「おはようございます、旦那様。」
メイド服を着たアンリエッタが、ペコリと頭を下げる。あの後、ジャイアンたちはこっそりアンリエッタをアジトに持ち帰っていたのだ。ジャイアン曰く「楽に死なせては意味がないとのこと。」
「今日からお前は、俺たち専属のメイドだ。ちゃんと、働くんだぞ!」
「はい、旦那様。」
ジャイアンの言葉にアンリエッタはペコリと頭を下げた。するとシエスタがアンリエッタに話しかけてきた。
「分からない事があったら、何でも聞いてください。」
「はい、シエスタさん。キャッ!」
するとジャイアンは、アンリエッタの頭を叩いた。
「おい!シエスタさんじゃなくて、シエスタ様だろ!メイド長になんて口を聞きやがる!」
何事も最初が肝心である。誰がご主人様であるかを教え込まなくてはならない。さもないと、後々まで舐められ、酷いことになる。平民として奴隷扱い。冗談ではない。ジャイアンとスネ夫は、最初に会った貴族、ルイズで懲りているのであった。
アンリエッタの表情が不快から真っ赤な怒気へと変わった。
「無礼者!王家の者に対して今のような振る舞い、許しませんよ!!」
矮小な小娘の身の上ながら、精一杯の王の威厳を見せて、アンリエッタは言い放つ。だがジャイアンたちは、呆れた顔をするだけであった。
「あのな。お前はもう王族ではないだろう。仮にそうだったとしても、お前は、親が王族なだけ。お前自身は、偉くもなんともない。つまりは、親の威を借りてるだけのただのクズだ。それをまず自覚しろ。」
「なななな!」
「お前に敬意を評している人はお前を見てるんじゃない。お前が振りかざしてる親の影を見てるんだ。5歳の子供同士の喧嘩で、親を呼び出して相手をぶちのめしてもらって喧嘩に勝ったと自慢する奴がかっこいいか? 親に頼らなきゃ何も出来ん無能にしか見えん。」
「な、何の根拠を以て、そのような暴言を口にするのです!?何も知らないあなたが!!」
「今のトリステインがその証拠だ!」
「!?」
アンリエッタは目を見開く。そして自分が平民たちにしてきた数々の悪事を思い出す。そして今でも微かに聞こえてくる彼らの怨念。
「あ、ああぁ・・・」
ジャイアンの言葉に答える気力は、すでにアンリエッタには無かった。心の内側にあるものを曝け出され、その不格好さが露呈されたアンリエッタには、自分の姿がひどく無残で惨めなものに見えた。やがてはその場に崩れ落ちてしまった。
「お前は王族じゃない。家畜以下だ。分かったか!?」
この小説は続けた方がいい?
-
続けた方がいい
-
やめた方がいい