どうも、小暮マミです。前回、私を含めた初代センチュリーが花咲川女学園の学園祭でステージを飾ったわけだが、ある日、私のもとに一通の封筒が届いた。中には、あるガールズバンドのライブチケットが入っていた。
そのバンドの名前は——Pastel*Palettes。芸能界での私の知己である白鷺千聖がベースとして加入した、いわゆる“アイドルバンド”だ。けれど、私は知っている。前世の知識で——このデビューライブは、あてふり(=口パクと演奏同期)で行われ、その機材トラブルによってそれが露見し、炎上騒ぎを起こすことを。だが、同時に私は知っている。それでも彼女たちは乗り越え、少しずつ大衆に認められていくことも。
だから私は、今回、あえて何もしないことにした。
Projectに関わっているプロデューサーの中に、悪い噂のある人物がいることも知っている。だが、メンバーたちは皆、芸能界で実力を磨いてきた子たちだ。その意味を、彼女たち自身が選び取らなければならない。
「それで皆、今週の土日だけど、私と一緒にパスパレのライブ行かない?」
「パスパレ?」
「って何?」
「千聖ちゃんが加入してるアイドルバンドよ。今度、デビューライブをやるの。」
「へぇ〜、千聖ちゃんか」
「最近、全然遊びに来ないよね。バンドするなら、うちに来れば教えてあげられるのに」
「ま、彼女も必死に自分の仕事を全うしようとしてるんでしょ。それより、当日行ける人?」
「あ、ごめん、その日シフト入ってるんだよね」
「私もちょっとギター教室が……ごめんね」
「塔子と香織は不参加ね。エミとまりなはどうする?」
「うーん、ごめん。私もその日、塔子と同じシフト入ってるの」
「私は大丈夫よ」
「なら、私、涼子、エミ、ゼノンで4人ね。一枚余るわ……どうしようかしら」
「あ、それなら薫ちゃんに渡したら?」
「かおちゃんに?」
「うん、一枚余らせるよりはいいでしょ」
「まぁ、そうね。じゃあ、ちょっと連絡してみるわ」
私は連絡帳から「瀬田薫」を見つけ、電話をかけた。
『おや、もしもし? こんな日に電話だなんて、どうしたの?』
「やあやあ、かおちゃん、久しぶり」
『ま、ま、ま、マミさんっ、その呼び方は〜っ!』
「冗談は置いといて。薫、千聖ちゃんのライブチケットが1枚余ってるんだけど、よかったら一緒に来ない?」
『千聖の?……なんとも儚い。ぜひ、甘えさせてもらいます』
「じゃ、当日の待ち合わせ場所送るからね」
『了解です』
そして、ライブ当日。私たち4人は会場最寄り駅で薫ちゃんと合流し、会場へと向かった。
いやあ……気が進まない。何せ、バンドリの中でも屈指の重い過去とされているパスパレの初ライブだ。前世の記憶がなければ、こんな気持ちにはならないのかもしれない。
ライブは順調に始まった。だが、サビに差し掛かったところで音が突然止まる。——かすかに、同期された音源だけが鳴っていた。
「……やっぱりか」
私は小声で、そうつぶやいた。
視点は白鷺千聖へと移る。
あの時のことは、正直、混乱した。私たちPastel*Palettesは、事務所の意向で“あてふり”を用いたライブを強行した。異を唱えるメンバーもいたけれど、それでもプロの芸能人として、指示に従うしかなかった。
でも——私は知っている。あの人たち、ジ・エンド・オブ・センチュリーのことを。彼女たちの音楽は尖っていて、万人受けはしないかもしれない。でも、あれほど真摯に音楽に向き合う姿勢を見てきた私は、だからこそ、今回の件がただただ悔しく、情けなくて……。
ライブ後、私たちの活動は一時休止に。仕事のオファーもほとんど途絶えた。そんな中、マミさんから呼び出しを受けたのだった。
再び、視点は私、小暮マミに戻る。
「それで、マミさん。今日はどういうご用件で?」
「今日は集まってくれてありがとう。——見てたわよ、あのライブ」
「………………」
「情けなかった。正直言って、あれほどバンド活動を侮辱されたと思ったのは初めて。千聖ちゃん、あなたも、楽な方へ逃げただけだと思ってるわ」
「…………」
「でも——だからこそ、提案したいの。今、うちの事務所にパスパレを引き抜こうと調整してる。もしよかったら、私たちと一緒に練習してみない? 特に千聖ちゃんとイヴちゃんには頑張ってもらうわよ」
「今回のあてふりの件、前から噂されてたのよ。デビュー2週間でお披露目って、どう考えても無茶だったもの」
ここまで一気に責めたものの、本当は——助けたかった。見捨てたわけじゃない。あの子たちは、まだやり直せる。きっとやり直せる。
「千聖ちゃん、あなたは本来なら脱退を選んだはず。それでも……あの時、逃げなかった。それだけで十分よ」
「マミさん……ありがとうございます。私、もう一度、ちゃんと向き合いたい。だから、ご指導、お願いします」
「——いいわよ。さ、うちのライブハウスに行きましょう」
こうして私たちとパスパレの物語は、新たなステージへと向かっていくのだった。
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