星獣絶唱 シンフォギンガ 作:ロヒシ&かづ えい子しょうゆ味
というわけで、本日3回目の投稿になります。
今回はどうしても原作1話の最後まで行きたかったので長めになってしまってます。
春。温かな太陽の光が燦々と大地を照らし、動物や植物達の命の息吹を感じる季節。
桜の花びらが舞う中、15歳へと成長したさやと響は……
「ひ、響、大丈夫?」
「ん……もうちょっとぉ……ほんの、あと少し……」
道端で肩車をしていた。
今日、2人は私立リディアン音楽院の入学式に出席する予定だった。その道中、響が木に登って降りられなくなっている猫の姿を発見してしまった。
その猫を助けるべく、さやが響に肩を貸して肩車をしているのだが、いかんせん背丈が足りていないので響の手は虚空を掴むばかりで一向に猫のいる枝へとは届かない。
すると、さやがよろめきバランスを崩した2人はそのままもつれ合うようにして倒れた。
すると、どこからか笑い声が聴こえてきた。
2人が振り返ると、そこには額にバンダナを巻いた茶髪の少年が立っていた。
同い年くらいなのだろうか、違う高校の制服を着た少年は「ごめん、ごめん」と軽く謝ると2人の側に寄ってきた。
「あの猫助けようとしてたのか?」
「う、うん。そうなんだけど…」
「高いからなかなか上手くいかなくて……」
「なら、俺に任せとけよ!」
そう言うと、少年は軽々と木によじ登り、猫のいる枝へと到達した。
2人が「凄い!」と驚きの声をあげると、少年は得意気に笑みを浮かべた。あまりの速さに2人が少年が木に登る姿をまるで猿のようと思ったのは秘密である。
と、次の瞬間、バキッという音と共に少年と猫が乗った枝が折れた。1人と1匹が叫び声を上げながら落下する。
「「危ないッ‼︎」」
刹那、一陣の風がその場に待った。
「うわぁぁぁぁぁ………って、あれ?落ちてない……?」
少年が自分の身体が空中で止まったのを感じ恐る恐る目を開けた。
するとそこには、猫と少年を抱きかかえた青年が立っていた。
少しゴツい印象を得る顔つきに大柄な体格をした青年は、落下する1人と1匹をなんと空中で受け止めたのだ。
「大丈夫かい?」
その外見とは裏腹に優しそうな声で青年が少年に声をかけた。
「あ、うん……その、ありがとう」
「いや、怪我がないなら何よりだ!」
そう言って青年がニコリと笑う。その笑顔は彼の顔つきからは想像できないほどの爽やかなものだった。
「あの、猫を助けてくれてありがとうございます!」
さやと響きが2人にお礼を述べた。
「気にすんなよ。って、助けられた俺が言える事じゃないけどな」
「ううん、貴方がいなかったらきっとこの猫はずっと降りられないままだったと思うし」
響の言葉に少年はどこか照れ臭そうに笑った。
すると、青年が3人の姿を見て声をかける。
「それはそうと、君達2人リディアンの生徒だよね?今日は入学式じゃなかった?それに君も制服着てるけど学校は大丈夫なの?」
青年の言葉に3人がハッとする。
「「「いけない、遅刻だ!」」」
私立リディアン音楽院。海を臨む高台に建てられたこの学校は、独自のスタイルの音楽教育が特徴の新設校だ。
最先端の設備に越境入学者を迎え入れやすくする為の寮も完備されている。加えて財政界からの寄付金も多い為、私立校でありながら学費が非常に安いのが特徴である。
さらに、現在の3回生にはトップアーティストとして人気の高い風鳴 翼が在籍している為、彼女目当てに入学又は編入を希望する生徒が年々増えてきているのである。
そのリディアン音楽院のとある1回生の教室で……
「立花さんッ‼︎」
「「ひゃ、ひゃい‼︎」」
響とさやは担任教師からのお説教を受けていた。
「はぁ〜入学初日から散々だったなぁ」
「だよねぇ〜私達呪われてるかも」
「自業自得でしょ?猫を助けて遅刻しましたなんて正直に言っちゃって……響の場合、あとそれに普段のお節介まて炸裂させてたし。というか、さやは荷解きしなくて良いの?」
