「失礼します。」
「いらっしゃいませー。・・・ってリューさん、お願いですから裏口から入るのはやめてください・・・」
「いえ、客ではない私が表から入るのは迷惑をかけてしまうと思って。」
あの日以来、相談や依頼事以外にもたまにリューさんが訪れるようになった
基本裏方しかしない僕にとって話し相手が出来るのは嬉しいんだけど・・
「それで、今日はどんな話を持ってきてくれたんですか?」
ひとまず彼女を簡易的に設置されたテーブルに案内してハーブティーを出す
「半分私室と化してませんか?」
周囲を見渡したながらリューさんから質問される
「リューさん以外にもここに来られる人は少なくてもいるんで、ミアお母さんから許可を得て置かせてもらったんです。勿論自腹ですが・・・」
「何か申し訳ありません・・」
「いやいやいや!リューさんが謝ることなんて無いですよ!断りきれない僕にも責任はありますし。」
「そこは自覚があったんですね・・」
あれ?僕呆れられてる?
「そのハーブティー、最近練習し始めたんですけど…もしかして苦手でしたか?」
ハーブのいい香りを醸し出し、湯気がいい感じのコントラストを生んでいる
せっかく来てくださったのに何ももてなさずに終わるのは酒場の店員としてどうかと思って練習し始めたのだ
勿論ミアお母さんのお墨付きが貰えるまで出さない約束でだけと・・
「いえ、おしかけてる立場上、もてなされるのは気が引けると言いますか。」
「ここは酒場です。どんな客でも食べさせてやるのがミアお母さんのモットーです。ここでもてなさないと逆に僕が怒られてしまいます。あ!味ならちゃんとミアお母さんからお墨付き貰ってるので問題ないですよ!」
「分かりました。ここはお言葉に甘えさせてもらいます。」
そう言って一口、味わうようにして飲んでいく
「どうですか?お口に合えばいいんですけど・・・」
「余り紅茶というのは嗜む訳ではありませんが、美味しいことは分かります。」
「良かった〜。人によって好みは分かれると聞いたので、その言葉を聞くまで不安だったんです。」
「酒場なので出す機会は無いと思われますが、これなら万人受けするのではないでしょうか。」
「それで…今日はどんな話を持ってきてくれたんですか?」
片や酒場の店員、片や
多くの冒険者の集う酒場だからこそ好奇心は駆られてしまうのだ
「いえ、今日は先日のお礼をと思いまして。」
「いえ、あれは半分僕の我儘みたいなものですし・・・」
「そういう訳にもいきません。私から持ちかけた以上、何も返さないのは流石に・・・」
「分かりました。ありがたく貰っておきます。」
女性にここまで言わせて断るのは失礼というもの
・・・・・
「そろそろ時間ですので失礼します。」
「はい、こちらこそ色んなお話が聞けて楽しかったです!」
あれから皿洗いを続けながら他愛もない世間話を続けてた
「それではまたのお越しをお待ちしております。」
リューさんが帰宅すると言うので裏口から送ることにした
「あぁ、最後に1つよろしいでしょうか。」
彼女の背中を見送って、また作業に戻ろうかとドアに手をかけた時、ふと思い出したかのように
「なんですか?」
「
その一瞬だけ、酒場の喧騒が嘘のような静けさを感じていた
ベルにヒロインは
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いる
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いらない