バンドリ世界で女だけど閣下になったよ。   作:のうち

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第三章 2節 最初の決戦

どうも、小暮マミです。

前回、陛下ことイサミに再会して、コンテストで披露する2曲目を《地獄の皇太子》に決めました。

 

そして、それからひたすら練習に練習を重ね、ついに今日。

私たちセンチュリーは、前乗りという形でコンテスト会場のある隣の県へやって来たのです。

 

「へえ、久しぶりに県外に出たけど、やっぱ楽しいねえ」

 

「こら、塔子、あんまり浮かれないの」

 

「まあいいじゃないか。今日くらいは」

 

「そんなこと言っても、一般公開型なんだから。これからリハがあるのよ」

 

「って言っても、順番確認と照明のチェックでしょ?」

 

「ええ、だから一通りの明日のリハーサルを、スタジオのスタッフさんの知り合いがやってるライブハウスのスタジオでやらせてもらえることになったの。とりあえずは楽しみましょう」

 

「楽しむのは、リハーサルが終わってからにしましょう!」

 

私たちはコンテスト会場に向かい、打ち合わせやリハーサルをこなす。

なんと、他のバンドの準備までの時間、会場を使っての練習も許可され、2曲を通して演奏。

MCや演出の調整は、先ほど言ったライブハウスで行うことに。

 

その後、リハーサルも無事終わり、私たちはホテルの5人部屋でささやかな打ち上げをすることにした。

 

「それじゃあ、皆、杯を掲げよ!」

 

私の掛け声に全員が自分の持っているコップを上げる。

 

「明日は勝つぞー!」

 

「「「「おおおーっ!!」」」」

 

翌日。

私たちはコンテスト会場の楽屋に到着していた。

 

各自メイクを施し、終わった人から順に棺桶やギロチンなどの大道具の組み立てを進めていく。

そして衣装に着替え、道具が完成したところで、搬入スタッフに引き渡した。

 

何組かの演奏が終わり、ついに私たちの番がやってくる。

 

「続きまして、ジ・エンド・オブ・センチュリーの皆さんです!」

 

アナウンスと共に、私の声がマイク越しに会場中へ響く。

 

「ジ・エンド・オブ・センチュリー!」

 

「ハハハハ! 我らは地獄より悪魔教を広めるために降臨した教団である!

今日も、わずかな時間ではあるが、我らのミサを存分に楽しんでほしい!」

 

「だが、この会場に来るまでに、我らは多くの人間を殺した。

お前も殺してやる。お前も――お前もな!

ジャック・ザ・リッパー!」

 

一曲目。

ハードロックらしさが際立ち、観客と一体となったときにこそ真価を発揮する楽曲。

この曲で会場を巻き込めないようでは、プロを目指すなんておこがましい。

 

だからこそ、私たちはこの曲を最初に選んだのだ。

 

演奏を終えると、私は叫ぶ。

 

「ありがとう! それでは次の曲――《地獄の皇太子》!」

 

新曲の演奏が始まり、終わりを告げる。

 

あっという間だった。

たった1か月間の努力のすべてが、たった10分ほどの演奏で終わった。

 

「ありがとうございました! 審査員の皆さま、いかがだったでしょうか?」

 

司会の言葉に、端に座っていた審査員が手を挙げ、マイクを受け取る。

 

「演奏、ご苦労様。私から聞きたいのは一つだけだ。今の演奏――やり切ったかい?」

 

「当たり前だ!」

 

「ふふ……なら、いいじゃないか。よくやったよ」

 

……ん? あれ? この人……。

なんか見覚えある、ていうか、その言い回し……。

 

まさか――うそ、都築詩船⁉

 

この世界のガールズバンド界における伝説のギタリスト!

将来、ポッピンパーティーの絆を築き上げたカリスマ!

 

こんなところで会えるなんて感激……。いや、それよりも――さっき、生意気なこと言っちゃった……どうしよう。

 

全ての審査が終わり、表彰式。

 

「グランプリおよびベストパフォーマンス賞は――ジ・エンド・オブ・センチュリー!」

 

「えっ⁉ うそ、マジで……? なんで?

いや、ここは何も取れずに悔し涙って展開じゃ……」

 

「マミ、優勝! 優勝だよ!」

 

「閣下ーっ!!」

 

メンバーたちも大興奮だった。

 

優勝バンドには、最後にもう一曲演奏してもらいたいとのこと。

 

「ハハハッ! オーディエンス諸君!

今宵は我らの勝利を祝うべく、我らセンチュリーの定番をお聴かせしよう!」

 

「いや、その前にメンバー紹介からだな!」

 

「ギター! ジェイル・大橋!」

 

(ジェイルがギターで挨拶)

 

「同じくギター、ルーク篁!」

 

「ベース! ゼノン若宮!」

 

「ドラム! 雷電丸山!」

 

「そして我らがヴォーカル! デーモン小暮閣下!」

 

(ジェイルの紹介で私が前へ)

 

「さあ、悪魔の宴の始まりだ――《蝋人形の館》!」

 

ラストの一曲が終わり、私たちは完全燃焼のままその夜、自宅へと帰宅。

布団に潜り込んだ……はずなのに。

 

……この白い空間、どこ?

 

「ハハハハ! よくぞ来たな、この世界の我輩よ!」

 

え、まさかその声……。

 

目の前に立っていたのは――閣下!

 

「驚いているな!

だが、ここにお前が現れた時点で、我輩の目的は果たされたというものだ。

敬虔なる信者のお前を、この世界にダミアン浜田殿下のご協力により転生させたことは――間違いではなかった」

 

……えっ、今、なんて言った? 転生?

 

「そうだ。お前を転生させたのは――何を隠そう、我ら悪魔なのだ。

悪魔教の布教は各世界で進んでいたが、この世界には依代となる人間が存在しなかった。

ゆえに布教活動は不可能。だが、敬虔な聖飢魔II信者の中から、適任者を選んだ。

 

――その選別の日、運悪く死んでしまったお前が選ばれたというわけだ」

 

なるほど。

だから私は楽譜をスラスラ起こせたのか。

これが……いわゆる転生特典ってやつ?

 

「最近、お前たちが“悪魔の姿”になるとき、性格がより我らに引っ張られてきているのは気づいておるか?

あれは――悪魔がこの世界の依代へと変化しつつある証拠なのだ。

 

これからお前が取るべき道は二つ。

ひとつ、身体を我輩に明け渡すか。

ふたつ、反抗するかだ」

 

「当然、反抗する!

センチュリーは私のバンドであり、私の居場所!

私はセンチュリーのデーモン小暮閣下です!

 

私は――仲間を絶対に置いていきません!」

 

その言葉とともに、私の姿はライブ時の衣装へと変化していた。

 

「ほう……それは、お前だけが取り残されたとしてもか?」

 

「当然! 取り残されたのなら、地の果てまで追いかける。

なんなら、追い越してやるつもりだ!」

 

「ハハハ……ハハハハハ! そうか、そうか――ならばこそだ」

 

閣下は私の肩に手を置く。

 

「よくぞ言った。この世界での布教は、すべてお前たちに任せよう。――頑張るのだぞ」

 

視界が遠のいていく――。

 

「……夢か」

 

  




 今回も最後まで読んでくれてありがとうございました。

メジャーデビューの時期

  • 高校時代後半
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