寮の部屋で項垂れるさやと響に向かって黒髪に白いリボンをした少女が呆れるように告げた。
彼女こそ2人の幼馴染であり、響のルームメイトでもある小日向 未来であった。
「私はもう終わってるから。響と違って荷物も少ないし」
「あ、さやちゃんてば酷い!」
「ホントのことでしょ」
「むぅ〜……あっ、CD発売は明日だっけ!やっぱカッコいいなぁ翼さんは」
と、手に取った雑誌に写っていた風鳴 翼の姿を見て響が興奮したように雑誌を抱きしめる。
「でも響も凄いよ。翼さんに憧れてリディアンに入学したんだから」
「ホント、響を受からせる為につきっきりで勉強教えるハメになった私達の方が大変だったけど」
「その節は本当に感謝しております。ははぁ〜……って、あれ?さやちゃん、なんか私の荷物にさやちゃんのCD紛れてたみたい」
「あっ、それ探してた『HAYATE』のCD!響ぃ〜!」
「そんな、不可抗力だよ!」
「響の翼さんへの憧れもそうだけど、さやのHAYATEへの憧れも凄いよね。その人、プロのフルート奏者なんだっけ?」
「そうそう!ん〜、何だろう。よく分かんないんだけど、HAYATEの笛の音を聴いてると、心がぽかぽかするっていうか、凄い懐かしいって気持ちになるんだ。温かな森の息吹に囲まれた故郷の中にいるっていうか……」
「へぇ〜そうなんだ」
******
その日の夜。ある山中にて特異災害対策機動部一課は突如出現したノイズと交戦していた。
しかし、隊員が撃つ銃弾も戦車が放つ砲弾もノイズの身体をすり抜けてしまう。
「クソッ、やはり通常攻撃では無理なのか⁉︎」
指揮官らしき人物が苦虫を噛み潰す。
ノイズには炭素変換の他にも位相差障壁という特性がある。
この特性のせいで通常兵器はノイズには対して無力に等しかった。位相がズレている為、絶え間なく攻撃を続け偶然位相が同期した時でしか攻撃が当たらない。この為、現在ノイズに対する対処法は、ノイズが自然消滅するまでの間ひたすら逃げる事が最善とされていた。
だがそんな中、世間には知られていないノイズに対して明確な対処能力を持ったモノが存在していた。それが……
Imyuteus amenohabakiri tron……
隊員達の耳に歌声が聴こえてきた。
すると、一機のヘリが上空を舞うとそこから1人の少女が降り立つ。
少女が光に包まれると、その場に剣を携えプロテクターを身に纏った少女が姿を現した。
このプロテクターこそ、ノイズに対抗する事ができる手段の一つ『シンフォギア』である。
『翼、先ずは一課と連携して……』
「いえ、私1人でやれます」
『翼!』
シンフォギアを身に纏った少女ーー風鳴 翼は司令官である風鳴 弦十郎の指示を無視してノイズと交戦を開始する。
翼の振るう剣がノイズを次々と炭の塊へと還していった。
シンフォギアは歌を介し、ノイズとの位相差を無くしノイズに物理的ダメージを負わせる事ができる。
だが、ギアを纏える者は聖遺物を歌で起動できる適合者と呼ばれる人間にのみ限られる。その為、この事は国家機密とも言える秘匿事項で世間には全く知られていない。
少女が歌を口ずさみながら剣を振るい、ノイズと戦っている。
その光景を隊員達はこの世の光景とは思えず呆然と見つめていた。
その為、自分達に近づくノイズの存在に気づけなかった。
1人の隊員がノイズの存在に気づく。
「の、ノイズだ‼︎」
だが時既に遅し。対抗手段を用いない彼らでは瞬時に炭の塊へと還られてしまう。
隊員達は愛する家族の顔を思い浮かべながら自らの死を悟った。
刹那、一陣の風が吹き荒れ、その風がノイズの身体を切り裂いていった。
「い、いったい何が……?」
「た、隊長!背後です!」
「ッ⁉︎ノイズ!しまっ……ッ⁉︎」
