ、こいつを【ガネーシャ・ファミリア】に突き出しましょ!」

 

 

 

 

「えぇ。クラネルさん達も気になります。早く戻りましょう。」

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

「見つからなかったわねー。あの二人。」

 

 

 

 

「はい。貴賓室(VIPルーム)にも何処にもいませんでしたし。」

 

 

 

 

事情を話していた【ガネーシャ・ファミリア】の団員にテッドを引き渡して戻ってきた

 

 

 

 

その道中置いてきたクラネルさんとシルを探していたのですが見つかりませんでした

 

 

 

 

 

彼なら大丈夫だとは思いますが・・・・

 

 

 

 

 

「あ、いたいた。リューさーん。」

 

 

 

 

 

「無事でしたかクラネルさん。シルも無事で何よりです。」

 

 

 

 

 

「外にいたのね、てっきり【ガネーシャ・ファミリア】と一緒だと思ってたわ。」

 

 

 

 

 

「ははは、事情はどうあれ、暴れちゃったのは確かですからね。逃げちゃいました。」

 

 

 

 

 

「本当にみんな今日はお疲れ様!シルちゃんとえーっとそういえば名前を聞いてなかったわね。」

 

 

 

 

 

「ベル・クラネルです。こちらこそお役に立てて何よりです。」

 

 

 

 

 

「それで、報酬の件なのですが。今回賭博(ゲーム)で得たチップ分30億ヴァリスから【ガネーシャ・ファミリア】への謝礼や買われていた彼女達分を減らして15億ヴァリスでいかがでしょう。」

 

 

 

 

 

「そ、そんなに稼いでたんですか!?」

 

 

 

 

「はい。本来ならお2人に分割して渡すのが1番なのですが・・・」

 

 

 

 

 

「い、いいですよ!流石にそんな大金貰っても!」

 

 

 

 

 

「ですが・・・」

 

 

 

 

 

「流石に報酬なしってのはミアお母さんに怒られちゃいます。ですので5億ヴァリスで手を打ちませんか?気持ちは嬉しいですけど【アストレア・ファミリア】に渡した方がより良く活用してくれそうですし。」

 

 

 

 

 

「僕もシルさんに雇われた身ですし、シルさんがこう言っている以上はこれ以上望む訳にもいきません。」

 

 

 

 

「本当によろしいですか?」

 

 

 

 

 

「それじゃあこうしましょう。次に『豊穣の女主人』に来てくださった時に奮発していただければミアお母さんも喜んでくれますし!」

 

 

 

 

 

「分かりました。5億ヴァリスで手を打ちましょう。良いですね、アリーゼ。」

 

 

 

 

 

「えぇ、そういうことなら仕方ないわ。これ以上言っても埒が明かないしね。とにかく追手が来る前に戻るわよ!」

 

 

 

 

 

「はい!」

 

 

 

 

こうして4人は闇の中に消えていった




次回後日談書いてこの章はおわりかな

ベル君が実質カジノでやると大体いくらくらいなんだろ

ファミリアクロニクルは詳しい稼ぎは書いてないしそもそも直後の騒動のせいで換金云々でもないだろうし・・・

ベルにヒロインは

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