どうも、小暮マミです。
私は現在、高校2年生。2月の主催ライブ、そして4月にはテレビ中継も入るほどの大きなライブイベントに出演したこともあり、進級早々、私たちセンチュリーの5人は校長室に呼び出されることとなった。
「君たちは、なぜここに呼び出されたか、わかるかね?」
と校長先生が切り出す。
「いえ、わかりかねます」と私。
「ほう、それでは、なぜ我が校に、東京の芸能プロダクションから何件も電話がかかってくるのか、説明してくれるかね?」
……つまり、私たちの「仮の姿」でのプロフィールを調べ尽くした芸能事務所が、直接学校に連絡してきたということらしい。なんというか、執念がすごい。
「それでだが、我が校としては、この件に対処しきれないと考えている。もし君たちがメジャーデビューするような話になれば、プライバシー保護をはじめとした対応が、学校の枠を超えてしまうからだ」
「……つまり、学校から出て行けと?」
「いや、そう言っているわけではない。ただ、君たちは知るべきなのだ。もはや中学時代、路上でライブをして周囲から白い目で見られていた頃の君たちとは違う。今では町内の祭りでも恒例行事として期待され、校内にもファンが多くいる。そして去年の学園祭……私は正直、内心穏やかではなかったが、君たちのライブは大盛況だった。だが、今や問題は君たち個人や学校に留まらない規模にまで発展してしまっているのだ」
どうやら、私たちはこの地域ではもはや「知らぬ者なし」と言えるほどの存在になってしまっていたらしい。
そこへ――
コンコンッ。
「はい、どうぞ?」
「失礼します。私、『○○プロダクション』の松原と申します」
と名乗る女性が入室する。
「ああ、すまなかったね、小暮さん。彼女が、今回君たちをスカウトしに来た松原さんだ。彼女は君たちに直接話したいことがあるとのことだ。応接室に場所を移して話を聞いてみてはどうかね?」
「わかりました。ゼノン、かおり、塔子、涼子、行くよ」
──応接室に場所を移し、私たちは松原さんから詳しい話を聞いた。彼女はプロダクションの社長でありながらプロデューサーでもあり、これまで数多くの一流アーティストを世に送り出してきた凄腕。さらに、子育てまで両立しているというのだから、まさに超人。
「それで、なんだけど。あなたたちがもし今後メジャーデビューを考えるなら、私の事務所に所属してもらえないかと思って。もちろん、高校生なんだから、東京での学校や住居の手配もこちらで整えるつもりよ。進学と活動、両立できる環境を用意するわ」
「……もし一つだけ、わがままが許されるなら、私たちは『私たちのまま』で活動を続けたい。歌いたい曲を歌い、素顔は晒さない。事務所の意向でキャラ作りをされたり、仮面を脱がされたりはしない。それが、私たちがメジャーデビューを受ける上での、必要最低限の条件です」
「……わかったわ。その意見、受け入れる。けれどそれ以外の面では、私の指示に従ってもらうことになるわね。大丈夫、お金の管理もきちんとする。ギャラは一部をお小遣いとして支給して、残りは通帳に貯金して将来困らないようにしておくわ」
その場では即答せず、松原さんは「一週間、ホテルに滞在しているから」と言い残し、その日は解散。私たちはいつものファミレスに集まった。
「どうする?」
「どうするって……メジャーデビューだよ。あたしたちが目標にしてきたものが、いま目の前にあるんだよ?」
「まあね。でもまずは親にどう説明するかが問題だよね」
「うん。メジャーデビューなんて、もっと先のことだと思ってたし……」
「まずは家族と話し合い。そして、もし本格的にデビューするなら転校することになるだろうし、そのための準備や勉強も必要になるわね。まあ、そこは何とかなると思うけど」
「それじゃ、一旦解散ってことで」
──そしてその夜、メンバー全員から「OK」の返事が来たというメールが届いた。
私も今日あったことを、写真の中の両親に報告する。仏壇は用意できていないけれど、写真に向かって手を合わせる。
──それから一週間後。
「お父さん、お母さん。私、行ってきます」
私は、両親が眠る墓前で手を合わせ、深く頭を下げた。
そして、松原さんが待つ駅へと向かった――。
今回も最後まで読んでくれてありがとうございました。