隊長と呼ばれた男の背後からノイズが襲いかかってきた。しかし次の瞬間、ひゅんという風切り音と共にノイズの身体が炭の塊へと霧散する。
そして、隊員達を守るようにして1人の男が姿を現した。
忍のような装束に口元を
「怪我は無いか?」
「あ、あぁ……君はいったい…?」
「ここは俺達に任せて撤退の準備をッ!」
男はそう言うと、剣を手に目の前にいるノイズに向かって行った。
その姿を見て隊員達は男を止めようとする。
ノイズには通常兵器は効かない。彼の剣などノイズの身体をすり抜けて炭へと変えられるのがオチだ。そう思った。
だが次の瞬間、男が剣を振るうとノイズの身体は真っ二つに切り裂かれた。
それを見て隊員達は驚愕する。通常兵器が効かないとされていたノイズの身体を男の持つ剣は切り裂いたのだから。
「翼、下にいる小さいのは俺が何とかする。お前はそのデカいのを頼む」
男がそう叫ぶと翼はコクリと頷き剣を巨大化させてエネルギー波を放った。
それと同時に男が剣を納め、両手を翳す。
「嵐のはばたき!」
刹那、男の両手から嵐が吹き荒れノイズ達を次々と呑み込んでいった。
嵐が収まるとそこにはノイズの姿は跡形も無かった。同時にノイズと戦っていた男と翼の姿も無くなっていた。
隊員達はまるで自分達が夢でも見ていたのではないかと思った。
「翼、1人で突っ走りすぎだ。司令の指示にちゃんと従え」
ヘリの中で覆面をした男が翼に苦言を呈す。だが翼は納得していないといった表情で男を睨んだ。
「私1人で充分だったでしょ?」
「だが、一課の隊員達の命を危険に晒した事には変わりない。今回は俺が対処できたから良いが、もし俺がいなかったら……」
「ッ⁉︎私は、疾風の協力が無くても戦える、いつまでも子供扱いしないで!」
「翼……」
瞳を潤ませながら翼は男を睨みつける。
その翼の顔を見て、男ーー
******
翌日の放課後、響は教室で日誌を書いている未来の隣で項垂れていた。
その理由は、昼休みについに念願の翼と対面したのだが、その際に口元に米粒が付いているのを指摘されてしまったからだ。
「完璧変な子だって思われた…」
「間違ってないんだから良いんじゃない?」
「フォローになってないよ〜!ねぇ、それもう少しかかりそう?」
「うん。あ、そっか。今日翼さんのCD発売だったね。でも今時CD?」
「ふふふ〜ん、初回特典の充実度が違うのだよ〜」
「なら、早く行かないと売り切れちゃうんじゃない?」
「ハッ、そうだった!…な〜んてね、さやちゃんに頼んでるから心配ないよ〜!いやぁ、持つべき者は心優しい妹だねぇ」
「へ?響がお姉さんなの?」
「へ?」
「さやもおんなじ事言ってたよ?響は妹だって」
「何で⁉︎私の方が誕生日先なのに!」
と、響と未来が会話をしている所に3人の少女がやって来た。板場 弓美、安藤 創世、寺島 詩織、3人とも響達のクラスメイトであり、入学式後のお説教の後に話をして仲良くなった友人である。
「ビッキー、サーヤからの伝言で先生の手伝いしなきゃいけなくなったからCD代わりにゲットしといてって」
「嘘ッ⁉︎ごめん未来、私CD買いに行かなきゃ!もし書い損ねたらさやちゃんに殺されちゃうよ〜!」
「大丈夫。気をつけてね」
響は息を切らせながらCDショップを目指していた。
あの曲がり角を曲がれば目当てのCDショップである。これでさやから雷を落とされずに済むと思った瞬間だった。
角を曲がった瞬間、響の目の前に飛び込んできたのは夕暮れの中、風に舞う炭の塊だった。
「ノイズ!」
その瞬間、響の脳裏に2年前の出来事が蘇る。
2年前、彼女はさやと共に訪れたツヴァイウィングのライブでノイズの襲撃に巻き込まれた。そしてその時に負った胸の傷は今でも彼女の胸元に残っている。
どうやって助かったのかは覚えていない。しかしあの時、響はノイズと戦うツヴァイウィングの姿をぼんやりと覚えていた。
(早くシェルターに避難しないと……!)
