アサルトリリィ EARTHES   作:湖森生気

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10度目の任務を終えて一息つく。既に6回もやり直してしまった。

抱き合う様にヒュージに貫かれた二人を見た。
あと一歩の所で助けられなかったリリィを見た。
友人を亡くし涙するリリィを見た。
どうしてと責めてくるリリィを見た。
仕方ないと達観した大人を見た。
だらしないと失望する大人を見た。

たった6回の間にこれだけの物を見て、心が軋む。

任務の達成だけなら兎に角、リリィへの被害を妥協しないとなると途端に難易度が高くなる。

だけど、折れる訳にはいかない。

そう思いながらアーシェスの説明欄を開く。


『アーシェスver1.0』
旅路中、イオンともう一人が共同で作成したES45カソードの複製品。
見た目はES45カソードと同じだが、武装はややロマン寄りの構成になっている。
また、頭部に当たるアバターコアは大幅な改良がされている。
その中身は行動制限の緩和や7次元俯瞰視点の利用範囲の拡大・強化など多岐に渡るが、その最たる物は小型化されたアルノサージュ管を内蔵している事にある。
これにより、アーシェス単体でも異世界接続を可能にしている。
なお、再現する機体にES45カソードを選んだのは、二人にとって『あなた』との出会いと旅立ちの象徴だからである。
『あなた』に救われた二人が、助けを必要としている誰かが『あなた』の様な優しい人と繋がれるようにと願いを込めている。


二人の思いが込められたこの機体を使う以上、中途半端で終われない。

必ず、最高の結末を迎える…妥協は一切無しだ。


2話 守護者・アーシェス

アーシェスが起動して数か月。

その間にアーシェスは中、大規模の外征を既に10回、小規模の戦闘を入れると倍以上の数戦闘を行っている。

これだけ戦う事が出来たのは良くも悪くも、アーシェスが機械である事に由来する。

リリィでも人間でも無いアーシェスは兵器、もしくは物資として扱われる。

故に、外征のハードルが極めて低い。

戦闘の支援物資と言う形で貸し出せば断るガーデンは殆どない、相手側のガーデンも戦闘の支援物資として受け取った以上、戦闘に参加させないという事は難しい。

それらの要因が重なった結果、この短時間でアーシェスは多くの戦果を上げた。

 

その結果、アーシェスは多くのリリィに認知される存在になった。

中にはその戦果やラージ級のヒュージに有効打を持っていない事から、マディックの理想、マディックの完成形などと言われているがもう一つの呼び名の方が有名だろう。

 

 

【百合ヶ丘女学院 理事長室】

 

 

「それで、あの機体が運ばれて早数か月。何か分かったかね百由君」

「そうですね、色々と分かったんですけど何から話していいやら」

 

理事長代理と生徒会の3人が見守る中、百由はいつもの調子で話し始める。

 

「まず、アーシェスのあの不思議な会話方法ですが、類似する物を発見しました」

「類似する物?」

「はい、精神直結型CHARMです! いやーおかげでこっちの研究も大分進んで…こほん、失礼。話を戻しますね」

 

話が反れそうになった所に他4人の視線を受け百由は気を取り直して話を戻す。

 

「結論から言うと、アレは精神、もしくは思いと呼ばれるものを直接相手に伝えている用です」

「……アレは生きているのか?」

 

心がある、そう言われた理事長代行は思わず聞き返すがその問いに百由はゆっくりと首を振る。

 

「アーシェスその物は生きているとは言えません、ただこれを見てください」

「…これは」

 

百由が投影した3D映像のアーシェス、その頭部から何かが発せられている映像が映し出される。

その周りには何かしらの数値が複数表示され、変動していた。

 

「これは…通信ですか?」

「その通り、アーシェスは常にどこかからエネルギーと命令を受信しこちらの状況を送信していると思われます。つまり、アーシェスは何者かに遠隔操作されていると言うのが私の結論です」

「遠隔操作であの動きが出来るとは思いませんが……」

「確かにそうだけど、相手は異世界の超技術だからね…こちらの常識では測れなくても不思議はないわ」

 

重々しい沈黙が理事長室を支配する。

これがただのAIであれば簡単だった、なにせ道具として扱えば良いのだから。

だが、あの機械の向こうに意志を持った何者かが居るとなれば話は変わってくる。

あの戦闘能力を考えれば下手な対応はできない。

 

「それで……アーシェスを動かしている者は信用できそうかね?」

「それは、彼のこれまでの戦績を見れば一目瞭然かと。付け加えるなら、別世界に居ると思われる彼にはこの世界で戦う理由は有りません……純粋な善意だと思われます」

「純粋な善意ね……」

「案外ただの暇つぶしかも」

「それは否定できないけど、それを責める事は出来ないわ。相手にとってこの世界の事なんて関係ない事なんだから」

 

理事長代行は再び資料へと目を落とす。

敵となれば脅威は計り知れないが、既に与えられている恩恵が余りにも大きい。

どうした物かと腕を組み頭を悩ませる。

生徒会の3人も同様に頭を悩ませる中、百由のみが何食わぬ顔で。

 

「ああでも、相手がどんな相手であれ最悪アーシェスが動かなくなるだけなのでそこまで心配要らないかと」

 

悩みその物を吹き飛ばす爆弾がを投下する。

 

「…根拠は?」

「アーシェスには目的が設定されているんです。その目的に逆らう行動は出来ない様に制限がかけられています」

「その目的とは?」

「助ける…です」

 