その全貌が解明されていないノイズだが、長時間の活動はできず、時間が経つと自然消滅する事は明かされていた。
その為、ノイズが発生すると人々は地下シェルターへの避難する事になっていた。
響も急いでシェルターに向かおうとしたが、どこからか小さな女の子の悲鳴が聴こえてきた。
声のする方に向かうと、親と逸れたらしい女の子が逃げ惑っていた。
響は女の子をおんぶノイズから逃げる。だが、慌てていた為にシェルターから遠ざかってしまった。
息も絶え絶えになりながら女の子を背負い走る響。だが、足がもつれて倒れてしまう。
すると、遠くから近づくノイズの姿が目に入った。
もう助からない。そう思った響の脳裏に2年前に彼女を救った天羽 奏の言葉が蘇る。
ーー生きるのを諦めるなッ!
その言葉を思い出し、立ち上がろうとした時だった。
「早く立って!」
そう言って響の手を取り彼女を立ち上がらせたのはさやだった。
「さやちゃん…何でここに?」
「何か、響が危ないって思って。不思議だね。私達双子でもないのに……って、今はそんな場合じゃないでしょ!この子は私が背負うから、急いで逃げるよ!」
そう言うと、さやと響は再び走り出した。
工場地帯に逃げ込み梯子を登ってタンクの上へと逃げる。
辺りは既に暗くなり始めていた。ノイズは長時間活動できないからもう少ししたら消えるはず。そう思い、2人は諦めずに逃げる。
そして、タンクの上まで登った所で体力が尽きたのか3人はそこで倒れる。
「……死んじゃうの?」
死への恐怖から声を震わせる女の子に響とさやは大丈夫と言って励ます。
だが、そんな2人を絶望させるかのように彼女達の周りをノイズが囲んでいた。
咄嗟にさやが2人を守るようにして立つ。
「響、ここは私が何とかするからその子を連れて逃げて!」
「ダメだよ!さやちゃんを置いてなんて行けないよ!」
「響……へいき、へっちゃらだよ!私が響を守る」
そう言って笑顔を向けるさや。それが彼女が死を覚悟した瞬間だと響は思ってしまった。
さやを失いたくない。大切な家族を失いたくない。響は大切なモノを守りたいと強く願った。力が欲しいと強く願った。同時にさやも強く願っていた。
その瞬間、2人の想いがまるで呼応するかのようにして不思議な事が起こった。
Balwisyall nescell gungnir tron……
響の頭に胸に歌が思い浮かんだ。それを口にすると響の胸元から天に向かって光の柱が登った。
その光が響を包み込むと彼女の身体にプロテクターを纏わせる。
それと同時にさやの周辺を光の花びらが包み込んだ。
(コレって、2年前の……)
それは、2年前響を守りたいと願った彼女がライブ会場で最後に見た光景と同じだった。
光の花びらがさやを守るようにして包み込む。すると、天から光の柱が刺し何かが彼女の元へと降り立った。
******
その頃、リディアン音楽院の地下に設けられた特異災害起動部二課の司令室では、ノイズの発生を確認し、その位置を特定しようと職員達が懸命に働いていた。
その時、1人の職員の声が司令室に響き渡る。
「ノイズとは異なる高出力エネルギーを検知!」
それを聴き、二課所属する研究者の櫻井 涼子は発生したエネルギーの波形を照合し驚愕する。
「まさかコレって、アウフヴァッヘン波形⁉︎」
そして、モニターに『gungnir』の文字が表示されると、司令官である風鳴 弦十郎は驚きの声を上げ、翼と疾風は茫然とする。
それは、2年前に亡くなった彼女達の大切な人物が纏っていたシンフォギアの名前だったからだ。
「し、司令!それだけではありません!これは……」
そして、モニターに表示された文字を見た弦十郎はさらに驚愕の声を上げて立ち上がった。
「『アース』……だと⁉︎バカな、疾風以外の伝説の血を引く人間が現れたのか!」
「それだけではありません!この反応……剣が、『星獣剣』が顕現します!」
つづく
次回予告
「何なのコレ⁉︎」
シンフォギを身に纏い、星獣剣の封印を解いた響とさや。
襲いかかるノイズと交戦する2人の前に翼と疾風が現れる。
「惚けない。死ぬわよ」
「君が守りたいと想う人の事を強く思い浮かべるんだ」
女の子を助けたいと思う2人の気持ちがガングニールを、アースの力を目覚めさせる。
次回、星獣絶唱シンフォギンガ
第三章 『ギアと剣』
今、伝説の一ページが刻まれる。
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