先程とは質の違う沈黙が部屋に満ちる。

それは驚愕か、呆れか、恩か、感謝か、別の何かか。

 

「起動した時の彼女が言った『私達を助けて』。これがアーシェスの目的として登録されていました」

 

最大の懸念材料はこれで消えた。

ならば後はどれだけ恩恵を得られるかだ。

 

「では、彼の運用についてはこれまで通り。彼から何か要望が有れば常識の範囲内で有れば許可をする…異論は有るかね?」

「ありません」

 

生徒会を代表し出江史房が答えた事でこの場はお開きとなった。

生徒たちが退出した後、理事長代行はアーシェスの戦績データを見る。

中規模、大規模の外征に参加した回数は10回。

その内リリィの死者、重傷者数……0。

故に、付けられたあだ名は…『守護者(ガーディアン)』。

 

「願わくば、君が善良な存在であると願っているよ」

 

それは紛れもない、理事長代行の本音であった。

 

 

【工廠科 アーシェス保管庫】

 

 

「と、言う訳で貴方の扱いは基本的にはこれまで通りだから安心して」

 

入ってくるなりそう言ってきた百由に対し頷きながら返答する。

 

≫『よかった』

 

「うんうん、そう言えば部屋…とも呼べない所だけど。望むならお引っ越しもできると思うわよ」

 

≫『引っ越しは大丈夫だけど…』

 

「だけど?」

 

≫『CHARMが欲しいです』

 

それは、至極まっとうな要望であった。

今の所はどうにかなっているが、ラージ級以上のヒュージには有効打を与えられないのはキツイ物がある。

 

「あー、最もな要望だと思うけど。流石に難しいのよね……けど安心して工廠科の名に懸けて必ず作って見せるわ」

 

≫『信頼してる』

 『なるべく早くお願い』

 

「まっかせなさい、必ず信頼に答えて見せるわ!」

 

自信満々に胸を張る姿は頼もしい。

 

「あ、そうだ。もう直ぐ入学式が有るじゃない。悪いんだけどその数日ここから出ない様にして欲しいのよ」

 

≫『どうして?』

 

「新入生の子達はあなたの事知らないでしょ。流石に驚かれてしまうわ。そうならない様に新入生への説明が終わるまで出ない様にして欲しいの」

 

≫『なるほど、了解』

 

アーシェスと百由の関係は結構複雑な物だった。

百由から見たアーシェスは研究対象であり、精神直結型CHARM開発の間接的な協力者であり。何時かパワーアップさせたい改良予定の物である。

対して、アーシェスから見た彼女は、最も長い時間一緒に居て、物作りや研究に一生懸命な姿が大切な仲間や『彼女』を思わせる。

友人でも無く、仕事仲間でも無く、かと言って恋や愛でも無い。

それでも、二人の間には奇妙な信頼が出来つつあった。

 

「それでね、生体標本のヒュージが欲しいんだけど。今度の襲撃の時良さそうなのが居たらお願いね」

 

≫『了解!』

 

このように、ヒュージの捕獲を依頼される程度には。

間近に迫った入学式の日に、この捕まえたヒュージが脱走してしまうのだが。

この時は誰もそれを知る由もない。

 

 

一柳梨璃が入学してくるまで…あと少し。




Qやり直しって?

A、身も蓋もない事を言うと『セーブ&ロード』もしくは『コンテニュー』。
詳しく説明すると、並行世界もしくは4次元的に後退とか小難しい説明になてしまう。
その為にも7次元の俯瞰視点についての説明が必要になる。

Q7次元の俯瞰視点って?

アーシェスの俯瞰視点は間接的なので限定的な物だが、その反則度合いをアサルトリリィで例えると。
ファンタズムや鷹の目などの感知、観測系レアスキルを『全て最高ランク』で所持し『無制限で全力で使い続けられる』位と言えばヤバさが伝わって頂けるかと。


さらに詳しく説明すると。

3次元に存在する我々が1次元、2次元を俯瞰できるように。7次元の存在はそれ以下の6次元を全て俯瞰できるという物。
制限の無い7次元の俯瞰視点では以下の物を観測、干渉できる。
3次元(空間俯瞰)鷹の目や透視などはコレ
4次元(時間俯瞰)過去・現在・未来を俯瞰できる
5次元(個人の可能性の俯瞰)ファンタズムは恐らくコレ。
6次元(その宇宙全ての可能性の俯瞰)全ての平行世界の俯瞰

これらを組み合わせるとどうなるか。
3次元の俯瞰で死角が存在せず。
4次元の俯瞰で熟考した行動を過去に遡って実行したり、次の相手の行動を知る事ができる。
故にアーシェスは不意打ちが効かず、戦場の情報、相手や味方の次の行動を全て把握でき。
その上で熟考した行動を実際にはノータイムで実行できる。
しかし、この強力な力もあくまで便利な程度。その真価は失敗した時に有る。

万が一失敗したとしても、4次元俯瞰で過去に遡り、5次元俯瞰で別の可能性に挑戦し。うまくいった世界線を6次元の俯瞰で元の世界(主観世界)に上書きする。
つまり、やり直しが何度でもでる。
故に、可能性が微かでも有れば何時かは『目的を必ず達成できる』のだ。

だからこその死亡者、重傷者0人と言う本来ならあり得ない事も可能になっている。
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